
69回 富裕層が投資利回り3%切っても不動産を買う理由
- 概要 今回のエピソードでは、パーソナリティの咲本慶喜(株式会社GO STRAIGHT代表)とアシスタントの古賀涼子が、都心の不動産価格が高騰し利回りが2〜3%にまで低下し...
- [1:13] 富裕層と一般投資家の「投資の目的」の決定的な違い 咲本はまず、前回のエピソードで取り上げた「不動産小口化商品」の例を引き合いに出しながら、富裕層と一般投資家...
- この指摘は、一般の感覚からするとまったく逆転した発想である。古賀が「資産が多いからみんな買えるんだなと思っていた」と素直な感想を述べると、咲本は「目線を変えると不思議では...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
教科書からは学べない! 「不動産の学校」「投資の学校」 / TOKYO FM
概要
今回のエピソードでは、パーソナリティの咲本慶喜(株式会社GO STRAIGHT代表)とアシスタントの古賀涼子が、都心の不動産価格が高騰し利回りが2〜3%にまで低下しているにもかかわらず、富裕層がなぜ不動産を買い続けるのかという逆説的な現象を深掘りする。咲本は、この状況を「一般投資家と富裕層では投資の考え方、許容できる損の規模、そして収益の捉え方が根本的に異なる」と指摘し、表面的な利回りだけを見て判断すると致命的な誤りを犯すと警告する。番組全体を通して、同じ「不動産投資」という言葉でも、その中身と戦略が資産規模によって全く別物であることが、具体的な数字と事例で明らかにされる。
富裕層と一般投資家の「投資の目的」の決定的な違い
咲本はまず、前回のエピソードで取り上げた「不動産小口化商品」の例を引き合いに出しながら、富裕層と一般投資家では投資の目的そのものが異なると説明する。一般の投資家は「運用目的」、つまり家賃収入や値上がり益でプラスを出すために不動産を買う。ところが富裕層が高額な不動産小口化商品を購入するのは「消去法」であり、具体的には「節税目的」であると咲本は言う。誤解を恐れずに言えば、富裕層は「資産の額をマイナスにするため」、つまり課税対象となる資産を減らすために不動産を買っているというのだ。
この指摘は、一般の感覚からするとまったく逆転した発想である。古賀が「資産が多いからみんな買えるんだなと思っていた」と素直な感想を述べると、咲本は「目線を変えると不思議ではなくなる」と応じる。ここがこのエピソードの核心的な論点である。
都心タワーマンションの「利回り2%」は成り立つのか
咲本は具体的な数字を挙げて説明を進める。都心の一等地にあるタワーマンションを購入し、それを賃貸に出した場合、管理費などを差し引いた実質的な投資利回りは「2%程度」になるという。数億円を投資して2%の利回りでは、リスクを取った投資としては到底成り立たない。古賀が「成り立たないですよね」と同意すると、咲本も「成り立ちません」と明確に断言する。
しかしここで咲本は重要な転換点を提示する。「貸さずに転売したらどうですか」という問いかけだ。3億円で買った物件を3億5000万円で売却したケースを想定する。購入時と売却時の手数料で約2000万円が消えるとしても、3000万円の売却益が残る。仮に1年で売れたとすると、投資額3億円に対して年利10%の事業収支となる。つまり、家賃収入だけを見れば2%でも、売却益を組み込めば投資として十分に成立するというのが咲本の主張である。
古賀はここで「つい最近のニュースで、不動産を取得して1年以内に売却した割合がかなり多いという話を聞いたばかりです」と反応し、この転売戦略が実際に富裕層の間で行われていることを裏付ける。
「許容できる損」の桁が違う——富裕層のリスク感覚
咲本はさらに踏み込んで、富裕層と一般層では「損をしても許容できる単位」が桁違いに違うと指摘する。一般の感覚では10万円の損でも痛いが、富裕層にとっては100万円や1000万円の損でも「まあ仕方ない」と受け入れられる。これは単に持っている金額の差ではなく、投資に対する精神的な余裕の差でもある。
具体的には、3億円で買ったタワーマンションが仮に2000万〜3000万円値下がりしても、「投資だから仕方ない」と割り切れるのが富裕層の感覚だ。古賀が「一般からすれば2000万、3000万の損失は人生を左右する」と驚くと、咲本は「彼らからすれば200万円や300万円の損と同じ程度の感覚」と説明する。この「スケールの違い」が、同じ不動産市場を見ていながら全く異なる判断を生む原因だと咲本は強調する。
さらに咲本は、富裕層の中には「いい物件、いい部屋ならいくら出してもいい」という購買行動をする人がいると指摘する。例えば、レインボーブリッジや東京タワー、新宿御苑が一望できる特別なビューの部屋など、「その窓からのビューはお金に帰らない」という価値観で購入するケースがある。こうした買い手は細かい計算をしていると買い逃してしまうため、直感的に決断するという。そして、そうした感覚を持つ富裕層が買い手として存在することを知っているからこそ、売り手の富裕層も「3億5000万円で買ってくれる人が現れるまでじっくり待てる」のだと咲本は説明する。
円安と外貨建て資産が生む「心の余裕」
咲本は現在の円安状況も富裕層の不動産購入を後押ししている要因だと指摘する。1年前は1ドル140円台が下限と言われていたが、現在は150円台後半から160円目前という状況にある。富裕層は外貨建ての投資商品を多く保有しており、円安によって含み益が膨らんでいる。咲本自身も「ドル円が90円の時に仕込んだ外貨建ての金融商品を持っている」と明かし、それが現在「むちゃくちゃ勝っている状況」だと語る。
この外貨建て資産の含み益が「心の拠り所」となり、「じゃああの物件、3億で買うよ」という決断を後押しするというメカニズムだ。古賀が「気持ちの余裕が違う」と総括するように、富裕層は複数の資産クラスに分散投資していることで、不動産単体のリスクを相対化できる立場にある。また、円安を背景に外国人投資家の日本不動産購入も活発化しており、彼らもまた「3億円でも即決」という積極的な姿勢を持っていると咲本は付け加える。
「利回り」の正しい理解——家賃収入だけが収益ではない
ここで咲本は、不動産投資における「利回り」の概念そのものを見直す必要があると説く。一般的に不動産投資の利回りは「年間家賃収入 ÷ 不動産価格」で計算される。しかし、これはあくまで「家賃収入だけを収益とみなした計算」に過ぎない。咲本は「不動産投資を事業として捉え、家賃収入プラス売却利益で考えるべき」と主張する。
この視点に立てば、表面的に2%の利回りしかない物件でも、転売によるキャピタルゲインを組み込むことで投資として成立する。古賀が「発想の転換ですね」と応じる通り、一般投資家が「利回りが低い=投資対象として不適格」と単純に判断するのは誤りであり、富裕層はこの「事業としての収支」を理解した上で行動しているというのが咲本の分析である。
ただし、咲本はここで重要な警告も発する。この戦略が通用するのはあくまで「富裕層の物件」、つまり高額帯で、かつ「お金に糸目をつけない買い手」が存在する市場に限られる。一般投資家がよく手を出すワンルームマンションでは、実質利回り4%程度でも「お金に糸目をつけずに買ってくれる人」は存在しないと咲本は明確に否定する。「富裕層では4%でも2%でも不動産投資は成り立つが、一般所得層では成り立たない」——この線引きが、今回のエピソードで咲本が最も伝えたかった核心メッセージである。
ダーウィンの進化論——変化に適応した者だけが生き残る
エピソードの後半、咲本はダーウィンの進化論の有名な一節を引用する。「最も強いものが生き残るわけではない。最も賢いものが生き残るわけでもない。変化に適応したものだけが生き残れるのである」。この考え方は経営にも投資にもそのまま当てはまると咲本は言う。
重要なのは、自分の持っている資金の範囲内でどうやって渡り歩いていくかであり、世の中の仕組みや法律が変われば、それに適応しなければならない。場合によっては「今の自分を疑ってかかる」「持論を捨てる」ことも必要だと咲本は強調する。古賀が「結構、己が試される」とコメントすると、咲本も同意する。
咲本はさらに、現在の上昇相場が永遠に続くわけではないと警告する。何らかのショックが起これば一気に相場は反転し、富裕層が買っていた高額物件も売れなくなる。加えて、政府が不動産を使った相続税対策にメスを入れるという話もちらほら出てきていると咲本は指摘する。これが実際に行われれば、富裕層の相続税対策としての不動産需要が一気に冷え込み、超高額帯の不動産市場は厳しい状況に陥る可能性がある。
だからこそ、常に「どういうふうにいくのか」を自分で考え、変化が起きた時に動けるような準備をしておくことが重要だと咲本は締めくくる。
まとめ
このエピソードが聴き手に残すのは、「同じ不動産投資という言葉でも、富裕層と一般投資家では全く別のゲームをしている」という冷徹な現実認識である。表面的な利回りや市場の熱気に惑わされず、自分の資金規模とリスク許容度に合った投資判断を下すことの重要性が、具体的な数字と事例を通じて浮き彫りになった。特に、富裕層の行動を「自分たちと同じ基準」で理解しようとすると大きな誤解を生むという指摘は、不動産投資に限らず、あらゆる投資判断において示唆に富む。変化に適応する柔軟性と、自分の立ち位置を冷静に見極める目——それがこのエピソードの核心的な教訓である。
要点
- 富裕層と一般投資家では、不動産投資の目的が根本的に異なる。富裕層は「運用目的」ではなく「節税目的」や「消去法」で購入するケースが多い。
- 都心タワーマンションの表面利回りは2%程度だが、富裕層は転売によるキャピタルゲインを組み込むことで事業として成立させている。
- 富裕層は「許容できる損」の規模が一般層と桁違いであり、2000万〜3000万円の損失でも「仕方ない」と割り切れる精神的な余裕がある。
- 円安による外貨建て資産の含み益が、富裕層の不動産購入を後押しする「心の拠り所」となっている。
- 一般投資家が手を出すワンルームマンションでは、富裕層のような転売戦略は通用しない。富裕層向けの戦略をそのまま真似るのは危険。
- ダーウィンの進化論に倣い、変化に適応できる柔軟性が投資でも経営でも重要。自分の持論を疑い、状況に応じて戦略を変える姿勢が必要。
- 政府による不動産相続税対策の見直しが実施されれば、超高額帯の不動産市場は大きな影響を受ける可能性がある。