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Rebuild · 2026年6月9日

427: Tokenmaxxing (twada)

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 概要 今回のエピソードは、ゲストに和田卓人(twada)さんを迎え、マイクロソフトの開発者向けカンファレンス「MS Build 2026」の現地レポートを軸に、AIエージ...
  • [0:00] 和田卓人、初登場とMS Build参加の経緯 和田卓人さんは、これまで多くのポッドキャストにゲスト出演しているものの、Rebuildには初登場となる。今回の...
  • 和田さんがサンフランシスコを訪れた主な目的は、マイクロソフトの開発者向けカンファレンス「MS Build 2026」への参加だった。和田さん自身は「マイクロソフト製品をあ...
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Rebuild / Tatsuhiko Miyagawa

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概要

今回のエピソードは、ゲストに和田卓人(twada)さんを迎え、マイクロソフトの開発者向けカンファレンス「MS Build 2026」の現地レポートを軸に、AIエージェントによるコーディングの最前線、トークン課金の現実、テスト駆動開発(TDD)の再評価、そしてオープンソースの世界がAIによって揺れ動く様子まで、幅広く議論した。和田さんがサンフランシスコで実際に体験したキーノートの熱気や、会場で感じた「地味だが強い」マイクロソフトの戦略、そしてAIエージェントがもたらす「トークンマキシング」という新しい問題系まで、現場の空気感と深い洞察が交錯する濃密な対話となっている。

0:00和田卓人、初登場とMS Build参加の経緯

和田卓人さんは、これまで多くのポッドキャストにゲスト出演しているものの、Rebuildには初登場となる。今回の収録は、和田さんがサンフランシスコに滞在しているところを、ホストの宮川さんがTwitterで見つけ、急遽飲みに誘ってその場で収録が決まったという、Rebuildらしい即興的な経緯で実現した。

和田さんがサンフランシスコを訪れた主な目的は、マイクロソフトの開発者向けカンファレンス「MS Build 2026」への参加だった。和田さん自身は「マイクロソフト製品をあまり使っていない」と語り、むしろ「マイクロソフト職が薄い人にこそ来てほしい」というマイクロソフト側からの誘いで参加したという。ホストの宮川さんも同様に、普段はLinuxやLAMPスタックで育ってきたため、マイクロソフトの製品には詳しくないが、全体の流れや雰囲気を感じるために参加したと述べている。

3:59キーノート体験:サティア・ナデラと「エージェント」のレイヤー構造

和田さんは、時差ボケをものともせず、キーノート会場に朝早く並び、前から5人目という好位置を確保した。会場はサンフランシスコのフォート・メイソンという旧陸軍の軍事施設を改装したカンファレンスセンターで、和田さんは肉眼でサティア・ナデラの姿を見ることができ、「推し勝つ」ような感覚を味わったと語る。

キーノートのテーマは「エージェント」だったが、ナデラは単なる製品発表ではなく、インフラストラクチャー、モデル、アプリケーション、ツール、セキュリティとガバナンスという複数のレイヤーを重ねて説明した。各レイヤーごとにディビジョンのヘッドが登場し、ライブデモを行うという構成だった。和田さんは「生キーノートは初めてだったが、喋りたいことが多すぎて開始時間が30分前倒しになり、2時間半近くやっていた」と驚きを交えて報告している。

8:49OpenCloneとWindows:CoreUtilsとMXCの衝撃

キーノートで特に会場が盛り上がったのが、OpenCloneの作者ピーター・スタインバーガーが壇上に登場した瞬間だった。OpenCloneがWindowsでネイティブ動作するという発表に加え、和田さんは「CoreUtils for Windows」という、UNIXの標準コマンド群をWindowsにネイティブ移植するプロジェクトが発表されたことに注目した。

和田さんは、このCoreUtilsの重要性を「コーディングエージェントがUNIXのコマンド群を前提に動こうとするため、Windowsではコマンドがなくてフォールバックしてしまい、エージェントがスムーズに動かない」という問題を解決するためだと説明する。さらに、もう一つの発表「MXC(Microsoft Execution Container)」は、軽量な隔離環境を提供するもので、OpenCloneのようなエージェントを安全に動かすための基盤として位置づけられている。和田さんは「OpenCloneをバックエンドにしたエージェントを、一般社員がExcelやWord、SharePointから動かしたいというニーズがあり、そのために隔離環境が必要だった」と、マイクロソフトのエンタープライズ戦略との関連を指摘した。

14:54マイクロソフトの真の強み:認証基盤とガバナンス

和田さんは、キーノートや会場を歩き回って感じたマイクロソフトの真の強みは、新しいデバイスやチップではなく、「認証基盤とエージェントの登録・配布・実行の仕組みを統合した、地味だが強力な配管工事」にあると語る。具体的には、Azure AD(Entra ID)を中心とした認証・認可の仕組み、デバイス管理、アプリ管理といったレイヤーを、マイクロソフトは完全に握っている。

特に重要なのは、エージェントに人間とは別のID(Entra ID)を与え、権限を分離する設計だ。和田さんは「エージェントが社員と同じ権限で動くと、メールにアクセスでき、ファイルの読み書きができ、Webのリクエストもできるため、完全に脆弱性につながる。そこで、エージェントのパーミッションを人間とは別に管理し、爆発しても影響範囲を抑えられるようにしている」と説明する。これは「ブラストレディウス(爆発半径)を最小化する」というセキュリティ設計の考え方に基づいている。

一方で、ホストの宮川さんは「エージェントの能力を削ぎ落としていくと、やりたいことができなくなる危険性がある」と懸念を示した。和田さんも「クリエイティビティは削いでいる。明らかに。でも、マイクロソフトが主戦場とするエンタープライズでは、それこそが求められている。ガバナンスとは管理と制限だから」と応じ、エンタープライズ向けと個人の自由な開発とでは、求められるバランスが根本的に異なることを指摘した。

27:20GitHub Copilot Appとトークン課金の現実

MS Buildでは、GitHub Copilotの新たな展開として「GitHub Copilot App」が発表された。これは、従来のVS Code内での補完やCLIでの利用に加え、デスクトップアプリとして統合されたエージェント環境を提供するものだ。和田さんは「マルチエージェントが裏で並列に動いているときに、情報が溢れすぎて人間の認知負荷が高くなる問題を解決するために、アプリ化が必要になった」と分析する。具体的には、朝出勤したらその日のIssueやPull Requestを自動でサマライズし、優先順位をつけて表示するような「エージェンティックワークフロー」がデモで披露された。

しかし、同時に大きな話題となったのが、GitHub Copilotの個人向けプランが6月1日からリクエストベースからトークンベースの課金に変更されたことだ。和田さんは「予告はあったが、いざ使ってみると1日でここまで減るのかという驚きがある。特にジャブジャブ使っていた人からの反応が大きい」と語る。和田さん自身は、普段はソネット(安価なモデル)で20ドルのプロプランで十分使えており、重い作業だけコーデックスに切り替えるという「ケチケチ運用」で対応しているという。

ホストの宮川さんは、トークン課金の心理的な悪影響を指摘する。「成功しようがしまいがお金が取られる。リファクタリングでぐちゃぐちゃになってブランチを破棄したら1.5ドルかかりました、みたいな状況になると、サンクコストが発生して捨てられなくなる。また、究極のプロンプトを探したいという方向に思考が向いてしまい、試行錯誤を厭うようになる。それはエージェンティックな考え方ではない」と警鐘を鳴らす。

38:40トークンマキシングとインセンティブ設計の誤り

話題は、AmazonやUberで起きている「AIエージェントの使い過ぎ」問題に移る。和田さんは「Amazonの事例は、基本的なインセンティブ設計の誤り」と断じる。具体的には、社内で「みんな使え」と推進した結果、誰が一番使っているかのリーダーボードを作ってしまい、社員が無駄なことでトークンを燃やす「トークンマキシング」が発生したという。

和田さんは「トークン消費量をメトリクスにすることは、昔のコード行数をメトリクスにすることと同じ。グッドハートの法則で、人間は必ずそれを最大化するようにハックする」と指摘する。ただし、経営層の中には「分かった上で、まずは体験を後押しするためのプロキシメトリクスとして使っている」という意見もあると紹介し、単純に善悪で割り切れない問題であることを示唆した。

43:36TDDとAIエージェント:レッド/グリーンTDDの再発見

和田さんの長年のテーマであるテスト駆動開発(TDD)とAIエージェントの関係について、深い議論が交わされた。和田さんは「去年1年で、コーディングエージェントが自動テストを世の中に普及させた力は、私の20年間の啓蒙活動よりはるかに大きい」と認めつつ、興味深い現象を報告する。

AIエージェントに「TDDをやって」と指示しても、世の中のTDDに対する誤解(テストコードを先にたくさん書くこと、テストファーストであることなど)を学習しているため、本来の「レッド/グリーン/リファクター」という狭義のTDDにはならない。和田さんは「Simon Willisonが提案した『Red/Green TDD』というプロンプトが効果的で、これを使うとトークン消費も少なく、ストリクトなTDDになる」と紹介する。また、人名(Kent Beckやtwada)を指定するとコンテキストが狭くなりすぎるため、フラットな指示の方が良い場合もあるという。

さらに、和田さんは「テストコードがしっかり書かれていることが、エージェントに仕事をさせるための必須条件になった」と強調する。自身の経験として、新しいLinuxのサンドボックス環境でCMakeのオプションが間違っていたため、テストが何度走っても失敗し、エージェントが20分以上も悩み続けたというエピソードを披露。「テストがないとエージェントの能力が全く発揮できない」という教訓を語った。

50:16ソフトウェア・ディフェンシビリティとAI時代のOSS

MS Buildでは、Chip Huyenによる「Software Defensibility in the era of AI coding」という講演が特に印象的だったと和田さんは語る。これは「コーディングのコストがゼロに近づき、プロダクトのコピーコストもゼロに近づいている時代に、良いプロダクトを出しても秒でコピーされる。では、コピーされても平気なプロダクトを作るとはどういうことか」というテーマだ。和田さんは「データの話、卓越性の話、顧客のファイラル(忠誠心)の話など、コードだけコピーされてもビクともしない事業を作るという考え方に、すごく現代的なテーマを感じた」と述べる。

一方で、AIがオープンソースの世界に与える影響についても議論が及んだ。和田さんは「rsyncの作者が、AIが生成したセキュリティレポートやIssueの flood に対応するために、自らコーディングエージェントを使い始めた」という事例を紹介。また、SQLiteがテストコードを非公開にしたこと、CloudflareがVite(VoidZero)を買収したこと、BunがAnthropicにJoinしたことなど、AI時代のOSSを取り巻く環境の変化を次々と挙げた。

特に衝撃的だったのは、CloudflareがNext.jsのクローンをAIエージェントを使って短期間で作成した「スロップフォーク」事件だ。和田さんは「テストコードがしっかり書かれ、ドキュメントが整備され、全てがオープンソースになっていることが、かつては誇りだったのに、それが今や弱点になっている。これはめちゃくちゃショッキングな事件だ」と語る。SQLiteがテストコードを非公開にしたのも、まさにこの流れを受けての判断だった。

1:21:24コードレビューの未来:プロンプトレビューと敵対的レビュー

議論は、AI時代のコードレビューのあり方に及ぶ。和田さんは「コードレビューは結果のレビューではなく、過程のレビュー、起点のレビューをしたい」と述べ、WIP(Work In Progress)のPull Requestで先に設計意図を共有する文化が再評価される可能性を示唆する。

また、AIによるレビューのテクニックとして「敵対的レビュー(Adversarial Review)」が流行していることを紹介する。これは、コードを書いたエージェントとは別のエージェント(場合によっては別のモデル)にレビューさせる手法だ。和田さんは「自分が書いたコードを『うちのジュニアエンジニアが書いたんだけど』とレビューさせると、お世辞を使わずに厳しいレビューが返ってくる。これは基本的なプロンプトエンジニアリングのテクニック」と説明する。

さらに、コードコメントの必要性について、『プログラマー脳』(Felienne Hermans)という本の知見を引用しながら議論が展開された。和田さんは「シニアエンジニアはコードコメントを読まず、関数名や変数名などの『ビーコン』を読みに行く。一方、ジュニアエンジニアはコメントを頼りにする。AIエージェントがどちらの寄りなのかはまだ定まっておらず、過渡期にある」と分析する。

まとめ

今回のエピソードは、MS Build 2026という一つのカンファレンスを出発点に、AIエージェントがもたらすソフトウェア開発の地殻変動を多角的に描き出した。和田卓人さんの「TDDの伝道師」としての長年の視点と、現場で感じた最新の空気感が融合し、単なる製品レビューを超えた深い洞察が得られる内容となっている。特に印象的なのは、「テストコードを書くこと」がかつてはエンジニアの誇りだったのが、今や「フォークされやすさ」という弱点に転化したという逆説、そして「トークンマキシング」という新しいインセンティブ問題が、かつての「コード行数主義」と同じ過ちを繰り返しているという指摘だ。AIエージェントがもたらす「力」と「制約」の両面を、現場の実感とともに理解できる、稀有なエピソードである。

要点

  • MS Build 2026のキーノートは2時間半に及び、テーマは「エージェント」。インフラからアプリケーション、セキュリティまでレイヤー構造で発表された。
  • マイクロソフトの真の強みは、Entra IDを中心とした認証基盤と、エージェントの権限を人間と分離するガバナンス設計にある。
  • OpenCloneのWindows対応とCoreUtils for Windows、MXC(Microsoft Execution Container)の発表は、エージェントを安全に動かすための基盤整備。
  • GitHub Copilot Appは、マルチエージェントの並列動作に伴う情報過多を解決するためのデスクトップアプリ化。
  • トークン課金への移行により、試行錯誤を厭う心理が生まれ、「トークンマキシング」という新しいインセンティブ問題が発生している。
  • AIエージェントは、TDDの普及において和田さんの20年の啓蒙活動を超える効果を発揮したが、正しいTDD(レッド/グリーン/リファクター)を理解させるには工夫が必要。
  • テストコードとドキュメントの充実が、かつてはOSSの誇りだったが、今やAIによるフォークを容易にする弱点に転化している(SQLiteのテストコード非公開、Cloudflareのスロップフォーク事件など)。
  • コードレビューは「敵対的レビュー」が主流になりつつあり、書いたエージェントとは別のモデルやペルソナにレビューさせる手法が効果的。
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