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The a16z Show · 2026年8月17日

StripeのAI戦略:より多くを構築し、より少なくはしない

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • Stripeはもはや単なる決済会社ではない。a16zのゼネラルパートナーであるDavid Georgeが、Stripeのプロダクト&ビジネス担当プレジデントであるWi...
  • 対談の後半では、AIエージェント同士が商取引を行う「エージェンティックコマース」の未来像が語られる。Willは、チェックアウトページが人間にとっても消滅するという大胆...
  • [2:05] Stripeの現在地:決済会社から金融インフラプラットフォームへ Willは、Stripeの社内での自己認識を明確に語る。同社は自らの価値提案を「決済会...
こんな人向け

自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。

出典Podcast

The a16z Show / Andreessen Horowitz

要点
  1. Stripeは決済会社から、約25〜30のブランド製品を持つ金融インフラプラットフォームへと進化し、「摩擦を減らし、主体性を高める」ことを使命としている。
  2. AI時代の新たな問題として無料トライアル悪用が発生し、Stripeは基盤モデルと埋め込みを使った検知パイプラインを週末で構築。ElevenLabsは1日2,000件の悪用をブロックしている。
  3. 2026年上半期の新規サインアップは前年比50%増、2026年コホートの収益中央値は2025年比50%増、2025年コホートは2024年比70%増と、AI企業の収益化が加速している。
  4. 社内コーディングエージェント「Stripe Minions」は週に7,000件のプルリクエストを生成し、全PRの約30%を占める。組織はよりフラットで小規模なチームへと再編されている。
  5. StripeはAIの生産性向上をコスト削減ではなく「すべてを構築する」ための機会と捉え、社内ナレッジAI「Kai」によりセールス生産性が20%向上したが、人員削減ではなく増員を計画している。
  6. エージェンティックコマースはまだ「プリミティブ欠如」段階にあり、StripeはTempoと「マシン決済プロトコル」を開発。チェックアウトページは人間にとっても消滅するとWillは予測する。
  7. ステーブルコインは約150カ国で利用可能で、Stripe Treasuryにネイティブ統合。送金会社Felixは数年で米墨間送金の5〜10%を処理するまでに成長した。
  8. 決済特化型ブロックチェーン「Tempo」は、プライバシー、スループット、手数料の安定性を重視して設計されており、DoorDashなどと協力しStripeのデフォルトチェーンを目指す。
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他のエピソード

Stripeはもはや単なる決済会社ではない。a16zのゼネラルパートナーであるDavid Georgeが、Stripeのプロダクト&ビジネス担当プレジデントであるWill Gaybrickを迎え、AIが同社の製品開発、組織設計、そしてインターネットコマースの未来に対する考え方をどう変えているかを掘り下げた対談だ。Willは、StripeがAIによる生産性向上を「コスト削減」ではなく「より多くを構築する」機会と捉えていると明言する。社内のコーディングエージェントは現在、週に7,000件ものプルリクエストを生成し、チームはより小さく、よりフラットに再編成されている。エンジニア一人ひとりが創業者のような主体性(agency)を持つことが、同社の成長戦略の核心にあるという。

対談の後半では、AIエージェント同士が商取引を行う「エージェンティックコマース」の未来像が語られる。Willは、チェックアウトページが人間にとっても消滅するという大胆な予測を立て、マイクロペイメントの復活、ステーブルコインによるグローバル経済のインフラ構築、そしてAIエージェントが他のマシンからソフトウェアやサービスを購入する未来について展望を示した。Stripeは単なる決済代行から、収益とキャッシュフローに関わるあらゆる摩擦を減らす金融インフラプラットフォームへと進化しており、その中心には「ユーザーへの relentless focus(執拗なまでのユーザー重視)」がある。

2:05Stripeの現在地:決済会社から金融インフラプラットフォームへ

Willは、Stripeの社内での自己認識を明確に語る。同社は自らの価値提案を「決済会社とそのアドオン」から、「すべてが金融インフラに焦点を当てたマルチプロダクトプラットフォーム」へと逆転させたと説明する。具体的には、決済から始まり、請求、サブスクリプション、インボイス、マーケットプレイス向けのConnect、不正検知のRadar、税務処理のTaxなど、約25〜30のブランド化された製品と、その下に何百、何千もの機能を擁する。フレームワークは「摩擦を減らし、主体性を高める」ことだ。

このフレームワークの好例として、WillはAI時代ならではの新しい問題を挙げる。昨年、同社は初めて「無料トライアルの悪用」を大規模に経験した。AI以前は、Stripeのユーザーはソフトウェア会社が中心で、無料トライアルを悪用されても「無駄になるコンピューティングコストはわずか」だった。しかし、AI企業はトークンや推論コストという明確なコスト構造を持つため、状況が一変した。Cursorが最初の被害者であり、同社のネットワークでは無料トライアルの約6人に1人が悪用的な使用だったという。Stripeは週末をかけて、基盤モデルと埋め込み(embeddings)を使い、ネットワーク全体を横断して悪用者を特定するパイプラインを構築した。その結果、ElevenLabsは現在、Stripeのシグナルを使って1日あたり2,000件の無料トライアル悪用をブロックしているという。

主体性を高める側面では、グローバル展開の容易さが挙げられる。新興のAI企業はデジタルグッズを販売し、急速に世界展開したいと考えている。Stripe Managed Paymentsは、米国や欧州など自社で法人を持つ市場ではユーザー自身が販売者(merchant of record)となり、カザフスタンやAPAC全域などのロングテール市場ではStripeが実際の販売者として立つ。税務計算や納税代行をすべてStripeが担うことで、ユーザーは100以上の国と地域にコンプライアンス上問題なく進出できる。Willは「不正検知にはネットワーク効果があり、それが強力だ」と付け加え、投資家としても多くの企業が恩恵を受けていると述べた。

6:24スタートアップとエンタープライズ:二正面作戦の製品戦略

Stripeの製品戦略を巡って、Davidは「スタートアップと大企業のどちらに注力するのか」という質問を投げかける。Willは、ClerkのColinがX(旧Twitter)で要約したという「Stripeの戦略は、すべてのスタートアップを獲得し、そして再び獲得する(win all the startups and then win them again)」という言葉を引用して応じた。この戦略の背景には、スタートアップが将来の大企業に成長するというビジネスモデル上の理由に加え、より微妙な理由があるとWillは説明する。それは「スタートアップが最も高い基準を持つ顧客である」という事実だ。

Willは具体的な例を挙げる。大企業のユーザーはStripeのレポーティング機能について「素晴らしい、他のどのベンダーよりも優れている」と評価する。しかし、スタートアップは「レポーティングがゴミだ。何とかしてくれ」と厳しく要求する。この「最も速く、最も要求が厳しい」スタートアップの存在が、Stripeをより良くする原動力になっているとWillは言う。そして、スタートアップと仕事を始めたら、その関係を永遠に続けたいと考えるため、自然とアップマーケット(大企業向け)へと引き上げられる。現在、Fortune 500企業の約半分近く(正確な割合は不明だが「半分には達していない」)がStripeを利用しているという。

エンタープライズ向けは販売サイクルや契約後のアクティベーションが異なり、契約後のサポートがより多く必要になる。しかし、Willは「根本的には同じことだ。ユーザーに密着し、彼らのニーズを聞き、彼らが重視する指標で証明できるほど優れていることを示す」と語る。Davidはこの「勝ち取って、再び勝ち取る」というダイナミクスを称賛し、StripeがDoorDashやInstacartを初期に獲得し、ともに成長してきた歴史を想起させる。

8:24AIが変えたソフトウェア創造の経済学:新規コホートの急成長

Davidは、Stripeが公表したデータに基づき、AI時代のソフトウェア企業の成長加速を話題にする。2026年上半期の新規サインアップは前年比50%増、2026年コホートの中央値は2025年コホートと比較して50%多い収益を生み出している。さらに2025年コホートは2024年コホート比で70%多い収益を上げているという。Willはこの変化の要因を二つ挙げる。第一に、AIによって「以前はできなかったことが可能になった」ことだ。4年前にはSuno(音楽生成AI)やHiggsfield(動画生成AI)のようなサービスを構築することは不可能だった。市場機会のランドスケープが劇的に広がったのである。

第二に、ソフトウェアを「より多く作る」ためのコストが大幅に低下したことだ。エージェンティックコーディング(AIエージェントによるコード生成)により、同じものを構築するのに必要なエンジニアの数が激減した。この二つの要因が重なり、ソフトウェア創造の爆発的増加が起きている。Willは「Stripe Billingの利用増加率は、Stripe全体の利用率よりもはるかに高い」と指摘する。これは、Billingの利用がソフトウェア企業の創設に不均衡に偏っているためだ。つまり、新しいソフトウェア会社が雨後の筍のように生まれている証拠であり、彼らは最初からStripeの課金インフラを採用しているのである。

このデータは、AIがソフトウェア業界を縮小させるという悲観論への反証でもある。Willは「9ヶ月前にはSaaSプラットフォームは苦戦するという説があったが、2026年の新規SaaSプラットフォームコホートは2025年比で103%も大きい」と述べ、ソフトウェアエンジニアの需要はむしろ増加するとの見方を示した。「世界にはもっと多くのソフトウェアエンジニアが必要になる。すでにやっていることをやるのに必要な人数は減るが、新しいことをやるためのエンジニアは増える」とWillは予測する。

9:55組織論の転換:創業者的主体性と「Stripe Minions」

「どうやってそんなに多くのプロダクトを出荷できるのか」というDavidの問いに対し、Willは組織設計の根本的な変化を明かす。Stripeはこれまで、GoogleのOKR、Microsoftの営業組織、AppleのDRI(Directly Responsible Individual)文化、Ford元CEO Alan Mulallyの経営手法など、偉大な企業の仕組みを研究し、取り入れてきた。しかし「今日、模倣すべき相手は誰もいない」とWillは言う。2年前に2つのエンジニアチームがやっていたことを、今は1人のエンジニアができる時代に、どう組織を設計するか。その答えが「社内を創業者のためのプラットフォームにする」ことだ。

具体的な施策として、Willは社内ツール「Stripe Minions」を紹介する。これはワンショットのコーディングエージェントであり、プロンプトを与えると、コードの生成からCI/CD、テストまでを自動で実行し、人間はレビューするだけというものだ。1月か2月に社内ブログで公開した時点では週に1,200件のプルリクエスト(PR)を生成していたが、対談の1週間前には7,000件に達し、Stripe全体のPRの約30%をMinionsが占めていた。Willは「これは世界が向かう方向だ」と断言する。エージェントに計画モードで反復させるのではなく、「これが欲しい、実行して」とワンショットで指示する、glorified RALPH loop(強化された反復ループ)の時代が来るという。

組織構造は「よりフラットに、より小さく」がキーワードだ。Willは、Stripe Projectsを構築したシニアエンジニアの例を挙げる。彼は基本的に1人のPMと1人のシニアエンジニア、そして数人のエンジニアで数週間でプロダクトを立ち上げた。現在、そのエンジニア(Alexander)は16のエージェントを同時にオーケストレーションしながら、はるかに速いペースで開発を進めている。チームサイズについての定石はないが、Willは「フラットな組織ではチームはより広くなる。しかし、各個人がより強力になっているため、同じマネージャー対ICの比率でも、チームは1つのことではなく3つのことを同時にやっている」と説明する。レイヤー(管理階層)は、もはや調整のために必要な数だけに削減されている。

19:23コスト削減か、成長への再投資か:Jevonsのパラドックスと「Kai」

AIの活用方法を巡って、Willは業界に存在する「コスト構造の最適化」という初期の物語を明確に否定する。多くの企業がエージェントの効率性を人員削減やopex(営業費用)の縮小に充てているが、Stripeの信念は「コスト構造を最適化する最善の方法は、より成長することだ」というものだ。Willは「少し生意気な言い方だが、我々は『すべてを構築する』」と述べ、ユーザーからの未対応の要望が山のように積み上がっている現状を指摘する。彼らはその要望をより速く処理したいと考えているのだ。

この哲学を支えるのが、経済学のJevonsのパラドックスだ。Willは「ある資産がより生産的になれば、あなたはそれを減らしたいのではなく、もっと欲しくなる」と説明する。Stripeの社内ナレッジAIツール「Kai」は、わずか2人によって6ヶ月で構築されたが、現在は社内の82%が週次で、60%が日次でアクティブに利用している。セールス担当者の生産性は20%向上したが、Stripeは「セールス担当者を減らそう」とは考えず、「もっと多くのセールス担当者が必要だ」と考える。エンジニアについても同様で、Willは「エンジニアが劇的に生産的になったからといって、世界のエンジニアの数が減るとは思わない」と断言する。

Davidはこの考え方を「コストの最適化は有限だが、成長は無限だ」と要約し、「コスト削減は将来の可能性に対してショート(空売り)することであり、より速く構築することはロング(買い持ち)することだ」と表現する。Willはこれに同意し、現在は「手持ちのリソースで多くを成し遂げる」ことに注力する良い時期だとしながらも、将来の予算編成プロセスは過去とそれほど変わらないだろうと予測する。具体的な成果として、Stripe Taxのグローバル申告機能を挙げる。米国の全州での自動申告(US Filing)を実現するのに長い時間がかかったが、はるかに複雑なグローバル申告(Global Filing)は、その約3分の1の時間で構築できたという。Willはこれを「射出成形(injection molding)」に例える。1940年代にプラスチックを均一に溶かして金属鋳型に注入する技術が確立され、消費財が爆発的に増えたように、Stripeはコード生成の「型とテンプレート」を作り、エージェントに作業を委譲しているのだ。

28:14エージェンティックコマースの夜明け:プリミティブの欠如とB2Bの可能性

AIエージェントが商取引を行う「エージェンティックコマース」について、Willは現状を「Opus 4.5(Anthropicの最新モデル)によるカンブリア爆発の瞬間はまだ来ていない」と表現する。その理由は「プリミティブ(基本要素)が欠如している」ことだ。StripeはTempoと共同で「マシン決済プロトコル」を開発し、サービス側が「何を支払うべきか、どう支払うか」を示せるようにした。例えば、画像やコンテンツを販売する場合、リクエストに対して402レスポンス(Payment Required)を返し、「こうやって私を買う」と機械に伝える仕組みだ。Willは「機械は他の機械から買いたいと思うだろう」と予測する。

エージェント向けのチェックアウトの在り方も未解決の問いだ。ブラウザ自動化が進歩しているため、エージェントが既存のチェックアウトフォームを這い回って記入する「スキュアモーフィック(旧来のUIを模倣した)バージョン」もあり得るが、Willは「ネイティブなバージョンが登場するだろう」と語る。その先には、より根本的な変化がある。Willは「チェックアウトページは人間にとっても消滅する」と断言する。Stripe Linkには4億ユーザーがおり、Shop Payも同規模のユーザーを持つ。同社は最近「Link Agent Wallet」をローンチし、エージェントがLinkの認証情報を取得して、人間の承認を得ながら決済を実行できるようにした。商品表示ページ(PDP)で「買う」と言えば、それで完了する世界が来るという。

Willが最も期待するのはB2B分野だ。Stripe Projectsは、アプリの雛形を作るツールという狭い定義に留まらず、「B2Bサービスをエージェント的にプロビジョニングする方法」だという。ユーザーはvercel.comにアクセスすることなく、エージェントがVercelのホスティングを契約できる。この考え方は、a16zの投資テーゼにも影響を与えているとDavidは明かす。「エージェントが将来の買い手になるなら、エージェントが選びたくなるようなデベロッパーツールはどれか」という視点だ。Willは、Stripeの社内デモで、エージェントがBrowserbaseを使ってNCAAのトーナメント予想(ブラケット)を自動で記入したエピソードを紹介し、エージェントが実用的なB2Bサービスを採用する流れが普及するとの見方を示した。

34:24マイクロペイメントの復活とステーブルコイン:エージェント経済のインフラ

エージェントが消費するサービスが増えるにつれ、Willは「マイクロペイメント(少額決済)」の必要性が再燃すると主張する。従来、マイクロペイメントは「購読モデルか広告モデルかに挟まれて成立しない」とされてきた。しかし、エージェントが複雑なタスクを遂行する際、まるでハチドリのようにインターネットを飛び回り、あちこちからデータを少しずつ収集し、一時的なストレージを使い、計算を実行するようになれば、人間がその都度アカウントを作成するのは不可能だ。Willは「サービスは、一時的(ephemeral)で軽量な利用を認めるべきだ」と主張し、そのためにはマイクロトランザクションのサポートが必須になると語る。彼自身、姪の誕生日にSunoで曲を作ろうとした経験を挙げ、月額9.99ドルのサブスクリプション契約を結びたくないと感じたと述べ、「マイクロ消費のためのAPIが必要だ」と訴えた。

このマイクロペイメント経済を可能にするのがステーブルコインだ。Willは「ステーブルコインは、既存のどの手段よりも優れたマネームーブメントのプラットフォームだ」と断言する。インドのUPIは5ドル未満の決済の86%を処理しているが、米国のカード決済は一桁台のパーセンテージに留まる。各国に優れた国営決済システムは存在するが、グローバル経済のための「シェリングポイント(焦点)」が必要であり、そこに暗号資産のレールが政治的問題を解決する。Willは「もし今夜眠って、明日全員がステーブルコインを持って目覚めたら、世界の金融システムはより速く、より安く、より良くなる」と述べる。Stripeはこのビジョンを現実にするため、Stripe Treasuryでステーブルコインをネイティブにサポートし、USDやEURと同じように残高を保有できるようにした。

現在、Stripeのユーザーは約60カ国でフィアット(法定通貨)を利用できるが、ステーブルコインでは約150カ国で利用可能だ。これは、より多くの人々をオンライン経済に引き込み、AI企業と取引できるようにすることを意味する。Willは「タイの2人のエンジニアが、米国やブラジルと同じように強力なAI企業を構築できる」と述べ、ソフトウェア経済のグローバル化におけるステーブルコインの重要性を強調する。具体的な成功例として、米国とメキシコ間の送金会社Felix(旧Felix Pago)を挙げる。同社はステーブルコイン上に構築され、数年で世界最大の送金回廊であるこの区間の送金の5〜10%を処理するまでに成長した。これは、WiseやWestern Unionがフィアットで達成するのに長い時間を要した規模であり、ステーブルコインの速度を示している。

41:35Tempoとトークン経済:Stripeの次なるインフラ戦略

Willは、Stripeが主導するブロックチェーン「Tempo」について、インフラ愛好家としての視点から説明する。彼は「決済以外に新しいブロックチェーンが必要とは思わないが、決済特化型のブロックチェーンには多くの理由がある」と語る。第一にプライバシーだ。既存のブロックチェーンは公開されており、取引をリバースエンジニアリングできるため、プライバシーを第一級のプリミティブとして設計する必要がある。第二にスループットの確保だ。既存のブロックチェーンは取引に偏重しており、大規模な取引イベントが発生すると性能が劣化する。第三に、取引手数料の安定性だ。他のブロックチェーンではガス代(手数料)が高騰することがあるが、Tempoは取引手数料が急騰しない設計を目指す。Willは「資金を可能な限り効率的に、一貫して、安価に移動する方法」を追求していると述べ、DoorDashなどと協力し、Stripe内のデフォルトのブロックチェーンにすることを目指している。

最後に、Davidは「トークン経済」の未来について質問する。Stripeの処理額は現在2兆ドルを超えており、両者は「トークン経済はこれまで見た中で最大のものの一つになる」という信念を共有している。Willは「トークンという言葉が好きだ。それはお金の近似値のように聞こえるからだ」と切り出し、現実にトークンとドルの境界が曖昧になっていると指摘する。CursorやReplitのような汎用トークン消費プラットフォームに対する攻撃は、Stripeユーザーから金銭を盗もうとする攻撃と非常に似てきた。Stripeはユーザーの資金移動、保管、送金を安全かつコンプライアンスに準拠して支援してきたが、今度はトークンについても同じ「マンデート(使命)」を感じているとWillは言う。

Willはトークン使用を「OPEX管理側面」と「プロダクト効能側面」の二つに分類する。前者は、企業がトークンをどれだけ使っているか、その支出をどう収益に結びつけるかという管理だ。後者は、トークン駆動型プロダクトの有効性をどう最大化するか、つまりモデル間の移行をどう最適化するかという問題だ。Stripeはこの両方でユーザーを支援したいと考えている。Willは「ソフトウェアが激しくコモディティ化されるという仮説もあるが、我々が見ているのは正反対だ。ソフトウェア創造は爆発し、顧客はかつてない速さで収益化している」と述べる。そして、ソフトウェアは「構築する」ことだけが全てではなく、抽象化をビジネス全体に通す専門知識や、社内システムの陳腐化への対処など、維持管理の側面が重要だと指摘する。Stripeの機会は「企業の収益スタック全体」を支援することにあり、その規模はかつてないほど大きくなっている。

49:08スケールする「味覚」:トップダウンの文化とシミュレーション

Davidは、Stripeがインフラ企業でありながら「味覚(taste)」があると広く認められていることに触れ、AI時代にその品質をどう維持するかを問う。Willはまず、「味覚」という言葉が現在頻繁に使われることへの皮肉な見方を紹介する。「それは、私たちが自分の将来価値を正当化するための方法だという冷笑的な見方もある。モデルは決して味覚を持たない、と。しかし、それはおそらく真実ではない」と述べる。その上で、Stripeにおけるプロダクト品質は文化とアイデンティティの核心であり、ユーザーに「驚くほど素晴らしい」ツールを提供したいという願いと、作る側の楽しさの両方に根ざしていると説明する。

味覚をスケールさせる方法は二つあるとWillは言う。第一に、トップダウンで繰り返し伝えることだ。「品質について話し、また話す。それは『スタートアップを勝ち取り、再び勝ち取る』という戦略と同じだ」と彼は言う。第二に、実際にプロダクトを使うことだ。Willは航空業界のシミュレーションや、Nvidiaがチップの実物を待たずに性能をシミュレートすることで飛躍した例を挙げ、Stripeもプロダクト利用のシミュレーションに多額の投資をしていると明かす。具体的には、実際のアカウントを模したが、PII(個人情報)を含まず、成長率をランダム化し、季節変動や顧客からの問い合わせ、返金などを再現した「ライブな」デモ環境を作り、経営陣がユーザー体験を実際に「生きる」ことを可能にしている。Willは「EM(エンジニアリングマネージャー)にこの使用を義務付けている。彼らがリソースを管理し、『これは良くない、直す必要がある』と判断できるからだ」と述べ、次のスプリントを品質向上に充てる文化を説明した。味覚のスケールは、文化と、ユーザーの靴を履く日常のリズムによって達成されるのだ。

結びに

今回のエピソードは、AI時代におけるソフトウェア企業の経営と戦略について、極めて具体的かつ示唆に富む内容だった。Will Gaybrickの主張は一貫しており、AIの生産性向上をコスト削減に充てるのではなく、より多くのプロダクトを構築し、より多くのユーザーに届けるための「成長への再投資」に充てるというものだ。Stripe Minionsによる週7,000件のPR生成や、Kaiによるセールス生産性20%向上といった具体的な数字は、単なる理論ではなく、大企業がAIを実装した際の現実的な成果を示している。

特に印象的なのは、組織を「創業者のためのプラットフォーム」として再設計するという発想だ。エンジニア一人ひとりが創業者のような主体性を持ち、16のエージェントをオーケストレーションしながらプロダクトを生み出す姿は、ソフトウェア開発の未来形を示している。また、チェックアウトページの消滅、マイクロペイメントの復活、ステーブルコインによるグローバル経済の再構築といったビジョンは、Stripeが単なる決済会社ではなく、インターネット経済そのもののインフラを再定義しようとしていることを物語る。Willの「コスト削減はショート、成長はロング」という資本配分の比喩は、AI時代の経営判断における重要な指針となるだろう。

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