425: 壁に耳あり、ヘイル・メリー (hak)
- 概要 今回のエピソードは、ゲストに博郎(Hakuro Matsuda)さんを迎え、AppleのCEO交代、Mac Proの終焉、OpenAIを巡るイーロン・マスクとサム・...
- [8:29] 国防総省のUFO情報公開とAIの未来 話題はまず、国防総省が公開したUFO(UAP:未確認空中現象)情報から始まった。2023年に日本近郊で観測されたUAP...
- この話題から、miyagawaはAIの未来についての思索へと展開する。「ボイジャー1号・2号に乗せたゴールドディスクの代わりに、宇宙船にAIを乗せれば、ほぼ人間的なものが...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
Rebuild / Tatsuhiko Miyagawa
概要
今回のエピソードは、ゲストに博郎(Hakuro Matsuda)さんを迎え、AppleのCEO交代、Mac Proの終焉、OpenAIを巡るイーロン・マスクとサム・アルトマンの法廷闘争、AnthropicのClaude Codeによる開発革命、そして映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の感想まで、テクノロジーからエンターテインメントまで幅広い話題を縦横無尽に語り合った。特に印象的なのは、博郎さんがClaude Codeを使ったゲーム開発で「生産性が爆上がりし、もう戻れない」と語る場面で、AIエージェントがソフトウェア開発の現場を根本から変えつつある現実が生々しく伝わってくる。ホストのmiyagawaと博郎さんの軽妙な掛け合いと、時折挟まれる「吉野家の帝王」ジョン・ターナスCEO説のような内輪ネタが、この番組らしいリラックスした雰囲気を醸し出している。
国防総省のUFO情報公開とAIの未来
話題はまず、国防総省が公開したUFO(UAP:未確認空中現象)情報から始まった。2023年に日本近郊で観測されたUAPの動画が公開され、FBIの1930年代からの極秘資料の抜粋も含まれているという。miyagawaは「これは来るべきファーストコンタクトへの地ならしかもしれない」と半ば冗談めかして語るが、同時に「中間選挙向けのガス抜きでは」とも指摘する。博郎さんは「観測機器のノイズかもしれないが、何か確認できないものが空にあるらしいというのが今の落ち着きどころ」と冷静な見方を示した。
この話題から、miyagawaはAIの未来についての思索へと展開する。「ボイジャー1号・2号に乗せたゴールドディスクの代わりに、宇宙船にAIを乗せれば、ほぼ人間的なものが全銀河系に広がっていく未来が見える」と語り、それが映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を連想させると述べた。
Apple CEO交代:ジョン・ターナスの時代へ
AppleのCEOがティム・クックからジョン・ターナスに交代するというニュースについて、二人は詳細に議論した。クックは2011年から15年にわたってCEOを務め、その間にAppleの株価は約30倍に成長した。miyagawaは「クックはオペレーションの出身で、全世界から部品を取り寄せて中国やベトナムで組み立て、遅れなく届ける手腕を買われてCEOになった」と背景を説明する。
クック在籍中の成功プロダクトとして、Apple WatchとAirPodsが挙げられた。一方で、Apple CarやApple TV(液晶ディスプレイテレビ自体)はリサーチのみで製品化されなかった。特にスティーブ・ジョブズが亡くなる直前に「テレビについてはやり方がわかった」と語っていたという逸話が紹介され、結局それが何だったのかは今も謎だと語られた。
ジョン・ターナスについては、M1のアーキテクトとして知られるが、実際のアーキテクトは別の人物であること、社内での評判が非常に良いことなどが語られた。miyagawaは「ハードウェアの会社として、ハードウェアの遺伝子を引き継ぐジョン・ターナスがCEOになるのは良いこと」と評価する一方、「ハードウェアに足を寄せすぎて、サービスやOSがおろそかになるリスク」も指摘した。クックはExecutive Chairmanとして残り、トランプ政権との関係など政治的な「ノイズ」を新しいCEOからブロックする役割を担うという見方が示された。
Mac Proの終焉とAirPodsカメラの噂
Mac Proがディスコン(製造終了)になったニュースについて、二人は「でしょうね」と驚きのない反応を示した。最終版はM2 Ultra搭載で、実質Mac Studioと変わらないスペックだったという。博郎さんは「昔のようにメモリをバカバカ詰められるマシンが欲しかったのだろうが、需要もないし、そのためだけにチップを作るのも大変だった」と分析する。チップ一体型の設計が進み、ユーザー自身によるアップグレードが不可能になった現状についても議論された。
次に、AirPodsにカメラが搭載されるという噂が紹介された。これはAIウェアラブルの一種で、Siriに質問した時にカメラで周囲を認識し、看板の翻訳やメニューの説明などを行う用途が想定されている。miyagawaは「スマートグラスと被る部分があるが、耳に付けるカメラでちゃんと撮影できるのか」と疑問を呈する一方、広角レンズなら可能かもしれないと述べた。この製品はジョン・ターナスCEO就任後の最初のメジャー製品になる可能性もあるという。
半導体バブルとレイオフの波
株式市場について、miyagawaは「完全にチューリップ球根を売りさばいている世界」と表現する。Intelは1ヶ月で株価が倍になり、AMDも決算日に18%上昇、SanDisk(Western Digital)に至っては1年間で株価が30ドルから1500ドルと40倍になったという。背景として、Intelが半ば国策企業になりつつあること、AIエージェント時代にはCPUの使用率が上がるという思惑があると説明された。
一方で、レイオフの波も続いている。Meta、Amazon、Epic Games、Cloudflareなどが人員削減を発表している。miyagawaは「AIをスケープゴートにしやすい。単にコロナ禍でオーバーハイアリングしたのを減らしたいだけ」と指摘する。特にCloudflareの20%レイオフについては、AIで自動化できる仕事をなくすという明確なメッセージがあるとし、「エンジニアがAIで生産性を上げれば上げるほど、自分の仕事がなくなるというジレンマ」を憂慮した。
OpenAIの迷走とマスク対アルトマンの法廷闘争
OpenAIを巡る話題では、Microsoftとの独占契約が終了し、AWSやGoogleでもGPTモデルが使えるようになったことが報告された。miyagawaは「回収できそうにないから他でもビジネスするというところか」と推測する。
さらに、イーロン・マスクがサム・アルトマンとMicrosoft、OpenAIを訴えた裁判について詳しく語られた。マスクはOpenAIの共同創業者でありながら、非営利として始めたはずの組織が営利団体に変わったことを問題視している。裁判では、これまで明かされなかった社内メールやテキストメッセージが証拠として提出され、特にミラ・ムラティが証言したサム・アルトマンの一時解任劇の舞台裏が明らかになった。miyagawaは「マスクは裁判に勝つことより、OpenAIの評判を下げる方が目的かもしれない。泥団子を投げ合う試合」と分析する。
また、SpaceXとAnthropicの間でGPUを貸し出すディールが進行中で、その条件が「Anthropicが正しいことをしている限りにおいてOK」というものであることが話題になった。miyagawaは「正しいことの定義を誰が決めるのか」と疑問を呈し、イーロン・マスクの価値観が介入する可能性を指摘した。
Claude Codeによるゲーム開発革命
博郎さんは、Claude Codeを使い始めて「ついにエージェント時代に突入した」と興奮気味に語る。具体的には、GitHubに公開されている「Claude Code Game Studios」というプロジェクトを使ってゲーム開発を行っている。これはClaude(Opus)をバックエンドに積んだゲーム生成用フレームワークで、Unity、Unreal Engine、Godotに対応している。
最も驚いたのは、ゲームデザインドキュメントの作成が1日でできてしまったことだ。博郎さんは「僕は文章を書くのが苦手で、自分でやれば3ヶ月かかって心が折れるが、それが1日でできた」と語る。また、Unreal Engine 5.7ではBlueprint(ビジュアルプログラミング)向けのエージェントインターフェースがないため、C++のバックエンドをClaude Codeに書かせ、手作業が必要な部分は自分で行うという並列作業をしているという。
「C++のコードもクオリティの高い普通のコードを書いてくれる。今は99.9%をClaude Codeに書かせて、僕はレビューとバグ潰しのピンポイント修正だけ。人間はエージェントの手伝いをちょっとするだけ」と、その生産性の高さを絶賛した。ただし、APIのレートリミット(使用制限)に縛られる生活になり、「トークンマキシング(上限まで使い切らないと損というマインド)」に陥る危険性も指摘された。
オーディオ環境の探究:aptX LLとBluetooth遅延の克服
博郎さんは、自宅のオーディオ環境構築の顛末を詳細に語った。目標は、リビングのテレビから流れる音楽を、仕事部屋でも同時にストリーミングすることだった。しかし、Bluetoothの標準的な遅延(200〜300ミリ秒)により、2つの部屋の境目で「山彦状態」になり、聞ける状態ではなかった。
そこで彼が注目したのが、aptX Low Latency(LL)というコーデックだ。通常のBluetoothコーデック(SBCなど)が周波数領域で圧縮するためバッファリングが必要なのに対し、aptX LLはADPCMという古い方式を使い、直前のサンプルとの差分だけを4ビットで送る。博郎さんはこれを「ところてん式」と表現し、遅延が20〜40ミリ秒に抑えられることを説明した。
さらに、コーデックのネゴシエーションをスマホアプリで制御できるレシーバーを見つけ出し、見事に24時間ストリーミング可能な環境を構築した。miyagawaは「ソノス(Sonos)のような統合プラットフォームを使えば簡単だが、デザインテイストが好みに合わない」と、この苦労を理解する。
デスク環境の最適化:BenQ 5KモニターとEdifierスピーカー
miyagawaは自身のデスク環境のアップデートを紹介した。まず、BenQのPD2730Sという5Kモニターを購入。LGの4Kモニターと比べて「画質がめちゃくちゃ良くなったとは思わない」としながらも、HDRコンテンツの表示品質が大幅に向上したと評価する。最大の利点は、KVM機能が内蔵されており、ディスプレイの入力切替とキーボード・マウスの切替が連動することだ。さらに、DCC(Display Control Command)プロトコルに対応しており、コマンドラインから入力切替が可能。miyagawaはAlfredにショートカットを割り当て、「Command+Option+P」で仕事用Macと個人用Macを瞬時に切り替えられるようにした。
スピーカーはEdifier M60を購入。価格は約180ドルで、サイズはスマホ1個分程度ながら「このサイズからこんな低音が出るのか」と驚くほどの音質だという。入力がUSB-C、3.5mm標準ジャック、Bluetoothの3系統あり、現在はUSB-CでMacに直接接続している。
サイゼリヤCLIと技術者倫理の議論
話題は、高校生が開発した「サイゼリヤCLI」に移った。これは、サイゼリヤのWebサイトをリバースエンジニアリングし、コマンドラインから注文できるようにしたツールだ。miyagawaは「ハッカー魂的には素晴らしいアイデア」と評価する一方で、このツールの公開を巡ってX(Twitter)で技術者倫理をめぐる議論が起きたことを紹介した。
博郎さんは「普通にブラウザで叩いているのと同じ挙動をするCLIを作ることが倫理的に良くないとは全く思わない。脆弱性ですらない」と明確に意見を述べる。また、「公開したファイルの中にサイゼリヤのWebサイトのファイルがそのまま入っていた」という著作権の問題や、「ゴールデンウィークにシステム担当者が出勤して対応しなければならない」という批判についても、「連絡するやつが悪い」と一刀両断した。
EVO Japanとゲーム文化
博郎さんは、ゴールデンウィーク中に開催されたEVO Japan(世界最大級の格闘ゲームトーナメント)に3日間通い詰めた体験を語った。メインはストリートファイター6で、鉄拳8、ギルティギア、さらにヴァンパイアセイバーや北斗の拳といったレトロゲームのトーナメントも行われたという。
博郎さんは「自分は昔ゲーセン小僧で、朝10時から昼過ぎまで人のプレイを見続け、午後から学校に行く生活を送っていた。その苦い青春の思い出が蘇った」と振り返る。現代の格闘ゲームは「見せるゲーム」としてよく設計されており、対戦の駆け引きが観客にわかりやすくなっていると評価した。また、eスポーツチームの応援文化や、特定の選手(パンクという黒人のドレッドヘアの選手)のヒール的なキャラクターについても言及した。
プロジェクト・ヘイル・メアリーとおすすめ作品
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』について、二人とも鑑賞済みで好意的な評価を述べた。原作のファンが多い作品だが、miyagawaは「原作を読んでから行くと、映画はただ原作をなぞっているだけになってしまう。まだ読んでない人は、読まずに映画を見た方がいい」とアドバイスする。博郎さんも同意し、「SF受難の時代、SFはSFというだけで尊い。手もひもかけずにサクサク見るのがいい」と語った。
その他のおすすめ作品として、Netflixのドラマ『九条の大罪』(ヤミキン・ウシジマ君と同じ原作者)、アニメ『グノーシア』(シュタインズゲートに近いSF+人狼+ループもの)、『日本三國』(ポストアポカリプス世界で三国志を争う作品)、そして中国のオープンワールドRPG『NTE: Neverness to Everness』(東京が舞台のアニメテイストGTA風)が紹介された。
まとめ
今回のエピソードは、テクノロジーの最前線からエンターテインメントまで、非常に密度の高い内容だった。特に印象的だったのは、Claude Codeによる開発革命の生々しい報告だ。「人間はエージェントの手伝いをするだけ」という博郎さんの言葉は、ソフトウェア開発のパラダイムシフトがすでに始まっていることを実感させる。同時に、半導体バブルやレイオフの波、OpenAIを巡る法廷闘争など、テクノロジー業界の光と影が克明に描かれていた。そして、aptX LLの「ところてん式」コーデック解説や、サイゼリヤCLIを巡る技術者倫理の議論など、技術の深掘りと人間的な視点のバランスが絶妙だった。
要点
- Appleの次期CEOはジョン・ターナス(ハードウェア担当上級副社長)で、ティム・クックはExecutive Chairmanとして政治的な「ノイズ」をブロックする役割に回る見通し
- Mac Proが正式にディスコンとなり、ユーザーによるアップグレードが不可能なチップ一体型設計が標準になった
- 半導体株は異常なバブル状態で、SanDiskは1年で株価が40倍に。一方でAIを理由にしたレイオフが各社で進行中
- OpenAIを巡るイーロン・マスクの裁判では、サム・アルトマンの信用性を疑う内部メールが続々と公開されている
- Claude Codeを使ったゲーム開発では、コーディングの99.9%をAIエージェントに任せ、人間はレビューとバグ修正のみという時代が到来
- Bluetoothの遅延問題は、aptX Low Latencyコーデック(ADPCM方式)を使い、スマホアプリでコーデックを制御できるレシーバーを選ぶことで解決可能
- サイゼリヤCLIを巡る炎上は、技術者倫理の議論として興味深いが、脆弱性ではなく単なるAPIのラッパーであり、公開自体に問題はないというのが二人の見解
- 映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は原作未読のまま観ることを推奨。ディレクターズカット版(4時間超)の存在も噂されている