
The Paragliding Podcast, エピソード2
- パラグライディング・ポッドキャスト エピソード2:アドベンチャー特集号の深掘り 本エピソードでは、クロスカントリーマガジンの編集者エド・ユーイングとタークィン・クーパ...
- [0:00] K2山頂からのフライト:リヴ・サンソフとゼブ・ロシュの挑戦 エピソードは、リヴ・サンソフの生の声から始まる。彼女はパートナーのゼブ・ロシュと共に、K2の...
- タークィンはこのインタビューを、ケンダル・マウンテン・フェスティバルで収録したと説明する。このフェスティバルはヨーロッパ最大、世界ではバンフに次ぐ規模の山岳アドベンチ...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The Paragliding Podcast By Cross Country Magazine / Cross Country magazine
- リヴ・サンソフとゼブ・ロシュはK2山頂からタンデムで飛び立ち、標高8450m以上では1時間に50mしか登れない極限状態を経て成功した
- デイヴィッド・サスデッリのレッドブルX-Alpsでの危険なテイクオフは「レッドミスト」(競技中の判断力低下)の典型例で、本人も後悔を認めた
- マイケル・ゲーベルトはX-Alpsの経験を活かし、Fly With Andy社を世界最大級のパラグライダー旅行会社に成長させた
- ソレーヌ・ロンブールの「My Flying Life」は、達成主義とは異なる「自然との一体感」を重視するアドベンチャー哲学を示した
- ベンジャミン・ヴェドリーヌはK2山頂からのフライト後、虚無感に襲われたが、遭難者救助で心の平穏を取り戻した
- 1990年のエベレスト飛行と比較して、機材重量は7kgから2.4kgへと劇的に軽量化され、酸素ボンベなしの飛行を可能にした
- キンガ・マシュタレルツは「トップランディングがボルビブへのパスポート」と強調し、基本技術の重要性を説いた
- ジェフ・ハマンのパタゴニア氷河横断は、18ヶ月前からの準備を含む徹底した組織力が成功の鍵だった
パラグライディング・ポッドキャスト エピソード2:アドベンチャー特集号の深掘り
本エピソードでは、クロスカントリーマガジンの編集者エド・ユーイングとタークィン・クーパーが、同誌のアドベンチャー特集号(第262号)を軸に、パラグライダー界の最前線を語り合う。K2山頂からのタンデムフライトという前人未到の偉業から、レッドブルX-Alpsでの危険なテイクオフ映像の裏話、そして世界各地のガイドが教える隠れたフライトスポットまで、アドベンチャーの本質を多角的に探る一時間だ。二人の軽妙な掛け合いと、ゲストへの深いリスペクトが感じられる、まさに「誌面を読む」以上の体験を提供する内容となっている。
K2山頂からのフライト:リヴ・サンソフとゼブ・ロシュの挑戦
エピソードは、リヴ・サンソフの生の声から始まる。彼女はパートナーのゼブ・ロシュと共に、K2の山頂からタンデムで飛び立った体験を「完全にクレイジーなフライトだった」と振り返る。「K2の周りには近い山がなく、まるで宇宙にいるよう。下にはバルトロ氷河が見える。ハーネスに座ったまま、まったく信じられないような景色を眺めている。間違いなく人生で最も魔法のようなフライトだ」と語るその口調には、達成感と畏敬の念が混ざり合っている。
タークィンはこのインタビューを、ケンダル・マウンテン・フェスティバルで収録したと説明する。このフェスティバルはヨーロッパ最大、世界ではバンフに次ぐ規模の山岳アドベンチャー映画祭で、今年はパラグライダー関連の映画が2本上映された。いずれもK2をテーマにした作品だったという。
デイヴィッド・サスデッリ:バイラル映像の真相とレッドブルX-Alpsの教訓
タークィンは、レッドブルX-Alpsで話題となったデイヴィッド・サスデッリの「危険なテイクオフ」映像について詳しく掘り下げる。サスデッリは30歳未満の若手で、プロの山岳ガイドでありながらエアデザインのチームパイロットも務める。レース2日目、非常に強いフェーン風(高温で乾燥した南風)が吹く中、彼のテイクオフ映像がSNSで拡散された。映像では、翼が上がった直後に大規模な崩落が発生し、地面すれすれで回復、その後急上昇して飛び去っていく様子が映っている。周囲の木々が激しくしなるほどの強風だった。
タークィンがインタビューでこの件を尋ねると、サスデッリは「後悔している。良い判断ではなかった」と率直に認めたという。彼が強行した理由は、競技者のサイモン・オーバウナーが高度3000メートルで好調に飛んでいるのをチームと確認したためだった。「レースモードに入ると、普段なら絶対にしない判断をしてしまう。いわゆる『レッドミスト』(競技中の集中による判断力低下)の典型例だ」とタークィンは分析する。
興味深いのは、サスデッリ自身はこの件について「5分程度」しか話さず、むしろ自身の成長ストーリーに重点を置いたことだ。彼のアドバイスは明確で、「EN-Aで100時間、EN-Bで100時間飛んでからCグレードに進むべき」というもの。山岳ガイドとして安全が仕事である彼が、このような判断をしたことの皮肉についても話題となった。
マイケル・ゲーベルト:X-Alpsからガイド業へ、Fly With Andyの成功哲学
エドがインタビューしたのは、ドイツ人パイロットのマイケル・ゲーベルト。彼は5回のX-Alps出場経験を持ち、最高位は5位。しかし今や彼の主な関心は、ガイド会社「Fly With Andy」のパートナーとしての活動にある。この会社は現在、世界最大級のパラグライダー旅行予約エージェンシーに成長しており、年間約60回のツアーを運営している。
ゲーベルトの背景は興味深い。南バイエルンで育ち、父親が週末ハンググライダーパイロットだったことから、独学でハンググライダーを始めた。その後、写真家のフェリックス・フォルクと組み、20代前半から「地図を見て、山があって戦争がない場所ならどこへでも行く」というスタイルで世界中を旅した。やがてパラグライダーに移行し、15年にわたって世界各地の未開拓エリアを開拓。徐々にグループツアーを運営するようになり、スイス人のアンディと出会って現在の会社を設立した。
エドが特に印象的だったと語るのは、ゲーベルトの「X-Alpsがスポーツ外の安全に与える影響」についての指摘だ。一般のパイロットがレース中のアスリートの行動を真似しようとする危険性を、ゲーベルトは強く懸念していた。エド自身も、パラグライダー初心者だった頃、X-Alpsの映像だけを見て「バックワインテイクオフやグラウンドスパイラルはいつやるのか」と尋ねた経験を笑い話として共有する。ゲーベルトの会社がブラジルなどの遠征地だけでなく、バッサーノでのトレーニング週間も重視する理由はここにある。「強風で翼をコントロールできないまま遠征に行く意味はない」というのが彼の信念だ。
ソレーヌ・ロンブール:哲学的なアドベンチャーと「My Flying Life」
タークィンが担当した「My Flying Life」のコーナーでは、フランス人冒険パイロットのソレーヌ・ロンブールが登場する。このコーナーは誌面の最終ページを飾る恒例企画で、パイロットが人生で最も重要なことについて哲学的に語る場だ。ロンブールの回答は特に印象的で、「最高のフライトアドベンチャーは何か」という質問に対し、彼女はアンデス山脈の奥地での体験を挙げた。「着陸後、木から削ったパドルでパックラフト(携帯式ゴムボート)を漕いで帰ってきた。水、土、空気が移動手段で、火が料理を提供する。要素の中に完全に溶け込んだ冒険だった」と語る。
タークィンはこのアプローチを「男性的な『達成リスト』型の冒険とは対照的で、自然との一体感を重視する女性的な感性」と評したが、エドから「なぜそれを女性的と言うのか」と即座にツッコミが入る。このやり取りは、アドベンチャーにおける多様な価値観を浮き彫りにしている。ロンブールの記事は、単なる記録や達成ではなく、旅そのものとの深い関わり方を提示している点で、特集号に独特の彩りを加えている。
ケンダル・マウンテン・フェスティバル:二つのK2映画が描く異なる物語
タークィンが現地で観た二本のK2映画は、対照的なテーマを持っていた。一本目はベンジャミン・ヴェドリーヌの「Chasing Shadows」。彼は本質的にアルピニストであり、山からの迅速な脱出手段としてパラグライダーを利用する。映画の圧巻は、K2山頂でドローンを呼び寄せ、自身のテイクオフを空撮するシーンだ。「ドローンがそんな高度で飛べるとは知らなかった」とタークィンは驚く。しかし映画の真のクライマックスはその後にある。ヴェドリーヌは着陸後、自分自身に対して「嫌悪感」に近い感情を抱き、達成感の代わりに虚無感に襲われる。この感情が変わったのは、標高7000メートル以上で遭難したイタリア人登山者二人の救助要請を受けた時だった。救助に向かった後、彼はようやく心の平穏を取り戻したという。
タークィンはこの現象について、70代のベテラン登山家ヴィクター・ソーンダースに意見を求めたところ、「目標を達成した後に喪失感を覚えるのは普通のことだ」と即答されたという。パラグライダーの世界でも、世界チャンピオンのマキシム・ピノが優勝後に鬱状態に陥った例をエドが挙げ、トップアスリートに共通する心理的パターンであることが示唆される。
二本目の映画「K2 Mon Amour」は、リヴ・サンソフとゼブ・ロシュの関係性を描いた、より軽妙でユーモラスな作品だ。タークィンは映画上映後、二人に直接インタビューを行った。リヴは山頂へのアプローチを詳細に語る。ボトルネックを通過後、標高8450メートル以上では1時間にわずか50メートルしか登れない極度の低速となり、「片足を上げ、もう片方を上げ、休んで呼吸する」の繰り返しだったという。さらに、固定ロープに遺体がかかっているのを目撃し、精神的にも大きなストレスを受けたと明かす。
山頂に到着した瞬間、リヴは「ここに立っているだけでも偉業だ」と安堵するが、ゼブは即座に「パイロットモード」に切り替わり、テイクオフの可能性を分析し始めた。実際のテイクオフは2回のトライを要し、イタリア人登山者のトミーが翼を支えるのを手伝ったことで成功した。リヴは「彼がいなくても飛べたが、より技術的でストレスは大きかった」と振り返る。
ゼブは1990年、17歳の時に父親とエベレストのサウスコルから飛んだ経験と比較する。当時の機材は「エルドゥシア」という現在では存在しないメーカーのもので、重量は7キロ、面積は28平方メートルだった。対して今回のシングルスキン翼は2.4キロと格段に軽く、酸素ボンベなしでの飛行を可能にしたという。機材の進化が、アドベンチャーの可能性を根本から変えた好例だ。
ガイドとグルメが教える世界のフライトスポット
エドが編集した「ガイド&グルー」特集では、世界各地の現地ガイドが厳選したフライト情報を紹介している。キンガ・マシュタレルツはイタリアのフェルトレを拠点に、スロベニアまで続くボルビブ(vol bivouac:山岳縦走フライト)ルートを提案。彼女が繰り返し強調するのは「トップランディング(山頂への着陸)の重要性」だ。「どこにでもトップランディングできる技術があれば、それがボルビブへのパスポートになる」という。
フィンランドのイラリは、一見不可能に思える複雑な空域制限を逆手に取る方法を伝授。同国は中国を除けば世界で最も複雑な空域を持つが、「常にアクティブというわけではない」と解説する。また、ボートによるトーイング(牽引離陸)というユニークな手法も紹介されている。実際、フィンランドは欧州記録(ウニ・マキネンによる500km)を保持する国でもある。
ノルウェーのエルランド・ヴィトナーは、ヨトゥンハイメンでの超 remot なハイク&フライから、フィヨルド地方の景観ルートまで、多様な選択肢を提示。キルギスタンは新興のアドベンチャー目的地として注目され、ユルト(遊牧民のテント)に泊まりながらのフライトが可能だという。
コロンビアのセブ・オスピナは、コーカバレーでのフライトを案内。同国は赤道直下のため年間を通じてフライト可能で、欧州のオフシーズンがコロンビアのオンシーズンという好都合な関係にある。ケニアでは、クリス・ガルシア率いるコンバージェンス・パラグライディングが、ヘリコプターを使った高級サファリスタイルのパラグライディングを展開。エチオピア国境近くの山岳地帯で、ヘリで山頂に上がり、そこから飛び立ち、キャンプしながら数日間かけて帰還するという贅沢な冒険だ。
ジェフ・ハマンのパタゴニア氷河横断:組織力が生んだ偉業
エドが特に熱を込めて語るのは、パラモーターパイロットのジェフ・ハマンだ。彼はサンディエゴ在住の実業家で、趣味はセーリング、釣り、そしてパラモーター。これまでにサンディエゴから南米最南端まで、太平洋岸を何年もかけて「縫い合わせる」ように飛んできた。メキシコ海岸線、中央アメリカ太平洋岸、ダリエン峡谷(密林のため遭難すれば脱出不可能な70マイル)の横断、コロンビア縦断と、その軌跡は圧巻だ。
今回のハイライトは、パタゴニアのサン・ラファエル氷河をパラモーターで横断した飛行。この氷河は北パタゴニア氷床から海に流れ込むもので、「通常は絶対に飛べない場所」とされる。しかしハマンは入念な準備と適切なパートナー選びにより、わずかな好天の窓を捉え、何マイルにもわたる青く輝く氷の上を飛行することに成功した。
エドはハマンの最大の強みを「組織力」と評する。「彼はバーベキューでハンバーガーを焼いている普通の父親に見える。しかし、ロジスティクスを徹底的に詰め、関係者全員を味方につけ、許可を得てから実行する。パプアニューギニアの遠征では、18ヶ月前から予備のパラモーターをコンテナで現地に送り込んでいた」。このエピソードは、アドベンチャーにおける「計画力」の重要性を如実に物語っている。
ポール・グシュルバウアーの変容:目標達成からコミュニティへ
特集号には、オーストリアのトップパイロット、ポール・グシュルバウアーの新著「Wanderbird Strategy」に関するインタビューも掲載されている。グシュルバウアーはかつてレッドブルのアスリートとして競技に没頭し、目標達成に邁進する「ゴール指向型」の典型だった。しかし現在は考え方を大きく変え、自身が主催する「ワンダーバード」イベントでは、参加者が楽しむこと、環境を次世代に残すこと、コミュニティの裾野を広げることを最優先している。
タークィンはこの変化を、ソレーヌ・ロンブールの哲学的アプローチや、ベンジャミン・ヴェドリーヌの達成後の虚無感とも関連づけながら、アドベンチャーにおける「内面的な旅」の重要性を指摘する。単なる記録や達成ではなく、いかに自然と向き合い、他者と共有するか。このテーマが、特集号全体を貫く静かなメッセージとなっている。
まとめ
このエピソードは、パラグライダーというスポーツが持つ「アドベンチャー」の多層性を見事に描き出している。K2山頂からのタンデムフライトという究極の挑戦から、ガイドが教える身近な週末の冒険、そして競技アスリートの内面的な変容まで、一つのテーマがこれほど多様な形で表現されることは珍しい。特に印象的なのは、どのストーリーにも共通する「準備と計画の重要性」というメッセージだ。サスデッリの危険なテイクオフも、ハマンの氷河横断も、成功と失敗の分かれ目は、技術以上に「判断力」と「準備」にあった。そして、ヴェドリーヌやグシュルバウアーが示すように、頂点を極めた者たちが次に求めるのは、より深い人間的な充実感である。このエピソードは、単なるフライトの記録を超えて、人間の冒険心の本質に迫る、示唆に富んだ内容だった。
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