motpod
The a16z Show · 2026年9月2日

モデルナの個別化がんワクチンの内部

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • mRNA技術をがん治療に応用するという、Modernaが創業当初から掲げてきた構想は、2026年8月、ついに歴史的な節目を迎えた。同社とMerckが共同開発する個別化...
  • 本エピソードの核心は、この治療法が「個別化」を前提に設計されているという点にある。がんはDNAの病気であり、患者ごとにその変異の特徴が大きく異なる。Modernaのア...
  • [0:00] 歴史的転換点:第3相試験成功が意味するもの Bancel氏は、まずこの発表の重みを明確に位置づけた。ModernaとMerckが10年間にわたり開発を進...
こんな人向け

自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。

出典Podcast

The a16z Show / Andreessen Horowitz

要点
  1. ModernaとMerckが開発する個別化mRNAがん治療薬は、メラノーマを対象とした第3相試験で主要評価項目(無再発生存期間)と副次評価項目(遠隔転移なし生存期間)を達成。20年以上、1,000件以上が失敗してきたがんワクチン分野で初の成功例となった。
  2. 治療の仕組みは、患者の腫瘍と健康な細胞のDNAを一塩基単位で比較し、アルゴリズムで選んだ最大34個の変異を一つのmRNA分子にコード。免疫系にがん細胞の「シグネチャー」を正確に教え込むことで、攻撃を誘導する。
  3. 選択される抗原の約90%は患者間で異なるため、個別化は「まれなケース」ではなく治療法の本質。この事実が、製造プロセスに「一人ひとりのために異なる薬を作る」という前代未聞の課題を課す。
  4. 製造プロセスは、生検から投与まで約42日間(needle-to-needle)に短縮。mRNAは「情報分子」であるため、CAR-T療法と異なり患者の細胞を体外に取り出す必要がなく、すべて試験管内の酵素反応で完結する。
  5. 規制は製品単位ではなく、製造プロセス全体を承認する「プロセスBLA」の枠組みを想定。FDAは「同一の入力から同一の出力が得られるか」というプロセスの頑健性を審査する。
  6. 今後の展開は三つのベクトルで進む。(1) Keytrudaが効くがん種(肺、腎臓、膀胱)への適応拡大、(2) ステージ1肺がんなど早期がんへの単剤での再発予防適用、(3) Keytrudaが効かない膵臓がんや胃がんへの挑戦。
  7. 現在の治療薬は「Intismuran version 1.0」であり、第3相試験のデータを基にアルゴリズムを改善し、効果が出ない約20%の患者への対応を目指す。AIを活用したデータ分析も進める。
  8. 長期的には、mRNA技術を自己免疫疾患の治療に応用する構想。免疫系が自分自身を攻撃する「原因」を、免疫系そのものを再教育することで治療する、個別化されたアプローチも研究されている。
アプリで聴く・質問する

音声を聴く・要約に質問・好きな言語や深さで生成

他のエピソード

mRNA技術をがん治療に応用するという、Modernaが創業当初から掲げてきた構想は、2026年8月、ついに歴史的な節目を迎えた。同社とMerckが共同開発する個別化mRNAがん治療薬が、悪性黒色腫(メラノーマ)を対象とした第3相臨床試験で主要評価項目を達成したのだ。これは、20年以上にわたり1,000件以上の臨床試験が失敗してきた「がんワクチン」の分野において、初めて成功が実証された瞬間であり、mRNA技術の可能性を一変させる出来事と言える。a16zのゼネラルパートナーであるJorge Conde(ホルヘ・コンデ)がModernaのCEOであるStéphane Bancel(ステファン・バンセル)を迎え、この画期的な治療法の仕組みから、患者一人ひとりに異なる薬剤を製造するという前代未聞のオペレーション、そして未来のがん治療の展望までを掘り下げた。

本エピソードの核心は、この治療法が「個別化」を前提に設計されているという点にある。がんはDNAの病気であり、患者ごとにその変異の特徴が大きく異なる。Modernaのアプローチは、患者の腫瘍と健康な細胞のDNAを一文字単位で比較し、アルゴリズムを用いて最も関連性の高い変異を最大34個選び出し、それらを一つのmRNA分子にコードするというものだ。これは、免疫系を無差別に活性化させるのではなく、がん細胞の「特徴」を正確に教え込む、極めて精緻な教育プロセスである。そして、この個別化こそが、従来のアプローチが失敗してきた理由に対する答えであり、同時に、製造プロセスにおける想像を絶する課題でもある。Bancel氏は、この課題を克服するためのエンジニアリングへのこだわり、そして規制当局との対話の歴史を詳細に語り、単なる科学研究の枠を超えた、産業としての挑戦の内側を明かした。

0:00歴史的転換点:第3相試験成功が意味するもの

Bancel氏は、まずこの発表の重みを明確に位置づけた。ModernaとMerckが10年間にわたり開発を進めてきた個別化mRNAがん治療薬は、メラノーマを対象とした第3相試験で主要評価項目である無再発生存期間(recurrence-free survival)を達成した。これは、治療後にがんが再発しない期間を延長する効果を示すものだ。さらに、同試験の最初の中間解析で、副次評価項目である遠隔転移なし生存期間(distant metastasis-free survival)も達成した。これは、がんが原発巣から離れた臓器に転移するまでの期間を延長することを意味し、Bancel氏自身も「我々の予想を超える結果だった」と驚きを隠さなかった。

この結果の臨床的な意義は、既存の標準治療との比較において際立つ。現在のメラノーマ治療の中心は、免疫チェックポイント阻害薬であるKeytruda(ペムブロリズマブ)だ。Keytruda単独療法では、治療から5年後に疾患が認められない患者は約60%にとどまる。つまり、40%の患者にとっては効果が不十分であり、しかも免疫関連の重篤な副作用(1型糖尿病やループス、クローン病など)を発症するリスクを伴う。Modernaの治療薬は、このKeytrudaと併用することで、その効果を大幅に上回る可能性を示した。Bancel氏は、2026年春のASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表した第2相試験のデータに言及し、治療から5年後に約80%の患者が無病状態を維持していたと説明。がん治療において5年は「治癒」と見なされる期間であり、この数字は患者と医療現場に大きな希望をもたらすものだ。

この成功は、がんワクチン研究の歴史における長い失敗の連鎖を断ち切るものでもある。Bancel氏は「この分野は20年以上にわたり、1,000以上の臨床試験がすべて失敗してきた」と指摘する。その上で、今回の成功要因を、単なる技術の進歩ではなく、mRNA技術と個別化という二つの要素の組み合わせにあると分析する。この結果を受けて、ModernaとMerckは規制当局への申請準備を進めており、2027年の実用化を目指している。マサチューセッツ州の工場はすでに稼働準備が整っており、「一人ひとりのための製品を、一度に一人分ずつ製造する方法を確立した」とBancel氏は語り、産業化への自信を示した。

0:00なぜ今、成功したのか:mRNAと個別化の革新性

従来のがんワクチン研究が失敗してきた理由を、Bancel氏は二つの大きな違いがあると説明する。一つ目は、mRNA技術そのものの特性だ。ModernaのmRNAは、注射されると体内のリンパ節に移動し、抗原提示細胞(APC)と呼ばれる免疫細胞の内部に入り込む。そして、その内部でmRNAがコードする情報(がんの変異タンパク質)を翻訳し、細胞の内側から免疫系に提示する。これは、従来のタンパク質やペプチドを用いたワクチンが、細胞外で免疫系に認識されるのとは本質的に異なるメカニズムだ。Bancel氏は、スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)での研究を挙げ、この「内側からの抗原提示」が免疫応答の質を根本的に変えると強調する。

二つ目は、個別化への徹底したこだわりだ。過去の試みの多くは、多くの患者に共通する「共有抗原」を標的にしていた。しかし、がんはDNAの病気であり、その変異は患者ごとに千差万別だ。Modernaのアプローチは、患者の腫瘍生検からDNA(約30億塩基対)をすべて解読し、同じ患者の健康な細胞のDNAと一塩基単位で比較する。そして、アルゴリズムを用いて、免疫系が攻撃すべき最も関連性の高い変異を最大34個選び出し、それらを連結した一つの大きなmRNA分子を設計する。このmRNAは、患者自身の免疫系に「見逃していたがん細胞のシグネチャー」を教え込むための設計図となる。

この個別化の度合いは、想像を絶するものだ。Modernaが第2相試験で示したデータによれば、選択される抗原の約90%は患者間で異なるという。つまり、これは「まれなケース」への対応ではなく、治療法の本質そのものが個別化なのである。Bancel氏は、開発初期には抗原の重複率が2%なのか90%なのか全く予想がつかなかったと振り返る。結果として90%が異なるという事実は、「この治療法は個別化によってのみ成立する」という揺るぎない原理を証明した。そして、この発見は、製造プロセスにおける「一人ひとりのために異なる薬を作る」という、製薬業界の常識を覆すオペレーション上の課題を生み出すことになった。

0:0034個の変異を選ぶ「ブラックボックス」とアルゴリズムの進化

患者ごとに異なるがん細胞の変異の中から、どの34個を選び出すのか。この選択を担うアルゴリズムは、Modernaの「インテリジェンス」の中核であり、同社のノウハウが最も凝縮された領域だ。Bancel氏は、その詳細を「ブラックボックス」と表現しつつも、そのエッセンスを説明した。アルゴリズムの基礎は、免疫学と腫瘍学の分野で公開されているデータベースや文献、そして第一線の科学者や医師の知見から構築されている。その上に、Modernaが自社の臨床試験や研究を通じて蓄積してきた独自のデータ、さらには診断や細胞治療の分野で豊富なデータを持つ企業との提携から得たT細胞マッピングなどの情報が組み合わされている。

重要なのは、このアルゴリズムが「完成形」ではないという点だ。Bancel氏は、今回の第3相試験で使用されたアルゴリズムを「Intismuran(インティスムラン)version 1.0」と呼ぶ。このアルゴリズムは第1相試験から一貫して同じものが使われてきたが、その開発は10年前に遡る。つまり、現在のバージョンは、10年間の臨床データと科学の進歩をまだ十分に反映していない「初期型」に過ぎないというのだ。Bancel氏は、AIの進化に例え、「現在のIntismuranは、医療史上、今後見ることになる中で最も性能の低いバージョンだ」と述べ、今後の改善の大きな可能性を示唆した。

この「1.0」から「2.0」への進化は、すでに始まっている。第3相試験で得られた患者の血液サンプルや全ゲノム配列データを活用し、治療に反応した患者と反応しなかった患者の違いを徹底的に分析する計画だ。Bancel氏は「成功から学ぶよりも、失敗から学ぶことの方が常に多い」と語り、特に治療から5年後も無病状態に至らない約20%の患者に焦点を当てる考えを示した。もしアルゴリズムを改善する科学的な根拠が見つかれば、FDA(米国食品医薬品局)と協議の上、慎重にバージョンアップを図る。この不断の改善サイクルは、メラノーマ以外のがん、特に膵臓がんなど免疫療法が効きにくいとされる難治性がんへの応用可能性を広げる鍵となると期待されている。

0:00針から針へ42日:個別化医療の製造オペレーション

この治療法の最大の特徴であり、課題でもあるのが、その製造プロセスだ。患者ごとに異なる薬剤を、いかに迅速かつ安定的に供給するのか。Bancel氏は、この課題を「CAR-T細胞療法」との比較で説明する。CAR-T療法は、患者の免疫細胞を体外に取り出し、遺伝子工学的にがん細胞を攻撃するよう reprogramming(再プログラム)してから体内に戻す、文字通りの「生きた薬」だ。一方、Modernaのアプローチは、患者の細胞を一切取り出す必要がない。必要なのは「情報」だけであり、それがmRNAの本質的な利点だとBancel氏は強調する。

「mRNAは情報分子です。私たちが研究室から得るのは、あなたの健康な細胞とがん細胞の塩基配列、つまり単なるファイルです」。この情報を基に、DNAを合成し、そこからRNAを転写し、脂質の膜で包む。この一連のプロセスは、すべて試験管内の水溶液中で行われる酵素反応であり、CAR-T療法のように生きた細胞を巨大なリアクターで培養する必要がない。そのため、設備は非常にコンパクトになり、製造プロセスは生物学的なものというより、むしろ化学合成(低分子医薬品)に近いものになる。この特性が、個別化医療を産業として成立させるための基盤となっている。

現在、生検から患者への投与までのリードタイムは、約42日間(Bancel氏は「needle-to-needle」と表現)に短縮されている。しかし、これはまだ改善の途上だ。Bancel氏は、エンジニアとしての視点から、このプロセスを「時間」と「面積」という二つのベクトルで最適化しようとしている。時間とは、製造サイクルの短縮であり、面積とは、無菌室(クリーンルーム)内での製造装置の設置面積の削減だ。装置を小型化・高効率化することで、同じ施設面積でより多くの薬剤を生産でき、固定費を大幅に削減できる。工場見学の際には、クリーンルームからコンピューティング資源を追い出し、わずかなスペースも無駄にしないよう指示するという、Bancel氏の「面積へのこだわり」は、個別化医療のコスト構造を理解する上で示唆的だ。すでにメラノーマ市場をカバーできる年間数万回分の製造能力をマサチューセッツ州の工場で確保しており、技術改善によりさらに増強可能だとしている。

0:00規制の枠組み:プロセス承認という新しいパラダイム

患者ごとに異なる薬剤を製造するというパラダイムは、従来の医薬品規制の枠組みにも根本的な問いを投げかける。通常、医薬品はその「製品」自体が承認されるが、個別化医療においては、製品は患者の数だけ存在することになる。では、FDAは何を承認するのか。Bancel氏は、この疑問に対して明確な答えを示した。それは「プロセス」の承認である。幸いなことに、この分野には先例がある。患者自身の細胞を改変するCAR-T細胞療法も、製品単位ではなく、製造プロセス全体を承認する「プロセスBLA(生物学的製剤承認申請)」として承認されている。Modernaの個別化がん治療薬も、同じ道を辿ると考えられている。

このプロセス承認の考え方は、Modernaが臨床開発を開始した当初から、FDAとの対話の中心にあった。Bancel氏は、第1相試験を開始する前から、FDAに対して「プロセスIND(治験開始申請)」を提出し、製造プロセスの安全性と管理性について承認を得ていたと説明する。さらに、第3相試験を開始する前には、試験デザインや製造プロトコルについてFDAと合意するための「エンド・オブ・フェーズ2ミーティング」を実施している。つまり、10年間にわたり、FDAと緊密な対話を重ねてきた上での今回の成果であり、規制当局がこの新しい技術を初めて目にするわけではないのだ。

では、FDAはプロセス承認において、具体的に何を検証するのか。Bancel氏は、その本質を「同一の入力(患者の腫瘍と血液サンプル)から、同一の出力(最終製品)が得られるか」という頑健性(ロバストネス)の証明にあると語る。製造プロセスは複雑なブラックボックスであり、その各段階で品質管理が徹底されていなければ、患者ごとに異なる製品の品質を保証することは不可能だ。FDAは、このプロセス全体が厳格なGMP(適正製造規範)基準に適合しているか、そして、どのような入力に対しても一貫した品質の出力を生み出すことができるかを厳しく審査することになる。Bancel氏は、自身の家族の安全を考えれば、このような厳格な審査は当然であり、FDAの要求は極めて正当だと述べ、規制当局との建設的な関係構築の重要性を強調した。

0:00メラノーマの先へ:膵臓がん、自己免疫疾患への応用

今回の成功は、メラノーマ治療の枠を超え、mRNA技術をがん治療の最前線に押し上げる可能性を秘めている。Bancel氏は、今後の展開を三つのベクトルで説明する。第一は、Keytrudaが効果を示すがん種への適応拡大だ。Modernaは、mRNAがん治療薬とKeytrudaの作用機序が「直交的(orthogonal)」であると考える。つまり、Keytrudaが免疫系のブレーキを解除するのに対し、mRNAがん治療薬は免疫系に「何を攻撃すべきか」を教える、補完的な関係にある。この理論に基づき、肺がんでは第3相試験、腎臓がんと膀胱がんでは第2相試験がすでに進行中だ。これらの試験で、Keytruda単独療法を上回る効果が実証されるかが、次の焦点となる。

第二のベクトルは、より早期のがん患者への適応だ。現在の標準治療では、ステージ1の肺がん患者は、再発リスクを考慮しつつも、重篤な自己免疫疾患の副作用を伴うKeytrudaを積極的には投与しない。しかし、mRNAがん治療薬は、その副作用が一般的なワクチンと同様に軽微であるため、手術後の再発予防として単剤で使用できる可能性がある。Modernaは2026年春、ステージ1の肺がん患者を対象に、mRNAがん治療薬を単剤で用いる第3相試験を開始したと発表した。これは、がん治療の概念を「進行がんの治療」から「早期がんの再発予防」へと拡張する、画期的な試みだ。

第三の、そして最も挑戦的なベクトルは、Keytrudaが効果を示さない難治性がんへの挑戦だ。膵臓がんや胃がんは、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいがんとして知られている。しかし、mRNAがん治療薬の作用機序はチェックポイント阻害薬とは根本的に異なるため、これらのがんに対しても効果が期待できるというのが、ModernaとMerckの見立てだ。Bancel氏は、膵臓がんについて、KRAS遺伝子変異を標的とする新薬(Revolution Medicines社)との併用療法の可能性にも言及した。作用機序の異なる薬剤を組み合わせることで、相乗効果が生まれる可能性があるという。さらに、長期的な展望として、mRNA技術を自己免疫疾患の治療に応用する構想も明かした。これは、免疫系が自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患の「原因」を、免疫系そのものを再教育することで治療しようという、野心的な試みだ。Bancel氏は、個別化された自己免疫治療薬の開発にも言及し、mRNAプラットフォームの無限の可能性を示唆した。

結びに

今回のエピソードは、単なる臨床試験の成功報告ではなく、医療のパラダイムシフトを予感させる、極めて示唆に富む内容だった。Bancel氏の語り口は、科学者としての冷静さと、エンジニアとしての情熱が同居しており、mRNA技術が持つ「情報を設計図として、体内で治療薬を生産する」という本質的な革新性を、改めて強く印象づけた。特に、患者ごとに異なる薬剤を製造するという課題を、時間と面積というエンジニアリングの指標で語る姿は、製薬業界の常識を覆すものであり、彼がCEOとして単なる科学の進歩だけでなく、産業としての実現可能性を常に意識していることを示している。

このエピソードが重要なのは、それが「始まり」を伝えているからだ。Bancel氏自身が認めるように、今回の結果は「Intismuran version 1.0」によるものに過ぎず、アルゴリズムの改善や、他のがん種への応用、さらには自己免疫疾患への展開など、未来の可能性は計り知れない。20年以上にわたり失敗が続いたがんワクチン研究が、mRNA技術と個別化という二つの革新によって、ついに実を結ぼうとしている。この歴史的な瞬間を、開発者の言葉で詳細に記録した本エピソードは、医療の未来を理解する上で欠かせない一級の資料と言えるだろう。

あわせて読む

同じ番組の別エピソードや、近いテーマの記事から続けて読めます。