
Amjad Masadが語る、直接的なアプローチ、Replitの構築、そしてソフトウェアの未来
- ReplitのCEOであるAmjad Masad(アムジャド・マサド)は、同社がここ2年で急成長を遂げる以前、約10年にわたって「時期尚早」と見なされるビジョンを語り...
- マサドは、自らの発信スキルを向上させるために、かつてニューヨークで即興劇(improv)のクラスを受講し、舞台恐怖症を克服した経験を語る。彼はこれを「暴露療法(exp...
- [0:00] ファウンダーによるストーリーテリングの戦略的価値 マサドは、Replitが商業的に成功する前の長い年月を「夢をミームにして現実にする」期間だったと表現す...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
The a16z Show / Andreessen Horowitz
- Amjad Masadは、Replitが商業的に成功する前の10年間、ビジョンを語り続けるストーリーテリングが資金調達と採用に不可欠であり、これがなければ会社は存続しなかったと述べている。
- 彼は「公開で構築する(build in public)」戦略を推奨し、社内向けのコミュニケーションをそのまま公開することで、発信の練習を積みながらコミュニティを巻き込む手法を実践している。
- ソーシャルメディアの使い分けとして、Xはエリート層とアーリーアダプターへの影響力が強く、InstagramやYouTubeはアーリーマジョリティへのリーチに適していると分析する。
- 炎上への対処は「ビジネスインパクト」を基準に判断すべきであり、自社の非を認めることが結果的にポジティブな評価につながる事例(Jason Lemkinとの一件)を紹介した。
- 「キャンセルされることは選択である」と主張し、批判に直面しても発信を続け、次の話題を生み出すことで、結果的に「アンキャンセラブル」な存在になり得ると論じる。
- 効果的な発信には「メタ(現在の議論の文脈)」を理解することが不可欠であり、Satya Nadellaのエッセイが業界の議論の中心を捉えたからこそ大規模な注目を集めたと分析する。
- CEO全員がインフルエンサーになる必要はなく、Dario Amodeiのように製品が自らを語る場合や、CEOが発信に向いていない場合は、無理に行うべきではないと結論づける。
- 精神的レジリエンスの源泉は「原則(principles)」にあり、Anthropicの行動が安全性という原則に基づいているからこそ、外部の批判に動じない強さを持っていると指摘する。
ReplitのCEOであるAmjad Masad(アムジャド・マサド)は、同社がここ2年で急成長を遂げる以前、約10年にわたって「時期尚早」と見なされるビジョンを語り続けてきた。彼は、製品が市場に受け入れられる前に、その可能性を信じさせるストーリーを紡ぐことが、資金調達や優秀な人材の獲得に不可欠だったと振り返る。この経験から、マサドは「すべてのCEOがインフルエンサーになるべきか」という問いに対し、必ずしもそうではないとしつつも、製品がすぐに商業的成功を収めない場合、CEO自らがパブリックコミュニケーションを通じて「夢を現実にする」必要性を強調する。本エピソードは、New Media Summitでのライブ収録であり、ホストのErik Torenberg(エリック・トーレンバーグ)との対話を通じて、ファウンダー主導のストーリーテリング、ソーシャルメディアの戦略的活用、そして批判や炎上への対処法まで、現代のスタートアップ経営における「発信力」の本質に迫る。
マサドは、自らの発信スキルを向上させるために、かつてニューヨークで即興劇(improv)のクラスを受講し、舞台恐怖症を克服した経験を語る。彼はこれを「暴露療法(exposure therapy)」と呼び、小さな失敗を繰り返しながら徐々に耐性をつけることの重要性を説く。Replitがまだ注目を集めていなかった時期に、Hacker News上でインターンとのコミュニケーションを誤り、PR危機を経験したことさえも、後の大舞台での教訓になったという。さらに、マサドは「キャンセルされることは選択である」と断言し、批判に直面しても発信を続け、自らの原則に従って行動することで、結局は「アンキャンセラブル」な存在になり得ると主張する。この考え方は、トランプ前大統領やイーロン・マスクの事例を引き合いに出しながら、現代のメディア環境における「本物(authenticity)」の力と、批判を跳ね返すレジリエンスの重要性を示している。
ファウンダーによるストーリーテリングの戦略的価値
マサドは、Replitが商業的に成功する前の長い年月を「夢をミームにして現実にする」期間だったと表現する。当時、同社のプロダクトはまだ収益を生み出していなかったが、彼は「会社そのものよりも大きなストーリー」を語り続けることで、投資家や将来の従業員の共感を得ることに成功した。彼は「言ったことはすべて真実だったが、当時はまだ現実ではなかった」と述べ、ビジョンを先に言語化し、それを信じさせる力が、スタートアップの生存確率を高める鍵だったと振り返る。
このアプローチは、製品が市場で即座に成功する場合には必ずしも必要ないとマサドは認める。しかし、製品が「時代の先を行く」場合、CEOが自らメディアとなり、ビジョンを伝えることは、資金調達や採用において決定的な差を生む。彼は、Replitがもしこのストーリーテリングを行っていなければ、おそらく消滅していただろうと率直に語る。この考え方は、単なるマーケティングではなく、会社の存在そのものを支える戦略的行為として位置づけられている。
マサドは、CEOが発信力を高めるための具体的な方法として「公開で構築する(build in public)」というコンセプトを挙げる。これは、社内向けのコミュニケーションや戦略的な考えを、そのまま公開してしまう手法である。彼は「秘密にしておかなければならない情報はそれほど多くない」とし、社内向けのSlack投稿よりも先に、まず公開の場で文章を書き、それを社内に貼り付けるという実践を紹介する。これにより、発信の「レップ数(reps)」を稼ぎながら、同時にユーザーやコミュニティを会社の旅路に巻き込むことができるという。
ソーシャルメディアプラットフォームの特性と使い分け
マサドは、X(旧Twitter)と他のプラットフォームの違いを、イノベーションの普及曲線(adoption bell curve)に沿って明確に説明する。Xは「エリート層やインサイダーグループ」への影響力が極めて高いが、そのリーチは主にアーリーアダプターとシリコンバレー内部に限定される。一方、Instagram、Facebook、そしてYouTubeは「アーリーマジョリティ(初期多数派)」にリーチするためのプラットフォームであると位置づける。
彼は、Xの影響力が「ジャーナリストがX上のツイートを元に記事を書く」という形で、依然としてニュースの起点として機能している点を重視する。しかし、アルゴリズムの変更がリーチに与える影響が大きく、プラットフォーム依存のリスクも認識している。それでも、Xの「粘り強さ(staying power)」は非常に高く、ブランド名が変わろうとも、その価値は簡単には代替されないと評価する。
マサド自身は、Instagramへの本格参入が遅れたことを認めつつ、ポッドキャストのインタビューをクリップ化してInstagramに投稿する戦略が、予想以上に効果的だったと語る。彼は「ポッドキャストは他のすべてのフォーマットに変換可能なメディア」と述べ、一度収録したコンテンツをマルチプラットフォームで展開する効率性を強調する。CEOが全てのプラットフォームで同時に活動する必要はないが、自社のターゲット顧客がどこにいるかを理解し、戦略的にリソースを配分することが重要であると示唆する。
炎上とPR危機への対処法:原則とビジネスインパクト
マサドは、ソーシャルメディア上での批判や炎上に対して、CEOが取るべき態度を「ビジネスインパクト」という軸で判断することを提案する。彼は、自社製品がユーザーのデータベースを削除したという誤解を招いた事例(Jason Lemkin(ジェイソン・レムキン)との一件)を挙げ、その際に「ユーザーエラーだ」と反論するのではなく、「開発環境と本番環境の分離ができていなかった」という自社の不備を認め、迅速に改善策を発表した経緯を語る。この対応が結果的にポジティブな評価を得て、Jason Lemkin自身も後にReplitの熱心なユーザーになったという。
彼は、批判に対して「感情的になること」が最大のリスクだと警告する。「弱みを見せると、それが餌となり、ハラスメントが加速する」と述べ、原則に基づいた冷静な対応が重要であると説く。また、すべての批判に反応する必要はなく、「トロルに餌をやるな(don't feed the trolls)」という原則を守り、無視することも有効な戦略であると指摘する。
さらにマサドは、「キャンセルされることは選択である」という大胆な主張を展開する。彼は、『So You've Been Publicly Shamed』という書籍を引用し、本当にキャンセルされるのは「沈黙し、撤退した人々」であると論じる。発信を続け、次の話題を生み出し続ける限り、人々の記憶は移り変わり、批判者もやがて諦めるという。この考え方は、トランプやイーロン・マスクの事例を引き合いに出しながら、現代のメディア環境における「継続的な存在感」の重要性を強調している。
本物であること(Authenticity)とメタ理解の重要性
マサドは、現代のCEOに求められる最も重要な資質の一つとして「本物であること(authenticity)」を挙げる。彼は、かつてCEOはPR担当者を通じてメッセージを発信する「磨かれた存在」であったが、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグが直接発信することで、そのパラダイムが変わったと指摘する。特にザッカーバーグがジャーナリストに批判された際に、自らの言葉で直接語りかけることで、ネガティブなナラティブを覆した事例を高く評価する。
しかし、単に「本物」であれば良いわけではない。マサドは「メタ(全体の文脈や議論の流れ)を理解すること」が、発信の成否を分けると強調する。彼は、Satya Nadella(サティア・ナデラ、Microsoft CEO)が公開したエッセイを例に挙げ、それが「トークンコスト」という現在進行形の業界議論の中心を捉えていたからこそ、2,000万から3,000万ものビューを獲得したと分析する。つまり、発信は「現在の会話に自らの主張や世界観をドレスアップして乗せる」ことであり、そのためには業界の動向を深く理解する時間投資が不可欠である。
マサドは、CEOが発信を強制されるべきではないとも述べる。Dario Amodei(ダリオ・アモデイ、Anthropic CEO)のように、製品が自らを語る場合や、CEO自身がその活動を楽しめず「完全にダサい(cringe)」結果になるのであれば、無理に行う必要はない。重要なのは、CEOの適性と状況を見極めた上で、戦略的に「発信するか否か」を判断することである。彼は、xAIのGrokのようにCEOではなく別のメンバーが発信を担当し、成功している事例も紹介する。
批判とレジリエンス:精神的負荷への対処
マサドは、ソーシャルメディア上での大規模な批判がCEOに与える精神的影響について、深い洞察を共有する。彼は「祖先の村では、村八分にされることは死を意味した」と述べ、オンラインでの排斥が人間の原始的な恐怖反応(闘争・逃走反応)を引き起こすことを指摘する。不眠や食欲不振といった深刻な症状を引き起こす可能性があるため、この精神的負荷を軽視してはならないと警告する。
この問題に対する彼の処方箋は、やはり「暴露療法」である。最初の炎上は非常に辛いが、経験を重ねるごとに「ああ、またか。そのうち収まるだろう」と対処できるようになるという。しかし、それだけでは不十分であり、最終的には「原則(principles)」に従って行動することが、精神的な強さの源泉になるとマサドは主張する。
彼はAnthropicを例に挙げ、同社が行うすべての行動が「安全性」と「ミッション」という明確な原則に基づいているからこそ、外部からどんなに批判されても揺るがない強さを持っていると分析する。たとえその行動が皮肉なマーケティングと見なされようとも、内部の人間が本気で信じている限り、その原則は組織を前進させる力となる。この「原則と自己利益の一致」が、長期的なレジリエンスを生み出すというのがマサドの見解である。
ファウンダー主導メディアとCEOの役割の進化
マサドは、CEOがメディアとどのように向き合うべきかについて、Balaji Srinivasan(バラジ・スリニバサン)のアプローチと自身のスタンスの違いを明確にする。Balajiがジャーナリストに対して敵対的な姿勢を取ることを推奨したのに対し、マサドは「彼らも人間であり、インセンティブに反応する」として、友好的な関係を築くことの重要性を説く。実際にReplitは、元ジャーナリストのSharon O'Shea(シャロン・オシェイ)をチームに迎え入れ、メディア対応力を強化したという。
彼は、CEOが「インフルエンサー」になることは一つの道であるが、唯一の道ではないと繰り返し強調する。成功への道筋は多様であり、製品が自らを語る場合や、CEOが発信に向いていない場合は、無理に真似る必要はない。しかし、もしCEOが発信を選択するのであれば、それは「練習」を積み、戦略を練り、自らの原則に基づいて行うべきである。
マサド自身のキャリアは、この進化の過程を体現している。彼は即興劇のクラスから始め、Hacker Newsでの小さな失敗を経て、今ではX、Instagram、YouTubeとマルチプラットフォームで影響力を持つに至った。このエピソード全体を通じて、彼は「CEOの発信力」を、生まれつきの才能ではなく、意図的な練習と戦略によって培われるスキルとして位置づけている。そして、そのスキルは、製品が市場に受け入れられる前にビジョンを信じさせるための、現代のスタートアップ経営における必須ツールであると結論づける。
結びに
本エピソードが特に印象的なのは、Amjad Masadが「CEOのパブリックコミュニケーション」を、単なるマーケティングやブランディングの枠を超えて、スタートアップの生存戦略そのものとして捉えている点である。彼の語る「夢をミームにして現実にする」というフレーズは、シリコンバレー特有の楽観主義と、それを実現するための執念深い実行力を象徴している。また、「キャンセルされることは選択である」という主張は、批判を恐れて沈黙するのではなく、原則に基づいて発信を続けることの重要性を力強く示している。このエピソードは、製品開発と並行して「物語」を構築することの重要性を再認識させるとともに、現代のCEOに求められる新たな資質について深い示唆を与える。
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