
The Paragliding Podcast, エピソード1
- パラグライディングポッドキャスト 第1回:クープ・イカール号の全貌と競技界の変革 本エピソードは、『Cross Country Magazine』の編集者エド・ユーイ...
- [0:00] スコットランドの可能性とジョー・ダートの詩的な飛行 エドは最近スコットランドでウルトラライト(超軽量装備)でのフライトを経験した。イギリス全土が高気圧に...
- この体験は、同号の大きな特集であるジョー・ダートのスコットランド横断飛行へと自然につながる。エド自身は1990年代にスコットランドでパラグライディングを学んだ。当時は...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The Paragliding Podcast By Cross Country Magazine / Cross Country magazine
- スコットランドのクロスカントリーフライトは5月〜6月が最適で、北西からの寒気通過後の高気圧が理想的なコンディションをもたらすが、天気予報アプリに頼らず自分の目で空を読むことが不可欠
- レッドブル・X-アルプスの写真家フェリックス・ヴェルクは、360度アクションカムの普及で失われつつある「現実を忠実に再現する写真」の価値を訴えている
- 新世界王者バティスト・ランベールは「ジャガイモになる」メンタルトレーニング(呼吸法による感情の排除と数学的決断)を実践しており、競技パフォーマンスの鍵はメンタルにある
- ブラジル世界選手権でのブラム・デ・クレルク死亡事故後、CIVLとPWCは安全対策の見直しを進めているが、FAIのカテゴリー1競技停止は実質的に5月まで猶予があり、批判も多い
- CIVLの運営はほぼ完全なボランティアベースであり、危機コミュニケーションの欠如が事故後の混乱を拡大した。事前のコミュニケーション計画の重要性が浮き彫りになった
- パラカイトの急増に対し、ENシステムのような安全基準が存在せず、異なるディシプリン間の航空ルールの共有が喫緊の課題となっている
- サブライトハーネスは全レベルのパイロット向けに普及が進むと予想され、Ginの400グラム未満のEN966認証ヘルメットは軽量化と安全性の両立を示す重要な製品
パラグライディングポッドキャスト 第1回:クープ・イカール号の全貌と競技界の変革
本エピソードは、『Cross Country Magazine』の編集者エド・ユーイングとターキン・クーパーが、同誌261号(2025年11月/12月号、通称「クープ・イカール号」)の内容を軸に、スコットランドでの200kmクロスカントリーフライト、レッドブル・X-アルプスの写真家フェリックス・ヴェルクの芸術性、ブラジル世界選手権での悲劇とその後の安全改革、そしてクープ・イカールで発表された最新ギアまでを縦横無尽に語る対話形式の番組である。二人の親しみやすい掛け合いと業界の内側からの視点が特徴で、パラグライディングというスポーツの現在地と未来を多角的に描き出している。
スコットランドの可能性とジョー・ダートの詩的な飛行
エドは最近スコットランドでウルトラライト(超軽量装備)でのフライトを経験した。イギリス全土が高気圧に覆われ無風状態だった週、低い雲に阻まれながらも一日だけ素晴らしいコンディションに恵まれたという。赤いヘザー(ヒース)が咲き誇る風景、鮮やかな青い湖、そして海まで見渡せる景色は「なぜもっと頻繁にスコットランドに行かないのか不思議になるほど」だったとエドは語る。
この体験は、同号の大きな特集であるジョー・ダートのスコットランド横断飛行へと自然につながる。エド自身は1990年代にスコットランドでパラグライディングを学んだ。当時はハイク&フライが標準で、山を登って飛び降りるのが基本だった。しかし、スコットランドの地形はクロスカントリーに理想的で、大きな木々がなく、広大な景観が広がっている。シーズンは5月から6月が最適で、北西からの寒気が通過した後の高気圧が、高い雲底と透明度の高い空気をもたらすという。
ジョー・ダートの飛行は、スコットランド北西部の最も辺鄙な地域を縦断するものだった。写真家キーラン・キャンベルが撮影した画像は、この地域の過酷さと美しさを同時に伝えている。もし不時着した場合、沼地やヒース、ブヨ(midges)の中を8時間歩いて戻らなければならないほどの remoteness だ。ダートの原稿は「詩人のように美しい」とエドが絶賛するほどで、ダートの父親が詩人であることを本人が明かしたというエピソードも紹介された。ダート自身は16歳で学校を辞めて樹木外科医(tree surgeon)になり、現在は木工や木彫りを生業としている。彼の文章は、そのバックグラウンドから来る素朴で力強い表現が特徴的だ。
ターキンは、ドイツからのガイドツアーがクライアントを連れてスコットランドを訪れている現状に触れ、訪問者へのアドバイスを求めた。エドの答えは「カッパ(防水ジャケット)と傘を持ってこい」というユーモアを交えつつ、現実的な警告も忘れない。「天気予報だけを信じてはいけない。自分で空を見上げて判断しなければならない。イギリス政府の公式天気予報が『雲のない山頂の確率10%未満』と予報した日が、実際には終日快晴の絶好のフライト日和だった」という具体例を挙げ、アプリ頼みの危険性を指摘した。
フェリックス・ヴェルクと失われつつある写真芸術
ターキンが「この号で最もエキサイティングな記事」と評したのは、レッドブル・X-アルプスの公式写真家フェリックス・ヴェルクのフォトギャラリーである。ヴェルクは20年にわたり、レース前に選手たちが公式ウイングとスポンサーキットを身につけ、山岳地帯で「ヒーローショット」を撮影してきた。しかし近年、メディア報道の中心はソーシャルメディアの即時性に移り、ライブまたはニアライブの体験が重視されるようになった。ヴェルクの写真は、そうした流れの中で「失われつつある芸術」への嘆きとも取れる。
エドは、X-アルプスがソーシャルメディアの「情報の回転率(churn)」に焦点を当てすぎた結果、冒険の核心と魂を失いつつあると指摘する。ヴェルクの手法は、タンデムパッセンジャーとして空中に上がり、他のパイロットを配置し、常に風景を観察しながら「魂と冒険」を捉えるというものだ。彼は望遠レンズを使い、パイロットとコミュニケーションを取りながら完璧な位置を探す。その困難さは、2011年か2013年のX-アルプスで、ドロミテ山脈でSDカードを落とし、奇跡的に後で見つけたという逸話からも窺える。
ヴェルク自身の言葉が最も雄弁だ。「私たちは、現実を忠実に再現する焦点距離の写真を専門としている。これは、寒冷地で機能しないか、光学的に歪んだ広角ショットしか持ち帰れない360度アクションカムの普及によって生じた大きなギャップを埋めるものだ」。エドはこの発言を「まるでヴィニールレコードの話をしているようだ」と評し、デジタル全盛期におけるアナログ的価値の再評価という文脈に位置づけた。
新世界王者バティスト・ランベールとコンスタンス・メッタタル
クープ・イカールの会場で、ターキンは新世界王者バティスト・ランベールにインタビューした。驚くべきことに、ランベールはオゾンのブースでハーネスを販売しながら働いており、インタビューの時間を確保できたのは昼休みの1時間だけだった。フランスは競技パラグライディングの頂点に立ち、フォント=ロメウ(ピレネー山脈のスポーツ学校)では16歳からパラグライディングを専門的に学べるシステムを持つ。コンスタンス・メッタタルはこの学校の出身だが、ランベールの経歴は全く異なる。
ランベールはホームスクーリングで育ち、両親とともにバンで旅をしながら、最終的にインド洋のレユニオン島に定住した。18歳まではカイトサーフィンの強豪選手で、両親も姉もパラグライダーを飛ばす環境だった。フランス本土に戻り数学を学んだ後、競技の世界に入り才能を開花させた。インタビューで最も印象的だったのは、彼のメンタルトレーニングの哲学だ。シーズン中の手の負傷で飛行できない期間に、オンラインでスポーツ心理学者とセッションを行い、「スクエアブリージング(4秒吸って、4秒止めて、4秒吐いて、4秒止める)」などの呼吸法を習得した。彼の目標は、競技中に「ジャガイモ(a potato)」になることだ。感情的な決断を一切排除し、数学的・論理的に自動操縦で飛ぶ。例えば、集団(gaggle)の中で圧迫感を感じて「もう行こう」と決断するのは感情的判断だが、ジャガイモとして呼吸法を続け、最適な瞬間にのみ行動する。
コンスタンス・メッタタルは、一貫性(consistency)を最大の強みとする。昨年の欧州選手権では、女子全タスクで勝利し、スポンサーから8〜9足のトレーニングシューズを獲得したというエピソードが彼女の安定感を物語る。
若きパラモーター世界王者アンドレア・チェケット
クープ・イカールでは、もう一人の世界王者にも出会った。イタリアのパラモーター世界王者アンドレア・チェケット(21歳)だ。彼は宿を探してターキンとエドの部屋のドアを叩いたという。「他のスポーツで、世界王者がジャーナリストの部屋に『寝る場所はあるか』と尋ねることがあるだろうか」とターキンは笑う。
チェケットの父親はパラモーターメーカーMiniplaneの経営者で、アンドレアは2歳の頃からパラモーターギアに囲まれて育った。ターキンは幼児がパラモーターの環境にいることへの懸念を口にしたが、チェケットは指をすべて無傷で持っているという。彼はパラグライダー競技でもSRS(おそらくスーパーファイナル)で16位に入る実力者で、パラモーター競技に参戦してわずか数年で世界王者になった。エドは「最近のチャンピオンは、10歳で父親と初タンデムを経験し、11〜12歳でグランドハンドリングを始めている」と、早期からの専門教育の重要性を指摘した。
ブラジル世界選手権の悲劇と安全改革の行方
このエピソードの最も重いテーマは、ブラジル世界選手権でのブラム・デ・クレルクの死亡事故と、その後の業界の対応である。事故は第6タスクのゴール着陸時に発生し、ブラムはヘリコプターで1時間以内に病院に搬送されたが、1週間後に死亡した。
問題は事故後の対応にあった。主催者とCIVL(国際自由飛行委員会)からの情報発信が不足し、フランスチームが主導してソーシャルメディア上で「なぜパイロットに情報が伝えられないのか」「なぜ安全について話し合えないのか」と問いかけるキャンペーンが展開された。エドは、このような事態は初めてではないと指摘する。10年前、ピエドラヒータ(コロンビア)の世界選手権では、2ラインウイングへの移行期に1日で2件の死亡事故が発生し、大会が中止された。その結果、より安全なCCCクラスのウイングが開発された。さらに1990年代後半には、ロブ・ホイットルがシリアルクラス(EN-C相当の統一クラス)の導入を主導した歴史がある。
事故から8週間が経過した時点での進展は限定的だった。FAI(国際航空連盟)はカテゴリー1競技の一時停止を発表したが、次のカテゴリー1競技は5月であり、実質的な効果は疑問視されている。PWC(パラグライダーワールドカップ)は安全対策の見直しを進めており、2月のインド大会の開催が医療体制の観点から不透明になっている。CIVLはパイロット連絡官としてアメリカのビオレタ・ヒメネスを任命し、フランスチームリーダーのフリアン・ガルシアが新たなパイロット組合を設立した。
エドは、FAIのヘルシンキ総会で「危機コミュニケーション」について講演した経験を共有する。彼の主張は「危機が発生してからプロトコルを発明しようとしても失敗する。コミュニケーションは会計やウェブデザインと同じで、事前に考えておくべきものだ」というものだった。CIVLのビル・ヒューズ会長との会話で印象的だったのは、組織の運営がほぼ完全にボランティアに依存しているという事実だ。ヒューズは事故以来、CIVLの仕事にフルタイムで従事しているという。エドはまた、ある競技パイロットとの「ばかげた会話」を紹介する。「若い頃は、あのレベルで飛ぶためなら何でもした。もしスポーツ中に死んでも構わない」という発言に対し、エドは「それはあなたにとっては構わなくても、サンドイッチを詰めてくれた人、バスの運転手、チームメイト、チームリーダー、家族にとっては構うんだ」と反論した。競技はパイロットだけで成り立っているわけではなく、エコシステム全体の安全が求められる。
クープ・イカールの新製品:EN-Aプラス、パラカイト、サブライトハーネス
クープ・イカールは、フランスのアヌシー近郊で開催される年次の自由飛行フェスティバルで、メーカーの見本市であると同時に、一般公開のショー、仮装パレード、曲技飛行のデモンストレーションが行われる。エドは「毎年2万ユーロ(約320万円)の借金をして帰ってくる」と冗談を言うほど、魅力的な新製品が並ぶ。
エドが注目したのは、Gin Bandit 2だ。これはEN-Bクラスの軽量ウイングで、メーカー各社が「EN-Aプラス」と呼びたくなるような高性能EN-Aウイングを投入している流れの一環だ。これらのウイングはスクールを卒業したばかりのパイロットが最初の100時間を安全に過ごし、サーマルやクロスカントリーを学ぶために設計されている。EN-Aの利点は「頭の余裕(headspace)」を完全に解放することだ。発進、着陸、空中でのウイング操作を意識する必要がなく、目の前の空気の動きの解釈に集中できる。エド自身、イギリスの平坦地でEN-Aウイングで100kmを飛行した経験がある。
パラカイト(parakite)の話題も白熱した。オゾンは3機種(初心者用、中級者用、上級者用)のパラカイトシリーズを投入するが、単に製品を売るのではなく、教育パッケージ(ビデオやカリキュラム)を同時に提供する方針だ。パラカイトは3年前から普及が進み、海岸の砂丘では従来のパラグライダーよりパラカイトの方が多い場所もある。しかし、ENシステムのような公式の安全基準が存在せず、メーカーのコミュニケーションとパイロット自身の責任ある選択に依存している。さらに深刻な問題は、カイトサーフィン界から流入したパイロットが航空ルール(左右どちらに旋回するか、高度の優先順位など)を理解していないことだ。パラカイトは上下方向の動きが大きいため、従来のパラグライダーパイロットにとっては予測不能な動きに見える。異なるディシプリンの共存方法が、業界全体の課題となっている。
グラント・クロッシンガムの教訓:ハンググライダーとパラグライダーの相互学習
ターキンは、10回の英国ハンググライダーチャンピオンであるグラント・クロッシンガムへのインタビューから得た洞察を共有する。クロッシンガムは現在パラグライダーも飛ばしており、ターキンは彼がローエンドのEN-Bウイングで直立ハーネスでサーマルを粘り強く使い続ける姿に感銘を受けたという。
クロッシンガムがハンググライダーからパラグライダーに持ち込んだ教訓は「粘り強さ(persistence)」だ。ハンググライダーは着陸に細心の注意が必要だが、パラグライダーはほとんどどこにでも着陸できる。この自由度が「頭の余裕」を生み、サーマルをより長く、より深く追求することを可能にする。「すぐに諦めて逃げるのではなく、粘り続ける。それがこのスポーツのモットーだ」とターキンは語る。
逆に、パラグライダーからハンググライダーに持ち帰った教訓もあるが、詳細は今後の記事に譲られた。
サブライトハーネスと軽量ヘルメットの未来
クープ・イカールで注目されたもう一つのトレンドは、サブライト(sublight)スタイルのハーネスだ。これはX-アルプスで使用されるような、カットダウンされた高性能・軽量の「潜水艦型」ハーネスで、多くのメーカーが参入している。世界王者バティスト・ランベール自身がハーネス設計に携わっており、彼は「これは避けられない流れだ。よりシンプルで、着脱が容易で、離陸後の操作性も優れている。近い将来、すべてのレベルのパイロットがこのタイプのハーネスを飛ばすことになる」と断言する。週末パイロット向けに背面保護を強化したバージョンも開発中だ。
もう一つの注目製品は、Ginの軽量ヘルメットだ。多くのハイク&フライパイロットが登山用ヘルメットを使用しているが、登山用ヘルメットは落石からの頭上衝撃には対応していても、側面衝撃には対応していない。パラグライディング用の安全基準はEN966で、Ginの新製品は400グラム未満でありながらこの認証を取得した。エドは「一般的に400グラム未満のヘルメットは役に立たないと言われてきたが、それを覆す製品だ」と評価する。
まとめ
このエピソードは、パラグライディングというスポーツが直面する複雑な現実を、現場の視点から描き出した。スコットランドの大自然が提供する冒険の可能性、写真芸術の価値、新世代チャンピオンのメンタルトレーニング、そしてブラジルの悲劇が引き金となった安全改革の動き。これらのテーマは、一見バラバラに見えて、実は「リスクと向き合い、それを管理しながら、より深い体験を追求する」というスポーツの本質でつながっている。エドとターキンの軽妙な掛け合いの背後には、安全と冒険のバランスを真剣に模索する業界の姿がある。特に、CIVLのボランティアベースの運営と、ソーシャルメディアが加速する批判の間のギャップは、今後の競技運営の大きな課題として印象に残る。
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