
グローバルネットワークがスタートアップの成功をどう変えているか
- 世界中の起業家が、自国のネットワークとシリコンバレーの資本・スピードを組み合わせてグローバル企業を築く「ボーダーレス創業者」という新たな潮流が、ベンチャーキャピタル業...
- 本エピソードでは、a16zの国際投資戦略がどのようにしてラテンアメリカの草の根コミュニティから始まり、現在のグローバルなネットワークへと進化したのかが語られる。Ang...
- [0:00] ボーダーレス創業者とは何か——定義とその背景 Angela Strangeは、ボーダーレス創業者の定義について「最も包括的な見解を取るならば、グローバル...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The a16z Show / Andreessen Horowitz
- a16zの投資の40%は国際的な創業者によるもので、その半数はシリコンバレー在住、半数は母国を拠点としている。
- ボーダーレス創業者の定義は「グローバル企業を築こうとしているすべての人」で、移民創業者よりも広い概念。
- ボーダーレス創業者の3つの優位性は「人材」「ブランド」「顧客」で、これらは相互に強化し合うフライホイールを形成する。
- シリコンバレーでの推奨滞在期間は最低3〜6ヶ月で、スピード感の再調整が最大の価値。
- 各国の「ローカル」と呼ばれるエコシステムの中心人物を特定し、支援することが市場参入の第一歩。
- リピート創業者への支援では、アイデア創出段階での差別化が既存の投資家関係よりも優先されることがある。
- ポーランド政府の11 Labsへの投資や、スウェーデン政府のLovable支援など、政府の関与がブランド価値を高める。
- 次世代のグローバル企業は「最初から複数の国にまたがって構築される」可能性が高く、シリコンバレーと新興市場の橋は双方向に機能する。
世界中の起業家が、自国のネットワークとシリコンバレーの資本・スピードを組み合わせてグローバル企業を築く「ボーダーレス創業者」という新たな潮流が、ベンチャーキャピタル業界で注目を集めている。a16zのパートナーであるAngela Strange(アンジェラ・ストレンジ)とGabriel Vasquez(ガブリエル・バスケス)は、この現象が単なる国際投資戦略の延長ではなく、AIの台頭によって加速する構造的な変化だと指摘する。彼らによれば、テクノロジーは民主的であり、世界のどこにいても最先端のツールにアクセスできる一方で、最も速いイノベーションの震源地は依然としてベイエリアに集中している。この二面性が、世界中の才能ある創業者たちをシリコンバレーへと引き寄せ、同時に彼らが母国のネットワークを活用する新たな機会を生み出しているのだ。
本エピソードでは、a16zの国際投資戦略がどのようにしてラテンアメリカの草の根コミュニティから始まり、現在のグローバルなネットワークへと進化したのかが語られる。AngelaとGabrielは、ボーダーレス創業者が持つ「人材」「ブランド」「顧客」という3つの固有の優位性を詳しく解説し、創業者ディアスポラ(母国を離れた起業家コミュニティ)が強力な同窓会ネットワークのように機能する仕組みを明らかにする。さらに、シリコンバレーで過ごす時間が創業者のスピード感と野心を再調整する上でいかに重要か、そして次世代のグローバル企業が最初から複数の国にまたがって構築される可能性について議論を展開する。投資先の具体例や、実際に機能したネットワーキングの仕組みを通じて、国境を越えた起業の新たなパラダイムが浮き彫りになる。
ボーダーレス創業者とは何か——定義とその背景
Angela Strangeは、ボーダーレス創業者の定義について「最も包括的な見解を取るならば、グローバル企業を築こうとしているすべての人」だと語る。厳密にはアメリカ人もこの定義に含まれるが、彼らはすでにシリコンバレーに接続されているため、通常は国際的な創業者を指す。具体的には、母国で事業を始めるがグローバルな野心を持つ人、あるいは母国のネットワークを活かしながらシリコンバレーのリソースを活用する人々を指す。この定義の広さが、単なる「移民創業者」という枠組みを超えた新しいカテゴリーを形成している。
Gabriel Vasquezは、ボーダーレス創業者に共通する心理的特徴として「肩に乗った一片のチップ(負けん気)」を挙げる。彼自身がエルサルバドル出身であることを例に、「小さな国から来た人間は、誰も期待してくれない。だからこそ、自分自身がベンチマークになり、どこで生まれようと偉業を達成できることを世界に証明したいという欲求が生まれる」と説明する。この原動力は、ドイツの小さな町で育った創業者や、アメリカ国内の農村部出身の創業者にも共通して見られるという。生まれ育った環境が不利であるほど、それを克服しようとする野心が強くなるという観察は、投資判断においても重要なシグナルとなっている。
この考え方の背景には、a16zの国際投資戦略の歴史がある。Angelaは自身のキャリア初期を振り返り、フィンテック投資に携わっていた際、ブラジルのNubankで働いていた弟から聞いた話が転機だったと語る。Nubankの創業者Davidが「アメリカで5番目の金融サービスを目指すか、それとも人口の20%しか銀行サービスを利用していない、5つの巨大銀行が支配する広大な未開拓市場に行くか」という選択を示したという。このエピソードが、彼女をラテンアメリカへの投資へと向かわせた最初のきっかけだった。
Angelaがa16zで書いた最初の小切手は、コロンビアのADI(現在はコロンビア人口の4分の1に銀行・決済サービスを提供)のCEOであるSantiago Suarezへの投資だった。この投資を皮切りに、a16zの国際戦略はラテンアメリカを中心に展開され始める。その後、Gabrielが別のチームから「ラテンアメリカに巨大な機会がある」とWhatsAppで連絡をしてきたことが、戦略をさらに加速させる。彼は当時、ラテンアメリカの主要なCEO 25人と会い、すべてをWhatsAppグループに集めていたという。この草の根的なアプローチが、後のボーダーレス戦略の原型となった。
AIが変えた国際投資戦略——シリコンバレーへの集中と民主化の二面性
a16zの国際戦略が「WhatsAppグループ」から本格的な戦略へと進化した転機は、AIの台頭だったとAngelaは語る。彼女は「テクノロジーは非常に民主的であり、世界のどこにいても最先端の能力にアクセスできるようにする。それは他の市場を開く一方で、物事が最も速く動く震源地をベイエリアに集中させる」という逆説的な二面性を指摘する。この変化により、ブラジルやコロンビアの創業者がa16zに「自国に来てほしい」と要望する時代から、彼ら自身が「シリコンバレーに来たい」と希望する時代へと移行した。
この変化は、創業者たちのネットワーキングの方法にも影響を与えた。Gabrielは「ブラジル出身の創業者は、シリコンバレーにいるブラジル人トップ人材をマッピングし始める」と説明する。この傾向はヨーロッパやアジアでも同様で、各国の創業者が「母国出身の最も賢い人材はどこにいるのか」を探し始めた。重要なのは、このつながりが単なる地元知識の共有ではなく、「自分と同じ旅路を経験した人」への親近感に基づいている点だ。シリコンバレーには「与える文化(culture of giving)」が根付いており、見知らぬ人でも助けてくれるが、同じ国出身者にはさらに強い親近感が生まれるという。
この動きを受けて、a16zは「ボーダーレスディナー」と呼ばれる少人数のコミュニティイベントを開始した。当初はラテンアメリカ出身の創業者に限定し、シリコンバレーで成功した同地域出身の創業者と、新しく訪れた創業者を引き合わせる形式だった。例えば、Vercelの創業者であるGuillermo Rauchや、Brexの創業者であるPedro Franceschiが参加し、自身の経験を共有した。このコミュニティは現在も成長を続けており、初期の参加者がユニコーン企業の創業者へと成長し、今度はスピーカーとして後進を支援する側に回っているという。
このディアスポラネットワークの力は、大学の同窓会ネットワークに例えられる。Angelaは「トップ大学の同窓会ネットワークは非常に強力だが、国別のディアスポラはそれ以上に強力かもしれない。ただ、組織化されていなかっただけだ」と指摘する。彼女自身がカナダのオタワ出身であり、15年前に「C100」という組織を立ち上げた経験を持つ。これはベイエリアに住む100人のカナダ人が、母国のスタートアップを支援するために設立した組織で、デザインパートナーの紹介や、スケールに必要な幹部人材のマッチングを行っていた。この経験が、現在のボーダーレス戦略の原型となっている。
エコシステムの成熟度と「灯台」となる創業者たち
国際エコシステムの現状について、Gabrielは「市場の成熟度は非常に相対的だ」と語る。英国、スウェーデン、イスラエルなどは歴史的に一人当たりのスタートアップ創出数が多く、AIによってさらに成長が加速している。一方で、国内のダイナミクスによって依然として成長が限定的な国もある。このような国では、創業者がシリコンバレーに移住するケースが増えており、地元エコシステムとの間に興味深い緊張関係が生まれている。スウェーデンのように「自国を偉大にしたい」と考える創業者もいれば、より初期段階のエコシステムでは「シリコンバレーに移ることが最善の選択」と考える創業者も多い。
このような初期段階のエコシステムでは、「父のような存在」の創業者が重要な役割を果たすとGabrielは説明する。彼らは非常に困難なビジネスを築き上げた実績があり、新世代のAIネイティブ創業者が最初に相談する相手となる。彼らは「灯台」のようにシリコンバレーの情報を照らし出し、誰とつながるべきかの道筋を示す。a16zはこのような「ローカル」と呼ばれる人物を特定し、彼らを支援することから各エコシステムへの参入を始める。スウェーデンの例では、スクーター会社Voiの創業者Frederick Yelmが挙げられる。彼の会社はLimeと似たビジネスだが、彼のエンジェル投資のポートフォリオを見ると、スウェーデン発の主要なAI企業のほぼすべてに投資していることがわかる。
エコシステムの成熟度に応じて、a16zのアプローチも変化する。まず「ローカル」と呼ばれる地元で尊敬される人物を特定し、彼らのメッセージを検証することで信頼関係を構築する。次に、その国出身でシリコンバレーで成功している「新星」をマッピングする。例えば、スウェーデン出身のGabriel Petersonは、高校を中退してアメリカに渡り、Midjourneyで働いた後、OpenAIで最年少の研究者の一人となり、現在は自身の会社を立ち上げている。スウェーデン出身の創業者がシリコンバレーに移る際、誰もが彼とつながりたいと考える。このようなネットワークを構築することで、a16zは「流れの中にいる」ことができるという。
エコシステムがさらに成熟すると、第3段階として「リタイアした幹部」のネットワークが機能し始める。初期のスタートアップで成功し、流動性を得たセールス責任者や創業エンジニアが、次世代の創業者に恩返しをしたいと考えるようになる。a16zはこのような人材を「グローバルスカウトプログラム」に参加させ、エコシステムの形成を支援している。さらに、十分な密度が確認できた場合には、特定の地域コミュニティ向けのイベントも開催する。約1年前には、Ben Horowitzをスピーカーに迎え、北欧のトップ創業者をシリコンバレーに1週間招待するイベントを実施したという。
ボーダーレス創業者の3つの優位性——人材、ブランド、顧客
AngelaとGabrielは、ボーダーレス創業者が持つ固有の優位性を「人材」「ブランド」「顧客」の3つに整理する。まず人材面では、母国の深い人材ネットワークにアクセスできることが挙げられる。ブラジルのAI保険会社の例では、最高の人材は有名大学ではなく、あまり知られていない大学にいるという。そのような人材は、全国から優秀な学生を集める奨学金プログラムやロボティクスコンペティションを通じて見つけることができる。初期段階で10人の非常に優秀な人材を確保できれば、11人目の採用時に「どうやってそんなに優秀な人材を集めたのか」と驚かれ、人材のフライホイールが回り始める。
ブランド面では、母国での存在感が大きな武器となる。ポートフォリオ企業の11 Labsは、英国発祥だがポーランド人の創業者を持つ。ポーランドにとって11 Labsは「AIオリンピック」の代表選手のような存在であり、ポーランド政府が直接投資を行い、さまざまなイニシアチブを共同で進めている。同様に、スウェーデン政府はLovableやNegoraを支援しており、このような政府の支援は「検証の印」として、国内の大企業だけでなく周辺国の企業からの信頼も獲得する。このブランド力は、後にグローバル人材の採用にも役立つ。ADIの例では、コロンビアで最もホットな企業になることで、Capital One出身の優秀なクレジット人材をボゴタに引き付けることに成功した。
顧客面では、母国の大企業との関係が初期のデザインパートナーシップにつながることが多い。Factor Labsは、ラテンアメリカ最大のコングロマリット(Slim家が所有)と最初に仕事を始め、そこから他の部門にも拡大した。また、スペイン出身の創業者が率いるSupersonicの例では、創業者の大学の先輩がSalesforceの元CROで現在はCOOを務めており、そのつながりを通じてSalesforceが最初のデザインパートナーとなり、後に顧客へと転換した。このようなつながりは、外部から見ると偶然のように思えるが、すべて同じルートに接続されているとGabrielは説明する。
さらに、ボーダーレス創業者は「優先的愛着(preferential attachment)」のフライホイールをより多くのレバーで回すことができるとAngelaは主張する。アメリカでは「誰が使っているのか」という最初の質問に答えるのが難しいが、ボーダーレス創業者は別の国で最初の大銀行や大保険会社を獲得することで、アメリカ市場での信用を一気に高めることができる。また、シリコンバレーのホットな企業であるCognitionの例では、初期の売上の大部分をブラジルが占めており、ブラジルの大企業がAI導入に積極的であることを活用して、初期の成長を実現した。このように、ボーダーレス創業者は複数の市場をまたぐことで、より多くのレバーを手に入れることができる。
エコシステム構築の実践——ローカル特定からリピート創業者支援まで
a16zが新しい国や地域に参入する際のプロセスについて、Gabrielは「ローカル」の特定から始めると説明する。ローカルとは、地元エコシステムで高い尊敬を集め、企業を築いた人物を指す。企業の規模や成功度は必ずしも重要ではなく、エコシステムを発展させようと真剣に努力している人が対象となる。このような人物を特定し、彼らを支援することで、そのネットワーク内の優秀な人材へのアクセスが得られる。具体的には、彼らのメッセージを検証すること(a16zのような企業からの承認が彼らの主張を強化する)、イベントの開催、採用支援などが含まれる。
エコシステム構築の第2段階は、シリコンバレーで活躍する「新星」のマッピングだ。各国出身でシリコンバレーで成功している人物を特定し、母国から来た創業者とつなぐことで、ネットワークの密度を高める。Gabrielは「どの国でも、その国だけを見ていると思わせるようにしている」と冗談めかして語るが、これは各エコシステムに深く入り込むための意図的な戦略だ。このアプローチにより、a16zは各国のエコシステムで「流れの中にいる」存在となる。
リピート創業者(2回目以降の起業)への支援も、重要な戦略の一つだ。Gabrielは「最初の波の創業者は、10億ドルから50億ドル規模の企業を築いたが、エコシステムが未成熟だったため、そのビジョンを最後まで実現できなかった」と説明する。このような創業者は、学んだ教訓と構築したネットワークを活かして、より大きな企業を目指す。a16zはこのようなリピート創業者を密に追跡し、イベントへの参加を支援し、Stanfordの優秀なエンジニアや顧客とのつながりを提供する。投資先の例として、Frederick Gillの新会社Pit.comが挙げられる。シリコンバレー訪問時には、DoorDashやLyftのトップ人材との面会を設定し、アイデアの検討を支援した。このような「アイデア創出」段階での差別化が、既存の関係がある投資家よりもa16zが選ばれる理由となっている。
初期段階の創業者への支援は、まずビザの問題から始まる。Gabrielは「これは大したことではないように聞こえるかもしれないが、アメリカに移住する際の最もストレスの多いプロセスだ」と語る。a16zはAIネイティブのビザ会社であるExtraordinaryに投資しており、この会社と連携して創業者のビザ取得を支援している。また、海外発のハッカー住宅がアメリカにキャンパスを開設する動きも支援している。フィンランドのイベントSlushで出会ったドイツのCDTM(ミュンヘン工科大学のプログラム)の4人の学生が始めたPalo Houseには、4ヶ月間で1,200人が滞在し、a16zはこのような「小さなリベラルアーツカレッジ」をスポンサーしている。さらに、各国の有力企業を所有する家族の次世代を「ボーダーレス創業者グループ」に招待し、AIネイティブな事業アイデアの創出を支援している。
シリコンバレーでの時間の価値と未来のグローバル企業像
国際創業者がシリコンバレーに来るべきかどうかという質問に対し、Gabrielは「間違いなく来て時間を過ごすべきだ」と明確に答える。たとえ母国に戻る予定でも、得られる洞察は計り知れない。彼は「シリコンバレーに来て『時間の無駄だった』と言う人に会ったことがない」と語り、その最大の価値は「スピード感の再調整」にあると指摘する。シリコンバレーは他のどのエコシステムよりも速いペースで物事が進むため、この感覚を体感することは創業者にとって極めて重要だ。推奨される滞在期間は最低3〜6ヶ月で、数週間ではネットワークの深さを体験するには不十分だと彼は言う。
Angelaは、シリコンバレーに来る際には「ディアスポラを活用すべきだ」とアドバイスする。ベイエリアには各国出身の成功した創業者や経営者が予想以上に多く、彼らは母国から来た後進の支援に積極的だ。a16zが提供するネットワークは、ビザ取得から人材紹介、顧客紹介まで多岐にわたる。このような支援は、創業者がシリコンバレーでの生活を始める際の障壁を大幅に下げる。
10年後のスタートアップのグローバルな構造について、Angelaは「このトレンドは今後も続く」と予測する。a16zの投資の40%が国際的な創業者によるものであり、その半数はシリコンバレー在住、半数は母国を拠点としている。多様な国籍・背景を持つ人材が混ざり合うことで、より大きな企業が生まれると彼女は信じている。Gabrielは、かつてシリコンバレーでよく言われていた「ベンチャーキャピタルのリターンの90%はシリコンバレー企業から生まれる」という統計に言及し、この割合が10%から20〜30%に上昇することを望むと語る。しかし、彼はこの統計が完全なストーリーを伝えていないとも指摘する。多くのボーダーレス企業はシリコンバレーに本社を置きながら、エンジニアリングチームは母国にあり、複数の国にまたがって事業を展開している。このような企業は「2つの国に属する」存在であり、そのストーリーはこれまで十分に語られてこなかった。
最終的に、次世代のグローバル企業は「最初から複数の国にまたがって構築される」可能性が高いと両氏は予測する。シリコンバレーのスピードと資本、母国の人材ネットワークとブランド力、そして各国の顧客基盤を組み合わせることで、従来の枠組みを超えた企業が生まれる。AIはこの流れをさらに加速させており、国境を越えた起業の新たなパラダイムが形成されつつある。
結びに
本エピソードの核心は、起業のグローバル化が単なるトレンドではなく、AIによって加速された構造的な変化であるという認識だ。AngelaとGabrielの議論は、ボーダーレス創業者が単に「国際的な人脈を持つ起業家」ではなく、母国の深い理解とシリコンバレーのスピードを組み合わせることで、従来の起業家にはない複数のレバーを手に入れる存在であることを明らかにする。特に印象的なのは、WhatsAppグループから始まった草の根のコミュニティが、現在ではa16zの国際戦略の中核を成すまでに成長したというストーリーだ。この成長は、投資家が「トップダウンで市場を開拓する」のではなく、「ボトムアップでエコシステムを育てる」ことの重要性を示している。
また、シリコンバレーが依然として世界のイノベーションの震源地である一方で、その影響力は双方向に流れているという指摘は示唆に富む。ボーダーレス創業者はシリコンバレーからスピードと資本を得るだけでなく、母国の人材ネットワークや政府との関係、初期顧客を活用して、シリコンバレー企業さえも驚かせる成長を実現している。Cognitionの例が示すように、ブラジルのような新興市場がAI企業の初期成長の場として機能するケースも増えている。このような「橋」が双方向に機能することで、次世代のグローバル企業は最初から複数の国にまたがって構築される可能性が高まっている。
本エピソードが重要なのは、単に投資戦略の解説にとどまらず、起業家精神の本質に迫っている点だ。Gabrielが語る「肩に乗った一片のチップ」という表現は、不利な環境から来た創業者が持つ独特の野心を的確に捉えている。この野心は、国境を越えた起業の原動力となり、結果としてより多様で強靭なグローバル企業を生み出す。投資家にとっても、創業者にとっても、国境はもはや障壁ではなく、むしろ競争優位性の源泉となり得るというメッセージは、今後のスタートアップエコシステムを考える上で示唆に富む。
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