
#262 Into the Deepness with Keith Forsyth
- 262 Into the Deepness with Keith Forsyth — 完全ダイジェスト 太平洋岸北西部の深い原生林、氷河に覆われた山々、そしてほとんど着陸...
- [0:15] スピードフライングからパラグライディングへ——マージンの哲学 キース・フォーサイスが空のスポーツと出会ったのは2011年、スカイダイビングからだった。その後...
- 「刺激を保とうとすればするほど、マージンがどんどん減っていく。その軌道が持続可能とは思えなかった」と彼は説明する。身近な友人が次々と事故に遭い、自分自身も危ない目に何度も...
自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。
Cloudbase Mayhem Podcast / Gavin McClurg
262 Into the Deepness with Keith Forsyth — 完全ダイジェスト
太平洋岸北西部の深い原生林、氷河に覆われた山々、そしてほとんど着陸できない過酷な地形——そんな場所で、キース・フォーサイスはパラグライダーとパックラフトを駆使し、数日間にわたる壮大な冒険飛行を続けている。ホストのギャビン・マクラーグが「これまで聞いた中でも特にインスパイアされる」と語るこのエピソードでは、スカイダイビングやスピードフライング、ベースジャンプからパラグライダーへと軸足を移したキースの軌跡と、彼が追求する「マージン(余裕)」を重視した冒険哲学が深く掘り下げられる。単なる距離や記録ではなく、美しいラインと未知の体験を求める彼の姿勢は、フリーフライトの新たな可能性を示している。
スピードフライングからパラグライディングへ——マージンの哲学
キース・フォーサイスが空のスポーツと出会ったのは2011年、スカイダイビングからだった。その後スピードフライングとベースジャンプにも手を広げ、約5年間スカイダイビングの仕事に従事するほど没頭した。しかし、パラグライダーで初めてサーマル(上昇気流)を体験した瞬間、彼の方向性は大きく変わった。「スピードフライングはもう5、6年前にやめたんだ」とキースは淡々と語る。その理由は「マージン」の減少だった。
「刺激を保とうとすればするほど、マージンがどんどん減っていく。その軌道が持続可能とは思えなかった」と彼は説明する。身近な友人が次々と事故に遭い、自分自身も危ない目に何度も遭った。ギャビンもこれに強く共感する。「マウンテンバイクで何度も大怪我をして、ついにやめると決めたんだ。上りは恋しいけど、病院送りになるのはもうごめんだ」。両者の会話からは、危険なスポーツと真摯に向き合い、自らの限界を冷静に判断する姿勢が伝わってくる。
キースは現在も時折スカイダイビングを楽しむが、ベースジャンプも同じ時期に中断している。「またいつかやるかもしれない。でも今は、やるべき面白いことが多すぎる」。彼にとってパラグライダーは、単なる代替手段ではなく、山を探検するための「ユニークなツール」だった。スピードフライングでは山の一部しか味わえなかったが、サーマルフライトによって山脈全体を横断する可能性が開けたのだ。
太平洋岸北西部の過酷な地形——「アウト」を見極める技術
キースが住む太平洋岸北西部、特にカスケード山脈は、フライトにとって極めて難しい環境だ。深い谷、密林、そして着陸可能な場所の少なさ。彼はこうした地形での経験を、スピードフライング時代の「ハイク&フライ」で培ったという。「もともとマルチデイのキャンプをしながら山に入っていたから、パラグライダーでもそのバックパッキングスタイルを続けるのは自然な流れだった」。
彼のアプローチの核心は「アウト(逃げ場)」の確保にある。キースは登山家ジェフ・シャピロから聞いた言葉を引用する。「トラッドクライミングでは『良いプロテクションを置ければ、思い切りトライできる』と言うんだ。パラグライダーでも同じで、谷から脱出できるルートや高所の alpine meadow(高山草原)を確保できれば、よりテクニカルなラインに挑戦できる」。彼は事前にグーグルアースで候補地を調べるだけでなく、実際に徒歩で現地に足を運び、着陸可能かどうかを確認する。なぜなら、上空からは安全そうに見える場所でも、実際には「timber cuts(伐採跡地)」や「wildland burn areas(山火事跡地)」が危険なトラップになるからだ。
「上空からはきれいな四角いエリアに見えても、近づくと3フィートの岩や切り株だらけだったりする」。ギャビンもカナディアン・トラバースでの経験を語る。「ウィル・ガッドが言ってたんだ。『良さそうな着陸地点に見える場所は、全部ダメだと思え』って」。この過酷な環境だからこそ、キースは「ground suck(車に戻りたくなる誘惑)」や「car suck」から解放されるという。「バックカントリーに数日分の装備を持っていれば、一日の終わりに必ず車に戻らなければというプレッシャーがなくなる」。
オリンピック山脈横断——不可能を可能にする準備
キースの冒険の中でも特に印象的なのが、ワシントン州南西部のオリンピック山脈横断だ。海に三方を囲まれたこの小さな山脈は、海風の影響を強く受け、フライトが極めて難しいことで知られる。「これまで誰も飛んだことがないと思う」とキースは言う。彼はまず南側からスピードフライングで数回入り、次に北側からも同様にアプローチを重ねた。「少しずつピースを組み立てていったんだ。一日に数マイルずつ進んでは戻ることを繰り返して」。
この「段階的な偵察」アプローチが、彼のスタイルを象徴している。「いきなり盲目的に突っ込むのは避けたい」。事前の調査によって、南から北へ移動するにつれて気象パターンが劇的に変化することを学び、その知識が本番での成功につながった。「小さな山脈だからこそ、海からの影響で下層の風が大きく変わる。事前の trips が全体の経験をより充実させ、安全にしてくれた」。
キースはこのアプローチを、異なるスポーツコミュニティから学んだ考え方だと説明する。「クライミングには『アルパインスタイル』か『遠征スタイル』かという何十年もの議論がある。パラグライディングでも、どうアプローチすべきかの議論がもっとあっていい」。彼は「マージンを維持し、変数を理解する」ことを何より重視する。「常に未知の未知は存在する。それを事前にできる限り把握することが大事だ」。
7日間の自給自足——装備と食料の極限設計
キースの遠征は、多くの場合7日分の食料を携行する。そのパッキングは極限まで最適化されている。「フリーズドライ食品とバーが中心。味は良くないけど、カロリーは摂れる」。彼はチーズとサラミを必ず持参し、フリーズドライの食事に混ぜて風味をアップさせるという。テントは必携で、悪天候に備える。特筆すべきは、パラグライダーのウィングを寝袋代わりに使う工夫だ。「改造したコンサーティーナバッグでウィングをまとめて、それを寝袋として使う。重量削減になる」。
使用機材は「Zeolite 2(ウィング)」と「Bivy 1(ハーネス)」。ハーネスのアンダーシート収納には、パックラフトや追加のレイヤー、食料など、衝撃を吸収できるソフトグッズを詰める。「最悪のシナリオを常に想定して、重量物は低く、接続ポイントの近くに配置する」。パックラフトは「Kokopelli Nirvana」で、約5キログラム。ただし、これは特定の目的にのみ使用する。「カスケード山脈ではあまり使わない。川が急峻で障害物が多いから」。主に使用するのはBC州のコースト山脈で、より大きな谷と穏やかな川が広がっている。
コースト山脈の冒険——空と川を往復する7日間
キースの冒険の舞台は、バンクーバーから北へ数時間のペンバートン周辺から、さらに西や北西へと広がる。コースト山脈の魅力は、カスケード山脈より「フレンドリー」な地形にある。「より広い alpine tundra(高山ツンドラ)があり、高い場所での着陸が容易だ。川のシステムも大きく、砂州も多い」。ただし、その代償として「アメリカの山域よりはるかに遠隔地」となる。古い林道や現役の伐採エリアはあるが、集落は稀だ。
パックラフトの導入は、彼の冒険に革命をもたらした。「パックラフトがあることで、飛べる範囲のマージンが広がった。徒歩では何日もかかる藪こぎが必要な場所でも、川を使えば移動できる」。彼はクラス3以下の急流を選び、それ以上の難所はポートレージ(舟を担いで運ぶ)する。複数の川が連続する場合は、事前に徹底的なリサーチを行う。
最も印象的な遠征の一つが、2年前に友人コーリーと行ったペンバートン北部からベラクーラまでの旅だ。「何が次に起こるか全く予測できない、まさに体験の連続だった」。川に流れ込む直前に100フィートの木が川を横切って倒れたかと思うと、次の川ではサケの大群が遡上していて、パドルを入れるたびに色が変わった。そして、最も心に残っているのは、地元の人々との出会いだ。
「ヘルメットとPFDを着けてパックラフトに乗っていると、スタンドアップパドルボードの親子に『どこから来たんだ?』と聞かれて。話しているうちに『うちのビーチでキャンプしていいよ』と言われて、翌日にはコーヒーをご馳走になった」。キースはこうした「外部コミュニティとの交流」が、アウトドアスポーツの重要な側面だと語る。「山のスポーツは、その土地のコミュニティに入るためのアイスブレイカーになる。ただ訪れるだけでは生まれない、自然な交流が生まれるんだ」。
ヒヤリハットと学び——ビールを考えた代償
キースはパラグライダーでの「かなり危なかった経験」として、ワシントン州のパサテン原生地域からの帰路での出来事を語る。数日間のクライミングを終え、マザマの町へ戻る途中だった。「時計を見て『まだ早い、バーは開いてるな』と考え始めたんだ」。その瞬間から彼はフライトデッキの操作に気を取られ、高度が徐々に低下していることに気づかなかった。
「気づいた時には、越えなければならない尾根が目前に迫っていた。高度が50フィート足りない。最初は数千フィート上空にいたのに、20分間のグライドの間に、修正できるポイントは何度もあったのに、全てを逃した」。幸い、尾根と並行する林道に緊急着陸できたが、それは「純粋な運」だったと彼は振り返る。「あれは安く済んだミスだ。後から考えれば、赤信号はいくつもあった。ただ、引き際を誤ったんだ」。
ギャビンもアラスカでの似た経験を共有する。「37日間の遠征の後、ビールが飲みたくて仕方なかった。着陸した町は『ドライ・ビレッジ』で、一滴も手に入らなかったけどね」。このエピソードは、どんなに経験を積んだパイロットでも「目標に集中しすぎる」危険性を如実に示している。
数字より美しさ——キースが「純粋さ」を保てる理由
キースはレースや距離記録にはほとんど興味がない。「数字や統計はスポーツの面白い側面ではあるし、成長の手段にもなる。でも、モチベーションを直接それに結びつけると、ネガティブな面が出てくる」。彼は以前、スキーレースやウィングスーツレースで競技経験があったからこそ、その誘惑と危険性を理解している。「時間とともに、数字を追うよりも面白い側面があることに気づいたんだ」。
ギャビンは「多くのリスナーがそれに拍手を送っているはずだ」と応じる。確かに、このエピソード全体を通じてキースが体現しているのは、自己記録や他者との競争ではなく、未知の地形を自分の目で見て、地元の人々と交流し、予期せぬ出来事を受け入れることの豊かさだ。「飛ぶこと自体が目的であって、距離はその結果に過ぎない」という彼の姿勢は、フリーフライトの本質的な魅力を改めて思い出させてくれる。
まとめ
このエピソードが特別なのは、単なる冒険譚ではなく、危険と隣り合わせのスポーツとどう向き合うかという深い哲学が語られている点だ。キース・フォーサイスは「マージンを確保すれば、思い切りトライできる」という逆説的な真理を、自身の経験を通じて体現している。彼のアプローチは、事前の徹底的な準備、段階的な偵察、そして何より「未知を受け入れる柔軟さ」に支えられている。スピードフライングやベースジャンプという「マージンの少ない」世界からパラグライダーへと移行した彼の物語は、単なるスポーツの転向ではなく、より豊かな冒険の形を追求した結果だ。パックラフトという第二の移動手段を組み合わせることで、彼は「飛べる範囲」の概念そのものを拡張した。そして何より、地元の人々との偶然の出会いや、予期せぬ出来事を楽しむ姿勢が、このエピソードに温かみと深みを与えている。数字や記録ではなく、美しいラインと未知の体験を求める彼の姿勢は、フリーフライトの可能性を再定義するものだ。