
X-Pyrに参加して
- 参加するX-Pyr:パラグライダー・ハイク&フライレースの内幕 本エピソードは、パラグライダー競技の一種である「ハイク&フライ」レース、特にピレネー山脈を横断する「X-P...
- [0:16] X-Pyrの歴史と大会概要 X-Pyrは2012年にわずか12名の、主にスペイン人パイロットによってスタートした。初回のルートは、大西洋岸のオンダリビアから...
- ルートも進化を遂げてきた。特筆すべきは、最終から2番目のターンポイントがフランス国境北側の聖なるカタルーニャの山「カネグー」に置かれたことだ。これにより、競技者はヨーロッ...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
パラグライダーポッドキャスト / The Paraglider
参加するX-Pyr:パラグライダー・ハイク&フライレースの内幕
本エピソードは、パラグライダー競技の一種である「ハイク&フライ」レース、特にピレネー山脈を横断する「X-Pyr(エックス・ピレネー)」に焦点を当てている。ホストはアメリカ人パイロットのジェシー・ウィリアムズにインタビューし、彼が2016年に初出場で5位に入賞した経験、2018年大会に向けた準備、そしてピレネー山脈とアルプス山脈の飛行条件の違いについて深く掘り下げている。会話の雰囲気は親しみやすく、競技の厳しさと同時に「楽しむこと」の重要性が繰り返し強調される、実践的で内省的な内容となっている。
X-Pyrの歴史と大会概要
X-Pyrは2012年にわずか12名の、主にスペイン人パイロットによってスタートした。初回のルートは、大西洋岸のオンダリビアから地中海沿岸のポルト・デ・ラ・セルバまで、全長438kmだった。優勝者は「二人のイニゴ」ことガブリエラとメンデビルだった。この隔年開催のレースはその後大きく発展し、現在では世界中からトップレベルのハイク&フライ競技者が集まる大会となっている。クリーゲル、マウラー、トーマ、ココネア、アーロン・ドゥロガティ、サンドハイマーといった名前が常連となり、2014年にクリーゲルが初出場して以来、彼が予想通り毎回優勝している。
ルートも進化を遂げてきた。特筆すべきは、最終から2番目のターンポイントがフランス国境北側の聖なるカタルーニャの山「カネグー」に置かれたことだ。これにより、競技者はヨーロッパ最大のスカイダイビングセンターであるエンプリア・ブラバ周辺の制限空域をハイキングで迂回する必要がなくなった。ホストはルート終盤の近くに住んでおり、優勝者が到着するのを見に出かけ、2014年にクリーゲルが初優勝した際にはインタビューも行っている。
ジェシー・ウィリアムズの背景とX-Pyr参戦の動機
ジェシー・ウィリアムズはワシントン州ベリンガム出身で、2001年にニュージーランドで初めてパラグライダーを試したが、当時は3日間のコースを受講しただけだった。本格的にライセンスを取得し定期的に飛ぶようになったのは2008年、シアトル地域でのことだ。ハイク&フライレースとの最初の接点は2013年、レッドブルX-アルプスでホンザ・レマネジェクのサポーターを務めたことだった。2015年にも再びホンザをサポートしている。
ジェシーがX-Pyrに初めてエントリーした動機について、彼はこう語る。「X-アルプスは飛ぶことを考えるとかなり intimidate(威圧的)でしたが、X-Pyrはもう少し挑戦しやすいように思えました」。2015年末に応募し、受理されて大いに興奮したという。
ピレネーとアルプスの飛行条件の違い
ジェシーは両方の山脈を経験した立場から、その違いを詳細に説明する。ピレネー山脈はアルプスと比べて「北側と南側の顕著な温度差がなく、一方向への卓越風が常にある」という。彼の経験では、ピレネーではほとんどの場合、南からの風が支配的だ。フランス側の空気は常に冷たく、その冷気が山脈を越えて南側に流れ込むとき、「油と水のように」振る舞い、冷たい空気の薄い層が山脈をカスケード状に流れ落ちる。この現象はアルプスでも起こり得るが、ピレネーでは「危険で強風のフェーン状態」がより一般的だと彼は指摘する。
2016年大会の経験と学び
ジェシーは2016年のX-Pyrを「振り返れば非常にうまくいった」と評価する。初めてのハイク&フライレースでありながら、彼は「海から離れて、山が大きくなるにつれて良くなる飛行条件に早く到達するために、スタートダッシュを切って強くプッシュする必要がある」と正しく認識していた。しかし2日目にナビゲーションのミスを犯し、先行する4名のパイロットから遅れを取ってしまう。
3日目の終わり頃、彼はプッシュしすぎて「ITバンド痛(腸脛靭帯炎)」というストレス injury(傷害)を膝に負った。これは大腿四頭筋の酷使によるもので、数日間動きが鈍り、カステホン・デ・ソス地域を飛行できなかったことは「かなり落ち込んだ」という。それでも injury に負けず、なんとかレースを続けた。
最終日、彼は前述の北風(フランス側からの冷気の流入)を過小評価していた。カディ山脈に沿って飛行中、最後から2番目のターンポイントであるバガ近くに降下しようとしたとき、風は非常に強く乱流状態だった。ターンポイントへの到達を試みたが着陸に適した場所が見つからず、谷底に戻ろうとしたが畑にたどり着けず、やむなく樹木の中に降下し、最後の瞬間にリザーブパラシュートを投出して木々を落下するのを防いだ。「少し怖い経験だった」と振り返る。しかし幸いにも無事で、リザーブを木から回収した後、なんとかターンポイントをタグしてレースを続行し、最終的に5位でフィニッシュした。彼より上位に入ったのはマウラー、マイヤー、ドゥロガティ、そしてスペインのパイロット、ホセ・イグナシオ・アレバロだけだった。
プレッシャー下での意思決定と「カオス」への対処
X-Pyrでの経験がX-アルプスにどう活きたかという質問に対し、ジェシーは「プレッシャー下での意思決定」と「レース開始時に起こるカオスへの準備」が最大の学びだったと答える。彼は日常的なパラグライダー出発の例えを用いて説明する。「車に飛び乗って山に向かおうとするが、どの山が良い天気か決めかねて、車を走らせ始めたけど何かを忘れたことに気づいて戻る——そんなことはよくある」。レースではこれに「プレッシャー」「徒歩移動による山へのアクセス制限」「サポートクルーとの通信」「睡眠不足」「バンでの生活と装備の整理」「見知らぬ地域での飛行」といった要素が積み重なる。
「それらすべての compounding factors(複合的要因)がカオスを生み、非常にストレスフルになる」とジェシーは言う。重要なのは「トリアージ(優先順位付け)」だ。ほとんどの場合、クロスカントリー飛行に集中することが最も効率的だが、天候は完全には予測不能であり、計画を素早く変更する必要がある。「これだけのカオスを管理しながら、効率的に前進し続ける」ことが、この競技に特有のスキルセットだと彼は強調する。
2018年大会への準備:簡素化とリラックス
前回の準備は非常に詳細で、自作のリュックサックを作り、あらゆる地図を揃えるほどだった。しかし今回は「計画の細部を心配しすぎず、ストレスをためない」ことを目標にしている。X-アルプスで見たフェルディ・フォン・シェルビンやニック・ナネンスのようなトップパイロットは、装備の数グラムを削ることよりも「シンプルでリラックスしたアプローチ」をとっており、それが結果にも楽しさにも繋がっているとジェシーは観察した。
具体的な準備として最も重要なのは「フィジカルトレーニング」だ。特に海岸から離脱する最初の1〜2日は徒歩移動が主体となるため、トレイルランニングを中心に、実際のレース用バックパックよりはるかに重い荷物を背負っての登山も行っている。装備面では、前回より衣類を減らし、サポーターに頼らず自分で食料と水を運ぶことでプロセスを簡素化する計画だ。ピレネー山脈の道路は南北方向に走ることが多く、サポーターが車で東西に移動するのは困難だが、前回はサポートクルーがうまく対応してくれたという。
2018年の新ルートと戦略
2018年のルートは、スタートとゴールは前回とほぼ同じだが、中間に「dogleg(犬の後脚のような屈曲)」が追加され、かなり長くなっている。ジェシーは「フランス側に深く入り込む」この変更を歓迎している。興味深いのは、フランスの国立公園内にある制限空域(または禁止空域)のど真ん中にターンポイントが設定された点だ。このターンポイントには十分な半径が設定されており、パイロットは国立公園の北側または南側から飛行してタグすることができる。これにより「興味深い戦略的判断」が生まれるとジェシーは予想する。
彼はX-アルプスで、現代の優れた計器を持っていながらも禁止空域に侵入するパイロットが多かったことに驚いたという。疲労とストレスがミスを誘発するのだ。48時間のペナルティを考えると、禁止空域への侵入は常に頭の片隅にあり、X-アルプス中「永遠にパラノイア状態だった」と打ち明ける。
ファンとの関わりとスポンサーシップ
ジェシーはハイク&フライレースの観戦体験向上についても意見を述べる。サッカーの試合のように、天候や状況を解説する「ライブコメンテーター」がウェブサイト上にいれば、地図上をうごめく色付きの線が何を意味するのか、ファンによりよく理解してもらえるのではないかと提案する。彼自身も2018年大会では、自身とチームでソーシャルメディアの更新を増やし、直面する課題をよりリアルタイムで伝えたいと考えている。
資金面では、トーリーパインズグライダーポートがメインスポンサーとして継続支援しているが、X-Pyrの主な資金調達はRally Meのクラウドファンディングページに依存している。パラグライダーコミュニティからの小口支援が頼りであり、「仕事を休む時間、旅費、準備費用すべてを自分の予算で賄うことはできない」と正直に語る。装備については、X-アルプスではSkywalk X-Alps 3パラグライダーとRange X-Alps IIハーネスを使用しており、アメリカのSkywalkディーラーとの継続的な支援関係を模索中だ。
まとめ
このエピソードが聴き手に残すのは、エリートアスリートでさえ「楽しむこと」と「シンプルであること」を最優先事項として再認識しているという事実だ。ジェシー・ウィリアムズの語り口は、過酷な競技の裏側にある人間らしさ、失敗から学び、戦略を柔軟に変える姿勢に満ちている。特に、初出場で5位という好成績を収めながらも、装備の細部にこだわりすぎた前回の反省から「リラックス」と「独立」を重視する方向へシフトした点は、競技者だけでなく、あらゆる分野で「より良くやろう」と頑張る人々にとって示唆に富む。ピレネーとアルプスの気象条件の違い、レース中のカオスへの対処法、そしてコミュニティの支援に依存する現実——これらすべてが、一つのハイク&フライレースを多面的に理解するための貴重な窓口となっている。
要点
- X-Pyrは2012年に12名の参加者で始まり、現在は世界中のトップハイク&フライ競技者が集まる隔年大会に成長した。
- ピレネー山脈は南からの卓越風が常にあり、フランス側の冷気が山脈を越える際に危険なフェーン状態を引き起こしやすい。
- ジェシー・ウィリアムズは2016年X-Pyrに初出場で5位入賞。膝の怪我や最終日の樹木への緊急着陸を乗り越えた。
- 2018年大会では、装備の簡素化と「楽しむこと」を重視。前回のような細部へのこだわりを捨て、サポーターに頼らず自立する方針。
- 新ルートは中間に屈曲部が追加され全長が延長。フランス国立公園内の制限空域を回避する戦略的なターンポイント設計が特徴。
- レース中の「カオス」(睡眠不足、通信問題、不慣れな地形、天候変化)に対処するためのトリアージ能力が、ハイク&フライ競技の核心的スキル。
- 資金調達は主にクラウドファンディングとコミュニティ支援に依存。トーリーパインズグライダーポートがメインスポンサー。