
#263 Training, Wing testing, Hike and Fly Racing, Competitions, Acro, 2 Liners, Flow, Family and more with Michael Maurer
- パラグライダーの頂点を生きる——テストパイロット、兄弟、そして「フロー」の追求 「Cloudbase Mayhem Podcast」の新年最初のエピソードは、アドバンス社...
- [0:00] 「何をしている人ですか?」——テストパイロットの日常と危険の本質 ミヒャエル・マウラーは、スイス・フルティゲンに住むアドバンス社のテストパイロットだ。201...
- しかし、彼は危険を「より危険な限界」と「より危険でない限界」に区別する。テストパイロットとして最も重要なのは、自分の限界と翼の限界を正確に知ることだ。そして、その知識は「...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
Cloudbase Mayhem Podcast / Gavin McClurg
パラグライダーの頂点を生きる——テストパイロット、兄弟、そして「フロー」の追求
「Cloudbase Mayhem Podcast」の新年最初のエピソードは、アドバンス社のテストパイロットであり、元スイスチャンピオンのミヒャエル・マウラーを迎えた、極めて個人的で深みのある対話だ。ホストのギャビン・マクラーグは、2025年のレッドブルXアルプスで偶然再会したことをきっかけに、マウラーの兄でありパラグライダー界のレジェンドであるクリーゲル・マウラーとの関係、テストパイロットという危険と隣り合わせの仕事、競技と家族の両立、そして「フロー」状態に入るための精神的な技法に至るまで、幅広く掘り下げていく。このエピソードは単なるインタビューではなく、リスクと向き合い、自分の限界を知り、それでも空を飛び続けることの意味を問いかける、静かで力強い考察となっている。
「何をしている人ですか?」——テストパイロットの日常と危険の本質
ミヒャエル・マウラーは、スイス・フルティゲンに住むアドバンス社のテストパイロットだ。2013年からこの仕事を始め、現在はオフィスワーク(ハーネスの開発など)も兼務している。彼が知らない人から「何をしているんですか?」と聞かれたときの答えはシンプルだ。「パラグライダーのテストパイロットです」。すると決まって返ってくるのが「危ないんじゃないですか?」という質問。マウラーはこの問いに正直に答える。「パラグライダー自体が危険なスポーツです。テストはさらに危険です。雨の日も風の日も飛ばなければならないし、翼の限界を探るために意図的に厳しい条件に身を置くからです」。
しかし、彼は危険を「より危険な限界」と「より危険でない限界」に区別する。テストパイロットとして最も重要なのは、自分の限界と翼の限界を正確に知ることだ。そして、その知識は「ステップ・バイ・ステップ」で積み上げていくものだという。兄のクリーゲルから教えられたこの原則は、マウラーのキャリア全体を貫く哲学となっている。「テストには時間があります。その日に気分が乗らなければ、やらなくていい。でも競技会では、やらなければ最終結果から外れてしまう」。この違いが、テストと競技の本質的な違いを浮き彫りにする。
兄クリーゲルが開いた道——「言葉のないコミュニケーション」
ミヒャエルがパラグライダーを始めたのは、兄クリーゲルの影響がすべてだ。12、3歳の頃、退屈してテレビばかり見ていた彼に、クリーゲルはまずラジコン・グライダーを買い与えた。そして15歳のとき、母親に「彼にパラグライダーのスクールを受けさせるべきだ」と説得し、装備一式(約6000スイスフラン)を負担した。「彼がいなければ、今の自分はない。パラグライダーにおいても、人間としても」。そう語るマウラーの口調には、深い感謝と尊敬がにじむ。
8歳年上の兄との関係は、単なる師弟関係ではない。クリーゲルは直接的な指導をほとんどしなかったという。「彼は『やってみなさい、そうすればわかる』というスタンスでした。何か本当に危険なことをしようとしたら止めたでしょうが、基本的には自分で考えさせるようにしていた」。二人は飛んでいるとき、「言葉なしでコミュニケーションする」という。この感覚は、後に語られるシンクロ・アクロ飛行での完璧な連携にもつながっていく。
ギャビンが「兄の飛び方にプレッシャーを感じることはあるか?」と問うと、マウラーは意外な答えを返す。「彼が自分を傷つけるのではないかという心配はありません。彼は自分の限界をよく知っている。むしろ、レースの最終日に『アーロン(デュポンタル)に追い抜かれるんじゃないか』とハラハラする方です」。2025年のXアルプスでクリーゲルが優勝を逃したことについて、マウラーは冷静に分析する。「彼はなぜ負けたかわかっている。コンディションが彼のスキルを活かせるほど難しくなかった。そして、彼が待ち望んでいた『魔法の一手』が決まるフロー状態に入れなかった」。兄はすでに次のエディションに向けてモチベーションを高めており、マウラー自身も「素材を改善する」と語る。兄弟は互いに刺激し合い、高め合っているのだ。
「フロー」を求めて——小さな目標がもたらす集中
マウラーが競技において最も重視するのは「フロー」の状態だ。2019年にスイスチャンピオンになった年、彼はそれまで使っていたジンの競技翼(ブーメラン11)から、アドバンスの新しい翼「アイスペック」に乗り換えた。ブーメラン11は高性能だが扱いにくく、彼のスタイルに合わなかった。一方、アイスペックは少し遅いが「ずっと飛ばしやすかった」。結果的に、それが最も楽な年になったという。「素材、ハーネス、セットアップ、すべてが噛み合った。飛ぶことがただ進んでいくだけだった」。
しかし、フローは常に訪れるわけではない。マウラーは「仕事でも同じ」と言う。パラグライダーのテストパイロットという夢のような仕事でも、「飛ぶのが嫌になる週がある」。そんなとき、彼は「小さな目標」を設定する。「競技会で言えば、スタートラインに正確に並ぶこと、最初の旋回点に一番乗りすること。全体の順位を考えるのではなく、レースの中の小さな達成を楽しむ」。これはテスト業務でも同じだ。「朝起きて『今日はこのマニューバをやる気がしない』と思ったら、一つのマニューバに集中する。すると、自然と他のマニューバにも取り組めるようになる」。
この「プロセスに集中し、結果に執着しない」という姿勢は、彼の兄から学んだ「ステップ・バイ・ステップ」の哲学と完全に一致する。そして、この考え方は、後に語られる「子供たちへの教育方針」にも色濃く反映される。
2ライナー革命とカテゴリーの曖昧さ——進化する翼の世界
近年、パラグライダー業界では「2ライナー」のEN-C翼が急速に普及している。従来の3ライナーに比べて性能が高く、多くのパイロットが魅了されている。しかしマウラーは、このカテゴリーの難しさを指摘する。「Cカテゴリーはまだ新しい。リファレンスとなるデータが少ない。製品によって、崩れ方や予測可能性が大きく異なる」。ある製品は「簡単に飛ばせるが、早めに崩れる(エネルギーを失う)」のに対し、別の製品は「よりソリッドで、強い乱気流の中でも速く飛べるが、崩れたときの予測が難しい」。
さらに、カテゴリーの境界線自体が曖昧になっている。「BカテゴリーとCカテゴリーの境目は明確ではない。難しいC翼なのか、易しいD翼なのか。この境界線は今後さらに曖昧になるだろう」。マウラーは、この分野では「素晴らしい製品」と「飛ばすのが難しい製品」の両方が出てくると予測する。そして、多くのパイロットがD翼からC翼に「ステップダウン」する傾向があることにも言及する。「D翼は要求が厳しすぎると感じるパイロットが、C翼に戻ってくる。それでも2ライナーで、性能も速度も十分。2ライナー特有の操縦感覚は、3ライナーとは明らかに違う」。
アドバンス社が競技用CCC翼を製造していないことについて、マウラーは明確な理由を述べる。「CCC翼は会社の利益にならない。しかし、そこで得た経験は下位の製品にスケールダウンできる」。同社は2015〜16年頃にパトリック・フォン・カーネルがテストしたプロトタイプを製作したが、本格的な開発には至らなかった。「他のプロジェクトに比べて、優先順位が低かった」。しかし、彼は「ハイアスペクト比の翼」の価値を認める。「クロスカントリー飛行には非常に興味深い。朝晩の弱いサーマルでも性能を発揮する。そして何より、競技翼を飛ばした後にD翼に乗ると、『すごく簡単に感じる』。このトレーニング効果は会社全体にとって有益だ」。
家族とリスク——子供たちに何を伝えるか
マウラーには8歳、6歳、4歳の3人の息子がいる。長男はすでにタンデム飛行を楽しみ、「いつか飛びたい」と言っている。しかし、マウラーは子供たちにパラグライダーを「させたい」とは思っていない。「すべての可能性を見せたい。彼らが好きなことを選べば、それを安全にやれる。ただ、『全部をちょっとずつ』というのは避けてほしい。もし飛びたいなら、ホッケーと同時にはできない。一つの趣味に時間をかけることを選んでほしい」。
彼の教育方針は、兄クリーゲルから学んだ「ステップ・バイ・ステップ」と「自分で経験させる」という姿勢に基づいている。「台所のコンロが熱いと教えても、子供は触るまでわからない。言葉で伝えるのと、自分で感じるのは違う。教えすぎると、学ぶ機会を奪ってしまう」。フルティゲンには、グランドハンドリング教育で有名なスクール「Cloud 7」がある。マウラーは子供たちを連れて行き、地面で翼を扱う練習をさせている。「これが安全なパイロットへの第一歩。時間がかかること、繰り返し練習することを知ってほしい」。
ギャビンが「安いミス(cheap mistakes)の重要性」について問うと、マウラーは深くうなずく。「自分も『高い草の中でグラウンドスパイラルをやるのはバカだった』と思うことがある。でも、当時に戻っても同じことをするだろう。それを知らなかったから」。彼にとって、失敗は不可欠な学習プロセスだ。そして、パラグライダーが「本当に深刻な怪我をさせる可能性がある」という事実だけは、しっかり伝えなければならないと考えている。
ハイク&フライへのシフト——家族と競技の新しいバランス
2026年、マウラーは競技生活に変化を迎えようとしている。「来年は主に、いや、おそらくハイク&フライの競技だけに出るつもりです」。その理由は明確だ。「家族のそばにいながら参加できる。アイガーツアーは4日間の大会だが、週末だけで済む」。彼はスイスカップの既存の大会に加え、新しい地形やスタイルの大会にも挑戦したいと考えている。
「4年前までは『ハイク&フライは自分には向いていない』と言っていた。でも、いつの間にかはまってしまった」。そして、ここでも兄の存在が彼を駆り立てる。「クリーゲルが年を取れば、短いレースなら追いつけるかもしれない」。この言葉には、兄弟ならではのユーモアと、静かな闘志が感じられる。
彼は現在、アドバンスの競技翼「X1」を飛ばしている。しかし、その使用頻度は極めて低い。「前回のコンペ(スイス選手権)は2024年8月。それ以来、X1には乗っていなかった。1年以上のブランクだ」。それでも、彼は日常的にD翼(オメガ)でテスト飛行を行い、ストールやコラプスなどのマニューバを練習している。「X1でフルストールをやったことは一度もない。D翼とあまりに似ているし、実際のコンディションで対称的なフルストールが必要になることはない」。彼のSIV(シミュレーション・ド・ヴォル)は、日常のテスト飛行そのものだ。「様々な翼の挙動を毎日体験することで、反射的に反応できる感覚を養う。計画してやるのではなく、頭の奥で自動的に体が動く」。
最も特別なフライト——ヘリコプターとスタジアム
キャリア全体を振り返り、「最も特別なフライト」を問われたマウラーは、二つのエピソードを挙げる。一つは、兄クリーゲルと共にスイスTVの撮影で行った200kmのフライトだ。「ツェルマットを離陸し、谷に沿って飛んだ。ヘリコプターが同行し、どこにでも着陸できる。普通は電車で何時間もかけて帰るところを、ヘリで車のところまで戻れる。それは本当に贅沢な体験だった」。
もう一つは、アルトポルト(イタリア)のスキーワールドカップ会場で行ったシンクロ・アクロショーだ。4回にわたって実施されたこのショーでは、クリーゲルがスキーヤーのゴール実況をラジオで行い、ミヒャエルがマニューバのタイミングを指示する。「年に一度、一緒にシンクロを練習する。ほとんど練習しないのに、いつも驚くほどシンクロが取れている」。最も緊張するのは、2万人の観客が詰めかけるスタジアムへの着陸だ。「観客の頭上2メートルをすり抜けて、スタジアムに着陸する。終わった瞬間は最高の気分だが、やっている最中は神経を使う。カメラもメディアもたくさんいる。失敗する可能性はいくらでもある」。このショーを実現できるのは、クリーゲルがすべてを企画し、法的な手続きを整えているからだ。「彼のおかげで、特別な経験ができる。これは他の誰にもできないことだ」。
まとめ——兄弟、リスク、そして「飛ぶこと」の本質
このエピソードの核心は、ミヒャエル・マウラーという一人のパイロットを通して、パラグライダーというスポーツの「深さ」を描き出したことにある。テストパイロットとしての危険との向き合い方、兄から受け継いだ「ステップ・バイ・ステップ」の哲学、フロー状態を追求するための精神的な技法、そして家族とのバランス——すべてが、一貫した世界観で結ばれている。
特に印象的なのは、マウラーが「リスク」を単なる危険としてではなく、学びのプロセスとして捉えている点だ。彼は「安いミス」の価値を認め、子供たちにも「自分で経験させる」ことを重視する。しかし同時に、パラグライダーが「本当に深刻な結果をもたらす」という事実から目をそらさない。このバランス感覚こそが、彼を長年にわたってトップレベルで活動させている原動力なのだろう。
兄クリーゲルとの関係も、単なる「憧れ」や「競争」ではない。互いをリスペクトし、言葉なしで通じ合い、そして「兄がいるからこそできる特別な経験」を共有する。このエピソードを聴いた後では、クリーゲル・マウラーという伝説的なパイロットの背後に、静かで確かな存在感を持つ弟がいることを忘れられなくなる。
「飛ぶこと」が単なる移動や競技ではなく、人生そのものと深く結びついている——そんな当たり前のようでいて、なかなか言葉にできない真実を、ミヒャエル・マウラーは飾らない言葉で語ってくれた。新年にふさわしい、深く、温かい対話だった。