
コンシューマーAIの次は? | Josh Elmanがa16zに参加
- Josh Elman(ジョシュ・エルマン)がa16zにパートナーとして参加した。彼はLinkedIn、Facebook、Twitter、Robinhood、Disco...
- Elmanは、AIがこれまで主に生産性や仕事の代替に焦点を当てられてきたが、今こそ人々の日常生活や人生をより豊かにする方向へシフトすべきだと主張する。ChatGPTの...
- [0:00] コンシューマーAIの新たな局面:生産性から生活の質へ Elmanは、現在のAIを取り巻く議論の多くが生産性向上や仕事の代替に偏っていると指摘する。しかし...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The a16z Show / Andreessen Horowitz
- Josh Elmanは、AIの焦点を「生産性」から「人々の生活の質を高めること」へとシフトすべきだと主張する。ChatGPTがGoogle検索を「10倍以上」改善したように、消費者が「もう戻れない」と感じる体験が重要である。
- 最も重要な指標はリテンションである。短期間で多くのユーザーを獲得するよりも、少数でも熱心に使い続けるユーザーを見つけ、その体験を複利のように成長させることが成功の鍵となる。
- Robinhoodの成長は、無料取引というプロダクトと「株を贈る」リファラルプログラムの巧妙な設計によって実現した。宝くじ的要素が口コミを促進し、低コストでのユーザー獲得を可能にした。
- TikTokの成功は、強力なプロダクトループ(作成→共有→発見)と、それを加速するための大規模な有料広告の組み合わせによる。重要なのは、広告で獲得したユーザーのリテンションが極めて高かったことである。
- 現在のディストリビューションの最前線は「クリエイターとの信頼関係」である。クリエイターは実際の使用体験に基づいてプロダクトを紹介し、その推奨は広告よりもはるかに強力な影響力を持つ。
- AIエージェントはアプリを駆逐するのではなく、アプリへの入り口として機能する。ユーザーはエージェントを通じて目的に素早く到達し、その後はリッチなアプリ体験を楽しむことになる。
- スタートアップは、大企業がリリースしにくい「人間らしい複雑さ」を扱うプロダクト(例:Companion系)で優位に立てる。ただし、安全性や倫理的な責任には細心の注意を払う必要がある。
- 人々は「時間を節約」したいのではなく、「時間を有意義に過ごしたい」と考えている。AIプロダクトは、単なる時間つぶしではなく、ユーザーが振り返って「よかった」と思えるような「時間の質」を提供することを目指すべきである。
Josh Elman(ジョシュ・エルマン)がa16zにパートナーとして参加した。彼はLinkedIn、Facebook、Twitter、Robinhood、Discord、Musical.ly、TikTok、Appleと、過去20年にわたってコンシューマーテクノロジーの最重要プロダクトの形成に携わってきた人物である。本エピソードでは、ホストのAnish Acharya(アニッシュ・アチャリア)との対話を通じて、Elmanがこれらの経験から得た知見を基に、コンシューマーAIの現状と未来、プロダクトデザイン、ディストリビューション、ソーシャルネットワーク、クリエイターエコシステム、そしてテクノロジーと人間の行動の変化する関係性について深く掘り下げている。特に、AIがどのように新たな世代のコンシューマープロダクトを生み出すのか、発見とディストリビューションの方法がどのように変化しているのか、そしてファウンダーが過去のプラットフォームシフトから何を学べるのかについて、具体的な事例を交えながら議論が展開された。
Elmanは、AIがこれまで主に生産性や仕事の代替に焦点を当てられてきたが、今こそ人々の日常生活や人生をより豊かにする方向へシフトすべきだと主張する。ChatGPTのようなプロダクトがGoogleの検索を「10倍以上」改善したように、消費者が「もう以前の方法には戻れない」と感じるような体験を生み出すことが重要である。彼は、リテンションこそが最も重要な指標であり、いかに多くのユーザーを獲得するかではなく、いかにユーザーがプロダクトを生活の一部として定着させるかが成功の鍵だと強調する。また、AIエージェントがアプリを駆逐するのではなく、むしろアプリへの入り口として機能し、よりリッチな体験へと導くという見解を示した。さらに、RobinhoodやTikTokの成長事例を詳細に分析し、有料広告と口コミ、そして強力なリファラルプログラムの組み合わせがどのように機能したかを解説。最後に、彼がa16zで注力する分野として、人々の「時間の質」を高めるプロダクト、特に旅行、健康、金融、そして人と人との繋がりを支援する領域への投資意欲を表明した。
コンシューマーAIの新たな局面:生産性から生活の質へ
Elmanは、現在のAIを取り巻く議論の多くが生産性向上や仕事の代替に偏っていると指摘する。しかし、彼は「AIが人々の日常生活や人生をより豊かにする」という視点が欠けていると主張する。ChatGPTがGoogle検索を「10倍以上」改善したように、消費者が「もう以前の方法には戻れない」と感じるような、圧倒的な体験を生み出すことが重要である。これは単なる機能の向上ではなく、人々の習慣そのものを変えるようなインパクトを持つべきだという。
Elmanは、Appleでの経験を基に、AIを「パーソナルインテリジェンス」として捉えることの重要性を語る。彼がAppleで携わった新しいSiriは、単に世界知識にアクセスするだけでなく、ユーザーのメール、メッセージ、カレンダー、メモといったデバイス上の個人データを理解し、文脈に応じたアシスタンスを提供する。彼は、運転中に「ディナーに行く場所にナビゲートして」と話しかけただけで、テキストメッセージからレストランの場所を特定し、ナビゲーションを開始した体験を例に挙げ、これこそが真のアシスタントの姿だと述べる。
このようなパーソナルなAI体験は、スタートアップにとっても大きな機会を生み出す。Elmanは、AIが「自己探求の旅」を可能にする一方で、孤独な体験に陥りがちなリスクも指摘する。重要なのは、AIがユーザーを現実世界での活動や他者との繋がりへと導くようなプロダクトを設計することだ。彼は、AIが単なるツールではなく、人々がより良く時間を過ごすための「時間の質」を高める存在になるべきだと強調する。
Acharyaは、この議論をさらに深め、AIが「人間性を探求する」ための初めてのテクノロジーかもしれないと述べる。これまでのテクノロジーは主に知性を拡張するものであったが、AIは個人の内省や自己改善を促す可能性を秘めている。Elmanはこれに同意し、初デートの会話を練習するアプリや、ChatGPTを使って自分の文章を改善するといった具体的なユースケースを挙げ、AIが人々をより良くするためのツールとして機能する未来を描いた。
リテンションの絶対性:成長の本質を問い直す
Elmanは、一貫して「リテンションこそが最も重要な指標である」と主張する。消費者がプロダクトを試す意欲はこれまでになく高まっているが、本当に重要なのは、試したユーザーがそのプロダクトを生活の一部として定着させるかどうかだ。彼は、多くのユーザーを短期間で獲得することよりも、少数でも熱心に使い続けるユーザーを見つけ、その体験を繰り返し、複利のように成長させることが重要だと説く。
この考え方は、Paul Grahamの「小さな市場を独占せよ」という教えや、Andrew Chenの「大きなネットワークは小さなネットワークの集合から作られる」というフレームワークにも通じる。Elmanは、優れたファウンダーは「10億ユーザー規模のビジョン」と「今日、目の前の小さなコミュニティを勝ち取る」という二つの思考を同時に持つことができると述べる。Robinhoodを例に挙げ、彼らは「すべての人のための金融」という大きなビジョンを持ちながらも、最初は「すでに投資に積極的である人々」に焦点を当て、彼らにとってより良いプロダクトを提供することから始めた。
Elmanは、ChatGPTの爆発的な成長も、このリテンションの原則に基づいていると分析する。ChatGPTは、Google検索では解決できなかった多くのクエリに対して「10倍以上」の体験を提供した。ユーザーはその体験に衝撃を受け、「もう以前の方法には戻れない」と感じ、自然と口コミで広がっていった。つまり、優れたリテンションが結果として大きな成長を生み出したのである。
Acharyaは、この文脈で「有料広告はスケールしない」という通説について質問する。Elmanは、有料広告自体を否定するわけではないが、その使い方に注意を促す。有料広告は、すでに高いリテンションを持つプロダクトの成長を加速させる「触媒」として機能する場合に有効である。しかし、10人のユーザーを獲得するために多額の費用を費やし、そのうち1人しか定着しないような状況では、コストが増大するだけでスケールしない。重要なのは、有料広告で獲得したユーザーが、プロダクトを気に入り、さらに口コミで広げてくれるかどうかである。
ディストリビューションの進化:バイラリティからクリエイターエコノミーへ
Elmanは、ディストリビューションの方法が時代とともに大きく変化してきたと説明する。ソーシャル時代の初期には、バイラリティ(口コミによる爆発的な拡散)が主要なチャネルだった。しかし、ユーザーが招待に疲れ、バイラル効果は低下した。その後、Google検索を最適化するSEOが重要になったが、現在最も効果的なディストリビューション手段は「クリエイターとの関係」であると彼は指摘する。
クリエイターは、単なる有名人のエンドースメントとは異なり、自らの情熱や実際の使用体験に基づいてプロダクトを紹介する。視聴者は、クリエイターとの間に信頼関係を築いており、その推奨は広告よりもはるかに強力な影響力を持つ。Elmanは、Discordの成長を例に挙げ、大規模なインフルエンサーではなく、ゲーム仲間をまとめる「一人の人物」が「これまで使っていたツールよりずっと良い」と勧めたことが、コミュニティ全体の移行を促したと説明する。これは「ピュアな口コミ」であり、クリエイターエコノミーはこの原理をスケールさせたものだ。
Acharyaは、このクリエイターチャネルが従来のソーシャルネットワークが持っていた「ネットワーク効果」と比較して弱いのではないかと疑問を呈する。しかしElmanは、クリエイターこそが「信頼」に基づいた最も強力なネットワークを構築していると反論する。従来のアスリートによるシリアルのエンドースメントとは異なり、クリエイターは自分の健康ルーチンや旅行プランを実際に体験し、良かった点も悪かった点も正直に共有する。この透明性と信頼が、現代のディストリビューションの基盤となっている。
AIネイティブなコンシューマープロダクトにとって、このクリエイターチャネルは十分なのかという問いに対して、Elmanは、今後数年間で解明すべき課題だとしながらも、楽観的な見方を示す。今日では、かつてないほど短期間で1,000万、5,000万ユーザーを獲得することが可能になっている。重要なのは、ディストリビューションの方法そのものよりも、ユーザーが定着し、生活の一部となるようなプロダクトを作ることだ。ChatGPTがそうであったように、圧倒的な体験は自然と人々の口コミを生み、結果として大規模なディストリビューションを実現する。
ケーススタディ:RobinhoodとTikTokの成長メカニズム
Elmanは、自身が深く関わったRobinhoodとTikTok(旧Musical.ly)の成長を詳細に分析し、成功の背後にあるメカニズムを解き明かす。Robinhoodは、無料取引という革新的なプロダクトを核に、美しいデザインで信頼を構築した。初期はRedditコミュニティでの口コミが成長を牽引したが、真のブレイクスルーは「株を贈る」リファラルプログラムだった。
このプログラムの巧妙な点は、単に10ドルを贈るのではなく、実際の株式を贈ったことにある。株式の価値はランダムであり、時には100ドル以上の株が当たることもあった。この「宝くじ的要素」がユーザーの興奮を呼び、口コミを促進した。また、10ドルでは株を買えないが、2ドルの株でも「一株所有している」という感覚が、投資初心者にとっては大きな価値となった。この仕組みにより、Robinhoodは有料広告よりもはるかに低コストで、かつ効果的にユーザーを獲得することに成功した。
一方、TikTokの成長は、プロダクトのループと大規模な有料広告の組み合わせによって実現した。Musical.lyは、リップシンク動画を簡単に作成し、Instagramなど他のプラットフォームに投稿できるように設計されていた。動画には常にMusical.lyのロゴが表示され、それが無料の広告として機能した。さらに、アプリ内では厳選されたフィードが提供され、ユーザーは友達の投稿とともに、人気クリエイターのコンテンツも楽しむことができた。
ByteDanceによる買収後、TikTokはこの強力なプロダクトループに大規模な有料広告を投入した。FacebookやTwitterなど、あらゆるソーシャルメディアで広告を展開し、ユーザーを獲得した。しかし、ここで重要なのは、広告で獲得したユーザーのリテンションが極めて高かったことだ。アプリを開いて数回スワイプするだけで、高度にパーソナライズされたフィードが表示され、ユーザーはすぐに没頭した。Elmanは、同様に巨額の広告費を投じたQuibiが失敗したのとは対照的に、TikTokは「リテンションが機能していた」から成功したと結論付ける。
ラボ vs. スタートアップ:新たなプラットフォームシフトの幕開け
Acharyaは、AI業界における「ラボ(OpenAI、Google、Anthropicなど)がすべてを勝ち取るのか」という根本的な問いを投げかける。Elmanは、この問いは過去のプラットフォームシフトのたびに繰り返されてきたと指摘する。20年前は「Googleがすべてをやる」、10年前は「Appleがすべてをやる」と言われたが、その後に多くのスタートアップが誕生し、巨大企業へと成長した。彼自身も10年前、10億ユーザーを超えるネットワークが存在する世界で、新たなコンシューマースタートアップをゼロから構築することに懐疑的になり、ベンチャー投資から離れてRobinhoodやAppleで実際にプロダクトを構築する道を選んだ。
しかし、現在のAIの波は、再びスタートアップに大きなチャンスをもたらしているとElmanは確信する。主要なチャットボットやアシスタントは多くのタスクをこなすだろうが、人々の生活のあらゆる側面、情報の取得方法、他者との繋がり方、探求の仕方は根本的に変化する。この変化の過程で生まれる無数のニーズを満たすのは、大手テクノロジー企業やラボだけではない。
特に、スタートップが優位に立てる領域として、Elmanは「Companion(コンパニオン)系プロダクト」を挙げる。こうしたプロダクトは、意見の相違、確率的な振る舞い、セクシュアリティなど、人間らしい複雑な要素を扱う。大企業では、コンプライアンスやブランドリスクの観点から、こうした不確実性の高い機能を積極的にリリースすることが難しい。スタートアップは、このような「人間のための」プロダクトを迅速に実験し、提供できる立場にある。
ただし、Elmanはこの分野には大きな責任が伴うとも警告する。特に子供や精神的な課題を抱えるユーザーに対しては、安全性に細心の注意を払う必要がある。彼は、新しいSiriのように「タスクを完了させる」ことに特化したプロダクトと、人間関係を模倣するようなプロダクトは、明確に区別されるべきだと述べる。前者は「魂を持たない」ツールとして、後者は「人間性を増幅する」ツールとして、それぞれ異なる役割を果たすことになる。
時間の質と生成AIネイティブ世代
Elmanは、Eugenia Kuyda(ReplikaのCEO)の言葉を引用し、「人々は時間を節約したいのではなく、時間を有意義に過ごしたいのだ」と述べる。この視点は、コンシューマー向けプロダクトの設計において極めて重要である。エンタープライズ向けプロダクトが「問題解決」のために使われるのに対し、コンシューマーは「どのように時間を過ごすか」という観点でプロダクトを選ぶ。単に無限にスクロールさせるような「時間つぶし」ではなく、ユーザーが「ああ、これをやってよかった」と振り返られるような「時間の質」を高めるプロダクトこそが、真の価値を生み出す。
この議論は、現在大学を卒業しつつある「ChatGPTネイティブ世代」にも関連する。彼らは大学生活のすべてにおいてChatGPTを利用してきた最初の世代である。Elmanは、彼らがChatGPTを単に課題を代行させるためではなく、「自分の作業をより良くするため」に使っているという話に希望を見出す。自分の書いた文章を改善するためのアドバイスを求めたり、アイデアを練るための対話相手として活用したりと、AIを「付加価値を生むツール」として使いこなしている。
Elmanは、この世代がAIを駆使して、かつてないほど洗練された「ソーシャルな頂点捕食者」になる可能性について言及する。彼らは完全にオンラインで育った世代であり、テクノロジーの恩恵と危険性の両方を知っている。彼らがAIを活用して、より深い会話や人間関係を築くことができるようになれば、皮肉にもテクノロジーが「会話の技術」を復活させることになるかもしれない。
最後に、Elmanはa16zのパートナーとして、特に「人々が時間を有意義に過ごす」ことを支援するプロダクトに焦点を当てたいと語る。具体的には、旅行、健康、金融、そして人と人との繋がりをより良くするためのプロダクトだ。彼は、これらはまだAIによって十分に再発明されていない領域であり、スタートアップにとって大きな機会が眠っていると確信している。彼は、プロダクトループの設計、成長戦略、そしてストーリーテリングにおいて、これまでの経験を活かしてポートフォリオ企業を支援していく決意を表明した。
結びに
本エピソードは、コンシューマーテクノロジーの最前線を20年以上にわたって見てきたJosh Elmanの視点から、AI時代のコンシューマープロダクトの本質を深く掘り下げた内容となった。彼の主張の核心は、AIは単なる生産性向上ツールではなく、人々の生活の質を根本的に変える可能性を秘めているという点にある。特に印象的だったのは、リテンションの絶対的な重要性を繰り返し強調した点だ。いかに多くのユーザーを獲得するかではなく、いかにユーザーの生活に深く根付くプロダクトを創り出すかが、長期的な成功の鍵である。
また、RobinhoodやTikTokの成長を、単なる成功事例としてではなく、その背後にあるメカニズム(リファラルプログラムの巧妙な設計、プロダクトループと有料広告の組み合わせ)を詳細に分析した点は、実践的な学びに富んでいる。さらに、「ラボがすべてを勝ち取るのか」という問いに対して、過去のプラットフォームシフトの歴史を引き合いに出しながら、スタートアップにこそ大きなチャンスがあると力強く語った点は、起業家や投資家に勇気を与えるだろう。このエピソードは、AIという新たなプラットフォームにおいて、消費者向けプロダクトの未来を切り拓くための、具体的かつ本質的な洞察に満ちている。
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