motpod
RiskReversal Pod · 2026年5月14日

Michael Green: パッシブ投資はルビコン川を渡ったか? | On The Tape

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • マイケル・グリーン:パッシブ投資はルビコン川を渡ったのか?
  • 本エピソードでは、リスクリバーサル・ポッドのダン・ネイサンと「オン・ザ・テープ」のダニー・モーゼスが、シンプリファイ・アセット・マネジメントのチーフ・マーケット・ストラテ...
  • [12:31] 市場最高値の謎——戦争と原油高を無視するメカニズム グリーンは、米国株がイランとの戦争や原油価格高騰という明らかなリスクを抱えながら史上最高値を更新した現...
こんな人向け

英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

RiskReversal Pod / RiskReversal Media

Read
Open episodeFind more episodes

マイケル・グリーン:パッシブ投資はルビコン川を渡ったのか?

本エピソードでは、リスクリバーサル・ポッドのダン・ネイサンと「オン・ザ・テープ」のダニー・モーゼスが、シンプリファイ・アセット・マネジメントのチーフ・マーケット・ストラテジスト兼ポートフォリオ・マネージャーであるマイケル・グリーンを迎え、パッシブ投資の支配が市場構造を根本から変えている現状を深掘りする。イラン戦争や原油高騰にもかかわらず米国株が史上最高値を更新した背景には、401(k)からの継続的な資金流入とボラティリティ/トレンド追従型アルゴリズムが過去最大の資金流入を生み出した構造があるとグリーンは主張する。さらに、ナスダックとS&Pが進める指数組み入れルールの変更は、質の高い指数という歴史的価値を損ない、プライベートエクイティの出口戦略と化す危険性をはらんでおり、パッシブ投資の「ルビコン川」を渡る決定的な瞬間かもしれないと警鐘を鳴らす。

12:31市場最高値の謎——戦争と原油高を無視するメカニズム

グリーンは、米国株がイランとの戦争や原油価格高騰という明らかなリスクを抱えながら史上最高値を更新した現象について、投資家が単に「現実を直視していない」という説明では不十分だと指摘する。むしろ、大多数の投資家はそもそも「気にしていない」というのが実態だ。その理由は、401(k)からの定期的な拠出金と、トレンドフォローやボラティリティ・コントロール戦略といったシステム運用アルゴリズムが、2025年2月から3月にかけての市場混乱に対応して4月に大規模なリバランスを実行したことにある。このリバランスは、システム運用と401(k)拠出の組み合わせとしては「金融市場史上最大の資金流入」を記録し、それが新たな最高値を押し上げたのだ。

重要なのは、これらの資本を管理するアルゴリズムには「戦争があるかどうか」「原油価格が消費者を脅かしているかどうか」を判断するメカニズムが存在しないという点だ。アクティブな裁量運用マネージャーの声が市場から失われるにつれて、そうした懸念は実際にフローとして現れるまで市場に影響を与えなくなっている。つまり、人間の判断が排除されたシステムが、地政学的リスクを無視して機械的に買いを入れ続ける構造が出来上がっているのだ。

13:56ボラティリティの逆説——恐怖はすでに織り込み済みだった

市場のボラティリティとパッシブ投資の関係について、グリーンは重要な逆説を提示する。3月の安値に達した時点で、VIXは異常に高い水準にあり、 implied correlation(インプライド・コリレーション)——恐怖のより正確な指標——も急上昇していた。市場はすでに「クラッシュしたかのように」振る舞っていたのだ。しかし、実際の暴落は実現しなかった。その理由の一つは、多くの投資家がショートポジションを積み上げていたため、ショートカバーが発生したこと。また、ポートフォリオの大規模なリバランスが行われ、ソフトウェアなどの先行セクターはすでにイベント前に大幅に売り込まれていた。

さらに、多くの投資家がプロテクション(保護的なオプション)を大量に購入していた。恐怖が現実化しなかったことで資金が市場に戻り始めると、そのプロテクションをカバーする必要が生じ、VIXと相関指標が記録的なペースで低下した。これが、市場が「7銘柄とその他493銘柄」という二極化した状態に戻った背景だ。つまり、パッシブフローが市場を押し上げ、その結果としてボラティリティが低下するという因果関係が存在する。従来の「ボラティリティが下がれば市場が上がる」という順序とは逆のメカニズムが働いているのだ。

16:06ナスダックのルール変更——「SPAC化」する指数

グリーンが以前から警告してきたナスダックの新ルールが、2025年5月1日に発効した。このルールは、大型企業が低浮動株(low float)のままでもナスダック100に組み入れられるようにするもので、グリーンはこれを「QSのSPAC化」と呼ぶ。具体的には、発行済み株式の10%しか公開しない企業に対して、従来の10%ではなく50%のウェイトを適用するという5倍の乗数(マルチプライヤー)をかける仕組みだ(最終的には3倍に調整された)。

このルール変更の背景には、IPO市場の崩壊がある。アクティブマネージャーが新規上場企業をアンダーライト(引き受ける)能力を失ったことで、伝統的なIPOは過去10年にわたって「ほぼ不可能」な状態が続いている。プライベートエクイティやベンチャーキャピタルは、企業を長く保有できることをメリットとして宣伝してきたが、実際には出口戦略を失っていたのだ。

グリーンは、このルール変更が2020〜21年のSPACブームと同じメカニズムを再利用していると指摘する。当時、SPACが買収企業を特定した後、5日間で指数に組み入れられる「ファストトラック」制度があった。指数連動型の大型ファンドが買い手として殺到する一方、インサイダーは20日間売却できないため、ニコラやヴァージン・ギャラクティックのような株価の垂直的な上昇が発生した。この制度は2022年9月に廃止され、SPAC市場は事実上消滅した。今回のナスダックのルール変更は、同じ構図を再現するものだ。

グリーンの試算では、スペースXのIPOを例にとると、指数ファンドの需要が実際に公開される株式数の2倍に達する可能性がある。これはIPOの成功を強力に支援するが、長期的には企業が指数内で過大評価されるリスクを生む。さらに、マスク氏のように超議決権を持つ二重株式構造を維持したまま上場できるため、支配権を放棄する必要もない。

23:10S&Pの「インシット化」——収益性要件の撤廃がもたらすもの

グリーンがより深刻だと見るのは、S&P500のルール変更だ。S&Pは歴史的に、指数組み入れに「5四半期連続の黒字と直近1年間の通期黒字」という収益性要件を課してきた。これがS&P500に「質的バイアス」(quality bias)を与え、他の指数との差別化要因となっていた。しかし、S&Pはこの要件を撤廃する提案を行っている。

これが実現すると、高レバレッジの企業や事業が成熟していない企業でも、単に時価総額が大きいという理由で指数に組み入れられるようになる。グリーンはこれを「指数のインシット化」(inshitification)と呼び、プライベートエクイティが保有する大型企業を合併させてS&P500に組み入れ、出口戦略として利用する「ダンピンググラウンド」化する危険性を警告する。彼は架空の例として、50億ドル規模の3社を合併してS&P500入りを目指すシナリオを挙げ、これは「ラバーン&シャーリー」のテーマソングに出てくる架空の企業でさえ可能になるという皮肉を込めた。

この変化の本質は、アクティブマネージャーが持つ受託者責任(fiduciary duty)を、指数が回避している点にある。伝統的な資産運用会社は1940年法の下で受益者に対する受託者責任を負うが、指数にはその義務がない。ルール変更は、この「受託者責任の欠如」を利用して新規上場を促進し、興奮を生み出そうとするものだ。結果として、S&P500はラッセル2000のように、GAAPベースの利益が10年以上成長していない指数に近づくことになる。グリーンはこれを「GFC(世界金融危機)の時、S&PがすべてにAAA評価を与えたのと同じ構図」と断じる。

27:29連邦準備制度——物語の背後にある現実

グリーンはFRBの重要性について、一般的な認識よりもはるかに限定的だと主張する。FRBが本当に重要になるのは、金利の大幅な変更があった時だけだ。2021年から23年にかけての500ベーシスポイントの利上げは確かに経済に影響を与えているが、それ以外の局面ではFRBは「サイドショー」に過ぎない。

彼がパウエルFRBを批判するのは、その「データ依存」(data dependence)の姿勢だ。データ依存とは、文字通り「過去に何が起きたか」に基づいて政策を決定することを意味する。グリーンスパン元議長が箱車の積載量や段ボールの出荷といった先見的な指標を重視したのとは対照的に、パウエルは「バックミラーで運転している」に等しい。これが2021年のインフレ対応の遅れや、22〜23年の過剰な利上げを招き、住宅市場や消費者耐久財に長期的なダメージを与えた。

パウエルが議長を退任し、理事として残留する選択をしたことについて、グリーンは皮肉な見方を示す。パウエルは「新議長を支援しつつ、研究の質を維持する」と述べたが、これは実質的に「新議長にブレーキをかける」シグナルだ。結果としてFRBはさらに政治化されたとグリーンは評価する。

現在のインフレ状況について、グリーンは市場のシグナルに注目する。1年先の1年物インフレ・スワップや5年先の5年物インフレ・スワップ、実質金利といった指標は、歴史的な2%目標をわずかに上回る程度で、「ブレイクアウト」の兆候は見られない。むしろ、グリーンはFRBが直面する「罠」を指摘する。政府債務がGDP比で100%近い環境では、高金利は政府から家計への「財政移転」(fiscal transfer)として機能する。高金利は資産を持つ高齢者層に利子収入をもたらし、彼らの消費を支える。一方、低所得層は打撃を受ける。つまり、FRBが利下げをすれば消費の源泉を断ち、利上げをすれば資産家に所得を移転するというジレンマに陥っているのだ。

34:22債券パッシブの歪み——イールドカーブ・コントロールへの道

グリーンが最も深く誤解されていると指摘するのが、債券市場におけるパッシブ投資の影響だ。パッシブ債券指数は株式指数と同様に時価総額加重方式を採用している。単純化した例で考えよう。2年債と30年債の2つだけが存在する世界で、FRBが利上げを行う。デュレーションの短い2年債はほとんど値下がりしないが、30年債は大きく下落する。これにより時価総額のウェイトが変化し、次の資金流入は30年債よりも2年債に多く配分される。

このメカニズムが、ヘッジファンドによる「トレジャリー・ベーシス・トレード」の拡大を促している。これは株式市場の指数裁定取引と同様のもので、より低コストで指数を複製しようとするものだ。グリーンによれば、現在の債券指数は長期クーポン債に対して約40%のアンダーウェイト状態にある。つまり、債券ファンドに資金が流入しても、そのほとんどが短期債に配分され、問題の多い超長期債は無視される構造だ。

グリーンは、財務省がこのメカニズムを認識しており、イエレン前財務長官とFRBが「額面以下で取引される債券を買い戻す」制度をすでに創設していると指摘する。彼の予測では、四半期定例の借り入れ計画(QRA)発表後、財務省とFRBが協調して「イールドカーブ・コントロール」に近い措置を取る可能性が高い。具体的には、50セントで取引されている長期債を買い戻し、パーで再発行することで、債券指数の時価総額ウェイトを正常化するというものだ。この「欠落した需要」は数兆ドル規模に達する可能性があり、長期金利の上昇を市場のシグナルと見なす従来の解釈は誤りだとグリーンは主張する。

40:52K字型経済とAI——高齢者を優遇する構造変化

原油高がK字型経済をさらに拡大させている現状について、グリーンは具体的なデータを提示する。低所得層では質屋の利用が急増しており、パンデミック中に蓄積した資産を現金化してガソリン代を捻出している。彼が以前執筆した「14万ドルの貧困線」という論文で指摘したように、公式統計上の貧困率は過去最低だが、59%の米国家計が予期せぬ1000ドルの出費に対応できない。原油高はまさにその「1000ドルの予期せぬ出費」に相当する。

AIの雇用への影響について、グリーンはスウェーデン中央銀行(リクスバンク)の注目すべき研究を紹介する。スウェーデンはFRBに先駆けて利上げを開始したため、雇用減少が利上げによるものかAIによるものかを識別する「自然実験」の場となった。結論として、雇用減少の大部分は利上げによるものだが、企業内部では重要な変化が起きている。55歳以上の高齢労働者の価値が急上昇しており、その採用は前年比84%増加している。彼らは「ドメイン固有の専門知識」を持ち、AIシステムの訓練に不可欠な存在となっているのだ。

一方、若年労働者の価値は不確実性が高まっている。伝統的には、高齢労働者が若年層を訓練し、やがて交代するというサイクルがあったが、現在は「55歳が機械を訓練している」状態だ。グリーンはこれを19世紀初頭の第2次産業革命に例える。熟練した職人が工場の治具や工具を作るために重用される一方、徒弟の市場は壊滅した。1837年の恐慌ではニューヨーク市の失業率が63%に達したという歴史的事実を挙げ、AIが同様の構造的ショックを生む可能性を示唆する。ただし、現代は労働力成長率が低いため、同じ極端な結果にはならないだろうと付け加える。

47:31ビットコイン——金融化の終着点

ビットコインについて、グリーンはその「金融化」がほぼ完了したと評価する。価格変動はブラックロックのETFへのフローと極めて高い相関を示しており、2025年にモデル・ポートフォリオへの組み入れが進んだが、その後のパフォーマンスは期待外れだった。現在はフローは穏やかで、限られた供給を考えると「緩やかにサポートされている」状態だ。

グリーンが最大の問題と見るのは、ビットコインの「効用価値」(utility value)がほぼ消滅した点だ。現在は純粋な投機資産に過ぎない。彼は、希少性(scarcity)は自動的に価値を生まないと主張する。金と比較すると、金の価格が上昇すれば採掘量が増えるという供給反応があるが、ビットコインにはそれがない。全採掘金の50%以上が過去50年間に採掘されたという事実は、この供給反応の重要性を示している。

さらに、量子コンピューティングへの移行がビットコインのセキュリティに脅威をもたらす可能性や、ビットコイン・マイナーの主要資産であった「安価な電力」がAIデータセンターにとってより価値の高いものになり、マイニングの収益性が限界に達している現状を指摘する。ハッシュレートの低下はこの収益性の悪化を反映している。グリーンは「希少性は投機と投機への報酬を生み出すことはできても、資本主義経済の中心通貨として機能することは決してできない」と結論づける。

まとめ

このエピソードが残す最大の印象は、パッシブ投資がもはや単なる投資手法ではなく、市場そのものを再定義する力を持っているという認識だ。マイケル・グリーンの分析は、401(k)の機械的な資金流入から指数のルール変更に至るまで、一貫した因果関係を示している。特に印象的なのは、S&Pが収益性要件を撤廃しようとしている事実だ。これは「質の高い指数」というS&P500のアイデンティティそのものを放棄する行為であり、GFC前の格付け機関の行動を想起させる。債券市場におけるパッシブの歪みや、AIが高齢労働者を優遇する構造変化など、グリーンの議論は市場の「見えない部分」に光を当てる。リスナーは、表面的な株価上昇の背後で進行している構造変革の深さを理解し、パッシブ投資がもたらす帰結について真剣に考えるきっかけを得るだろう。

要点

  • 2025年春の米国株最高値は、401(k)とシステム運用アルゴリズムによる「史上最大の資金流入」が機械的に押し上げたものであり、地政学的リスクを無視する構造が確立している
  • ナスダックの低浮動株乗数ルール(最大3倍)は、スペースXやOpenAIのような大型IPOを指数に組み入れるための仕組みであり、SPACブームと同じ「需要超過→価格急騰」の構図を再現する
  • S&P500の収益性要件撤廃提案は、指数の「質的バイアス」を放棄するもので、プライベートエクイティの出口戦略と化す危険性がある
  • FRBの「データ依存」姿勢は本質的に後ろ向きであり、2021年のインフレ対応の遅れや過剰利上げの原因となった
  • 高金利は政府から資産家への「財政移転」として機能し、FRBの利下げ・利上げの効果を反転させる罠を生んでいる
  • パッシブ債券指数は長期債を約40%アンダーウェイトしており、長期金利上昇は市場のシグナルではなく指数構築の歪みを反映している可能性が高い
  • AIの雇用影響は「高齢労働者の価値上昇(55歳以上採用84%増)と若年労働者の価値低下」という非対称な構造変化を生み、19世紀の産業革命期に類似する
  • ビットコインの金融化は完了し、現在は純粋な投機資産に過ぎない。供給反応の欠如は金との本質的な違いであり、通貨としての機能を永遠に果たせない