
The Paragliding Podcast, エピソード4
- パラグライディングポッドキャスト エピソード4:春のテストフライト、100km×100回の挑戦、そして記録を巡るハンググライダーとパラグライダーの攻防 春の訪れととも...
- [0:00] ペルヴー・テストヴァル:春のエクランで飛ぶ タルクィンはまず、予定していたキューバ遠征が地政学的な理由で中止になった経緯を語る。アメリカ人ガイドのクリス...
- そんな中、タルクィンはチームメイトのチャーリーとマーカスとともに、フランス・エクラン山塊のヴァロワ=ペルヴーで開催されたテストヴァルに参加した。エクラン山塊はアヌシー...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The Paragliding Podcast By Cross Country Magazine / Cross Country magazine
- アドバンス・シータULSとジン・バンディット2は同じミッドEN-Bクラスだが、パイロットの経験値によって評価が真逆になる。ベテランはシータのスポーティさを好み、中級者はバンディット2の安心感を評価した。
- アリエル・ズラトコフスキーは年間100回の100kmフライトを達成したが、その代償として家族行事の欠席、3機のグライダー全損、鉄塔衝突事故による入院など、精神的・物理的に大きな代償を払った。
- ファーディ・フォーゲルのマスタークラスでは、サーマルを「ハチミツ」ではなく「結露の水滴」としてイメージすること、地形を「三角形」として視覚化することを推奨している。
- アイスランドのパラモーター写真集は、印刷ページならではのディテール(写真内に3枚目のウイングが隠れているなど)が新たな発見をもたらした。
- ケリオ・バレーではタンデムパラグライダーとハンググライダーの両方で世界記録が更新された。
- ハンググライダーパイロットのジェレミー・ソーパーは、パラグライダーに記録で迫られる現状を「存亡の危機」と表現し、自らを記録防衛の一人部隊と位置づけている。
- クロスカントリーマガジンの読者は非常に知識レベルが高く、過半数が100km以上のフライト経験を持つ。
- 次号ではミッドEN-B特集とパイロット用アイウェアの深掘り記事が予定されており、最新テクニック集『101 Ways to Fly Better』は予約販売で1,000部を突破した。
パラグライディングポッドキャスト エピソード4:春のテストフライト、100km×100回の挑戦、そして記録を巡るハンググライダーとパラグライダーの攻防
春の訪れとともに、パラグライダー界では新たなシーズンが幕を開けた。本エピソードでは、クロスカントリーマガジンの編集者タルクィン・クーパーとエド・ユーイングが、フランス・エクラン山塊のペルヴー・テストヴァルで実際に飛ばした最新EN-Bクラスのウイングのインプレッション、アリエル・ズラトコフスキーによる「年間100回の100kmフライト」という前代未聞の挑戦の光と影、そしてアイスランドでのパラモーター撮影紀行やケリオ・バレーでの記録ラッシュなど、クロスカントリーマガジン最新号(264号)の見どころを縦横無尽に語り合う。会話は、機材のインプレッションから人間ドラマ、競技としての未来まで、実に多層的で深い。
ペルヴー・テストヴァル:春のエクランで飛ぶ
タルクィンはまず、予定していたキューバ遠征が地政学的な理由で中止になった経緯を語る。アメリカ人ガイドのクリス・ガルシアが率いる「Convergence Paragliding」というツアー会社との渡航だったが、欧州勢は軒並み渡航を断念したという。「今、旅行を計画している人はみんな『世界情勢次第』って言ってるよね」とタルクィンは苦笑する。ダミアン・ラカーズもパキスタン遠征を計画しているが、やはり状況次第だと話していたそうだ。
そんな中、タルクィンはチームメイトのチャーリーとマーカスとともに、フランス・エクラン山塊のヴァロワ=ペルヴーで開催されたテストヴァルに参加した。エクラン山塊はアヌシーやジュネーヴの南西に位置し、バール・デ・エクランやラ・メイジュなどの名峰を擁する、アルプスの中でも特に荒々しく手つかずの地域として知られる。春先のエクランは「強くてパンチがある」という評判だが、今年はサハラ砂漠からの砂塵が大気中に漂い、それがかえってサーマルをソフトにし、テストフライトには好条件だったとタルクィンは説明する。「普段なら6〜7m/sのサーマルが出るところが、砂塵で減衰されて、冬の間ほとんど飛んでいなかった僕たちにはちょうど良かったんだ」。
テストヴァルの運営は、スキーリゾートのチェアリフトを利用する形で行われ、1日あたり約125人の参加者が集まった。メーカー各社はフランスのディーラーが代理で参加しており、実際のメーカー担当者は来ていないという。
ウイング比較:アドバンス・シータULS vs ジン・バンディット2
タルクィンはまずBGDの「エナ」(ハイク&フライ向けのEN-Aウイング)を試した後、アドバンス「シータULS」とジン「バンディット2」という2機のミッドEN-Bウイングを乗り比べた。ここで興味深いのは、超ベテランパイロットのマーカスとタルクィンで全く逆の印象を持った点だ。
マーカスは普段EN-Cや2ライナーを飛ばしているが、シータを「非常にレスポンシブでスポーティ、しかもCからBに下げた分の安心感もある」と高く評価した。一方バンディット2については「反応がソフトすぎて、ピッチがなく、コントロールしている感覚が薄い」とやや不満だった。
対照的に、比較的経験の浅いタルクィンはバンディット2を絶賛する。「とにかく快適で、自信が持てた。すごく安心感があった」。シータについては「少しピクピクしてスポーティすぎる。ブレーキを少し強く引いただけでスパイラルに入りかけた」と述べ、ウイングの性格がパイロットの技量や好みによっていかに異なる評価を受けるかを如実に示した。
ただしタルクィンは、シータを飛ばしたのは午前中でサーマルがまだ弱く、30分ほどスクラッチ(低空でのサーマル探し)に苦労したのに対し、バンディット2を飛ばした午後はコンディションが最高で、マーカスにリードされてエクランの3,000m級の山々を縦横無尽に飛ぶという夢のようなフライトができたことも認めている。「着陸したときは人生で一番の笑顔だったよ」。
エドはこのミッドEN-B市場の盛り上がりを指摘する。オゾンの新型「ヴァイブGT」、ニヴィークの「ヒコ」など、各メーカーがこのクラスに新製品を投入している。次号ではバスティアン・ウェンツェルがミッドEN-Bの大特集を執筆中だという。また今号(264号)ではEN-Cクラスの特集も組まれており、マーカス・キングが「スタンダードEN-C」と「スポーツクラスEN-C(ハイEN-C)」の違いや、それぞれに必要なスキルについて詳しく解説している。
アリエル・ズラトコフスキーの挑戦:年間100回の100kmフライト
エドが「今号で最も力を入れた記事」と語るのが、アリエル・ズラトコフスキーの7,000ワードに及ぶ長編ストーリーだ。彼は2024年10月、XCコンテスト(オンラインのフライト記録プラットフォーム)上で「12ヶ月間に100回の100kmフライトを達成する」という目標を自らに課した。
一見すると華やかな挑戦だが、エドは「これはむしろ戒めの物語だ」と強調する。アリエルはスイスで2週間も雨に閉じ込められ、家族の行事をすべて欠席し、アメリカに帰ることもできなくなった。200km飛べる好条件の日でも、翌日も飛ばなければならないため、わざと120kmで止めるという矛盾を抱えた。悪天候の日には自分だけが飛びに出かけ、結果的に危険な状況に身を置くこともあった。
最も衝撃的なエピソードは、送電線の鉄塔に衝突した事故だ。「飛び越えられるだろう」と安易に判断してテイクオフしたが、高度が足りずに激突。ハーネスとグライダーは全損し、入院した。それでも数日後には再び飛んでいたという。この挑戦で彼は3機のグライダーを使い潰し、総飛行時間は800時間を超えた。
しかし、すべてが悲惨だったわけではない。インドのビール(ビリン)では37回もの100kmフライトを達成。中でも特筆すべきは、一度も360度旋回をせずに100kmのアウト&リターンを達成したフライトだ。山の尾根に沿ってソアリングしながら50km進み、そのまま反転して戻ってきたという。「彼はスプレッドシートと統計が大好きなんだ」とエドは笑う。
エドはこの物語の教訓をこう総括する。「私たちの社会は大きなプロジェクトを掲げて達成する人を称賛する。でもこのケースでは、彼のプロジェクトが彼自身の牢獄になってしまった。楽しさが完全に消え去ってしまったんだ」。
ファーディ・フォーゲルのマスタークラス:三角形と水滴の理論
100kmフライトを一度でいいから達成したいというパイロットのために、今号ではNOVA社のCEOでありXCコーチでもあるファーディ・フォーゲルのマスタークラスが掲載されている。彼の理論で特に興味深いのが2つある。
一つ目は「三角形理論」。地形を三角形として視覚化するというものだ。尾根や樹木のラインが作る三角形の頂点こそがサーマルが発生するポイントだと考える。アルプスの谷を飛ぶとき、この三角形を見つける訓練をすることで、サーマルの位置を予測しやすくなる。
二つ目は、サーマルのイメージを「ハチミツ」ではなく「結露の水滴」として捉えるというもの。従来、サーマルをハチミツのように粘り気のあるものとしてイメージする指導が行われてきたが、フォーゲルは「テントの内側にできる結露の水滴のように、水が沸騰して泡立つイメージの方が正確だ」と主張する。
エドはこの「水の比喩」が他のトップパイロットにも共通することを指摘する。クリューゲル・マウラーも若い頃に「空気の流れを水のようにイメージする」ことを学んでから全てが変わったと言い、ファビ・ブールも谷風や気流の理解に苦しんでいた時、先輩パイロットに川に連れて行かれ、「水が岩の上をどう流れるか、どこで渦を巻くか、どこで速くなるかを観察しろ」と教えられたという。「川辺に座って水の流れを観察すれば、気象学のジェダイマスターになれるんだ」とタルクィンは締めくくった。
アイスランド:パラモーターで巡る北欧神話の大地
写真家・映像作家のライアン・サウスウェルによるアイスランドのパラモーターガイドツアーのフォトストーリーは、今号のハイライトの一つだ。アイスランドは北欧神話の神々が住む土地であり、ヴァトナヨークトル氷河などの発音困難な火山群、オーロラ、そして「ゲーム・オブ・スローンズ」のロケ地としても知られる。
タルクィンは過去のアイスランド訪問経験を語る。ポニートレッキングで島を横断し、ユーラシアプレートとアメリカプレートの間の割れ目でダイビングも体験した。「エビアンのミネラルウォーターの中で泳いでいるみたいに透明度が高いんだ。冷たいけどね」。また、かつて取材したパイロットがアイスランドで飛行中に地震に遭遇した話も紹介する。「高度300mから地震を感じたと言っていた。グライダーとラインを通じて地面の振動が伝わってきたんだ。想像もつかない体験だよ」。
エドは印刷ページならではの発見もあったと付け加える。「デジタル画面では見逃していたけど、印刷された写真の中に3枚目のウイングが写っているのをタルクィンが見つけたんだ」。
ケリオ・バレー:記録ラッシュとハンググライダーの危機感
ケニアのケリオ・バレーは、毎年1月から2月にかけてアウト&リターンフライトの記録が狙える名所だ。今年は特に記録が集中した。
フランス人のティティ・マケと妻ブランディーヌは、自作のタンデムポッドハーネス(ただしグライダーはスイフトマックス2)を使用し、タンデムパラグライダーのアウト&リターン世界記録を更新した。昨年に続き2年連続の快挙だ。
そしてハンググライダーパイロットのジェレミー・ソーパーは、363kmのアウト&リターンでハンググライダー世界記録を樹立。エドが彼にインタビューしたところ、ソーパーは「ハンググライダーはパラグライダーより高性能なはずなのに、その差が記録に反映されていないのは、新しくこのスポーツを始めようとする人にとって魅力に欠ける」と語った。パラグライダーのアウト&バック記録(チリで記録された350km)とわずか15km差である現状を「ハンググライダーにとっては存亡の危機」と表現し、「記録をハンググライダーの手に残すことが自分の使命だ」と宣言した。
ただし、ソーパーは友好的なライバル関係であることも強調している。「ハンググライダーパイロットは少ないから、普段はパラグライダーパイロットと一緒に飛んでいる。今年のケリオでもハンググライダーは僕だけだった」。彼のグライダーは現在ケニアに置き去りになっており(送った業者が片道配送だったため)、来年また戻る理由ができたと笑う。
エドは補足として、ハンググライダーのオープン距離記録は745km、パラグライダーは605kmとまだ差があるが、三角形記録はほぼ並ばれていることを指摘する。
次号予告と読者調査
次号ではミッドEN-Bの大特集に加え、サングラスに関する深掘り記事が予定されている。エドは「サングラスについて知っていると思っていたことは全部間違っていた」と語り、パイロット用アイウェアの選び方について徹底的に調査した結果を共有すると述べた。
また、クロスカントリーマガジンの読者調査の結果も紹介された。読者の過半数が100km以上のフライト経験を持ち、20%は200km以上を経験。大半がハイBまたはCクラスのグライダーを操る、非常に知識レベルの高い層であることが判明した。「間違ったことを書くとすぐに指摘が来るんだ」とエドは苦笑する。
さらに、ブルース・ゴールドスミス、グレッグ・ハマートン、テオ・デ・ブリックらが寄稿した最新テクニック集『101 Ways to Fly Better』(2026年版)は、予約販売だけで1,000部を突破したという。
まとめ
このエピソードは、パラグライダーというスポーツの多面性を余すところなく伝えている。最新機材のインプレッションから、人間の限界に挑む壮絶な物語、記録を巡る競技間の緊張関係、そして美しい風景の中でのフライトの歓びまで。特にアリエル・ズラトコフスキーの物語は、「目標を達成すること」と「楽しむこと」のバランスについて深い問いを投げかける。また、ハンググライダーとパラグライダーの記録競争は、技術の進化がスポーツのアイデンティティにどう影響するかを考えさせる好例だ。シーズン開幕を前に、飛ぶことの本質的な喜びと、それを追求する際の賢明な判断の重要性を改めて認識させてくれる内容だった。
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