
ハウ・ワットノットがグローバルマーケットプレイスを構築した方法
- a16zゼネラルパートナーのDavid Georgeが、ライブコマースプラットフォームWhatnotの共同創業者Grant LaFontaineを迎え、同社の軌跡を紐...
- Grantは幼少期にeBayでポケモンカードを売った経験から、YouTubeやFacebookでの勤務を経て、2020年にWhatnotを共同創業。当初はFunko...
- [0:00] ライブコマースの可能性と市場規模 中国では全商業取引の30〜40%をライブコマースが占める一方、米国ではまだ一桁台のシェアにとどまっている。Grantは...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The a16z Show / Andreessen Horowitz
- Whatnotのユーザーは1日平均95分をプラットフォームで過ごし、80%以上は購入せずに視聴と交流を楽しんでいる。これは「娯楽としての買い物」という新たな消費体験を生み出している。
- 中国では全商業取引の30〜40%をライブコマースが占めるが、米国ではまだ一桁台。Grantはこのギャップが必ず縮まると確信し、Whatnotはその先駆者として成長を続けている。
- Whatnotは2024年に80億ドル以上の売上を記録し、最大の事業者は年商1億ドル以上、EBITDAマージン20〜40%を達成。プラットフォームは売上のごく一部しか手数料として受け取らない。
- 信頼と安全性には従業員の約40%を投入し、AIベースの「ルールエンジン」が数十億のデータポイントを1秒未満で処理して不正行為を自動検出する。
- カテゴリーは100以上に拡大し、ファッションが最大のカテゴリーに成長。生鮮食品やゴルフ用品なども急成長しており、サンディエゴの鮮魚卸売業者はパイロット期間中に3,000〜4,000ドルの売上を記録した。
- Whatnotは10カ国で展開し、米国と同じパターンが欧州や日本でも機能している。ライブコマースは文化や地域を超えた普遍的な価値を持つ。
- AIは販売者の効率化に活用されるが、人間的な体験を置き換えるものではない。Grantは「AIアバターで販売しても顧客は戻ってこない」と明確に述べる。
- 今後の展望として、車の販売や酒類の取り扱いなど新カテゴリーへの進出を計画。最終目標は「より多くの人々がビジネスを構築できるようにすること」だ。
a16zゼネラルパートナーのDavid Georgeが、ライブコマースプラットフォームWhatnotの共同創業者Grant LaFontaineを迎え、同社の軌跡を紐解く対談。ポケモンカードの個人売買から始まった事業が、いかにして世界有数のライブショッピングプラットフォームへと成長したのか。伝統的なEコマースというよりは「デジタルショッピングモール」としての自社の位置づけ、ユーザーが1日平均95分を費やすエンターテインメント性、そして小売業界に革命をもたらす可能性について、具体的な数字とエピソードを交えて語られている。
Grantは幼少期にeBayでポケモンカードを売った経験から、YouTubeやFacebookでの勤務を経て、2020年にWhatnotを共同創業。当初はFunko Popの認証マーケットプレイスとして始まったが、ユーザーがライブ動画で商品を販売する「ハック」を観察したことで、ライブコマースへの方向転換を決意する。現在では100以上のカテゴリーを扱い、米国だけでなく欧州、日本、オーストラリアなど10カ国に展開。2024年には80億ドル以上の売上を記録し、小規模事業者に新たな販売チャネルを提供している。本稿では、同社の成長戦略、プラットフォーム運営の課題、AI活用の現状について詳しく解説する。
ライブコマースの可能性と市場規模
中国では全商業取引の30〜40%をライブコマースが占める一方、米国ではまだ一桁台のシェアにとどまっている。Grantはこのギャップが必ず縮まると確信している。その理由は、ライブコマースが単なる販売手法ではなく、より豊かで効率的なビジネスの構築方法だからだ。例えば、ファッションブランドがニューヨークの5番街に実店舗を構える場合、数百万ドルの家賃がかかり、来店客はニューヨークにいる人々に限定される。しかしWhatnotなら初期費用ゼロで、世界中の顧客にリーチできる。この圧倒的なコスト優位性が、ライブコマースの普及を加速させるとGrantは主張する。
市場規模の観点では、米国のEコマース市場は約1兆ドル規模だが、eBayの事例が示すように、ロングテール商材の市場はさらに大きい。eBayは10年前には市場全体の15%を占めていたが、現在は1%未満に低下。それでもなお800億ドルの取引量を維持している。Grantは「800億ドルと1.2兆ドルの間のギャップをどれだけ獲得できるかが鍵だ」と語り、ライブコマースが市場そのものを拡大させるとの見解を示す。従来のEコマースは「何を買うか明確に分かっている」消費者向けだが、ライブコマースは「何が欲しいか分からないが、楽しい体験を求めている」消費者を開拓する。これは百貨店やショッピングモールの登場が需要そのものを拡大した歴史と類似している。
Davidはこの分析に強く同意し、Whatnotの需要創出効果を「市場の拡大」と表現。単なるオンライン販売の効率化ではなく、新たな購買行動を生み出している点を強調する。Grantは「ユーザーは市場そのものには関心がない。自分が楽しめるかどうかだけが重要だ」と述べ、マーケットプレイスとしての枠組みにとらわれず、ユーザー体験を最優先する姿勢が成長の原動力だと説明する。
起業の原点とWhatnotの誕生秘話
Grantの起業家としての原点は、小学校3〜4年生の頃に遡る。当時ポケモンカードに熱中していた彼は、eBayの登場を知り「ポケモンカードでお金を稼げるのか」と衝撃を受けた。最初の販売はホログラフィックの「ラッキー」カードで10ドル。買い手が郵送でマネーオーダーを送り、Grantは父親に連れられて郵便局で現金化し、カードを発送した。この経験についてGrantは「Whatnotの真の起源だ」と振り返る。当時はオンライン決済のインフラも信頼も存在せず、見知らぬ相手にカードを送るという行為自体が信頼の証だった。
その後、GrantはYouTubeで動画配信、Facebookでマーケットプレイス事業に従事し、これらすべての経験がWhatnotに結実する。2019年1月、共同創業者のLoganと東京のバーで酒を飲みながら「マーケットプレイス事業をやろう」と意気投合し、30〜40のドメインを購入したが、現実に戻ると何も進まなかった。転機は2019年10月。友人たちがFunko Popやコミック、スニーカーなどの収集に再び熱中しているのを見て、Grantは「収集品とソーシャルコマースの組み合わせに可能性がある」と確信する。同年12月に二人は仕事を辞め、認証付きFunko PopマーケットプレイスとしてWhatnotを立ち上げた。
社名の由来も興味深い。当初は「Always Legit」というドメインを使っていたが、初代デザイナーのJohnが「そんな名前の会社には関われない」と猛反対。仕方なくブレインストーミングで10個の候補を挙げ、ドメイン購入を試みた。他の候補はすべて10万ドル以上したが、Loganが「Whatnot」の所有者に交渉したところ、なんと「ビットコイン1個でいい」と言われ、さらに半ビットコイン(当時約5,000ドル)に値切ることに成功。しかも最初は誤って「Why Not」というドメインを送られてきたという逸話も。Grantは「あのドメイン所有者がビットコインを保有し続けていればいいのだが」と笑いながら語った。
ユーザー体験の本質と需要側のダイナミクス
Whatnotの最大の特徴は、ユーザーが1日平均95分もプラットフォームに滞在することだ。これはソーシャルメディアやエンターテインメントプラットフォームに匹敵する数字であり、しかも1日のうち80%以上のユーザーが実際に購入していない。彼らは単にライブ配信を視聴し、チャットで交流し、コミュニティの一員として時間を過ごしている。Grantはこれを「ショッピングモールに行く体験」に例える。「モールに行っても、友達とぶらぶらして何も買わないことがある。Whatnotも同じだ。買い物は体験の一部であり、目的ではない」と説明する。
従来のEコマースは「検索して購入する」という意図駆動型のモデルだが、Whatnotは「発見と娯楽」を重視する。ユーザーは「何か欲しい」という漠然とした欲求を持って訪れ、ライブ配信を視聴するうちに、自分が知らなかった商品やカテゴリーに出会う。この需要拡張効果が、Whatnotの成長を支える核心的なメカニズムだ。Grantは「Eコマースはオフライン販売をオンラインに移しただけだが、ライブコマースは市場そのものを拡大する」と語り、従来のEコマースとは一線を画す。
さらに、Whatnotは「買い物が楽しい」という体験を提供することで、ユーザーのエンゲージメントを高めている。Grant自身も「私はWhatnotで多くの時間を娯楽として過ごしている。取引もするが、それだけではない」と認める。この「娯楽としての買い物」というコンセプトは、特に若い世代に響いており、収集品からファッション、食品まで幅広いカテゴリーで支持を集めている。Davidは「95分という数字は、Whatnotが単なるEコマースではなく、エンターテインメントプラットフォームであることを示している」と評価する。
供給側の革新と小規模事業者のエンパワーメント
Whatnotのもう一つの重要な側面は、小規模事業者への支援だ。従来のEコマースは効率性を追求するあまり、販売者のブランドや個性を隠す方向に進んできた。しかしWhatnotはその逆で、各販売者が独自のストア、ブランド、顧客基盤を構築することを促進する。Grantは「Whatnotは小規模事業者に数十億ドル規模の収益機会を提供している」と述べ、1〜2人で運営する個人事業から数百人規模の企業まで、多様な販売者がプラットフォーム上で活動していると説明する。
特に注目すべきは、Whatnot上で年商1億ドル以上、EBITDAマージン20〜40%以上を達成する事業者が登場していることだ。2024年にはプラットフォーム全体で80億ドル以上の売上を記録し、2025年も同じペースで推移している。Whatnotはこの売上のごく一部しか手数料として受け取らず、事業者が収益の大部分を確保できる設計だ。Grantは「私たちの仕事は、優れた事業者が成長するための環境を整えることだ」と語り、プラットフォームの成功は販売者の成功と不可分だと強調する。
カテゴリー拡大も積極的で、現在は100以上のカテゴリーを扱う。特に成長著しいのがファッションで、今や最大のカテゴリーに成長。T.J.MaxxやDSWのようなディスカウントストアに似た「旧シーズンの在庫を大幅割引で販売」というモデルが人気を集めている。また、サンディエゴの漁港から直送される鮮魚や、バーベキュー専門店の商品など、生鮮食品も新たな成長分野だ。Grantは「米国の食品サプライチェーンは不透明で、どこから来たのか分からない。Whatnotなら生産者の顔が見え、物語を聞きながら購入できる」とその価値を説明する。
信頼と安全性への投資とAI活用
Whatnotの規模が拡大するにつれ、信頼と安全性の確保が最重要課題となっている。Grantは「信頼と安全性には従業員の約40%を投入している」と明かし、これは同社の最大の投資分野の一つだ。プラットフォーム上では毎日何百万もの取引が行われ、同時接続ユーザー数も膨大だ。Grantはこれを「ニューヨーク市2つ分の人口を擁する都市の警察と司法制度を運営するようなもの」と例える。実際、Whatnotの信頼と安全性チームは、ポリシーの策定から執行までを担う「警察兼司法システム」として機能している。
この課題に対処するため、Whatnotは「ルールエンジン」と呼ばれるAIシステムを構築した。このシステムは数十億のデータポイントを1秒未満で処理し、ライブ配信内のハラスメント行為、出荷遅延、高率の返品など、さまざまな不正行為を自動的に検出する。例えば、ライブ配信中に誰かが他のユーザーを嫌がらせした場合、LLMがそれを検出し、ルールエンジンが販売者の履歴や他のシグナルと照合して、警告、停止、禁止などの措置をプログラム的に実行する。Grantは「これらの問題は常に変化しており、スコアリングの重み付けも常に調整が必要だ」と述べ、継続的な改善の重要性を強調する。
AI活用は信頼と安全性だけでなく、販売者支援にも及んでいる。WhatnotはAIを使って商品リストの作成を効率化し、ライブ配信のメタデータを自動生成し、販売者にビジネス分析を提供している。しかしGrantは「AIの目的は人間の体験を置き換えることではなく、効率化することだ」と明確に述べる。「AIアバターを作って販売する人もいるかもしれないが、顧客は戻ってこないだろう。Whatnotの核心は、店舗オーナーを知り、常連客と交流するという人間的な体験だ」と語り、AIはあくまで販売者が「人間らしさ」を維持しながらビジネスを拡大するためのツールだと位置づける。
グローバル展開と今後の展望
Whatnotは現在、米国、カナダ、欧州5カ国、日本、オーストラリアの10カ国でサービスを展開している。Grantが驚くのは、どの国でも同じパターンで成功していることだ。「米国で小規模事業者を支援してきたのと同じ方法が、欧州や日本でも機能している。収集品、ファッション、電子機器など、カテゴリーごとのダイナミクスも驚くほど似ている」と述べ、ライブコマースが文化や地域を超えた普遍的な価値を持つことを示唆する。
特に印象的なエピソードとして、Grantはサンディエゴの鮮魚卸売業者との出会いを語る。この業者はLinkedInでGrantに連絡を取り、Whatnotでの販売を希望した。翌週にはライブ配信を開始し、パイロット期間中に3,000〜4,000ドルの売上を記録した。彼は魚の知識が豊富で、持続可能性や漁獲方法、その日の水揚げ状況などを詳しく説明する。Grantは「彼が従来のEコマースで全国展開するのは難しい。しかしWhatnotなら、ライブ配信で信頼を構築し、全国の顧客にリーチできる」とその価値を説明する。生鮮食品のオンライン販売は「品質が分からない」「食中毒が心配」という懸念があるが、ライブ配信での実演と対話が信頼を生み出すのだ。
今後の展望について、Grantは「今後12〜36ヶ月の最優先事項は、より多くの事業者がWhatnotで成長できるようにすることだ」と語る。具体的には、販売者向けツールの強化、カテゴリーの拡大、顧客体験の向上、配送コストの削減などに注力する。特にGrantが熱意を示すのが「車の販売」だ。「Whatnotで車が買えるようになったら素晴らしい。ライブ配信で車の状態を詳しく確認でき、ビデオで全体像を把握できる。私自身も試さずにはいられないだろう」と語る。さらに、酒類やビール、ワインの取り扱いも計画している。しかし最終的な目標はシンプルで、「より多くの人々がビジネスを構築できるようにし、その取引に携わる人々が素晴らしい体験を得られるようにすること」だと締めくくった。
結びに
本エピソードの核心は、Whatnotが単なるEコマース企業ではなく、小売業の新たなパラダイムを体現している点にある。伝統的なEコマースが「効率性」を追求する一方、Whatnotは「体験」と「人間関係」を重視する。ユーザーが1日95分も滞在し、80%以上が購入しないという事実は、Whatnotが買い物の場であると同時に、エンターテインメントとコミュニティの場であることを示している。Grantの「ユーザーは市場には関心がない。楽しめるかどうかだけが重要だ」という言葉は、プラットフォームビジネスの本質を鋭く突いている。
また、小規模事業者のエンパワーメントという観点でも、Whatnotは独自の価値を提供している。従来のEコマースが販売者の個性を隠し、価格競争に追い込むのに対し、Whatnotは販売者のブランド構築と顧客関係の深化を促進する。年商1億ドル以上の事業者が登場し、EBITDAマージン20〜40%を達成している事実は、このモデルの有効性を裏付けている。さらに、AIを信頼と安全性の確保や販売者支援に活用しながらも、人間的な体験を維持するという姿勢は、テクノロジー活用の模範と言える。
Grantの起業家としての軌跡は、ポケモンカードの個人売買から始まり、YouTubeやFacebookでの経験を経て、ライブコマースという新たな市場を切り開いた。彼の「人生の主要な経験はすべてWhatnotにつながっている」という言葉は、起業の本質が「過去の経験の総和」であることを示唆している。Whatnotの今後の展開、特に車や酒類などの新カテゴリーへの進出は、ライブコマースの可能性をさらに広げるだろう。小売業の未来を考える上で、本エピソードは示唆に富む内容となっている。
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