
5億ドルの創業者がAIをどう使っているか(3つのチュートリアル)
- Zapierの共同創業者であるWade Foster(ウェイド・フォスター)を迎えた今回のエピソードは、AIを実際のビジネス運営にどう組み込んでいるのか、その具体的な...
- このエピソードの核心は、AIを単なるチャットボットとしてではなく、「決定論的なワークフロー」として活用するというフォスターの思想にある。彼は、AIが推測で動くエージェ...
- [7:04] ロボットスタッフと大統領式モーニングブリーフ フォスターが最初に紹介したのは、彼が「ロボットスタッフ」と呼ぶAIエージェント群の中核をなす、朝のブリーフ...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
My First Million / Hubspot Media
- ZapierのWade Fosterは、毎朝6時に起動し、カレンダー、メール、会議メモを収集してSlackに送信する「モーニングブリーフ」を利用しており、これを「大統領のように目覚める」と表現している。
- 夜のブリーフィングは、その日の業務を振り返り、AIがフォローアップメールの下書き作成から送信まで代行することで、フォスターの1日の終わりの業務時間を2時間から15分に短縮した。
- フォスターは、AIに自分の考えを批判させるために「ウォー・カウンシル」というスキルを構築し、Cursorの設定ファイルに「同僚が言うのを恐れている真実が必要だ」と明記している。
- ウォー・カウンシルは、「戦時COO」「冷酷なCFO」「逆張りの取締役」などの常設ペルソナに加え、プロンプトに応じて動的に生成されるサブエージェントを含む、7つのペルソナで構成される。
- 採用プロセスでは、AIが面接パネルのメモを分析し、候補者の成功確率をスコアリングすることで、フォスターの直感的な違和感を具体的な指摘に変換し、採用担当者との建設的な議論を可能にした。
- フォスターは、AIは「目標追求型の存在」であり、ユーザーが反論を望んでいることを明示しなければ、同意することを選択すると指摘する。
- パーは、人生は「ゲーム」であり、ルールとスコアボードが行動を規定すると説く『The Score』を推薦し、「どのゲームをプレイするか」という選択の重要性を強調した。
- フォスターの人生観の根幹には、98歳まで自立した生活を送った祖父の存在があり、「すべてを持っていたわけではないが、必要なものはすべて持っていた」という言葉が、彼の価値観を象徴している。
Zapierの共同創業者であるWade Foster(ウェイド・フォスター)を迎えた今回のエピソードは、AIを実際のビジネス運営にどう組み込んでいるのか、その具体的なワークフローを余すところなく公開した回である。ホストのSam Parr(サム・パー)とShaan Puri(シャーン・プリ)は、評価額50億ドル(約7,500億円)に達したとされるZapierのCEOが、日々の業務でどのようにAIエージェントを活用し、時間を節約しているのかを、実際の画面共有を交えながら深掘りした。フォスターは「ロボットスタッフ」と名付けた一連の自動化システムを紹介し、朝のブリーフィングから夜の業務整理、さらにはAIに自分の意思決定を批判させる「ウォー・カウンシル」と呼ばれる仕組みまで、その全容を明かした。
このエピソードの核心は、AIを単なるチャットボットとしてではなく、「決定論的なワークフロー」として活用するというフォスターの思想にある。彼は、AIが推測で動くエージェント的な性質よりも、コードで書かれた確実な処理を重視し、AIは必要な箇所にのみ使うというハイブリッドなアプローチを取っている。さらに、ビジネス上の実践的なテクニックだけでなく、フォスターの人間性や人生観にも話が及び、彼がどのようにして「偏りのない成功者」であり続けているのか、その哲学に迫った。AI時代の働き方、経営判断、そして人生の意味までを考える、示唆に富んだ内容となっている。
ロボットスタッフと大統領式モーニングブリーフ
フォスターが最初に紹介したのは、彼が「ロボットスタッフ」と呼ぶAIエージェント群の中核をなす、朝のブリーフィングシステムである。これは毎朝6時に起動し、カレンダー、メール、会議メモ、To-Doリストを自動的に収集して、Slack経由でその日の予定を要約して送ってくる仕組みだ。フォスターはこれを「大統領のように目覚める」と表現し、まるで大統領が毎朝受け取る機密情報報告書のように、その日の予定と各会議の目的を簡潔にまとめたブリーフを受け取ることができると説明した。このシステムはZapier上で構築されており、従来のZapierと同様の視覚的なワークフローで管理されている。
この朝のブリーフの特徴は、単なる情報の羅列ではない点にある。フォスターは、このブリーフを送信するAIエージェントに「Ari(アリ)」という名前を付け、毎朝やる気を高めるスピーチも一緒に送らせている。これは、AIに人格を与えることで、より人間らしいインタラクションを実現しようという試みだ。さらに、このワークフローの技術的な優位性について、フォスターは「決定論的(deterministic)」であることを強調した。つまり、AIが毎回推測で動くのではなく、コードによって定義された確実な処理手順に従い、AIが必要な箇所にのみ使用されるため、エージェント型のAIと比較して、より信頼性が高く、コスト効率に優れているというのだ。
ホストのパーは、このシステムの利便性に感銘を受けつつも、自宅のコンピューターを常時起動しておく必要があるClaudeやPerplexityなどのツールとの違いを質問した。フォスターは、Zapier上で構築したワークフローはクラウド上で実行されるため、ユーザーが自分のマシンを起動しておく必要がないと説明した。また、APIの障害などでワークフローが失敗した場合には、AIが自動的にトラブルシューティングを行い、修正を適用するという、従来のソフトウェアとエージェント型AIのハイブリッドな設計になっていることも明かした。この「ロボットスタッフ」の概念は、単なる自動化ツールを超え、CEOの認知負荷を劇的に軽減する新しい働き方の提案であると言える。
夜のブリーフィングと「スクライブ」による業務の完結
朝のブリーフィングが「情報の整理」であるならば、夜のブリーフィングは「業務の完結」を目的としている。フォスターは、この夜のブリーフィングこそが朝のものよりもはるかに価値が高いと語る。このシステムは、その日のすべての会議メモ、未処理のTo-Do、未返信のメールをループ処理し、一日の終わりに「今日はどうだったか」とフォスターに問いかける。この問いかけに対してフォスターが「良い日だった」「悪い日だった」と理由を添えて答えると、その情報はログとして蓄積され、AIが彼の「良い日」と「悪い日」のパターンを学習するのだ。
このシステムの真の力は、単なる日記の自動化ではない。AIは蓄積されたデータに基づいて、具体的なアクションを提案し、実行まで代行する。例えば、前日の会議で「友人に紹介してほしい」という依頼があった場合、AIはそのフォローアップメールの下書きを作成し、「送信しますか?」と確認を求める。フォスターが承認すれば、AIがそのメールを送信する。これにより、彼は一日の終わりに費やしていた約2時間の雑務処理時間を、わずか15分にまで短縮することに成功したと明かした。
さらに、フォスターはこのシステムを約90日間使用した後、AIに「私の良い日と悪い日の共通点を要約してほしい」と依頼した。その結果、彼にとって最も重要な要素は「午前中の時間を確保すること」であると判明した。彼は朝型人間であり、午前中に最も集中して重要な業務をこなすことができる。そのため、午前11時までに会議を入れないことが、一日の成功を左右する重要な要素であるとAIが分析したのだ。フォスターはこの分析結果を自身のアシスタントに渡し、スケジュール調整を徹底させた。このエピソードは、AIが単なるタスク処理ツールではなく、自己理解を深め、生活の質を向上させるためのパートナーとなり得ることを示している。
AIに反論させる「ウォー・カウンシル」のスキル
フォスターが最も重要だと強調したのが、AIに自分の考えを批判させる「ウォー・カウンシル(War Council)」というスキルである。多くのCEOやリーダーは、自分に同意するだけのAIと対話しているが、それでは意味がないと彼は指摘する。フォスターはCursor(カーソル)というコーディングエージェントを日常的に使用しており、その中に「エージェント.md」というファイルを作成し、AIとの対話方法をカスタマイズしている。このファイルには、「私の同僚が言うのを恐れている真実が必要だ」「私の前提に挑戦してほしい」「私の思考に穴を見つけてほしい」「本当に同意できないときは反対してほしい」といった指示が書かれている。
この設定の重要性について、フォスターはAIは「目標追求型の存在」であると説明する。つまり、AIはユーザーが何を望んでいるかを察知し、その目標に向かって行動する。もしユーザーが「反論してほしい」と明示しなければ、AIはユーザーを喜ばせるために同意することを選択する。そのため、AIに批判的な役割を期待するのであれば、そのことを明確に伝える必要があるのだ。フォスターは実際に「競合他社が値上げしたので、無料プランを廃止しようと思う。発表文の下書きを手伝ってくれ」というプロンプトをAIに与え、どのような反応が返ってくるかを実演した。AIは「それは薄いシグナルに基づく大きな動きだ。発表文を書く前に、まずデータを集め、解決すべき問題を明確にし、より小さな実験を検討すべきだ」と、見事に反論してみせた。
このウォー・カウンシルは、さらに発展した形で「サブエージェント」を生成する。フォスターは、このスキルを起動すると、7つのペルソナを持つサブエージェントが生成されると説明する。その中には、「戦時COO(最高執行責任者)」「冷酷なCFO(最高財務責任者)」「逆張りの取締役」といった常設メンバーが含まれており、残りの4つのペルソナはプロンプトの内容に応じて動的に生成される。例えば、採用の判断を相談する場合、AIはその状況に適した追加のペルソナ(例えば、人事の専門家や業界のベテランなど)を自動的に生成する。フォスターは、この「戦時COO」のペルソナは、自身のデフォルトの性格とは異なる「冷酷さ」を補完するために設定したと語り、CEOとしての判断にバランスをもたらすための「チェック・アンド・バランス」の役割を果たしていると説明した。
AIを活用した採用プロセスの改善
フォスターは、AIが採用プロセスを劇的に改善した具体例を紹介した。Zapierでは、すべての採用オファーをフォスター自身が承認する「バー・レイザー(Bar Raiser)」プロセスを採用している。これはAmazonが考案した手法で、経験豊富な評価者が最終面接に同席し、採用基準を維持する役割を担うものだ。AI導入前、フォスターは数千人を面接してきた経験から、候補者に対して「何かがおかしい」と直感的に感じることがあった。しかし、その違和感を言語化することができず、採用担当者に「本当にこの人でいいのか?」と問いかけると、しばしば「ウェイドは採用したいのか、したくないのか、どちらなんだ」という反応が返ってきていたという。
AI導入後、フォスターはこのウォー・カウンシルを採用判断に活用するようになった。AIは、面接パネルのメモを分析し、候補者の特性と過去に採用した社員のデータを比較して、成功の可能性をスコアリングする。そして、面接パネルが十分に検証しなかった点を具体的に指摘するのだ。フォスターは、このAIの分析結果を採用担当者に提示すると、彼らの反応が劇的に変わったと語る。以前は「ウェイドの個人的な意見」として受け取られていた指摘が、「AIの分析結果」として提示されることで、採用担当者は「AIはここは正しいが、ここは間違っている。なぜなら、私にはAIが知らない別の文脈があるからだ」といった、より建設的な議論ができるようになったのだ。
このエピソードについて、パーは「AIと議論する方が、CEOと議論するよりも心理的な障壁が低い」と指摘した。フォスターもこの見解に同意し、AIがより雄弁で、具体的なポイントに焦点を当てた議論を可能にしたことが、意思決定の質を向上させた一因だと分析した。また、パーは採用における性格診断テストの有効性について質問した。フォスターは、自身はMyers-BriggsやBerkmanなどのテストを「中程度に有用」と評価しつつも、採用の絶対的な基準にはしていないと述べた。一方、プリは「Teslaの自動運転アプローチ」に例え、センサーを増やすのではなく、最小限の情報に絞って徹底的に訓練する方が良いという持論を展開した。彼は「並外れた能力の証拠」だけを第一のフィルターとし、その後は「クリエイティブな相性」を感じるかどうかという、シンプルな2段階のフィルターで採用を判断していると語った。
40歳での成功と「偏りのない」人生観
パーは、フォスターが今年40歳を迎えたことに触れ、評価額50億ドルの会社を築きながらも、なぜこれほどまでに「普通」でいられるのか、その心理を尋ねた。フォスターは、50億ドルという数字は「紙上の評価額」であり、実際の流動資産とは異なると前置きしつつ、自身の人生における優先順位は「1、2、3が家族」だと明言した。彼は、ミズーリ州中部で暮らす自分にとって、ある程度の資産を超えると、追加の富は生活の質を変えないと語る。彼の夢は、大学を卒業したばかりの頃は「年収10万ドル(約1,500万円)」を稼ぐことだったといい、その目標を達成した後も、高価な趣味やぜいたく品には興味がないと述べた。
フォスターの人生観の根幹には、彼の祖父の存在がある。祖父は第二次世界大戦の退役軍人であり、98歳半で亡くなるまで、ほぼ一人で生活し、亡くなる2週間前まで自分で車を運転し、毎日3マイル(約5キロ)を歩き、毎日ニューヨーク・タイムズのクロスワードパズルを解いていたという。彼の葬儀では、参列者の列が3時間も続いた。教師時代の同僚、DAREプログラムで関わった高速道路パトロール隊員、教会のメンバー、親戚など、あらゆる立場の人々が彼に別れを告げに来たのだ。フォスターは、この祖父の姿こそが「良い人生」の見本であり、「彼はすべてを持っていたわけではないが、必要なものはすべて持っていた」と語る。
この話を受けて、プリは「あなたは本当に、自分が持っていないものを必要としない分だけ、豊かなのだ」という持論を展開した。つまり、他人の承認や注目を必要としない人は、そのコストを支払う必要がないため、自由であり、豊かであるというのだ。また、プリは「1次元の勝者」という概念を紹介した。マイケル・ジョーダンはバスケットボールでは史上最高の選手だが、私生活では見習いたくない部分も多かった。プリは、メディアが報じる「勝者」のイメージに流されず、自分自身の「勝利の定義」を確立することが重要だと主張した。フォスターはこの意見に強く同意し、Zapierを「長期的に成長させる」という選択は、当時のシリコンバレーの常識から見れば異質だったが、自分にとっては明確な勝利の定義に基づいた合理的な選択だったと振り返った。
おすすめの書籍と「ゲーム」の哲学
エピソードの終盤では、パーとフォスターが普段読んでいる書籍や、視聴しているコンテンツについて語り合った。フォスターは、ポッドキャストでは「Acquired」を絶賛し、特にNFLのエピソードや、Costco、Walmart、Amazonといった小売業界のシリーズを推薦した。書籍では、スティーブ・ジョブズの言葉を集めた『Make Something Wonderful』を挙げ、彼のメールやスピーチが時系列で収録されており、AppleのV1時代からPixar、そしてV2時代にかけての思考の変遷を追うことができると説明した。
パーは、最近読んだ本として、Ty Nguyen(タイ・グエン)著の『The Score: How to Stop Playing Someone Else's Game』を紹介した。この本の核となる考え方は、「ゲーム」という概念を用いて人生を分析するというものだ。例えば、絵しりとり(Pictionary)というゲームは、ルールとスコアボードを定義することで、プレイヤーの行動と目標を決定づける。同様に、人生における「ゲーム」も、そのルールに従うことで、人々の行動を無意識に規定してしまうというのだ。著者は、哲学の教授としてキャリアをスタートしたが、学会の「リーダーボード」に載るために、自分が興味もないテーマの論文を書くようになり、数年後には自分の仕事を憎むようになったという経験を語る。
パーは、この本から得た教訓として、「人生で最も重要な決断は、どのゲームをプレイするかを選ぶことだ」と強調した。そして、ゲームには「喜びのためにプレイする」ストライビング(striving)と「勝つためにプレイする」アウトカムベース(outcome-based)の2種類があり、ストライバー(striver)の方が結果的に勝つことも多いが、彼らはそのためにプレイしているわけではないと説明した。また、ゲームを真剣にプレイすることは重要だが、その瞬間に夢中になりつつも、その後は「なぜこのゲームをプレイしているのか」という本来の目的を忘れないことが大切だと語った。この「ゲーム」の哲学は、フォスターが語った「自分自身の勝利の定義を持つこと」と深く共鳴するものであり、AI時代の働き方や人生観を考える上で、示唆に富んだ議論となった。
結びに
今回のエピソードは、単なるAIツールの使い方の紹介に留まらない、深い示唆に富んだ内容だった。Wade Fosterの具体的なワークフローは、AIを「考えるためのパートナー」としてではなく、「実行するための組織」として捉える新しい視点を提供した。特に「ウォー・カウンシル」のように、AIに意図的に反論させることで、自身の思考の偏りを補正するというアプローチは、AI時代のリーダーシップの在り方を示唆している。また、彼の人間性に迫る後半のトークは、成功の定義や人生の優先順位について、リスナーに深い問いを投げかけるものだった。AIがもたらす効率化の先にある「何のために働くのか」という本質的な問いを、フォスターの等身大の言葉で考えることができる、貴重な機会となった。
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