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No Priors: 人工知能 | テクノロジー | スタートアップ · 2026年7月9日

AIを通して見る旅:Booking.com CEO グレン・フォーゲルとともに

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • グレン・フォーゲル(Glenn Fogel)は、2000年にPricelineに入社した当時、同社の価値は数億ドルに過ぎなかった。入社から1週間後、ナスダックはピーク...
  • フォーゲルは、自身のキャリアを「選択」の連続として振り返る。ウォートン校で金融を学び、ハーバード・ロースクールを経てウォール街のトレーダーとなったが、いずれも自分に合...
  • [0:00] ドットコム崩壊から学んだ「持続可能な優位性」の幻想 フォーゲルは、Pricelineに入社してから1週間後にナスダックがピークを迎え、その後株価が1ドル...
こんな人向け

自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。

出典Podcast

No Priors: 人工知能 | テクノロジー | スタートアップ / Conviction

要点
  1. フォーゲルは「持続可能な優位性(moat)など存在しない」と断言し、常に革新を続けることこそが長期的な成功の唯一の道だと主張する。
  2. PricelineのAIエージェント「Penny」は、複雑な旅行計画を自然な対話で処理し、採用率が毎月倍増しているが、絶対的な取扱高に占める割合はまだ小さい。
  3. Booking Holdingsは2025年に約7億ドルをAIとテクノロジーに投資する一方、過去12年間で発行済み株式の40%を自社株買いで消却する資本政策をとっている。
  4. 同社は860万件の代替宿泊施設リスティングを有し、過去5年間でAirbnbを上回る成長を遂げているが、フォーゲルはこの規模自体が永続的な優位性ではないと警告する。
  5. AIによるカスタマーサービスは予約1件あたりのコストを約10%削減し、顧客満足度も向上させたが、一部の顧客は依然として人間による対応を求めるため、両方の選択肢を提供するバランスが重要だ。
  6. フォーゲルは、AIによる雇用喪失のスピードが歴史上のどの技術革新よりも速い可能性を懸念し、企業は従業員のアップスキリングに積極的に投資すべきだと主張する。
  7. 彼は「人生は一度きり」であり、キャリアの選択は「賢く選ぶ(choose wisely)」ことの重要性を強調し、単なる安定や収入ではなく、自分が意味を感じられる道を選ぶべきだと語った。
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他のエピソード

グレン・フォーゲル(Glenn Fogel)は、2000年にPricelineに入社した当時、同社の価値は数億ドルに過ぎなかった。入社から1週間後、ナスダックはピークを迎え、その後株価は1ドルまで急落した。しかし四半世紀以上を経て、Booking Holdingsは時価総額1,000億ドルを超えるグローバル旅行大手へと成長を遂げた。本エピソードでは、ホストのElad GilがフォーゲルCEOを迎え、彼の波乱万丈なキャリア、ドットコム崩壊の只中での経験、そしてAI時代における旅行業界の未来像について深く掘り下げている。フォーゲルは、AIエージェントが旅行計画とカスタマーサービスを根本的に変革する可能性を強調する一方で、人間によるサポートの重要性も指摘する。また、年間7億ドル以上をAIとテクノロジーに投資しながら、自社株買いと配当を継続する資本政策の哲学、そしてAIによる雇用への影響と従業員のスキルアップに対する責任感についても語った。

フォーゲルは、自身のキャリアを「選択」の連続として振り返る。ウォートン校で金融を学び、ハーバード・ロースクールを経てウォール街のトレーダーとなったが、いずれも自分に合わず、インターネットバブルの只中でPricelineに入社した。入社直後にバブルが崩壊し、株価は1ドルにまで落ち込んだが、彼は留まり続けた。この経験から、彼は「持続可能な優位性(moat)など存在しない」という信念を持つに至った。現在、Booking Holdingsは年間1,860億ドルもの旅行取扱高を誇り、PricelineのAIエージェント「Penny」は毎月倍々で成長している。フォーゲルは、AIが旅行業界にもたらす変革の本質と、巨大プラットフォーマーとしてのスケールの重要性を語る一方で、技術の進歩がもたらす雇用への影響についても深い懸念を示し、企業と社会全体が取り組むべき課題を提起した。

0:00ドットコム崩壊から学んだ「持続可能な優位性」の幻想

フォーゲルは、Pricelineに入社してから1週間後にナスダックがピークを迎え、その後株価が1ドルまで暴落した経験を詳細に語る。時価総額は300億ドルから数億ドルにまで減少し、上場廃止を避けるために逆株式分割を実施した。この極限状態の中で彼が学んだのは、「持続可能な優位性(moat)など存在しない」という厳しい現実だ。どんなに強固に見える競争優位も、明日には消え去る可能性がある。だからこそ、常に新しいサービスを開発し、顧客にとっての価値を高め続けることこそが、長期的に勝ち残る唯一の方法だと彼は断言する。

この教訓は、現在のAIブームに対する彼の冷静な見方にも反映されている。1999年から2000年にかけて約1,500社がIPOを果たしたが、現在も存続しているのはせいぜい24社程度だと彼は指摘する。現在のAI関連企業にも同様の淘汰が起きると予想し、多くの投資家が大きな損失を被るだろうと予測する。しかし同時に、こうした投機的なバブルは常にイノベーションを促進してきた歴史的事実も認めており、カリフォルニアのゴールドラッシュや自動車産業の勃興を例に挙げ、バブルの本質的な二面性を説明した。

フォーゲルは、起業家やCEOが「事業を継続するか、売却するか」の決断を迫られた際の判断基準についても言及する。彼は一律のアドバイスはできないと断りつつも、経営陣や投資家がどれだけ確信を持っているか、そして何よりも「何を成し遂げたいのか」という根本的な動機を問う。単に金を稼ぎたいのか、それとも社会に意味のあるものを作りたいのか。この問いに対する答えが、困難な状況下での決断を左右すると彼は考えている。

10:56AIエージェント「Penny」が変える旅行計画の未来

フォーゲルは、旅行計画の複雑さとストレスを軽減するAIエージェントの可能性について熱く語る。特に、Pricelineが開発したAIエージェント「Penny」の具体的な活用事例を紹介した。彼自身が実際にPennyを使って、家族旅行の複雑な計画を立てた経験を詳細に説明する。複数の目的地、異なる航空会社のマイルの使い分け、ホテルの選択、レンタカーの手配など、従来は人間の旅行コンシェルジュにしか任せられなかったような複雑な調整を、Pennyが自然な対話形式で処理してくれたという。

Pennyの導入効果は具体的な数字にも表れている。フォーゲルによれば、Pennyの採用率は過去数ヶ月間、毎月倍増している。さらに、コンバージョン率の向上、検索から予約までの時間短縮、キャンセル率の低下、顧客満足度の向上など、複数の指標で改善が見られている。しかし彼は、現時点では絶対的な取扱高に占める割合はまだ小さいとも認めており、スケールの大きさを強調する。Booking Holdingsは昨年、1,860億ドル相当の旅行取引を処理し、10億泊以上の宿泊予約を扱っている。

フォーゲルは、AIエージェントの普及には「トークンエコノミクス」の理解が不可欠だと指摘する。つまり、1回の旅行計画にどれだけのトークン(計算リソース)を消費し、そのコストに対する投資収益率(ROI)がどの程度かを厳密に評価する必要がある。また、顧客の生涯価値(LTV)やロイヤルティへの影響も考慮しなければならない。さらに、どのAIモデルをどの目的に使うかによってコストが大きく異なるため、モデル選択の最適化も重要な経営課題だと述べた。

18:59カスタマーサービスの変革と人間の役割

AIによるカスタマーサービスの変革は、すでに具体的な成果を上げている。フォーゲルは、2025年第1四半期の決算説明会で、予約1件あたりのカスタマーサービスコストが約10%削減されたと報告した。同時に顧客満足度も向上しており、AIが問題をより迅速かつ正確に解決できるようになったことが要因だ。従来のように人間のオペレーターを待つ必要がなくなり、問題がエスカレーションされるイライラも解消される。

しかしフォーゲルは、すべての顧客がAIによる対応を望んでいるわけではないと強調する。一部の顧客は依然として人間との対話を好むため、両方の選択肢を提供するバランスが重要だ。彼は「常に顧客にとって最善のものを追求する」という原則を掲げ、AIの導入が顧客体験の質を低下させてはならないと述べる。旅行は複雑なドミノ倒しのようなもので、1つの問題が連鎖的に他の問題を引き起こす。AIは問題を予測し、事前に代替案を提案することで、こうした連鎖を未然に防ぐことができると彼は展望する。

フォーゲルは、AIエージェントの究極の目標として、問題が発生する前に予測して解決策を提案するシステムを挙げる。例えば、フライトの遅延が予想される場合、AIが自動的に代替ルートを提案し、ホテルやレンタカーの予約を調整する。これにより、旅行者はストレスから解放され、よりスムーズな旅行体験を得られる。彼はこのビジョンを「ユニバーサル・トラベル・アシスタント」と呼び、Booking Holdingsの全ブランドで提供することを目指している。

22:46年間7億ドルのAI投資と資本政策の哲学

Booking Holdingsは2025年、AIとテクノロジー関連の投資に約7億ドルを投じる計画だ。フォーゲルはこの数字を強調しつつも、投資の内訳はAI開発だけではなく、広範なテクノロジー・イネーブルメント(技術基盤の強化)に及ぶと説明する。重要なのは、コスト削減で生まれたキャッシュフローをどのように配分するかという経営判断だ。彼は「まず自社への投資が十分なROIを生むかを検討し、次にM&Aを検討し、どちらも不可能なら株主に還元する」という明確な優先順位を示した。

実際、同社は過去12年間で発行済み株式の約40%を自社株買いによって消却してきた。2025年第1四半期だけでも36億ドルの自社株買いと3億ドル以上の配当を実施し、さらに株式報酬に伴う税金支払いのための株式の差し止めも行った。フォーゲルは投資銀行出身の経験から、使途のないキャッシュをため込む企業に対して批判的であり、「株主は自分たちよりも効率的に資金を運用できる」という信念を持っている。

この資本政策の背景には、スケールの大きさがもたらす耐久性(durability)への確信がある。Booking Holdingsは現在、860万件の代替宿泊施設(民泊やバケーションレンタル)のリスティングを有しており、これはAirbnbとほぼ同等の規模だ。さらに、過去5年間にわたり代替宿泊施設部門ではAirbnbよりも速い成長を続けている。フォーゲルは、こうしたサプライサイドの規模と、世界中のホテルや物件オーナーとの複雑な関係構築こそが、新規参入者にとっては容易に模倣できない資産だと主張する。

25:23スケールの耐久性と規制の複雑さ

フォーゲルは、旅行業界における「スケールの耐久性」について深く考察する。AIエージェントが旅行計画を支援するようになっても、実際の予約を実行するためには、世界中の宿泊施設や航空会社、レンタカー会社との接続が必要だ。Booking Holdingsはすでに860万件もの代替宿泊施設のリスティングを抱え、さらにホテル事業も加えた総宿泊数ではAirbnbの約4分の3に相当する規模を誇る。このサプライチェーンを構築するには、単にデータベースに物件情報を登録するだけでは不十分であり、何千人ものスタッフが各物件オーナーと直接関係を築き、ビジネスの改善点を提案している。

さらに、旅行業界は非常に規制の厳しい業界でもある。フォーゲルは「銀行ほどではないが、航空会社ほどでもない」と表現しつつも、世界各国で旅行関連の規制は増加傾向にあると指摘する。特に米国外では規制が急速に強化されており、マーチャント・オブ・レコード(販売元)として事業を行うためには、複雑なルールを遵守しなければならない。大規模な企業であればこうしたコンプライアンスコストを吸収できるが、新規参入者にとっては大きな障壁となる。

しかしフォーゲルは、こうした既存の優位性に安住することの危険性も同時に強調する。「持続可能な優位性など存在しない」という彼の信念は、社内の2万5千人の従業員に対しても繰り返し伝えられている。毎日が新しい挑戦であり、顧客のために戦い続けなければならない。AIエージェントの開発も、まさにこの「戦い」の一環であり、現状に満足せず常に革新を追求する姿勢が、長期的な成功の鍵だと彼は確信している。

33:18AI時代の雇用とスキルアップの責任

フォーゲルは、AIによる雇用への影響について深い懸念を示す。彼は自社の経験を例に挙げ、Booking.comが2005年に買収された当時、40言語の翻訳とカスタマーサービスに多くの人間が従事していたが、機械翻訳の導入によってそれらの仕事はすべて消滅したと説明する。技術の進歩による雇用の喪失は歴史的に繰り返されてきた現象だが、今回のAIの波はそのスピードが異例に速いことが問題だと彼は指摘する。

特に懸念するのは、50代のトラック運転手のような、特定のスキルに依存してきた労働者だ。自動運転技術によって仕事を失った場合、再訓練(リスキリング)は容易ではない。フォーゲルは、政府による再訓練プログラムが過去50年間にわたってあまり成功していないことも認めつつ、企業としてできることとして「アップスキリング(スキル向上)」の重要性を強調する。Booking Holdingsでは、従業員がAIリテラシーを身につけ、新しいツールを使いこなせるようにするためのトレーニングに積極的に投資している。

フォーゲルは、AIに対する社会の反応が二極化していることにも言及する。消費者調査では、人々はChatGPTやClaudeなどのAIツールを実際に使うことには肯定的だが、「AIが自分の仕事を奪うのではないか」という質問には否定的な回答が多くなる。彼は、こうした不安が技術そのものへの拒絶反応につながることを危惧する。中国など他の国々ではAI開発に積極的であり、もし米国が技術への恐怖から開発を停滞させれば、国際競争力の低下を招くと警告する。民主主義社会では、こうした議論が政治的なレトリックに利用される危険性もあるため、より誠実で建設的な対話が必要だと訴えた。

40:24結びに

本エピソードは、単なるAIと旅行業界の未来予測にとどまらず、四半世紀にわたって企業を成長させてきた経営者の生の声を通じて、技術革新と経営の本質に迫る内容となった。フォーゲルの「持続可能な優位性など存在しない」という言葉は、AI時代においても変わらぬ経営の真理を示している。彼が強調したのは、技術の導入自体が目的ではなく、顧客体験の向上と社会的な価値創造こそが企業の使命だという点だ。また、AIによる雇用への影響についての率直な懸念と、企業としての責任ある対応の必要性を訴えた点は、多くの経営者が参考にすべき視点だろう。このエピソードは、テクノロジー楽観論と現実的なリスク認識のバランスを取ることの重要性を、具体的な事例とともに示している。

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