
エピソード156 - エドゥアルド・ガルサ (Team Mex 1) そしてクレイジーへ
- エピソード156:エドゥアルド・ガルサ(チームメキシコ1)——狂気の世界へ 本エピソードでは、ホストのギャビン・マクラーグが、メキシコ代表として2度目のレッドブルX-Al...
- [0:00] レース後の4ヶ月——振り返りと感情の変遷 ギャビン・マクラーグは冒頭で、このエピソードの公開が大幅に遅れたことを謝罪する。自身がX-Red Rocksのレー...
- エドゥアルド・ガルサは、この遅れを全く気にしていない様子で、むしろ出演の機会を得たことに感謝を示す。彼は現在、東海岸でパラグライダーの飛行機会を求めているが、天候に恵まれ...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
Cloudbase Mayhem ポッドキャスト / Gavin McClurg
エピソード156:エドゥアルド・ガルサ(チームメキシコ1)——狂気の世界へ
本エピソードでは、ホストのギャビン・マクラーグが、メキシコ代表として2度目のレッドブルX-Alpsに出場したエドゥアルド・ガルサを迎え、2021年大会の内幕を深く掘り下げる。フルタイムのエンジニアとして働きながら、プロアスリートが大半を占める過酷なレースに挑んだ男の視点は、競技の華やかな表面だけでは決して見えない現実を浮き彫りにする。恐怖と美しさが交錯する12日間の旅、そしてレース後の複雑な感情を、4ヶ月の熟成期間を経て語る会話は、生々しく、時に笑いを交えながらも、X-Alpsという狂気の世界の本質に迫るものとなっている。
レース後の4ヶ月——振り返りと感情の変遷
ギャビン・マクラーグは冒頭で、このエピソードの公開が大幅に遅れたことを謝罪する。自身がX-Red Rocksのレースディレクターを務め、さらにアイダホ州ヘイリーとケッチャムの間で家を建設中であり、過去5ヶ月間トレーラー暮らしを強いられていたという。2021年5月のクラッシュ直後からX-Alps、そして建設現場と続き、インターネットも携帯電話も通じない環境での録音が困難だったためだ。
エドゥアルド・ガルサは、この遅れを全く気にしていない様子で、むしろ出演の機会を得たことに感謝を示す。彼は現在、東海岸でパラグライダーの飛行機会を求めているが、天候に恵まれない日々が続いていると語る。本業は機械・電気エンジニアで、光ファイバーケーブルを製造する通信インフラ企業に勤務している。この「普通の仕事」とX-Alpsへの準備を両立させることこそが、彼にとって最大の課題だったと明かす。
ギャビンは、X-Alpsのトップ10に入るパイロットのほとんどが「プロフェッショナルパイロット」であり、飛行が仕事であるのに対し、エドゥアルドはフルタイムの仕事を持ちながら競技に臨む数少ない選手の一人だと指摘する。自身も仕事はあるが9時5時の勤務ではないため、エドゥアルドの状況は特に過酷だと同情する。エドゥアルドはこれに完全に同意し、エンジニアとしての職業とX-Alpsのような大規模な競技の準備を両立させることこそが「本当の闘い」だと語る。
トレーニングの現実——限られた時間とリソースの中で
エドゥアルドのトレーニングスケジュールは驚くべきものだ。通常、平日は午後6時か7時からトレーニングを開始する。8時間のフル勤務を終えた後だ。トレーナーはベン・アブルッツォで、ギャビンも同じトレーナーを2015年から使っている。ベンのトレーニングは「冗談ではない」とエドゥアルドは言う。「彼は本当に君の体を破壊しようとするんだ」。
エドゥアルドは、ネルソン・デ・フリーマンから聞いた言葉を引用する。「レース前に戦うか、レース中に戦うかだ。レース前にやれば、レースを楽しめる。さもなければ、レース中に破壊される」。この教訓を胸に、彼は可能な限りの時間と労力をレース前の準備に注ぎ込んだ。
2021年大会に向けて、彼はベンにトレーニング量の増加を依頼した。ただし、大幅な増加は不可能だった。平日に2〜3時間のトレーニングをする余裕はないからだ。週末は通常6〜7時間のトレーニングを行う。しかし、彼の住む地域には高い山がなく、トレーニングで得た垂直距離の70%は、たった200メートルの丘で稼いだものだという。しかも、その丘からは飛び立つことすらできない。ただひたすら登っては下り、登っては下りを繰り返す「ヨーヨー」のようなトレーニングだった。彼は冗談めかして「あの丘の岩や木は全部知っている。名前も付けてあるんだ。『やあ、フレッド』ってな」と語る。
より高い山を求めて1時間半から2時間運転すれば標高の高い場所に行けるが、平日はそれができない。これが彼の最大の制約だ。ギャビンは、エドゥアルドのインスタグラムの投稿で、霧と氷の中でのスノーシューイングの様子を見ていたと述べ、自分はスキーツアーを楽しみながらトレーニングできる環境にあることへの感謝と、エドゥアルドへの敬意を表する。
エドゥアルドは「常に何かしらのエッジを探している」と語る。世界最高のハイク&フライ・アスリートたちと、限られた時間とリソースでどう競うか。さらに、アメリカに住んでいること自体が大きなハンディキャップだと指摘する。アルプスの気象条件や谷のシステムに慣れ親しんでいないからだ。「セカンドネイチャー」のような知識が欠如していることが、容易に距離を稼げるかどうかの差を生む。
レース中の最高の瞬間——人々の温かさと風景の美しさ
エドゥアルドにとって、X-Alpsの最高の経験は何か。彼はいくつかのカテゴリーに分けて語る。
第一に、地元の人々の温かさだ。80キロを歩き、身体的に打ちのめされた状態で到着した選手を、見知らぬ人々が笑顔で迎え、助け、食べ物を与え、エネルギーを分け与えてくれる。その瞬間、すべてが素晴らしいものに変わる。
特に印象的だったのは、イエルの故郷であるベルビアでの出来事だ。彼が着陸すると、一人の男性が駆け寄り、道案内を申し出た。その男性の兄弟も加わり、さらに父親が現れた。父親は巨大なカウベルを鳴らしながら、紅茶と食べ物を差し出した。エドゥアルドのチームは数時間遅れていたため、この家族が文字通りすべての面倒を見てくれた。レストランではテスラの充電設備まで手配してくれた。父親が自ら料理を振る舞い、ビールも提供してくれた。「本当に素晴らしい思い出です」とエドゥアルドは語る。この地域を通過したのはマウリツィオだけだったため、地元の人々は珍しい来訪者を心から歓迎したのだ。
第二に、飛行中の風景の美しさだ。エドゥアルドは、レース中に初めて目にする場所の数々に圧倒されたという。例えば、ザンティスを過ぎて南に飛び、クラウゼンパスに向かうルート。あるいは、インスブルックの裏側、アッヘンゼからレルモス方面への飛行。南側のルートを選んだ彼は、曲がり角を曲がった瞬間に現れる高さ800メートル、長さ10キロメートルにも及ぶ完全な垂直の壁に「言葉を失った」という。
ギャビンもこれに同感する。アルプスは複雑な迷路のような地形で、どこにでも着陸でき、どこからでも離陸できる。しかし、その複雑さゆえに、事前にGoogle Earthで徹底的に研究しても、実際にその場に立つと混乱する。彼はヴァルトパス周辺の地域を例に挙げ、ロビー・ウィットルが「アルプスで最も複雑で危険な場所」と評したその地形の難解さを語る。
恐怖の瞬間——イムストのモンスターサーマル
エドゥアルドが経験した最も恐ろしい状況の一つは、イムスト付近での出来事だ。この日、彼はコディ、テオ、ローリ、ニコラと共にレルモスから離陸した。ローリが最初に飛び立ち、順調に上昇。エドゥアルドはケーブルを忘れたため最後に離陸したが、北側の空は暗く、低い雲底、谷には暗闇が広がっていた。彼は即座に南ルートを選択した。
南側は最初は穏やかで、毎秒2メートルの上昇気流で山頂をなぞるように飛んでいた。しかし、イムストに差し掛かったところで「誰かがスイッチを入れた」かのように、状況が一変した。穏やかな状態から「核のような」状態へと変わったのだ。
サーマルに入り、順調に上昇していると、上空に制限空域があることを思い出す。ニコラとテオがスパイラルを始めたので、彼も軽くスパイラルを入れた。それでも上昇が止まらない。さらにスパイラルを強め、フルGフォースで旋回しても、まだ上昇する。制限空域まで200メートルに迫った。完全なスパイラルを強いられ、バリオの警報と空域警報が鳴り響く中、ついに雲の中に吸い込まれてしまう。周囲は大きな山々だらけで、自分の位置すらわからない。
そして、さらなる危機が訪れる。大きな「パキッ」という音と共に、鋭い痛みが腰に走った。ハーネスが破損したのだ。Gフォースとサーマルの乱流で、ハーネスの背中のロッドが折れた。約30秒間(本人には永遠のように感じられた)、このモンスターサーマルに翻弄され続けた後、ようやく山の陰に放出された。
驚くべきことに、エドゥアルドはこの直後も飛び続けた。「震えていて、怖かった。でも、次の上昇気流はどこで捕まえられるか、と考えていた」。これこそがX-Alpsの精神だ。恐怖を感じながらも、次の一手を考え続ける。彼はチームに連絡し、新しいハーネスを手配。次の飛行までには準備が整っていた。
ベルビアからベリンツォーナへの悪夢のフライト
エドゥアルドが「さらに怖い思いをした」と語るのが、ベルビアからベリンツォーナへのフライトだ。この日は北風(ノールフェーン)が時速7〜8キロメートル、場合によってはそれ以上になると予想されていた。彼はシオン渓谷に詳しかったため、北ルートを選択した。高い山々に囲まれていれば、高度を保つ限り問題ないはずだった。
しかし、想定外の事態が次々と起こる。まず、飛行中に深い眠りに落ちてしまった。単なる「5秒間のうたた寝」ではない。「夢を見ていた。メキシコに戻って、母が料理を作ってくれている夢を」。約1分から1分半の間、完全に意識を失っていた。目を覚ますと、巨大な岩壁のすぐ近くにいて、大粒の雹が降っていた。計器類を守りながら、翼が雹で破損しないことを祈る。震えながらバーを押し、その場を離脱した。
その後、彼は西北西の強風に流されながら、大きなトラップに向かっていることに気づかない。しかし、前方100〜200メートルにいた鷲が、数秒で自分の50フィート下から200フィート上に舞い上がるのを目撃する。「ロデオが来る」と悟った。サーマルに突入すると、翼が完全に消えた。右側が大きくクラバット(翼端の折り畳み)を起こし、制御不能の回転が始まる。
彼はリザーブ(予備パラシュート)の投入を考えるが、回転している状態では危険だと判断。左ブレーキを深く引き、翼を失速させて落下する。高度を確認し、まだ余裕があることを確かめてから、両手を上げて翼を復帰させる。翼は30%だけ残っていたが、体重移動とブレーキ操作で何とか元に戻した。
その後も試練は続く。ノースウェスト風の影響で、サーマルは毎秒2〜4メートルの上昇と毎秒3メートルの下降を繰り返す「テクスチャー」のある状態だった。フィスプに到達した時点で、チームから「明日の天気は南側の方が良い」との情報を得て、シンプロンパスを越えて南へ向かう決断をする。
シンプロン越えでは、バーを使わずに時速90キロメートルで巡航。巨大な壁を通過した直後、毎秒8メートルものシンクに襲われ、ほとんど地上まで落とされる。ドモドッソラの北側では、向かい風に逆らって10キロメートルも後退しながら、再び高度を稼ごうと「ソーサリング」(旋回しながらの上昇)を強いられた。
最後の難関はベリンツォーナへの進入だ。南側のルートは制限空域が山肌に迫っており、着陸可能な場所は樹木ばかり。彼は文字通り「空域から5メートル」の距離で、樹木の上をすれすれに通過し、最後の20メートルの隙間をくぐり抜けて着陸した。計器をズームインして確認すると、わずかな動きで空域との距離が変わる危険な状態だったという。
ノンアルパイン選手のハンディキャップ——ローカル知識の壁
ギャビンは、ヨーロッパの選手と北米の選手の間にある「ローカル知識」の差について率直に語る。2019年のレースで、彼はこの差を痛感した。自分の判断やフィットネスは最高だったにもかかわらず、地形に関する知識不足が原因で何度も不利な状況に陥った。「アルプスは迷路だ。複雑すぎる」と彼は言う。ロッキー山脈では「上がって東へ行く」だけで済むが、アルプスではフェーン現象や複雑な谷風に対処しなければならない。
エドゥアルドは、この点について「確かに discouraging(落胆させる)に聞こえるかもしれない」と認めつつ、自身のアプローチを説明する。「私たちには私たちの経験があり、その視点に基づいて目標を設定する。自分のパフォーマンスに満足できるかどうかは、期待値にどれだけ近づけたかで決まる」。つまり、期待値を適切にコントロールすることが重要だという。
彼は、アルプス在住の選手たちが「スカウティング(事前下見)を好まない」という発言について興味深い分析を加える。「彼らはすでに無意識のうちにデータベースを持っている。アルプスを何度も飛んでいるから、過去の状況を新しい課題に応用できる。でも私たちにはそれがない」。だからこそ、エドゥアルドはスカウティングを重視する。事前に地形を把握することで、失敗の確率を下げられるからだ。
結論として、彼は「ノンアルパインチームがトップ5に入るのは非常に難しい」と断言する。「不可能とは言わないが、アルプスでトレーニングし、どこをどう飛ぶべきか知っているチームよりも、はるかに多くの努力が必要になる」。
ギャビンはさらに、レースの頻度の問題を指摘する。X-Alpsは2年に1度しか開催されないため、得た教訓を活かす機会が限られている。一方、ヨーロッパの選手たちはドロミーティやベルニナなど、数多くのイベントで常にスキルを磨いている。「彼らはどんどん良くなっている。私たちも改善しようとするが、彼らの改善速度には追いつけない」。
X-Alpsを目指す者へのアドバイス
エドゥアルドは、X-Alpsへの参加を夢見る人々に対して、明確な警告を発する。「自分が何に足を踏み入れようとしているのか、本当によく理解すべきだ。華やかさだけではない。メディアに映るものだけではない」。舞台裏では、フィジカル面、フライトスキル、ルート選定、スポンサー獲得、交通手段の確保など、膨大な準備が必要となる。特にアルプス出身でない場合、その負担はさらに大きい。
彼が最も強調するのは「中途半端な準備で臨むな」ということだ。「一度レースに出てしまうと、その経験は消費される。本当に準備が整い、何をすべきか完全に理解した時には、選考に通らないかもしれない。だからこそ、ポッドキャストなどを通じて徹底的に情報を集めるべきだ」。
ただし、彼は「怖がらせたいわけではない」とも言う。X-Alpsは彼の人生で「最高の瞬間の一つ」であり、冒険、挑戦、景色、仲間との絆、出会う人々の温かさ——すべてが素晴らしい経験だった。重要なのは、その現実を正しく理解した上で臨むことだ。
レース後の空虚感と未来への展望
ギャビンは、レース後に訪れる「穴」について語る。12日間、最高の状態で集中し続けた後、日常に戻るのは難しい。彼は「どうやってその穴を埋めるのか」とエドゥアルドに問いかける。
エドゥアルドの答えは、アルプスへの再訪だ。「レースで見た美しい景色をもう一度、今度はハードコアモードではなく訪れたい」。電車やバスを組み合わせ、自分のペースで探索する。キャンプを張り、そこから飛び立ち、シャモニーからミラノへと渡るような旅を想像している。「ハイク&フライの競技からは一歩引いて、もっと自分のペースで探検したい」。
同時に、彼はレースから完全に離れるわけではない。PWC(パラグライダーワールドカップ)やRace to Goal競技には今後も参加する予定だ。パートナーのビアンカと共に、メノルカ島でのレースを楽しみにしているという。ビアンカは全米女子チャンピオンを4度獲得した実力者で、2019年のレースではエドゥアルドをサポートするために自らの競技を犠牲にした。2021年は彼女が競技に集中できるよう、エドゥアルドがチームを編成したという背景もある。
まとめ
このエピソードは、レッドブルX-Alpsという競技の真の姿を、参加者の生の声を通じて描き出している。華やかなメディアの向こう側には、フルタイムの仕事と両立しながら限られたリソースで挑む苦闘、恐怖と隣り合わせの飛行判断、そして地元の人々の温かさに支えられた感動的な瞬間がある。エドゥアルド・ガルサの語る経験は、プロアスリートが大半を占めるこの競技において、「普通の人間」がどのようにして戦い、成長し、そして自らの限界を超えていくかを示している。彼の「もう二度と出ない」という決断と、それでもなお競技への愛情を失わない姿勢は、X-Alpsの本質——それは単なるレースではなく、人生を変える冒険であること——を如実に物語っている。
要点
- エドゥアルド・ガルサはフルタイムのエンジニアとして働きながら、2021年レッドブルX-Alpsに参加し、14位(非ヨーロッパ人最高位)を達成した。
- トレーニングの70%は標高200メートルの丘での反復昇降で賄われ、高い山へのアクセスがない環境での準備の困難さが浮き彫りになった。
- イムスト付近でのフライトでは、モンスターサーマルに巻き込まれハーネスが破損するも、冷静な判断で危機を脱した。
- ベルビアからベリンツォーナへのフライトでは、睡眠不足による空中での意識喪失、雹、翼の大規模クラバット、制限空域ギリギリの着陸など、複数の危機を経験した。
- アルプス在住の選手と比較して、ローカル知識の欠如が大きなハンディキャップであり、ノンアルパインチームのトップ5入りは極めて困難と分析された。
- 地元住民の温かい支援(食事、宿泊、充電設備の提供など)が、レース中の精神的支えとなった。
- エドゥアルドは「もう二度と出ない」と明言しつつも、アルプスへの再訪や他の競技への参加を通じて、X-Alpsで得た情熱を活かす計画を語った。