
AI, DeFi & The Great Convergence with Galaxy's FinTech Guru Joe Armao
- AI、DeFi、そして「大収束」——Galaxyのフィンテックファンドマネージャーが語る金融の未来 Galaxy Digital傘下のフィンテックファンドを率いるジョー・...
- [4:31] マクロ経済の分水嶺——「ストックピッカーズ・マーケット」の到来 アルマオは現在のマクロ環境を「よりバランスの取れた投資機会」と表現する。2024年後半までの...
- ネイサンが指摘するように、消費者信頼感指数の急落やガソリン価格の高騰にもかかわらず、アルマオは実体経済を「驚くほど resilient(回復力がある)」と評価する。彼の見...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
RiskReversal Pod / RiskReversal Media
AI、DeFi、そして「大収束」——Galaxyのフィンテックファンドマネージャーが語る金融の未来
Galaxy Digital傘下のフィンテックファンドを率いるジョー・アルマオが、ブラックストーン出身のベテラン投資家として、伝統的金融からデジタル資産への長年の旅路を語る。このエピソードの核心は、ブロックチェーンとAIという二つの破壊的テクノロジーが金融サービス業界に「大収束(Great Convergence)」をもたらしつつあるというテーゼだ。マクロ経済の不透明感、消費者信用の懸念、そしてAI投資への過剰な期待と現実のギャップ——こうした逆風の中で、アルマオはロング・ショート戦略の真価が発揮される「銘柄選択の時代」が到来したと主張する。ホストのダン・ネイサンとの対話は、時にテクニカルな話題に深く潜りながらも、投資家としての実践的な視点が一貫して貫かれている。
マクロ経済の分水嶺——「ストックピッカーズ・マーケット」の到来
アルマオは現在のマクロ環境を「よりバランスの取れた投資機会」と表現する。2024年後半までの数年間は、低金利、規制緩和、そしてAI主導の成長という「追い風」に支えられた「up only」の市場だった。しかし今、状況は一変した。日本での利上げ、米国では利下げ期待が後退し、一時は利上げすら織り込まれる「合成利上げ」が3回発生した。金融政策は正常化に向かっており、それが市場への追い風として機能しなくなっている。
ネイサンが指摘するように、消費者信頼感指数の急落やガソリン価格の高騰にもかかわらず、アルマオは実体経済を「驚くほど resilient(回復力がある)」と評価する。彼の見立てでは、市場参加者が感じるほど経済は悪化していない。ウォール街は「過去11回の景気後退のうち9回を予測してきた」という皮肉を込めた表現で、過度な悲観論に警鐘を鳴らす。ただし、彼は強気一辺倒ではなく、「constructive(建設的)」という言葉を選び、強みのあるセクターを選別してプレイする姿勢を強調する。
金融セクターの大虐殺——割安株の宝庫か、それとも罠か
ネイサンが挙げた具体例は衝撃的だ。キャピタル・ワンは最高値から30%下落、アメリカン・エキスプレスは25%下落——金融セクターはS&P500の中で最悪のパフォーマンスを記録している。アルマオはこの暴落を「sasmageddon(SaaSの終末)」と名付け、AIによるソフトウェア企業の破壊的影響が一因だと分析する。
しかし、彼の目にはこの混乱がチャンスに映る。「名前が半減し、30、40、60%も下落した銘柄の中には、赤子と一緒に浴槽の水を捨ててしまったようなケースがたくさんある」とアルマオは言う。特に、取引所、格付け機関、市場インデックス事業など、AIに破壊されにくい「moated(堀で守られた)」ビジネスは、収益の質が高いにもかかわらず無差別に売られているという。一方で、手数料の圧縮に直面する決済処理業者や、ブロックチェーンに対応できていない企業はショートの対象となる。この二極化こそが、ロング・ショート戦略の真骨頂だと彼は主張する。
プライベートクレジットの死角——システム危機ではないが「痛みのポケット」は必至
プライベートクレジット市場に対するアルマオの見解は、冷静かつ現実的だ。彼は「システム危機ではない」と断言する。2008年の金融危機のように銀行システムと連動していないからだ。しかし、「痛みのポケット(pockets of pain)」が発生することは避けられないと警告する。
問題の核心は、AIがもたらしたパラダイムシフトにある。過去数年間、プライベートエクイティはソフトウェアやIP重視の産業に巨額の資本を投じてきた。しかしAIはその前提そのものを覆した。「すべての資本がAIを適切に織り込んでいたとは思えない」とアルマオは指摘する。今後、最も脆弱な産業にエクスポージャーを持つファンドのバランスシートを精査し、リストラクチャリングの波が来ると予測する。
また、「ゲーティング(資金引き出し制限)」現象についても言及。リテール投資家が資金を引き揚げようとする中で、ファンド側がやむを得ずゲートを設定するのは「正しい第一歩」だと評価する。しかし、これが信用スプレッドの拡大や流動性の逼迫につながり、次の四半期で「デボトルネッキング(詰まりの解消)」が進まなければ、より大きな contagion(連鎖)を引き起こす可能性があると警鐘を鳴らす。
「大収束」の真実——価格は下がっても、採用は過去最高
ここからがアルマオの真骨頂だ。Galaxyが掲げる「Great Convergence(大収束)」テーゼとは、「暗号資産対伝統的金融システム」という二項対立を超え、両者が規制された枠組みの中で統合されていくというビジョンだ。彼は「暗号資産の価格は下落しているのに、ブロックチェーンインフラの採用は過去最高ペースで進んでいる」という逆説的な現象を指摘する。
ビットコインの現状について、アルマオは「基本的な価値提案は変わっていない」と強調する。ポータブルでグローバルなデジタル版ゴールドという特性は不変だ。しかし現在、市場は「デジタルからフィジカルへのローテーション」の真っ只中にある。半導体がソフトウェアをアウトパフォームし、物理的インフラがデジタルインフラを凌駕する——この流れの中でビットコインも巻き添えを食っているというのが彼の分析だ。
重要なのは、ビットコインがもはや孤立した資産ではなく、マグニフィセント・セブンと同じ土俵で比較される存在になったという点だ。「5年前にはありえなかった会話が今は成立する」とアルマオは言う。ブロックチェーンは単なる投機の対象ではなく、24時間365日の決済、国境を越えた送金、中央カウンターパーティーに依存しない資産移動という「新しいグローバルレール」として機能し始めている。
ステーブルコインとVisa——「配管工事」としてのブロックチェーン
ネイサンが「私は十分にバンクされているから、UIの変化は感じない」と率直に認めると、アルマオは「その通り。これは配管(plumbing)の話だ」と応じる。先進国の消費者が直接触れることはなくても、裏側でブロックチェーンは金融インフラを根本から変えつつある。
具体例として、VisaとMastercardの動きを挙げる。Mastercardは最近、ステーブルコイン決済インフラを直接利用するためにBVNKを約20億ドルで買収した。Visaもステーブルコインとの統合を長年進めており、85社の暗号資産企業からなる連合を組織している。さらに、Galaxyが投資するプライベート企業Rainは、新興市場でUSドル建てステーブルコインを貯蓄手段として提供し、Visaカードで世界中の加盟店で使えるようにしている。現地通貨が不安定な国々では、これは「フロントエンド」のイノベーションとして機能する。
アルマオは、この流れが送金業者やコルレス銀行を「ディスインターミディエーション(仲介排除)」すると予測する。米国からアジアへの送金では、現在7もの銀行を経由することがある。ブロックチェーンはこの摩擦を劇的に減らし、最終的には消費者のコスト削減につながる。そして、AIエージェント経済の到来を見据えれば、エージェントが銀行の営業時間を待たずに24時間取引できるインフラの価値は計り知れない。
Hyperliquidの衝撃——収益10億ドル、時価総額100億ドルのパラドックス
アルマオはDeFi(分散型金融)の進化を、UniswapとHyperliquidという二つのプロジェクトの対比で説明する。Uniswapは分散型取引所の草分けで、そのトークンは主に「ガバナンストークン」(議決権)として機能する。一方、Hyperliquidは「経済的価値提案」を持つトークンだ。
Hyperliquidの仕組みはシンプルで強力だ。取引手数料(10ベーシスポイント)で得た収益の大部分を自社トークンの買い戻しに充てる。過去12ヶ月の収益は約10億ドルで、分散型プロジェクトであるため実質的に全額が利益となる。時価総額が100億ドル台であることを考えると、この買い戻しはトークン保有者に直接的な価値を還元する仕組みだ。
さらに注目すべきは、Hyperliquidが暗号資産の先物取引から、原油やS&P500といった伝統的資産の取引へと領域を拡大している点だ。週末の地政学リスクが高まった際、原油先物の取引量が急増したという。ただし、このトークンはニューヨーク州では購入できないという地理的制限があり、ネイサンは「ニューヨーカーは買えない」と不満をもらす。アルマオは回避策として、このトークンを保有する上場企業(ティッカー:PURRやHYPE D)を購入する方法を紹介するが、投資助言ではないと断る。
フィンテック銘柄の明暗——ロビンフッドの「GAAP利益」が示すもの
アルマオのフィンテックファンドはロング・ショート戦略を採用し、流動性の高い大型株を中心に運用する。消費者向けフィンテック(Affirm、Upstart、SoFiなど)が軒並み低迷する理由について、彼は「消費者不安と信用収縮」というマクロ要因を挙げる。特に、これらの企業の多くはプライベートクレジットや証券化市場で資金調達しており、金融環境の引き締まりが直接的な打撃となる。
しかし、ロビンフッドについては明確に強気の立場を示す。「このサイクルで、彼らは世代を超えて信頼されるブランドの仲間入りを果たした」と評価する。特に印象的なのは、アルマオが「GAAP利益」という言葉を自ら持ち出した点だ。多くのテクノロジー企業が調整後利益を重視する中、ロビンフッドがGAAPベースで実質的な利益を計上していることを強調する。「これは質の高い収益だ」と彼は言う。確かに、ビットコイン価格との相関が80〜90%と高い点はリスクだが、22倍の来期予想PERは「高くない」と見ている。
トークン化の真の価値——「世界のブルーチップ」を24時間取引可能に
ネイサンが「なぜNYSEやNASDAQで取引できる株式をわざわざトークン化する必要があるのか」と疑問を呈すると、アルマオは明確な答えを返す。それは「グローバルな流通チャネルの拡大」だ。米国のブルーチップ株をブロックチェーン上に上場することで、ロビンフッドのようなプラットフォームは、100もの現地ブローカーライセンスを取得しなくても、世界中のユーザーにこれらの商品を提供できるようになる。
さらに、24時間取引の可能性も大きい。アルマオは「週末に何か世界で起きたとき、流動性が必要なら土曜日でも取引できる」と説明する。ただし、これは投資家のメンタルヘルスには悪影響を及ぼすかもしれないと冗談を交える。将来的には、IPOに適さない中小企業のプライベート資産もブロックチェーン上で取引されるようになり、「選択肢の爆発的増加」が起きると予測する。
AIとブロックチェーン——「ミッションクリティカル」な二つの軸
エピソードの締めくくりとして、アルマオはAIの重要性を「ミッションクリティカル」と断言する。すべての金融企業の決算説明会で、AIエージェント戦略と自社の堀(moat)が議題の中心だという。彼のファンドにとって、AIとブロックチェーンは「金融サービスにおける収束テーマの核心」であり、この二つが生み出す「分散(dispersion)」こそがロング・ショート投資家にとっての最大のチャンスだと語る。
「バイ・アンド・ホールドのポートフォリオにとって、これほど厳しい市場は見たことがない」とアルマオは警告する。マクロ環境、AIの影響、ブロックチェーンの進化、そして原油価格のシナリオ——これらすべてを考慮したアクティブな運用が不可欠だ。彼の言葉を借りれば、今こそ「ファンダメンタルな引受(underwriting)」の時代なのである。
まとめ
このエピソードが聴き手に残すのは、「暗号資産は投機の対象から金融インフラへ」というパラダイムシフトの確かな手応えだ。アルマオの語り口は、10年にわたる個人投資家としての経験と、ブラックストーンやSenatorで培った伝統的金融の知識が融合した、稀有な視点に裏打ちされている。彼が提示する「大収束」のテーゼは、単なる強気の主張ではなく、VisaやMastercard、JPモルガンといった既存の巨人たちがブロックチェーンを自らのインフラに取り込み始めたという具体的な事実に基づいている。同時に、AIが金融業界の勝者と敗者を鮮明に分ける「分散」の時代が到来したという認識は、パッシブ運用が困難を極める現在の市場環境に対する鋭い処方箋となっている。価格の乱高下に惑わされず、技術の本質的な採用動向に注目する——このエピソードは、そのための知的枠組みを提供してくれる。