
Dan Niles: 私たちは完全にAIバブルの中にいる…弾けるタイミングを読もうとして破産するな
- ダン・ナイルズ:「我々は完全にAIバブルの中にいる…弾けるのを待って破産するな」 ダン・ネイサンがホストを務めるRiskReversal Podに、Niles Inves...
- [0:00] マクロ環境と歴史的類似性——1997〜1998年の再来か ナイルズはまず、2025年3月31日に投稿した「History May Not Repeat It...
- 現在、2025年3月30日を底に、S&P500は19%、マグニフィセント・セブンは26%、半導体指数は実に80%上昇した。ナイルズは「バブルは、世代を超える投資機会がある...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
RiskReversal Pod / RiskReversal Media
ダン・ナイルズ:「我々は完全にAIバブルの中にいる…弾けるのを待って破産するな」
ダン・ネイサンがホストを務めるRiskReversal Podに、Niles Investment Managementの創業者兼ポートフォリオ・マネージャーであるダン・ナイルズが登場。現在のAI主導の市場 rally を1997〜1998年のインターネットインフラ構築期と比較しながら、我々は完全にバブルの中にいるが、それがすぐに弾けるわけではないという逆説的なテーゼを展開する。ナイルズは、1月30日の「エージェンティックAI」の出現がコンピュート需要を段階的に引き上げ、少なくともあと1年は強い需要が続くと主張。バブルはさらに膨らみ、来年には30〜50%の調整が来る可能性があるが、それまでは大金を稼ぐチャンスでもあると語る。歴史的視点と具体的な企業分析を交えた、実践的で透明性の高い議論が特徴的だ。
マクロ環境と歴史的類似性——1997〜1998年の再来か
ナイルズはまず、2025年3月31日に投稿した「History May Not Repeat Itself but It Often Does Rhyme(歴史は繰り返さないが、韻を踏む)」というスレッドを引き合いに出す。これはマーク・トウェインに帰せられる有名な引用だ。彼は現在の局面を1997〜1998年と比較する。1994年末のNetscape Navigatorの登場がインターネット構築を開始したように、2022年末のChatGPTがAI構築を開始した。1997年にはアジア通貨危機でS&P500がピークから約11%下落、1998年にはロシアの債務不履行とLTCMの破綻で同19%の intra-year 下落があった。しかし、それらの年は最終的にそれぞれ+31%、+27%で終わった。その下にはインターネットインフラの大規模構築があったからだ——それは3年目、4年目にあたっていた。
現在、2025年3月30日を底に、S&P500は19%、マグニフィセント・セブンは26%、半導体指数は実に80%上昇した。ナイルズは「バブルは、世代を超える投資機会があるときにしか形成されない」と語る。1700年代後半の運河、1800年代前半の鉄道、1990年代のインターネットインフラがその例だ。問題は「バブルを早く呼びすぎると、単に間違っているだけ」という点にある。空売りで大金を失うか、担架で運び出されることになる。
エージェンティックAI——1月30日の「段階的変化」
ナイルズが最も強調するのが、2025年1月30日に正式化された「OpenClaw(正しくはOpenAIのエージェント機能)」のインパクトだ。これにより「エージェンティックAI」の時代が本格的に始まった。従来のChatGPTは「質問をして答えを得る」だけだったが、エージェンティックAIでは「Bloombergにアクセスして20社のデータを取得し、SECのサイトで10-Kや10-Qを確認し、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事を調べ、スプレッドシートを作成する」といった複数ステップのタスクを自律的に実行する。これには従来の10〜100倍のトークン(処理単位)が必要となる。
実際のデータとして、ナイルズはトークン生成量の推移を挙げる。11月から1月までの2ヶ月間でトークン生成は20%増加した(100→120)。ところが、1月から3月までの2ヶ月間でそれは倍以上に跳ね上がった(120→250)。これが「段階的変化(step function change)」の実態だ。この需要増加は少なくとも1年間は持続し、その記念日を迎えるまでは強い需要が続くとナイルズは予測する。
金利上昇とFRB——ケビン・ウォーシュ新議長の政策スタンス
ナイルズは金利上昇について、1997〜1998年当時は現在よりも金利が高かったが、バリュエーションもはるかに高かったと指摘する。重要なのは金利とバリュエーションの組み合わせだ。例えば、シスコは当時のエヌビディアに相当する存在で、2000年のピーク時には売上高成長率が約60%、フォワードPERは140倍だった。一方、現在のエヌビディアは売上高成長率80%でPERは25倍。これだけを見れば「バブル的バリュエーション」とは言い難い。
インフレについては、11月の中間選挙を意識した政治力学が働くとナイルズは見る。原油価格が高止まりすれば、与党は選挙で大敗する。したがって現政権は原油価格を下げたいと考えており、これが市場の上昇を支える要因となる。
さらに、次期FRB議長に指名されたケビン・ウォーシュに注目する。ウォーシュは利下げを志向しており、その根拠として「トリム平均PCE(2.4%)」を重視する姿勢を示している(コアPCEは3.2%、ヘッドラインは3.5%)。また、AIはデフレ要因だと主張する。ナイルズは「2021年にFRBがインフレは一時的だと言って、結局40年ぶりの悪性インフレになったのを忘れてはいけない」と警告するが、投資家として重要なのは「誰が何をするか」であり、ウォーシュが債券市場の利上げ予想に強く抵抗するだろうと予測する。AI向けCapExが前年比70%増という需要要因と、ウォーシュの「イージーマネー」継続姿勢が組み合わさり、バブルは今年いっぱい膨らみ続けるというのがナイルズの見立てだ。
エヌビディアのバリュエーションとインテルの復活——CPU対GPU比率の変化
ナイルズはエヌビディアについて「25倍のPERで80%成長」という数字を繰り返し強調する。昨年7月時点で56%だった売上高成長率は、3四半期連続で加速し、直近四半期は85%、ガイダンスは95%に達した。アップルが30倍台のPERで80%成長していないことを考えれば、エヌビディアのバリュエーションは決して極端ではない。
より興味深いのがインテルのケースだ。ナイルズは2021年のピーク時、インテルは1株当たり5.50ドルの利益、800億ドルの売上高、57%の粗利率を記録していた。現在の株価は123ドルだが、売上高は約600億ドル、粗利率は40%程度に低下している。一見すると割高に見える。しかし、エージェンティックAIの登場により、GPU対CPUの比率が「8:1」から「1:1」に変化する可能性がある。つまり、従来は1つのCPUに対して8つのGPUが必要だった処理が、エージェンティックAIでは1対1で済むようになるかもしれない。これが実現すれば、インテルの需要見通しは劇的に変わる。
ナイルズは半導体株について「私は価格目標も業績予想も持たない」と語る。上昇局面では予想は常に低すぎ、下降局面では高すぎるからだ。重要なのは「転換点」に達したかどうかであり、現時点ではまだその時期ではない。彼はインテルをロングで持ち、割高と考える別の銘柄をショートするヘッジ戦略を取っている。
AIコストの現実——勝者と敗者の二極化
ウーバーのCOOは、2026年分のトークン予算を第1四半期で使い切ったと発表した。これはAIコストが企業収益を圧迫し始めている象徴的な事例だ。ナイルズは、OpenAIとAnthropicの年間経常収益(ARR)が約15〜16ヶ月前の70億ドルから現在690億ドルに急増した事実を挙げる。このコストを正当化できない企業は、どこかで予算を削減せざるを得ない。
「ソフトウェアは年間1兆ドルのグローバル支出、ITサービスは約2兆ドル、知識労働者は30〜50兆ドル」とナイルズは試算する。AIがこれらの分野を破壊する可能性がある。例えば、高額なコンサルタントはAnthropicやChatGPTで代替できるかもしれない。優秀なエンジニア1人がAIを使って10のエージェントを動かせば、他のエンジニアは不要になる。
マイクロソフトはAnthropicに50億ドルを投資し、エンジニアにClaudeへのアクセスを提供したが、6月までにその利用をほぼ停止し、社内のCopilotへの強制移行を進めている。これは「請求額が高すぎた」からだ。また、トークン生成をKPIにすると、エンジニアは効率的なコードを書く代わりに、大量のトークンを生成する非効率なコードを書くようになる——「指標を設定した瞬間に、その指標は役に立たなくなる」という典型例だ。
市場は現在、「AIに助けられているのか、それとも轢かれた動物(roadkill)なのか」を必死に判断している。最も早く轢かれた動物と判定される方法は、「AIを使っているが業績は悪化している」と宣言することだ。
マイクロンの狂騒——半導体サイクルの不変の法則
マイクロンは約1年前に64ドルだった株価が現在900ドル超、時価総額は1兆ドルに達した。2023年に1株当たり4.50ドルの損失を出していた同社が、今年は86ドルの利益を見込む。売上高は170億ドルから1500億ドルへ、粗利率はマイナスから70%超へ——この数字は同社の歴史にない水準だ。
ナイルズは、エヌビディアの次世代アーキテクチャ「Vera Rubin」(2025年第3四半期出荷予定)が、Blackwellと比較して9倍のHBM(高帯域メモリ)を必要とする点を指摘する。これが短期的な需要を支える。しかし、彼は「今回は違う」という主張に対して冷笑的だ。2023年、COVID後の需要急騰で長期供給契約を結んだ半導体企業は軒並み、その後に粗利率がマイナスに転落した。1995年8月の半導体業界団体の夕食会で、あるCEOが「半導体はもはや循環産業ではない」と宣言した1ヶ月後に市場はピークを打ち、9ヶ月で55%下落した——インテルは10億ドルのDRAM在庫を償却し、マイクロンの株価は壊滅した。
より技術的な観点から、ナイルズは「メモリウォール」問題を指摘する。HBMはソリッドステートメモリ(NAND)の約100倍高価だが、高速だ。将来的には、光インターコネクトがCPU/GPUとNANDを接続し、速度を維持しながらコストを大幅削減する可能性がある。DRAMは電源を切るとデータを忘れるが、NANDは記憶し続ける。このため、長期的にはNANDの方がHBMよりも魅力的になるというのがナイルズの見立てだ。
IPOラッシュ——SpaceX、OpenAI、Anthropicが市場構造を変える
今後予定されている大型IPO——SpaceX、OpenAI、Anthropic——は、市場の資金フローを根本から変える可能性がある。ナイルズは「ヘッジ戦略を取る者として、ショート候補が出てくるのは楽しみだ」と語る。これらのIPOが公開市場に出ることで、投資家は「代理投資」から「直接投資」にシフトする可能性がある。例えば、OpenAIのIPOが出れば、これまでOpenAIへのエクスポージャーとしてマイクロソフト(27%保有)やソフトバンクを買っていた資金が直接OpenAIに流れるかもしれない。同様に、SpaceXのIPOは他の宇宙関連株から資金を吸い上げる可能性がある。
しかし、ナイルズは「強い意見を持つが、緩く保持する(strong opinions, loosely held)」という姿勢を強調する。CerebrasのIPO前には「半導体株が全て売られる」との予想があったが、実際には株価は急騰した。彼は「無理に知的に正しくあろうとしない」と語り、市場の動きに応じて柔軟に戦略を調整する姿勢を示す。
まとめ
このエピソードの核心は、「バブルの中にいることを認識しつつ、そのバブルがいつ弾けるかを予測しようとして破産しない」という逆説的な投資哲学にある。ナイルズは歴史的類似性(1997〜1998年)と技術的変化(エージェンティックAI)の両方を用いて、現在の上昇相場にはまだ余地があると主張する。同時に、半導体の循環性やAIコストの持続可能性について冷静な警告も発する。特に印象的なのは、自身の息子がAIを実際に使いこなす様子を具体的に語る部分で、技術の進歩が単なる理論ではなく、日々の実務を変えつつあることを生々しく伝えている。投資家としての透明性——正しかった時も間違った時も率直に認める姿勢——が、この議論に独特の信頼性を与えている。
要点
- 現在のAIバブルは1997〜1998年のインターネットインフラ構築期と構造的に類似しており、バブルはさらに膨らむ可能性が高い
- 2025年1月30日のエージェンティックAIの登場により、トークン生成量が2ヶ月で倍増し、コンピュート需要が段階的に増加した
- エヌビディアはPER25倍で売上高80%成長と、過去のバブル期(シスコ:PER140倍、成長60%)と比較して割高ではない
- ケビン・ウォーシュ次期FRB議長は利下げ志向で、トリム平均PCE(2.4%)を重視するため、イージーマネー政策が継続される見通し
- エージェンティックAIによりCPU対GPU比率が変化し、インテルが恩恵を受ける可能性がある
- AIコストの急増(OpenAI/AnthropicのARRが15ヶ月で70億→690億ドル)は、ソフトウェア、ITサービス、知識労働者セクターに破壊的影響を与える
- マイクロンの急騰(株価1年で14倍)は半導体サイクルの典型であり、「今回は違う」という主張は歴史的に常に誤りだった
- SpaceX、OpenAI、Anthropicの大型IPOは市場の資金フローを変え、新たなショート機会を生み出す可能性がある