
NavalのGP、Ankur Nagpalが話題の「USVC」ファンドを解説 | E2284
- 本エピソードでは、Jason CalacanisとAlex Wilhelmが、AngelListが立ち上げた新ファンド「USVC」のGPであるAnkur Nagpalを迎...
- USVCは、AngelListのNaval RavikantがAnkurに「クローズドエンド型ファンドをやるべきだ」と提案したことから始まった。従来のAngelList...
- [7:41] USVCの投資戦略とポートフォリオ構成 USVCの投資戦略は、3つの柱で構成される。第1に「新興ファンドマネージャー(Emerging Managers)」...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
今週のスタートアップ / Jason Calacanis
本エピソードでは、Jason CalacanisとAlex Wilhelmが、AngelListが立ち上げた新ファンド「USVC」のGPであるAnkur Nagpalを迎え、非認定投資家でも最低500ドルからベンチャーキャピタルに投資できる画期的な仕組みについて深掘りした。従来、スタートアップ投資は認定投資家(富裕層・機関投資家)に限定されてきたが、USVCはクローズドエンド型ファンドという構造を採用し、一般投資家に門戸を開いた。Ankurは、このファンドが「ベンチャーキャピタルという資産クラスへのインデックス」を目指しており、xAI、Anthropic、OpenAIといった注目企業へのエクスポージャーを提供する一方で、流動性の制限や手数料体系の透明性についても率直に語った。番組後半では、Bittensorエコシステム上でGPUを集約し「信頼不要のAIコンピュート」を提供するChutesのコアコントリビューターJohn Durbin、そしてエージェントが行き詰まった際に人間を呼び出す仕組み「Humwork」のCEO Yash Goenkaが登場。さらに、Ryan CohenによるeBay買収提案、CerebrasのIPO、Spirit Airlines破綻とM&A規制の是非など、ニュースラウンドアップも行われた。
USVCは、AngelListのNaval RavikantがAnkurに「クローズドエンド型ファンドをやるべきだ」と提案したことから始まった。従来のAngelList SPV(特別目的事業体)が認定投資家限定だったのに対し、USVCは非認定投資家も参加可能で、最低投資額は500ドル。ファンドはクローズドエンド型であり、発行済み株式数が変動しない。投資家は四半期ごとに開催されるテンダーオファー(最大ファンド全体の5%)を通じて換金できるが、これは完全な流動性を保証するものではなく、ベンチャー投資特有の非流動性を緩和するための仕組みである。手数料構造は当初「1%」と発表されたが、実際には運営費用や投資先ファンドの手数料を含めた純経費率は約2.5%(総経費率3.6%)であり、この点で一部の投資家から批判もあった。Ankurは「ベンチャーキャピタルは本質的に高コストな資産クラスであり、Vanguardのインデックスファンドと比較されるべきではない」と反論した。
USVCの投資戦略とポートフォリオ構成
USVCの投資戦略は、3つの柱で構成される。第1に「新興ファンドマネージャー(Emerging Managers)」への投資。初期段階のスタートアップを個別に選別するのは困難であるため、シード段階に特化したファンドマネージャーを厳選し、彼らに資本を委ねる。第2に「グロース投資」。シリーズA以降の成長段階にある企業に直接投資する。第3に「セカンダリー」。既存のベンチャーファンドのLPポジションやGPのキャリーを買い取ることで、割安な価格でエクスポージャーを得る。この3本柱を概ね均等に配分する計画だ。現在のポートフォリオには、xAI、Anthropic、OpenAI、Crusoe、Vercelなどが含まれており、特にxAIは最大のポジションとなっている。ファンドの規模は現状10億ドルが上限だが、Ankurは「フェーズ1として最初の10億ドルを最善のものにすることに集中し、その後野心を拡大する」と述べた。
手数料構造を巡る論争とインセンティブ設計
USVCの手数料を巡っては、発売直後から大きな議論が巻き起こった。Jasonは「1%の手数料だと発表したのに、実際は2.5%だった」という批判に対して、Ankurに率直な説明を求めた。Ankurは「これほどの反響を予想していなかった。規制商品であるため、その場で反論することもできず、PR面で多くの教訓を得た」と認めた。重要なのは、USVCには成功報酬(キャリー)が存在しない点である。従来のベンチャーファンドは「2%の管理報酬+20%のキャリー」が標準だが、USVCは公開市場で販売される商品であるため、キャリーを課すことができない。そのため、GPのインセンティブは「ファンドの規模を拡大し、管理報酬を増やすこと」に集中する。Jasonはこの点を指摘し、「キャリーがないと、ホームランを狙うインセンティブが弱まるのではないか」と疑問を呈した。Ankurは「確かに規模拡大は重要だが、このファンドのトラックレコードは公開されており、投資家はいつでも償還を請求できる。パフォーマンスが悪ければ、ファンドは自然に縮小する。評判こそが最大の資本だ」と反論した。
sovereign compute(主権的コンピュート)とChutesのビジョン
John Durbinが率いるChutesは、Bittensor(TAO)のサブネット上で動作する、GPUを集約した「信頼不要のAIコンピュート」ネットワークである。Johnは「誰もがAIにアクセスできることは基本的な権利だ」と主張し、その実現手段として「sovereign compute(主権的コンピュート)」の概念を説明した。これは、国家や個人が自らのサーバーを所有し、他者による監視や検閲を受けずに計算を実行できる環境を指す。Chutesは、Intel TDX、AMD SNP-SEV、Nvidia Confidential ComputingといったTEE(Trusted Execution Environment)技術を活用し、GPU上のメモリや通信を暗号化する。これにより、サーバーの物理的な所有者でさえ、実行中のジョブの内容を覗き見ることができない。さらに、量子コンピュータによる暗号解読にも耐える耐量子鍵ペアを生成し、エンドツーエンドの暗号化を実現している。Johnは「私たちのスタックは全てオープンソースであり、誰でも検証できる。これこそが真の透明性だ」と強調した。
Chutesの成長とGPU市場の需給逼迫
Chutesのトークン処理量の推移を示すグラフは、興味深いストーリーを物語っている。ピーク時には1日あたり1,600億トークンを処理したが、これは無料提供期間中のボットやDDoS攻撃によるスパムトラフィックが大部分を占めていた。その後、5ドルの支払いゲートを導入し、最終的には全てのモデルを有料化したことで、処理量は大幅に減少した。Johnは「これはPoC(概念実証)としては成功だった。ネットワークは負荷に耐えられた。今は、それを収益性のあるビジネスに転換する段階だ」と説明する。GPU市場の需給は逼迫しており、H200 GPUのレンタル料金は1時間あたり0.77ドルから3.50ドルへと高騰している。Chutesは、TAOトークンの価格変動リスクを抱えている。収益はトークンの買い付けとバーンに使われるが、マイナー(GPU提供者)への報酬はプロトコルからのエミッション(新規発行)で支払われる。Jasonはこの仕組みを「UberやAirbnbが実現した誘発需要(induced demand)」になぞらえ、「許可不要のネットワークは効率性を生み、効率性は破壊を生む」と総括した。
ニュースラウンドアップ:Ryan CohenのeBay買収提案、Cerebras IPO、Spirit Airlines破綻
番組終盤のニュースラウンドアップでは、3つのトピックが議論された。第1に、GameStopのCEO Ryan CohenがeBayを550億ドルで買収する提案を行った件。Jasonは、CohenがCNBCのインタビューで質問にまともに答えず、傲慢な態度を示したことを厳しく批判した。「彼の仕事はビジョンを伝えることだ。それを怠った」と断じ、この提案自体も「市場操作の延長線上にある」と否定的な見解を示した。一方で、eBayの資産価値自体は評価し、「ライブコマースや実店舗展開など、Cohenのアイデア自体は悪くない」とも述べた。第2に、AIチップ企業CerebrasのIPO。評価額は非希薄化ベースで約270億ドル、希薄化後で約360億ドルと報じられた。Jasonは「ベンチマークに出資している人は、大きな利益を得るだろう」と祝福した。第3に、Spirit Airlinesの破綻。連邦政府がJetBlueによる買収を阻止した結果、Spiritは経営破綻に追い込まれた。Jasonは「政府の官僚が自由市場を理解していると思うのは間違いだ。M&Aを阻止するよりも、空港のゲート割り当ての透明性を高め、新規参入を促進すべきだ」と持論を展開した。
オフデューティ:スター・ウォーズとAI生成コンテンツの未来
番組の最後を飾るオフデューティセグメントでは、JasonがDisney+のアニメシリーズ『スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジ・エンパイア』を絶賛した。特に、ダース・モールを主人公としたエピソードに触れ、「油絵のような美しいアニメーションと、ダークサイドとライトサイドの間で復讐に燃える混沌のキャラクター描写が素晴らしい」と語った。さらに、中国発のAI動画生成モデル「Sea Dance(海創)」を用いて、ファンがスター・ウォーズのコミックや小説をアニメ化したファンメイド作品を紹介。Jasonは「不気味の谷は80~90%埋まった。1~2年後には、本物と見分けがつかなくなるだろう」と予測し、『ソプラノズ』や『ブレイキング・バッド』といった過去の名作をAIで拡張する可能性に興奮を示した。Alexは、工場自動化ゲーム『Captain of Industry』を紹介し、「仕事を辞めて睡眠を犠牲にしたくなるほど中毒性がある」と語った。
結びに
今回のエピソードは、ベンチャーキャピタルという閉ざされた世界に、一般投資家が参入するための具体的な手段を提示した点で極めて重要である。USVCは、手数料や流動性の課題を抱えつつも、AngelListのデータとネットワークを活用した野心的な試みであり、今後の業界の標準となる可能性を秘めている。同時に、Chutesが示す「許可不要のコンピュートネットワーク」は、AIの民主化と検閲への対抗手段として、技術的・哲学的な深い議論を喚起した。Jasonが繰り返し強調した「誘発需要」の概念は、UberやAirbnbの成功を再確認させるとともに、分散型GPUネットワークがもたらす破壊的イノベーションの可能性を予感させる。また、Ryan CohenのeBay買収提案やSpirit Airlines破綻を巡る議論は、市場の効率性と規制の役割について、投資家としての明確なスタンスを示した。全体として、テクノロジーと資本市場の最前線を、実践的かつ哲学的な視点から捉えた、密度の高い回であった。
要点
- USVCは非認定投資家でも最低500ドルからベンチャー投資が可能なクローズドエンド型ファンドであり、xAI、Anthropic、OpenAIなどにエクスポージャーを提供する。
- 手数料は純経費率で約2.5%(総経費率3.6%)だが、成功報酬(キャリー)は存在せず、GPのインセンティブは管理報酬の拡大に依存する。
- USVCの投資戦略は「新興ファンドマネージャー」「グロース」「セカンダリー」の3本柱で構成され、概ね均等配分を目指す。
- ChutesはBittensor上のGPU集約ネットワークであり、TEE技術を活用して「信頼不要のAIコンピュート」を実現。サーバー所有者でさえジョブ内容を覗き見できない。
- Chutesのピーク時処理量は1日1,600億トークンだったが、有料化後に減少。GPUレンタル料金は1時間0.77ドルから3.50ドルへ高騰している。
- Ryan CohenのeBay買収提案(550億ドル)に対し、Jasonは「市場操作の延長」と批判。一方でeBayの資産価値自体は評価し、実店舗展開などのアイデアには一定の理解を示した。
- Spirit Airlines破綻の原因は、政府によるJetBlue買収阻止にあるとJasonは主張。M&A規制よりも空港ゲートの透明性向上と新規参入促進が重要だと論じた。
- AI動画生成モデル「Sea Dance」を用いたファンメイドのスター・ウォーズ作品は、不気味の谷をほぼ克服し、過去の名作コンテンツをAIで拡張する未来を示唆している。