
The Paragliding Podcast, エピソード5
- パラグライディングポッドキャスト エピソード5:山岳フライトの最先端と装備の常識を覆す知見 本エピソードでは、『Cross Country Magazine』の編集者...
- [0:00] ハンマータグと競技シーズンの幕開け 2024年5月、オーストリアの「ハンマータグ」はパラグライディング界に大きな盛り上がりをもたらした。この日、アルプス...
- パラグライディング・ワールドカップ(PWC)スーパーファイナルは、スペインのペガラハで開催される。2年前の欧州選手権と同じサイトであり、多くのパイロットが地形を熟知し...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The Paragliding Podcast By Cross Country Magazine / Cross Country magazine
- 2024年5月のハンマータグでは7000人のパイロットがアルプスで飛行し、300km級の三角飛行が5つ以上記録された
- PWCスーパーファイナルはスペイン・ペガラハで開催、フランス勢(マキシム・ピノ、オノリン・アマド、バプティスト・ランベール)が優勝候補
- X-Pyrはピレネー山脈450kmを縦断するハイク&フライ競技で、X-Alpsより距離は短いが地形と気象が格段に難しい
- バックプロテクションの現行認証試験(2m垂直落下、50G以下)はNASA由来だが、実際の着陸衝撃を再現できておらず、角度や背中上部の測定を含む新基準が検討されている
- キンガ・マスタレルツはトップランディングで最も重要なのは「忍耐」であり、「I could, but I won't」のマインドセットが自信とコントロール感を高めると説く
- パイロット用サングラスは暗いカテゴリー4ではなく、カテゴリー1〜2のイエロー/オレンジ系が推奨。偏光レンズはCAAとFAAも非推奨
- クリスチャン・ブラックはペルーのアルテソン・ラフ山(約6000m)で、クライミングのビレイ技術を応用したロープシステムで安全にテイクオフしたが、「やりすぎだったか」という自問を残した
パラグライディングポッドキャスト エピソード5:山岳フライトの最先端と装備の常識を覆す知見
本エピソードでは、『Cross Country Magazine』の編集者タルキン・クーパーとエド・ユーイングが、パラグライディング界の最新トピックを深掘りする。話題は、オーストリアの「ハンマータグ」で7000人のパイロットが一斉に飛んだ週末の熱狂から、ペルー・コルディエラ・ブランカの標高約5800メートルでの緊急テイクオフ、サングラスの選び方の誤解、そしてバックプロテクションの安全基準見直しの動きまで多岐にわたる。競技シーンの最前線、装備選びの盲点、そして冒険のリアル——このエピソードは、パラグライディングというスポーツの多面性を、実用的なアドバイスとスリリングな実話で描き出している。
ハンマータグと競技シーズンの幕開け
2024年5月、オーストリアの「ハンマータグ」はパラグライディング界に大きな盛り上がりをもたらした。この日、アルプスでは7000人のパイロットが一斉に飛行し、少なくとも5つの300km級の三角飛行が記録された。エドは「東アルプスのパイロットたちは本当に素晴らしい時間を過ごしている」と語る。この週末を境に、競技シーズンが本格的に動き出した。
パラグライディング・ワールドカップ(PWC)スーパーファイナルは、スペインのペガラハで開催される。2年前の欧州選手権と同じサイトであり、多くのパイロットが地形を熟知している。エドの注目はフランスのトリオ、マキシム・ピノ、オノリン・アマド、バプティスト・ランベールに集まる。「彼らは互いに競い合いながら、全体のレベルを極限まで引き上げるだろう」と予想する。女子ではフランスのコンスタンス・メッテルが優勝候補だが、アメリカ女子チーム(アレクシア・フィッシャー、ヴィオレタ・ヒメネス、ガレン・カークパトリック、ジェニー・オニール)も表彰台を狙う。
ハイク&フライシーズンも同時進行中だ。スコットランドの「Ex Scotia」はドゥギー・スワンソン・ロウが制し、彼は英国の主要4大会すべてを制覇した初のパイロットとなった。スイス選手権を兼ねたジュラ・ハイク&フライでは、クリューゲル・マウラーが復活の勝利を飾り、女子ではセレーナ・ランチが優勝。そして最大の注目は、6月中旬に開催される「X-Pyr(クロス・ピレネー)」だ。過去最大の50チームが参加する。
X-PyrとX-Alpsの違い:ピレネーの厳しさ
エドはX-Pyrの特徴を詳しく解説する。X-Alpsが約1200kmを2週間かけて縦断するのに対し、X-Pyrの直線距離は450kmと短い。しかし、ピレネー山脈はアルプスよりはるかに「ワイルド」だ。携帯電話の電波は届きにくく、サポートチームの活動は困難を極める。エドは「エアロロジー(大気の状態)がより複雑で、ローヌ渓谷やピンツガウ渓谷のような東西のスーパーハイウェイは存在しない」と指摘する。谷の向きが必ずしも進行方向と一致せず、西はビスケー湾、東は地中海という二つの異なる海洋性気候の影響を受ける。終盤に海風が入ると、地面に張り付かれてしまう。前回の優勝者シモン・オーバーアウアーは、文字通りゴールまで走り切らざるを得なかった。
今年は主催者がプランAとプランBの2つのルートを用意している。悪天候が予想される場合は、初日から短いプランBを採用する可能性もある。エドは「ルートの詳細はまだ公表されていないが、2つのルートが準備されていることは秘密ではない」と語る。
シモン・オーバーアウアーは今年、東アルプスでわずか40時間しか飛行できていない(対照的にラース・ミュルステッターは150時間以上)。それでも彼は笑い飛ばしながら「良いチームがある」と語り、優勝を狙う。トマ・ココネアの参加も注目される。エドは「彼は止められない。素晴らしい選手だ」と評する。
「ジャークテスト」とバックプロテクションの未来
最新号(265号)の見出し「The Importance of Jerk」は、一見するとタイポかと思わせるが、これは「ジャーク(躍度)」——加速度の変化率——に関する記事だ。バスティアン・ヴェンツェルによるこの記事は、パラグライダーハーネスのバックプロテクション試験方法の改革を扱っている。
現在の認証試験は、ハーネスを2メートルから垂直に落下させ、その際のG値を測定する。合格基準は50G以下で、厚いフォームパッドは30〜35G、薄型の高性能プロテクションは45〜46G程度だ。問題は、この試験が「完璧な垂直落下」しか想定していない点にある。実際の着陸では、横方向に滑り込む45度の角度での衝撃や、背中の上部への負荷が発生する。エドは「高性能ハーネスでは、プロテクションと低プロファイル設計の間に常にトレードオフがある」と説明する。
この試験の基礎はNASAの科学者による研究に遡るが、現在の基準では不十分だ。パラグライディングでは腰部の負傷が非常に一般的で、「10年以上の経験者に聞けば、かなりの割合が何らかの背中のケガを経験している」とエドは指摘する。新しい試験では、異なる角度や背中上部への衝撃を測定する計画が進んでいる。
トップランディングの極意:キンガ・マスタレルツのマスタークラス
ポーランドのトップパイロット、キンガ・マスタレルツによるトップランディングのマスタークラスは、このエピソードのハイライトの一つだ。彼女の核心は「忍耐」の一言に尽きる。
「トップランディングでのインシデントや事故のほぼすべては、どこかの時点で忍耐を失ったことに起因する」とキンガは断言する。理由は様々だ——体はすでに着地している気分になっている、離陸場で仲間が見ているから格好をつけたい、何度もアプローチを繰り返して疲れと空腹でイライラしている。「一度や二度はうまくいくかもしれないが、最終的には噛みつかれる」と警告する。
彼女が提唱するのは「I could, but I won't(できたけど、やらない)」というマインドセットだ。完璧なアプローチができても、あえて飛び出して「もう少し遊ぶ」ことを選ぶ。これが「自分がコントロールしている」という感覚を強化し、自信を築くという。彼女は「バレリーナのように優雅に」着地することを理想とし、無理に押し込まず、山の空気に耳を傾けることの重要性を強調する。
エドはこのアドバイスを痛感したばかりだ。新しい翼「Gin Bandit 2」のテスト中、完璧なトップランディングを2回決めた後、3回目で地面に「キス」され、尻餅をついて滑り込む羽目になった。前方に人がいたため軌道を変え、結果的に後ろのパイロットの上に翼が落ちるという「カオス」を経験したという。
サングラスの誤解:暗ければ良いというわけではない
「私たちは翼やハーネスに何時間もかけて検討するのに、視覚——飛行の根幹——にはほとんど時間をかけていない」とタルキンは問題提起する。彼自身、サングラスを選ぶ基準は「鏡を見て、どれだけクールに見えるか」だけだったと認める。
このセクションの主役は、スウェーデンのアイウェアブランド「Velodrom」の創業者ビョルン・ハートステットだ。彼の主張は明確だ。「暗いサングラスはただのゴミだ」。理由は瞳孔の反応にある。暗いレンズを装着すると瞳孔が開き、焦点深度が悪化する。さらに、雲の下に入った瞬間に視界が極端に悪くなる危険性がある。ハートステットは40年前、ストックホルムで起きた実例を挙げる——暗いサングラスをかけたバイクのライダーがトンネルに進入した瞬間に盲目状態になり、壁に激突して死亡した事故だ。
パイロットに推奨されるのは、カテゴリー1〜2のイエローまたはオレンジ系のレンズだ。これは旧来のハンググライダーパイロットの知恵とも一致する。偏光レンズは「絶対にダメ」と全員が同意した。偏光は水平方向のグレアをカットするが、パイロットはむしろそのグレアを視認する必要がある。イギリス民間航空局(CAA)とアメリカ連邦航空局(FAA)も、パイロットへの偏光レンズ非推奨を公式に表明している。
タルキンは実際にテストした2つの製品を紹介する。まず「Fluger」ゴーグルは、レンズが通常のスキーゴーグルより目に近く、視野が広い。わずかにオレンジがかったレンズがコントラストを強調する。次に「Velodrom」サングラス(約65ユーロ)は、老眼パイロット向けにレンズ下部のみに遠近両用の処方を入れられる設計で、計器の読み取りに便利だ。一方、高級品の「Oakley Meta Vanguards」(約800ドル)は、カメラとAI機能を内蔵。音声で「撮影開始」と指示すれば、GoProのようにラインが絡まるリスクなく安全に飛行映像を記録できる。ただし、ソーシャルな場面では「ロボコップみたい」と周囲に引かれるのが難点だ。
ブータンとバリ:冒険の二つの顔
最新号の特集から、対照的な二つの冒険が紹介される。
一つ目は、フォトグラファーのジョルジュとクリス・ガルシアによるブータン探検。彼らはブータンのガンティ渓谷で飛行許可を得た。この渓谷は特別な保護鳥類「黒首鶴」の生息地であり、そのため電線が一切ない。エドは「ケーブルがゼロの渓谷で飛べるのは、パラグライダーにとって夢の環境だ」と語る。ただし、ブータンは大量観光路線を拒否する「幸福の王国」であり、飛行許可の取得は困難を極めた。また、ブータンでは氷河の融解による自然ダムの決壊リスクが深刻化しており、村々が洪水の脅威にさらされているという背景も紹介される。
二つ目は、オリー・デイリーのバリ冒険。彼は雨季のバリにパラグライディング旅行を強行し、周囲の忠告を無視した。ジャワ、バリ、ロンボクを巡り、ヨーロッパのパイロットにはほとんど知られていない場所で飛んだ。エドは「彼は18ヶ月前に事故に遭い、そのリハビリの様子を綴った動画がバイラルになった」と補足する。この旅行は事故前のものだが、現在は復帰している。
ロフォーテン諸島で見つけた愛と飛行
ミミ・エイサットの記事「Love and Loss in the Lofoten Islands」は、ノルウェーのロフォーテン諸島でのハイク&フライガイドだ。彼女は元々サーファーで、パイロットではなかったが、この島々に恋をし、飛行を始めた。エドは「彼女はまだ飛行歴が長くないのに、新しい場所を探検し、真の冒険をしている」と称賛する。
ロフォーテン諸島の特徴は、山々が草原に覆われているため、ほぼどこにでも着陸できる点だ。ただし、風が四方から吹くため、飛行可能な日は年間5日程度という厳しさもある。真夜中の太陽の下でのビバーク写真は、まさに「冒険の楽園」を体現している。タルキンは「次のクロスカントリーマガジンの社員旅行にしよう」と冗談を飛ばす。
ペルー・コルディエラ・ブランカ:19,000フィートからの脱出
このエピソードで最もスリリングなストーリーは、アメリカ人クライマー兼パイロット、クリスチャン・ブラックの体験だ。彼は友人のローワン・ラベルと共に、ペルーのアルテソン・ラフ山(約6000m)にパラグライダーを持ち込んだ。
計画は「山頂から飛び立つ」という単純なものだった。しかし、標高4000mのラグーナ・ペロンから登攀を開始し、8時間かけてベースに到達。さらに南東壁を300m登った時点で、頂上まであと300mというところで時間切れとなる。正午に風が東から北に変わり弱まる「ランチ可能なウィンドウ」を逃せば、午後4〜5時には西風が強まりすぎて飛べなくなる。下山する体力も残っていない。
彼らは南東リッジ上の小さな平坦地に着目した。200mのトラバースの先にある、片側は「確実に死ぬ崖」、もう片方は急な氷の斜面という、幅わずかな台地だ。ここでクリスチャンは閃く——クライミングのビレイ技術を応用すれば、安全にテイクオフできるのではないか。
2本のスノーピケットでアンカーを設置。ローワンはアンカーに接続され、ロープの端をクリスチャンのビレイループに通したカラビナに通し、もう一端を手に持つ。クリスチャンが翼を凧上げし、風を確認したら、ローワンがロープを放す。ロープはカラビナを滑り抜け、クリスチャンはそのまま走り出して飛び立つ——というシステムだ。ローワン自身はビレイなしでテイクオフし、「よりスパイシーだった」と振り返る。
着陸後、クリスチャンは「宇宙飛行士になった気分だった。パフ服を着たまま、テレポートしたみたいに『終わった。安全だ。もう歩いて帰れる』と思った」と語る。しかし、彼は自問する——「これは成功だったのか、それともやりすぎだったのか?」。エドは「その問いを自分に問う時点で、おそらくやりすぎだったのだろう」とコメントする。パラグライディングにはグレーゾーンがあり、「うまくいった」と思っても、次は通用しないかもしれない。ベースジャンピングのように二択ではないが、それゆえに危うさも潜む。
まとめ
このエピソードは、パラグライディングというスポーツの本質を多角的に照らし出す。競技の最前線では、PWCスーパーファイナルやX-Pyrといった頂点の戦いが繰り広げられ、ハイク&フライの裾野は世界中に広がっている。装備面では、バックプロテクションの安全基準がNASA由来の旧式テストから脱却しようとしており、サングラス選びにおける「暗ければ良い」という常識が覆される。そして、クリスチャン・ブラックの物語は、技術と判断力の境界線——どこまでが「クールな冒険」で、どこからが「無謀なリスク」なのか——という、すべてのパイロットが直面する問いを投げかける。単なる装備レビューや競技結果の羅列ではなく、安全、冒険、そして情熱が交錯する、パラグライディングの今を凝縮した一編だ。
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