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Paragliding Atlas by Aninder Singh · 2026年5月15日

Shane TigheのRoad to X-Alps:オーストラリアの平野からハイク&フライの頂点へ、空の工学的大征服

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この記事でわかること
  • オーストラリアの平坦地からアルプスの頂点へ:エンジニアが挑む「X-Alps」への道 概要 パラグライダー界最高峰のアドベンチャーレース「Red Bull X-Alps」に...
  • [0:02] 15年の飛行経験がもたらす「運」の正体 シェーン・タイは現在フランスのシャモニーに拠点を置き、アルプスでの生活を楽しんでいる。オーストラリア・ドルの下落で物...
  • 彼のパラグライダー人生は19歳で始まり、今年で15年目になる。オーストラリアでは主に沿岸飛行とアクロバティック飛行に熱中していたが、高度が取れないためアクロの練習には限界...
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Paragliding Atlas by Aninder Singh / Touch The Sky With Glory

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オーストラリアの平坦地からアルプスの頂点へ:エンジニアが挑む「X-Alps」への道

概要

パラグライダー界最高峰のアドベンチャーレース「Red Bull X-Alps」に、オーストラリア出身のエンジニア兼パラグライダーパイロット、シェーン・タイ(Shane Tighe)が挑む。標高差のない平坦な海岸線しかないオーストラリアで育った彼が、どのようにして世界最難関の「ハイク&フライ」レースにたどり着いたのか。ホストのアニンダー・シンが、15年のキャリア、2024年のX-Pyreneesでの表彰台獲得、そしてX-Alpsへの準備と意気込みを引き出す。このエピソードは、技術者としての冷静な分析力と冒険者としての情熱を併せ持つ男の、飾らない言葉で綴られる「自分自身のための挑戦」の物語である。

0:0215年の飛行経験がもたらす「運」の正体

シェーン・タイは現在フランスのシャモニーに拠点を置き、アルプスでの生活を楽しんでいる。オーストラリア・ドルの下落で物価は上がったものの、「大人の遊び場」と表現するこの地での生活を持続可能なものにしようと模索中だ。

彼のパラグライダー人生は19歳で始まり、今年で15年目になる。オーストラリアでは主に沿岸飛行とアクロバティック飛行に熱中していたが、高度が取れないためアクロの練習には限界があった。その後クロスカントリー(XC)飛行に移行し、平坦な土地での長距離飛行に挑戦したが、次第に飽きが来て海外の山岳地帯へと旅に出るようになる。「飛行は単なる数字を追うものではなく、美しい景色を楽しみ、ハイキングと組み合わせることで真価を発揮する」と彼は語る。

特筆すべきは、彼の飛行スタイルの多様性だ。パラモーター、スピードフライング、アクロ、XCとあらゆる分野に手を出し、「翼と紐があれば何でも飛ぶ」という姿勢を貫いてきた。オーストラリアでは、夜明け前にパラモーターで飛び、朝食後にアクロのトーイング、日中はXC、夕方には沿岸ソアリングと、一日で複数の種目をこなすこともあったという。

この経験値こそが、彼の「運」の正体だとシェーンは主張する。「パラグライダーには運が必要だと言われるが、なぜ同じパイロットが毎回『運がいい』のか?」というホストの問いに対し、彼は「それは単純に飛行時間の差だ。私は15年で4,000時間以上の飛行経験がある。それに勝るものはない」と答える。経験はショートカットできない。それが彼の信念だ。

9:32挫折と多様化:情熱を持続可能にする方法

シェーンのキャリアは決して順風満帆ではなかった。2019年、パラモーターで「スタビロタッチ」という技を練習中、草の長さが変わったことでラインが引っかかり、背骨を骨折する大怪我を負った。この出来事は彼のパラグライダーに対する姿勢を大きく変えるきっかけとなる。

「かつては情熱が執着になっていた」と彼は振り返る。しかし、登山、マウンテンバイク、カイトサーフィン、サーフィンなど他のスポーツに積極的に手を出すようになり、パラグライダーとの距離感を適切に保つ方法を学んだ。「条件が完璧でなければ、ハイクやマウンテンバイクに行けばいい。そうすることで、パラグライダーは常に情熱であり続けられる」と語る。

この多様化の重要性は、彼の所属するクラブの文化にも表れている。サンシャインコーストのクラブは非常に社交的で、飛行後は皆でパブに行くのが習慣だった。さらに、飛行できない日にはマウンテンバイクやサーフィンのグループチャットが活性化し、同じ仲間と別のアクティビティを楽しむ文化があった。「同じ情熱を共有できるコミュニティに囲まれることが、持続可能な飛行生活の鍵だ」と彼は強調する。

18:50X-Pyrenees 2024:準備不足が生んだ予想外の表彰台

2024年のX-Pyreneesは、シェーンにとって4年越しの挑戦だった。2020年に一度出場が決まっていたが、COVID-19で中止。その後モチベーションを失い、オーストラリア国内をバイクで旅するなど、パラグライダーから距離を置いた時期もあった。転機は2023年、X-Alpsのサポーターとして参加したことだ。「あのレースのエネルギーに再び火がついた」と彼は言う。

X-Pyreneesに向けての準備は、彼自身が認めるほど「不十分」だった。ルートの後半を全く調べておらず、中間地点のカステリョン以降の地形を把握していなかった。「トップ10に入れればいい方だと思っていた。まさか表彰台を取れるとは思っていなかった」と率直に語る。

しかし、この「期待値の低さ」が逆に彼を助けた。初日は雨の中、多くの選手が道路を走って先を急いだが、シェーンは「12日間のレースの初日に無理をする必要はない」とゆっくり構えた。結果的に、無理をした選手たちは怪我や疲労で後退していく。2日目、ほぼ全員がランディングを余儀なくされる悪条件の中、彼だけが飛び続け、一気に2位に浮上した。

「私は山ではなく、太陽を追いかけて飛んだ」と彼は説明する。曇天の中、日が当たっている平地を直線で結ぶ戦略が功を奏した。この判断力は、平坦なオーストラリアでの飛行経験が生んだものだ。「山にこだわらず、別のルートを選べる柔軟性が重要だった」と振り返る。

最終日、首位のシモンと同点で迎えた夜、彼はシモンの作戦を聞き出していた。「彼は翌日、ひたすらハイクして飛ぶと言っていた。私はあえて条件が良くなるのを待ち、彼を上空から追い越そうとした」が、それは実現しなかった。プレッシャーのかかる状況でのレース経験の不足を痛感した瞬間だった。「プレッシャーを楽しめるようにならないといけない。それが次の課題だ」と語る。

34:36サポーターからアスリートへ:視点の変化

シェーンはX-Alpsに2度サポーターとして参加した経験を持つ。この経験が彼の飛行スタイルを根本から変えた。「2017年にサポーターをやってから、アクロからアドベンチャー志向へと完全にシフトした。あの経験がなければ、今の自分はなかった」と語る。

サポーターとアスリートでは、求められる役割が全く異なる。サポーターは、飛行条件が良ければ一日中運転するだけだが、悪天候で飛行とハイクが混在する日は、山の中に着陸したパイロットを探して走り回る過酷な仕事になる。「アスリートの方が実は楽かもしれない。自分のラインを追うだけだから」と彼は笑う。

しかし、チーム編成は想像以上に困難を極めている。3週間もの時間を確保できる人材を見つけるのは至難の業だ。「多くの人が手を挙げてくれるが、仕事の都合で来られなくなる。経験者を連れてくるのが理想だが、オーストラリアから来たサポーターはアルプスの気象や言語、飛行文化を一から学ばなければならない」と課題を挙げる。

彼は現在、Burn Airというアプリを活用してアルプスの谷系や上昇気流のパターンを学習している。このアプリにはX-Alpsのルートや空域情報も統合されており、「新しい谷を学ぶのに最適なツール」と絶賛する。それでも、1,200kmに及ぶルートの全てを事前に把握するのは不可能に近い。「天候次第で山の反対側を飛ぶことになる。その場その場で判断するしかない」と、彼の「流れに身を任せる」哲学がここでも生きている。

42:41若いパイロットへのアドバイス:自分自身のために飛べ

ホストから「若いパイロットへのアドバイス」を求められ、シェーンは明確に答える。「プレッシャーでやるな。自分のためにやれ」。

具体的な準備として、彼は「ビバーク(自給自足)飛行」の重要性を強調する。「山頂に着陸し、自分で離陸場所を選び、いつ飛ぶかを決める。そういった判断力は、座学では身につかない。実際にビバーク飛行を経験することが何よりの訓練になる」と語る。

また、沿岸部でのグラウンドハンドリング(地上での翼操作)練習の価値も説く。「沿岸部では常に20km/h以上の風の中で飛ぶ。風に慣れ、どんな場所からでも離陸できる技術を身につける。それを山岳地帯の乱気流の中で洗練させる」というプロセスが、彼の基礎を作った。

「飛行時間が全ての答えだ」と彼は断言する。15年、4,000時間。この数字が彼の「運」を支えている。

44:22カラコルム単独ビバーク:人生最高のフライト

シェーンのキャリアで最も記憶に残るフライトは、パキスタンのカラコルム山脈での単独ビバーク飛行だ。彼はこのフライトの記事をオーストラリアの雑誌に寄稿している。

「高度が違いすぎる。酸素が必要だし、寒さ対策で何枚も重ね着しなければならない。すべてが難しい」と彼は言う。しかし、その過酷さが報酬を生む。約8時間の飛行で高度7,000mに達し、目前には8,000m級の峰々が広がる。日没時、巨大な山々が落とす影が急速に広がり、背後から迫ってくる光景は圧巻だったという。

彼は5,600mの高度から夕日を眺め、日没後に着陸した。唯一の平坦な山頂を見つけ、そこに降り立つまでに2時間を要した。翌日は観光名所の古い橋を目指して飛び、着陸後は地元の学生たちに中国国境まで連れて行ってもらうなど、飛行以外の体験も豊かだった。

「パキスタンに行く前、友人や家族は『危ないから行くな』と言った。でも実際は、最も歓迎される場所の一つだった。一人でいると、人々が家に招き入れて食事を振る舞ってくれる。代金も受け取らない」と、現地の文化に感銘を受けた様子だ。

ただし、彼はこの経験から安全に対する考え方を改めた。「当時は『何とかなる』という楽観的な態度で、深いラインを飛んでいた。もし墜落したら、救助はほぼ不可能だ。氷河に着陸したら、歩いて出るのに3日かかる。今なら、ああいうラインは飛ばない。少なくとも誰かと一緒でなければ」と、経験を経た慎重さを見せる。

まとめ

このエピソードが聴き手に残すのは、「自分自身のための挑戦」という純粋な姿勢の力だ。シェーン・タイは、山のない国から世界最高峰のレースに挑むという地理的不利を、15年の飛行経験と「流れに身を任せる」哲学で克服しようとしている。彼のストーリーは、準備不足を認めながらも結果を出したX-Pyreneesの経験、背骨骨折という大怪我からの回復、そして何より「楽しむこと」を最優先する姿勢によって、単なるサクセスストーリーを超えたリアリティを持っている。技術的な準備も重要だが、最終的に彼を支えているのは「すべてはうまくいく(EWOP)」という楽観主義と、プレッシャーに押しつぶされないための自己認識の深さだ。X-Alps本番で彼がどのような結果を残すかは未知数だが、その挑戦そのものが、多くのパイロットにとっての指針となるだろう。

要点

  • シェーン・タイは19歳から15年間のパラグライダー経験を持ち、アクロ、XC、パラモーター、スピードフライングと全分野に精通する「ウェルラウンドなパイロット」
  • 2019年の背骨骨折を機に、パラグライダーへの「執着」から「持続可能な情熱」へとシフト。他のスポーツとの多様化が鍵となった
  • 2024年X-Pyreneesではルート後半を全く調べずに臨みながら、初日の無理をしない戦略と「太陽を追う」飛行判断で表彰台を獲得
  • 「運」の正体は飛行時間の蓄積。15年4,000時間の経験が直感的な判断力を生む
  • X-Alpsではサポーター経験を活かし、Burn Airアプリでアルプスの気象を学習。ただしチーム編成の難しさが最大の課題
  • 若いパイロットへのアドバイスは「プレッシャーでやるな。自分のためにやれ」。ビバーク飛行とグラウンドハンドリングの実践が何より重要
  • カラコルムでの単独ビバーク飛行が人生最高のフライト。高度7,000m、8時間の飛行と日没後の着陸は、同時に安全意識の転換点にもなった
  • 「すべてはうまくいく(EWOP)」という哲学と「流れに身を任せる」姿勢が、彼のキャリア全体を支える基盤となっている
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