
The Paragliding Podcast, Episode 3
- パラグライダー・ポッドキャスト エピソード3:雑誌のページから飛び出す冒険と革新の物語 『Cross Country Magazine』の編集者タルキン・クーパーとエド・...
- [0:00] 冬の魔法の空気——ウェーブフライトの世界 エドが最初に取り上げたのは、Adi Geiseggerによる冬のウェーブフライトの特集だ。ウェーブとは何か——パラ...
- しかし、パラグライダーでウェーブを楽しむのは容易ではない。ウェーブが発生するのは風速30〜40km/hという、パラグライダーにとっては限界に近い条件下だからだ。ハンググラ...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The Paragliding Podcast By Cross Country Magazine / Cross Country magazine
パラグライダー・ポッドキャスト エピソード3:雑誌のページから飛び出す冒険と革新の物語
『Cross Country Magazine』の編集者タルキン・クーパーとエド・ユーイングが、最新号(第263号)に掲載された多様なストーリーを掘り下げるこのエピソードは、パラグライダーというスポーツの現在地を鮮やかに描き出す。冬のウェーブフライトからエジプトのピラミッドを巡るパラモーター飛行、南米最高峰アコンカグアからのヒケアンドフライ、そしてEN-A+ウイングという新たなカテゴリーまで——技術の進化と人間の冒険心が交差する現場の熱気が、二人の軽妙な掛け合いを通じて伝わってくる。雑誌編集者ならではの深い知識と、同じパイロットとしての共感が織り交ざった、情報密度の高い一時間だ。
冬の魔法の空気——ウェーブフライトの世界
エドが最初に取り上げたのは、Adi Geiseggerによる冬のウェーブフライトの特集だ。ウェーブとは何か——パラグライダーパイロットにとって、この現象はしばしば「聞いたことはあるが経験したことはない」ものだ。通常のサーマル(熱上昇気流)が「バンピーで、コアに留まるのに苦労する」のに対し、ウェーブに乗った時の感覚は「非常にスムーズで、ほとんどどこにでもリフトがある」という。まるで魔法のような空気の中で長時間飛び続けられるのだ。
しかし、パラグライダーでウェーブを楽しむのは容易ではない。ウェーブが発生するのは風速30〜40km/hという、パラグライダーにとっては限界に近い条件下だからだ。ハンググライダーやグライダーパイロットにはおなじみの現象だが、パラグライダーでのウェーブフライトは「冬のもの」とエドは説明する。サーマルが混ざると乱流が強くなりすぎるため、安定した大気と強い風が同時に存在する冬の特定の条件下でのみ可能になる。
AdiはRed Bull X-Alpsのチーフフォトグラファーであり、強風下での飛行に慣れている。彼の経験と技術が、この稀有な条件を捉えることを可能にした。エドはさらに、ウェーブフライトの「バイブル」として、G. Dale著『Soaring, Hang Gliding, Wave and Convergence Soaring』を紹介。この薄い本には、様々なタイプのウェーブとその捉え方が図解で明確に説明されているという。丘から発進するパイロットにとっての課題は、サーマルやラミナー(層流)の空気から「切断」し、より遠く、より高い位置にあるウェーブに接続することだ。技術的でハイレベルな内容だが、記事はアクセスしやすい形で書かれているとエドは語る。
スイス式ヒケアンドフライ——組織力が生む12の大会
タルキンが担当したストーリーの一つが、スイス・ハイクアンドフライ・リーグの成功の秘密だ。ヒケアンドフライは近年急速に発展した分野だが、スイスリーグが昨年開催したイベント数は何と12。比較対象として、フランスはわずか3だ。この数字の差が、スイスの組織力とこの分野への本気度を物語っている。
リーグ代表のBenny Hussenへのインタビューから浮かび上がったのは、ヒケアンドフライを「独自のディシプリン」として確立しようとする姿勢だ。Red Bull X-Alpsのようなエリート向けのイベントとは異なり、スイスリーグは全国のアスリートやパイロットを支援する資金チャンネルを持ち、競技としての裾野を広げている。昨年のリーグ優勝者はKriegel Mara、3位は彼の兄弟Mishi、2位はウェールズ出身で現在スイスに拠点を移したIdris Birch。兄弟がトップを独占するあたり、スイスのヒケアンドフライ界の層の厚さが窺える。
9kgのカメラをヘルメットに——80年代の映画制作の狂気
「何が起こるかって?9kgのカメラを頭に縛り付けるんだ。80年代と90年代のこのスポーツがどれほど実験的だったか、私たちは忘れている」
タルキンがインタビューしたHenry Hauckは、80年代から90年代にかけてパラグライダー映画を制作したベテランだ。彼は現在、自身のアーカイブフィルムをデジタル修復し、ウェブサイトで公開している。『Gegen Wind』(Crosswind)はドイツのツークシュピッツェで撮影された作品だが、その制作過程は現代の感覚からすれば想像を絶する。
当時はGoProもInsta360もない。フィルムで撮影し、音声は別録り。現像にはプロのラボに依頼する必要があり、現代の価格で3万ユーロ(約480万円)もかかることもあった。そして何より危険だった。HenryはPOV(主観視点)映像を撮るため、60mmカメラと9kgのバッテリーをヘルメットにネジで固定した。リビングルームでテストした時はうまくいったが、実際に飛ぶとカメラの重みで右に曲がれない。結果、撮影対象のパイロットと空中で衝突(彼は「コラプス」と言ったが、実際は「コリジョン」だったと後で確認している)。奇跡的にスキー場に安全着陸できたが、「今日の目で見れば、まったくの愚かなアイデアだった」とHenryは振り返る。このエピソードは、パラグライダーのパイオニアたちが払った代償と、現在のテクノロジーの恩恵を痛感させる。
ピラミッドとアコンカグア——冒険家たちの新たな挑戦
タルキンは、Tom de DorlodotとHoracio Llorensのパラモーターによるエジプト・ピラミッド飛行についても語る。この二人が組むといつも「楽しくてエキサイティングなこと」をやるという。ピラミッド周辺を飛行した後、ルクソールの王家の谷にも向かった。残念ながらHoracioは旅の終盤に深刻な事故に遭ったが(Tomはすでに帰国後)、幸い回復している。主要なミッションは成功し、素晴らしい画像が残された。
一方、エドが話を聞いたのは、2024年12月17〜18日頃に南米最高峰アコンカグア(標高約7,000m)からのヒケアンドフライに成功したチームだ。6人の登山チームのうち4人が、ほぼ完璧なコンディションの日に山頂から飛び立った。ガイドはPierre Carter。彼は「7サミット」(各大陸の最高峰を登頂し飛行するプロジェクト)に取り組んでいる。
このチームで特に注目すべきは、Marshall Mosherの装備だ。彼は通常のハイクアンドフライ用ウイングではなく、16平方メートルのパラカイト(Flare Banditの新型)を持ち込んだ。パラカイトは通常のパラグライダーより速度域が広く、強風下での発射や氷河のスピードフライに適している。彼の戦略は「強風で発射し、氷河をスピードフライで降り、十分なグライドで道路方面に抜ける」というもの。エドは「これがおそらく、高性能パラカイトを高山に持ち込んだ初めてのケース」と指摘する。単なる「軽量ウイング」ではなく、ミッションに合わせた機材選択の妙が光る。
スピードフライングと女性パイロット——安全文化の再構築
スピードフライングの世界では、Julia Liebermanが立ち上げたInstagramアカウント「Women of Speed Flying」が注目を集めている。ジャック・シアードが彼女にインタビューし、このインフォーマルなコミュニティの成り立ちを掘り下げた。
タルキンはさらに、Ski-and-Flyの共同オーナーであり、レベル・ウイングス(フランソワ・ボン設立のフランス企業)でも活動するRachelle McEwenとの対話を紹介する。彼女は伝統的なクロスカントリーパイロットのコーチも務めており、女性パイロットが直面する課題について率直に語った。
「スポーツ全体で最も大きな問題の一つは、『取り残される恐怖』と『自分を証明しようとするプレッシャー』です。多くの人が、良くないコンディションで飛んだり、自分のスキルより速いペースでウイングを進級させたり、常に他人と競おうとしてトラブルに巻き込まれ、時には致命的な結果を招きます」
RachelleがSki-and-Flyで目指すのは「安全とスロープログレッションへの回帰」だ。「エゴを満たさないかもしれないが、後で命を救うかもしれない基礎スキルを徹底的に磨く」。女性限定のイベントでは、参加者が「自分らしくいられる」「わからないことを恥ずかしがらずに質問できる」環境が生まれるという。興味深いのは、彼女とEllie Eggerがガイドするクロスカントリーイベントには、男性参加者も「女性インストラクターの方が安全に配慮し、コミュニケーションが効果的だ」とわざわざ参加してくることだ。
一方、タルキンはスピードフライングの「闇」にも触れる。Instagramで「Worst of Speed Flying」というアカウントをフォローしてしまった結果、フィードが「狭いスロットキャニオンでバレルロールをする狂気の映像」で埋め尽くされたという。魚眼レンズの効果で壁までの距離が2フィートに見える映像は「見ていて楽しくない」と苦笑する。
EN-A+ウイング——「安全」と「楽しさ」の新たなバランス
科学ライターBastienne WentzelによるEN-A+ウイングの特集は、昨年のクーピカール(パラグライダーの見本市)での観察から生まれた。多くのメーカーがEN-A+グライダーをラインアップに加えていることに気づいたのだ。
EN-Aは初心者用(スクール用)のウイングだ。EN-A+はその上位に位置するが、あくまで「ローエンド」のカテゴリー。ドイツではEN-Aで学び、最初の2年間はEN-Aに留まり続ける文化があるという。この背景には、安全を重視するドイツのパラグライダー文化がある。EN-C(2ライナー)は「トップパイロットだけが乗るべき」とされる。
しかし、EN-A+の性能は驚くべきものだ。イランのインストラクターAmiyahは、生徒たちに「EN-Aでも飛べる」ことを示すため、300kmをEN-Aで飛行した。オランダのパイロットPepienは30年間EN-BやEN-Cを飛ばしてきたが、不安感に悩まされるようになりEN-A+にステップダウン。「これまでで一番幸せ」と語る。エド自身も、数年前にイギリスの平坦地でEN-Aによる100kmフライトを経験している。「ウイングに任せて、雲と地上のソアリングポイントだけを見ていればいい。驚くほど快適だった」。最新のEN-A+ウイング(例えばMacparaのAravi)はさらに性能が向上しており、「最大限のパッシブセーフティと最大限の楽しさ」を両立しているという。
101 Ways to Fly Better——10年ぶりのアップデート
クロスカントリー・マガジンが10年前にBruce Goldsmithと共に制作した『50 Ways to Fly Better』は、8ヶ国語に翻訳され、世界中のパラグライダースクールで読まれているベストセラーだ。その改訂版として、『101 Ways to Fly Better』がついにリリースされる。
この新刊は単なるアップデートではなく「完全に新しい本」だとエドは強調する。Bruce Goldsmithに加え、Theo Dublick、Greg Hammertonらトップパイロットが執筆陣に名を連ねる。内容は「ウイングの選び方、適正体重、飛行場所の選び方」といった基礎から、Baptiste Lambertによる「アルプスでの三角形フライトの方法」や「ビッグディスタンス」「スピードトゥフライ」といった高度なテーマまで網羅。理論と実践の架け橋を目指した一冊だ。予約注文はすでに開始され、2025年3月初旬に出荷予定。
バジェ・デ・ブラボー——40年にわたる愛の物語
このエピソードで最も美しいストーリーとして際立つのが、イェール大学2年生のHanna Klingbeil Canaleによる長編記事だ。彼女はメキシコ、バジェ・デ・ブラボーという地域にパラグライダーがもたらした変化を、40年にわたって描き出した。
「この記事を書き始めた時、私はメキシコ南部の小さな地域におけるエアスポーツの発展について書いていると思っていました。しかし、パイロットや地元の人々と話し始めて初めて気づきました——私が実際に書いていたのは、愛の物語だったのです」
エドはこの記事を「ドゥームスクローリング(ネガティブな情報を延々とスクロールする行為)の対極にある作品」と評する。Hannaは地元のスクール経営者、パラグライダーをこの地域に最初に持ち込んだ人々、グライダーを梱包する子供たち、シーズン中に生計を立てるビール売りやバーの経営者、料理人たちにインタビュー。メキシコシティから4〜5時間のこの貧しい農村地域が、自由飛行によってどのように変容したかを、コミュニティの視点から描き出す。エドは「イェール大学の学位と彼女の文章力があれば、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストで書く日も遠くない」と将来性を確信している。
パイロット・オブ・ザ・イヤーとSRS論争
年始早々、パラグライダー競技界では二つの大きなイベントが開催された。コロンビアでのSRS(Sports Class Racing Series)と、バジェ・デ・ブラボーでのモナカ・オープン(今年で21回目)。モナカ・オープンはENCグライダー向けのSRSとは異なり、ハイレベルな競技で、北米や北欧から多くのパイロットが集まる。今年は6タスクが消化され、好天に恵まれた。
クロスカントリー・マガジンが選ぶ「パイロット・オブ・ザ・イヤー」には、Brett Janawayが選ばれた。彼は1990年代から競技イベントの運営に携わり、SRSシリーズを立ち上げて「競技フライングに楽しさを取り戻した」功績が評価された。
しかし、SRSコロンビア大会では小さな論争も起きた。Elisa Deutschmannが、自身のパートナー(CCCウイング搭乗)にタスク情報を提供し、彼女がその後ろを飛行したとしてペナルティを受けたのだ。主催者は彼女からリードアウトポイントを剥奪し、さらにCillian Halwegenに対しても「レースエントリーがないのにタスクを飛行した」として非難の書簡を公開した。
問題の本質は、CCCウイングのパイロットが前方で「道を示す」ことで、ENCクラスの競技の公平性が損なわれる点にある。エドは「リードするポジションは、自分で判断を下さなければならないという点で、パックの中や後ろを飛ぶのとは全く異なる学びがある」と説明する。一方で、過去のエクスワールド(XCの国際大会)でも似たような事例があったことを指摘し、「彼女はペナルティを受け入れ、最終日にはタスクに勝利した。休暇を使って参加している人々を、小さなミスで叩くのは違う」と寛容な姿勢も見せる。
まとめ
このエピソードが聴き手に残すのは、パラグライダーというスポーツが持つ多層的な魅力だ。最先端のウェーブ理論から、9kgのカメラを頭に縛り付けた80年代の狂気、EN-A+ウイングの技術的進化、そしてメキシコの農村を変えた40年にわたる「愛の物語」まで——一見バラバラに見えるこれらのストーリーは、すべて「人間はなぜ飛ぶのか」という根源的な問いにつながっている。編集者タルキンとエドの会話からは、単なる情報伝達を超えた、このスポーツへの深い愛情と敬意が感じられる。技術は進化し、安全基準は向上し、コミュニティは拡大している。しかし、空への憧れと冒険心は、80年代も2025年も変わらない。その普遍性を、この一時間は見事に切り取っている。