
イムラン・カーン:Nvidiaの計算が示す、これはバブルではない
- イムラン・カーン:NVIDIAの数字が示す「バブルではない」理由 AI投資はバブルなのか。元Snap幹部で、AlibabaやMercadoLibreのIPOを手掛けた...
- [0:00] AI投資サイクルとハイパースケーラーのジレンマ イムラン・カーンは、現在の市場を「AIコンピューティングへの顕著な需要」と「深刻な需給不均衡」が同時に存...
- しかし、投資家の目は厳しい。Microsoft、Google、Amazonといったハイパースケーラーの株価は、直近期間で約15%下落している。Microsoftに至っ...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
RiskReversal Pod / RiskReversal Media
- NVIDIAはPER16.5倍と市場平均を下回っており、これは市場が同社の利益の持続可能性に疑問を抱いている証拠だが、過去3年間、同社は一貫して予想を上回ってきた。
- ハイパースケーラーは大規模な投資サイクルに入ると株価がアンダーパフォームする傾向があるが、歴史的に見ればそれが最大の投資機会でもある。
- MetaはGAAPベースのPERでは割安だが、フリーキャッシュフローベースでは決して安くなく、ザッカーバーグの過剰な野心が投資家の懸念材料となっている。
- AI製品の成功には、技術の優位性よりもディストリビューション(流通力)が決定的に重要であり、Geminiの急成長とGrokの苦戦がその好例である。
- Micronに代表されるメモリ半導体は、データセンター顧客の長期契約により従来の循環性から脱却しつつあるが、それが構造的成長なのかはまだ確定していない。
- データセンター建設の遅延やエネルギー制約は短期的な実行リスクであり、AIへの長期的な需要構造を変えるものではない。
- AIによる構造的失業は歴史的に見て発生しておらず、雇用の役割が変化するだけで、新たな職種が創出される可能性が高い。
- SpaceXの2.5兆ドルの評価額の大部分は、激しい競争に直面する地上のクラウド事業に由来しており、宇宙事業としての評価と混同すべきではない。
イムラン・カーン:NVIDIAの数字が示す「バブルではない」理由
AI投資はバブルなのか。元Snap幹部で、AlibabaやMercadoLibreのIPOを手掛けた伝説のバンカー、イムラン・カーンが、リスクリバーサル・ポッドのダン・ネイサンを相手に、この問いに真正面から挑む。彼の主張は明確だ。現在のAIインフラ投資サイクルは、短期的な株価のアンダーパフォームを生んでいるが、歴史的に見ればそれが最大の投資機会であり、NVIDIAの株価収益率(PER)が市場平均を下回っているという事実こそが「バブル論」への最も強力な反証である。会話は、ハイパースケーラーの苦境からメモリ半導体の循環性vs成長性の議論、そしてSpaceXの評価額の内訳に至るまで、投資家が今まさに直面しているジレンマを深掘りする。
AI投資サイクルとハイパースケーラーのジレンマ
イムラン・カーンは、現在の市場を「AIコンピューティングへの顕著な需要」と「深刻な需給不均衡」が同時に存在する局面と定義する。新たな生産能力は投入されつつあるが、市場に本格的に供給されるまでには時間がかかり、その間、価格は上昇し続けている。これにより、関連企業の業績予想は大幅に上方修正されている。中東情勢や原油高にもかかわらず、消費者は強く、S&P500全体の業績も堅調だ。「健全な経済、大規模な設備投資サイクル、素晴らしいイノベーション。これらは通常、投資に適した時期です」と彼は語る。
しかし、投資家の目は厳しい。Microsoft、Google、Amazonといったハイパースケーラーの株価は、直近期間で約15%下落している。Microsoftに至っては、新高値を更新できない期間が長く続いている。ダン・ネイサンが指摘するように、Metaが発表した今年の設備投資額がアナリスト予想を大幅に上回ったことで株価は10%下落し、その流れは止まらなかった。
これに対しイムランは、過去25年の経験則を提示する。「企業が投資サイクルに入ると、株価はアンダーパフォームする傾向があります」。彼が2007年にIPOを手掛けたMercadoLibreも、投資サイクルのたびに株価は低迷した。しかし、歴史的に見れば、優良企業が投資サイクルにある時こそ、最大の投資機会でもある。「これらの企業は愚かではありません。ROIが見えなければ、長期間投資を続けたりしない」。彼の論理はこうだ。AIを信じるなら、ハイパースケーラーはROIを享受し、成長率は加速する。AIを信じないなら、過剰投資はやがて調整され、フリーキャッシュフローは爆発的に増加する。どちらに転んでも、中長期的にはリスク・リワードが魅力的なポジションだという。
ディストリビューションの力:Geminiが勝ち、Grokが負けた理由
技術の優位性と流通力(ディストリビューション)の関係について、イムランは鋭い分析を展開する。「テクノロジーそのものに過度に興奮する人もいますが、テクノロジーは重要ですが、同様に重要なのはディストリビューションです」。彼の主張は、既存のプラットフォームを持つハイパースケーラーは、AI製品が「10倍優れている」必要はないという点にある。製品が既存品より10倍優れていなければ、新規参入者は流通を獲得できず失敗する。しかし、ハイパースケーラーはすでに流通網を持っている。
この観点から、彼はGoogleのGeminiの成功を説明する。「私は技術の専門家ではありませんが、GeminiはおそらくAnthropicより劣っていて、ChatGPTと同程度でしょう。しかし、流通力があるため、驚くほどの速さで成長しました」。一方、xAIのGrokは、X(旧Twitter)の流通力ではGeminiに敵わず、普及に苦戦している。「ディストリビューションは本当に強力です。人々はそれを過小評価していると思います」。
この論理に従えば、Metaも強力なディストリビューションを持つはずだが、株価は冴えない。ダン・ネイサンは、「Meta AIを使っている人を知らない」と疑問を呈する。イムランは、Metaの株価低迷は単純に投資サイクルによるものだとしつつ、CEOのマーク・ザッカーバーグに対する特有の懸念を認める。「マーク・ザッカーバーグは信じられないほど野心的で、大きな賭けに出ます。メタバースでそれを学びました。その賭けが常に成功するとは限りません」。AIへの過剰投資が、ザッカーバーグの野心に駆られたものかどうか、投資家には確信が持てない。これが、投資サイクルによるアンダーパフォームに追加されたリスク要因だ。
Metaのバリュエーション:GAAPベースの安さとFCFの現実
Metaの株価は、今年の予想PERで17.5倍、来年で16倍と、市場平均を下回っている。80%の粗利益率を持ち、20%の増収増益が期待できる企業が、なぜこれほど低い評価なのか。ダン・ネイサンは「飛びつかない理由が分からない」と首をかしげる。
イムランは、ここで重要な視点を提示する。「GAAPベースのPERでは確かに安く見えますが、フリーキャッシュフロー(FCF)ベースで見ると、この株は決して安くありません」。多くの投資家は、Metaが巨額のFCFをインフラ構築に費やしている現状を問題視している。さらに、MetaやGoogleが社債発行を始めたことで、自社株買いが減少する可能性も懸念材料だ。「バリュエーションはあらゆる観点から見る必要があります。知的誠実さを失えば、それは単なるプロモーションに過ぎません」。
NVIDIAの5兆ドル問題:顧客が競合になる構造
NVIDIAは時価総額5兆ドルを超え、年間1000億ドルのFCFを生み出しながら、なぜ200億ドルの社債を発行するのか。ダン・ネイサンの素朴な疑問に対し、イムランは深い洞察で答える。
第一に、Appleの事例が示すように、時価総額が大きくなりすぎると、機関投資家のリスク管理制約により、株を買える投資家が限られる。その場合、自社株買いが有効な戦略となる。第二に、そしてより重要な点として、NVIDIAには「最大の顧客が同時に最大の競合でもある」という構造的問題がある。ジェンセン・ファン(NVIDIA CEO)が明示的に語らないが、同社はハイパースケーラー以外の顧客基盤を拡大することで、この依存構造から脱却しようとしている。直近の決算説明会では、ハイパースケーラー顧客と非ハイパースケーラー顧客の内訳が初めて開示された。「彼はエコシステム全体に資本を投じ、他のAIプレイヤーを育てているのです。5社の顧客(=競合)に依存しないために」。これは、Appleにはなかった課題であり、NVIDIAが自社株買いよりもエコシステム投資を優先する理由でもある。
さらにイムランは、NVIDIAのバリュエーションが「バブルではない」ことの証拠として、同社のPERが市場平均を下回っている点を挙げる。「市場は、NVIDIAの利益が持続可能ではないと見ているからこそ、あのような低いPERをつけているのです」。もしNASDQが2001年のように40-50%下落するとすれば、それは時価総額上位銘柄が同じだけ下落することを意味する。2021年にはNVIDIAも高値から70%下落した。しかし、現在のPERは当時とは全く異なる。「もし会計学者なら、市場は今後2-3年で利益が大幅に減少すると予想していると解釈するでしょう。しかし、人々は過去3年間ずっとそう言い続けてきましたが、NVIDIAは毎回予想を上回ってきました」。
MicronとHBM:循環株か成長株か、決着のつかない大論争
高帯域メモリ(HBM)は2027年末まで完売状態にあると言われる。Micronの株価は18ヶ月前には50ドルだったが、今やその数倍だ。しかし、イムランは「このビジネスは本当に変わったのか?」という本質的な問いを投げかける。
従来、メモリ企業は循環株として扱われ、PERではなくPBR(株価純資産倍率)で評価されてきた。1-2倍、良くて3倍が標準で、PBR1倍を下回れば買いとされた。現在のMicronはPBRがそれを大きく上回る一方、PERベースでは依然として割安に見える。「最大の疑問は、『今回は違うのか』ということです。これは循環的なものではなく、本当に構造的な成長なのか」。彼は、データセンター顧客は従来のスマホメーカーと違い、価格感応度が低く、長期契約を結ぶ傾向があると指摘する。これがビジネスの可視性を高め、PERでの評価を正当化する可能性がある。しかし、2020年にZoomがGoogleの時価総額の20%を占めたが、今は1%未満であることを例に挙げ、「誰も完璧な水晶玉を持っていない」と警告する。
「2028年や2029年でも年率10%の成長が続くなら、株は超割安です。しかし、歴史的にメモリ企業の利益はマイナスに転じます。もしそうなれば、PBRベースでは非常に割高です」。彼は、市場が現在「ボトルネック・トレード」を追いかけていると分析する。ウエハー(半導体基板)市場の拡大予測や、Dell、Ciscoといった旧来のIT企業の株価が急騰している現象は、その表れだ。「重要なのは、これらの企業の利益のうち、どれだけが長期的に持続可能なのかを見極めることです。四半期や2四半期の上方修正ではなく、利益の耐久性に注目すべき時が来ています」。
エネルギー制約とデータセンター遅延:長期的な需要は変わらない
サティア・ナデラ(Microsoft CEO)が「もはやキャパシティではなく、エネルギーが制約だ」と発言したことは、業界に衝撃を与えた。米国だけでも800件のデータセンター建設が計画されているが、その多くが遅延している。これはAI投資のペースダウンを示唆するのか。
イムランは冷静だ。「長期的な投資家にとって、それは問題ではありません。多少のボラティリティや調整は生むかもしれませんが、需要は消えません」。データセンターの建設が遅れることは、建設が中止されることとは全く異なる。「私は二つの質問をします。『ストーリーに根本的な変化はあるか?』『それは単なる短期的な実行リスクか?』」。データセンターの遅延は後者であり、彼の投資判断を変えるものではない。また、エネルギー問題やNIMBY(近隣拒否)問題に対しては、データセンターの効率化や宇宙空間への建設など、さらなるイノベーションが生まれると予測する。
AIは構造的失業を生まない:歴史が示す楽観論
AIによる雇用喪失の恐怖は広く語られるが、イムランは真っ向から反論する。「AIが米国に構造的失業をもたらすとは思いません」。彼は歴史的な precedent(先例)を挙げる。鉄道の登場は海運業を壊滅させると言われたが、そうならなかった。Eコマースは小売業を壊滅させると言われたが、Amazonは数百万人を雇用している。ATMは銀行員を不要にすると言われたが、米国の銀行窓口係の数は長期間増加し続けた。AI法律支援サービスが弁護士を不要にすると言われるが、米国の法律専門職の雇用数は増加している。
彼は自身の経験を交えて説明する。2014年にSnapに入社した時、トラスト&セーフティ(安全対策)チームは6-7人だった。退任時には、世界中に数千人のスタッフがいた。AIエージェントが普及すれば、新たな種類のトラスト&セーフティが必要になる。自身の投資ファンドでも、AIを使えばより多くの企業をカバーできるが、文脈を理解するための人材はむしろ必要になる。「AIはあなたの役割を変えるでしょうが、必ずしも雇用を減らすわけではありません。ある分野では雇用を減らし、別の分野では新しい役割を生み出します」。彼は、ダリオ・アモデイ(Anthropic CEO)のような「doomer(終末論者)」の見解を暗に批判し、「ある分野で賢いからといって、全ての分野で賢いわけではない。創業者が万能だと思うのは非常に危険です」と警告する。
SpaceXの2.5兆ドル評価:宇宙企業か、クラウド企業か
SpaceXの評価額は2.5兆ドルに達する。イムランは、この評価を三つの収益源に分解して分析する。第一にロケット打ち上げ事業。重要だが、損益計算書上は大きな利益を生まない。第二にStarlink。素晴らしいビジネスで、競合がほとんどいない。第三に、xAIのクラウド事業。これが評価額の「大きな塊」を占めていると彼は指摘する。
xAIは、自社で使いきれないGPUを活用し、突如として大手クラウドプロバイダーに躍り出た。AnthropicやGoogleに計算資源を貸し出し、Cursorを買収して開発者プラットフォームを強化している。イムランは問いかける。「これがどれだけの価値があるのか?AWS、Azure、OracleはPER20倍で取引されています。そして、それらの企業は大規模な設備投資サイクルに入るとアンダーパフォームする傾向があります。私はSpaceXのクラウド事業に、宇宙事業と同じ『スペース・マルチプル』を適用すべきでしょうか?それとも、単なる地上のデータセンタービジネスとして評価すべきでしょうか?」
彼の結論は「プラグマティックであれ」だ。「評価額の大部分は、激しい競争に直面している地上のクラウド事業に由来しています。Starlinkが受けるべき評価と、クラウド事業が受けるべき評価は異なります。投資家は、ブレンドされたマルチプルが両方の事業の現実を反映しているかを注意深く見る必要があります」。
まとめ
このエピソードは、AI投資を巡る「バブルか、それとも構造的成長か」という二分法を超えて、投資家が直面する具体的なジレンマを一つ一つ解きほぐしていく。イムラン・カーンの最大の貢献は、NVIDIAのPERが市場平均を下回っているという事実を「バブルではない」ことの証拠として提示した点と、MetaのGAAPベースの割安感とFCFベースの現実を同時に示した点にある。彼の「知的誠実さ」を重視する姿勢は、単なる強気・弱気のレッテル貼りを排し、投資判断の複雑さを浮き彫りにする。特に、Micronの「循環か成長か」という未解決の問いや、SpaceXの評価における「宇宙事業とクラウド事業のブレンド」の問題は、今後数年にわたって投資家を悩ませる核心的なテーマとなるだろう。そして、AIによる雇用喪失に対する彼の歴史に基づく楽観論は、テクノロジーリーダーの悲観論に傾きがちな議論に、貴重なカウンターポイントを提供している。
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