
女性だけに売れまくったドイツの本とは?#448
- 女性だけに売れまくったドイツの本とは?#448 本エピソードは、敏腕広告プランナーの下田氏をゲストに迎え、広告施策の「うんちく」をクイズ形式で楽しむ企画の第2弾である。堀...
- [0:30] ドイツのタンポンブックス——税制ハックと社会問題の可視化 最初のクイズは、ドイツで女性にだけ爆売れした本の正体を当てるものだ。初版はわずか1日、第2版も1週...
- 下田氏の解説によれば、この本の名前は「タンポンブックス」である。ドイツの消費税率は基本的に19%だが、食品などの生活必需品は7%に軽減されている。しかし、この生活必需品に...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
ゆる言語学ラジオ / Yuru Gengogaku Radio
女性だけに売れまくったドイツの本とは?#448
本エピソードは、敏腕広告プランナーの下田氏をゲストに迎え、広告施策の「うんちく」をクイズ形式で楽しむ企画の第2弾である。堀元見と水野太貴の両ホストが、税制の抜け穴を突いたドイツの生理用品キャンペーン、駅名を盗むというコンセプトの屋外広告、企業理念を体現した懸賞施策、盗撮問題に立ち向かうユニフォーム、そしてトランスジェンダー向けのクレジットカードサービスまで、5問のクイズに挑戦する。各事例は単なる販促手法を超え、社会問題への問題提起や制度のハックといった深い洞察に満ちており、広告が持つ可能性と、その裏にある思考プロセスを存分に味わえる回となっている。
ドイツのタンポンブックス——税制ハックと社会問題の可視化
最初のクイズは、ドイツで女性にだけ爆売れした本の正体を当てるものだ。初版はわずか1日、第2版も1週間で売り切れ、これまでに1万部が販売されたという。堀元は「男がセックス以外について考えていること」というタイトルで白紙の本を出した有名な事例を引き合いに出し、同種の「一発ネタ」系の本ではないかと推測する。
下田氏の解説によれば、この本の名前は「タンポンブックス」である。ドイツの消費税率は基本的に19%だが、食品などの生活必需品は7%に軽減されている。しかし、この生活必需品に生理用品は含まれていなかった。そこで、ドイツの衛生製品ブランド「フィメイルカンパニー」は、この問題を広く周知するためのキャンペーンとして、本の中に完全にタンポンが詰まった商品を開発した。ハードカバーの見た目をした本を開けると、中には15本のタンポンが納められており、さらに女性の月経についてイラスト入りで解説したページも含まれている。生理用品として販売すると19%の税率がかかるところを、あくまで「本」として売り出すことで7%の軽減税率を適用したのだ。
堀元はこの手法を「現代アート感がある」と評し、制度をうまくハックすることで人に考えさせる点を評価する。水野も、日本でも新聞が軽減税率の対象になっていることを挙げ、新聞に付録をつけて発刊するなどの類似手法の可能性に言及する。ドイツのケースでは税率差が12%もあるため、この手のハックに十分なインセンティブがあったことがわかる。
さらに堀元は、ユニクロが税抜き表示から税込み表示への切り替えを迫られた際に、「プラスタックス」を「プラスサンクス」に変えた新聞広告を出した事例を紹介する。税込み価格への実質的な値下げを「感謝」という言葉で表現したこの施策について、水野は「鼻につく」とやや冷めた反応を示すが、堀元は「素晴らしい」と絶賛する。このように、税制を巡る広告の工夫は、単なる値引き以上のメッセージ性を持つことが示された。
ルパンの娘——駅名を盗む屋外広告の仕掛け
2問目は、フジテレビのドラマ「ルパンの娘」のプロモーションに関する問題だ。関東圏の新宿駅、東銀座駅、稲毛海岸駅、金沢文庫駅などで屋外広告が展開されたが、これらの駅名のラインナップには共通点があるという。堀元と水野は、まず「金」と「銀」が含まれる駅名に着目する。金沢文庫の「金」、東銀座の「銀」——これはルパンが盗む「金銀財宝」を連想させる。しかし、稲毛海岸と新宿がどう該当するのかが謎だった。
しばらくの迷走の末、水野が「稲毛海岸」の「稲毛」を「いなげ」と読み、「投げ」に分解し、さらに「海岸」の「かいがん」から「貝」と「がん」を抽出するという発想の転換を見せる。そして「金」「銀」「貝」「真珠」——そう、新宿の「宿」は「珠」と読めるのだ。つまり、これらの駅名にはすべてルパンが盗むもの(金、銀、貝、真珠)が含まれているのである。
下田氏の解説によれば、各駅内では駅名表示を模した広告が掲出され、その上に「新宿は頂きました」「銀は頂きました」などと書かれた張り紙がされていた。つまり、駅名そのものを盗むというコンセプトで展開されたのだ。この施策は、視認率が高いとは言えない駅群をあえて選び、コンセプトから場所を選定することでSNSでの二次拡散を狙ったもので、広告費をかけずに大きな話題を呼んだ成功事例として知られている。堀元は「おしゃれやな」と感嘆し、水野も「ちゃんと駅の名前でそれ盗めるような駅名がちゃんとあることもまたすごい」と評価する。
初日の出で充電——企業理念を体現した懸賞施策
3問目は、ポータブル充電器メーカー「Jackery」のキャンペーンに関する問題だ。2024年の正月に、あるアクションをした人に商品が当たるキャンペーンを実施し、Jackeryの持つ理念と機能を広めることに成功したという。堀元と水野は、Jackeryの製品にソーラーパネル機能があることに気づき、「初日の出の光で給電した人に何かが当たるキャンペーンでは?」と正解にたどり着く。
下田氏の解説によれば、Jackeryは世界初のポータブルソーラーパネルを発売した会社であり、そのビジョンは「グリーンエネルギーをあらゆる人に、あらゆる場所で提供する」ことにある。本施策では、ソーラーパネルとポータブル充電器で「取れたての初日の出」を電力に変えて持ち帰るという新しい習慣を提案し、その様子をSNSにアップすると抽選で商品が当たるというキャンペーンを実施した。
特筆すべきは、この施策が「反則コンペ」と呼ばれる公募型の企画コンペで採用された点だ。在野のプランナーが「初日の出キャンペーン」を提案し、それが実際に採用されたという。堀元は「プロが考えた方がやっぱり芯は食ってるはず」と疑問を呈するが、下田氏は「広告プランナーも個人として参加する」と説明する。水野は「ゆる言語学ラジオでも公募で企画を募ってみたらいいかも」と提案し、実際に下田氏から提案された「寝落ち配信」のアイデアを無断で採用した過去を暴露するなど、終始和やかな雰囲気で進行した。
QRコードで盗撮を抑止——ユニフォームに込めた社会的メッセージ
4問目は、女性用ヘアケアブランド「ラックス」を展開するユニリーバが、南アフリカのビーチバレー大会に協賛した際の施策に関する問題だ。ブランドロゴではなく、あるものをユニフォームの一部に載せ、その仕組みから社会的評価を得たという。堀元と水野は、ユニフォームの「お尻のほっぺた」の部分に何かが載せられたこと、それが女性アスリートの盗撮問題に関係していることを徐々に絞り込む。
下田氏の解説によれば、この施策は「チェンジ・ザ・アングル」という名称で、女性スポーツ中継の映像を分析した結果、中継時間の17%がお尻、20%が胸元を映していたという事実を問題視したことから生まれた。ユニリーバは、ビーチバレーの選手のお尻にQRコードを記載し、カメラでそれを読み込むとラックスのサイトに飛ぶ仕組みを作った。つまり、盗撮するようなアングルでカメラを向けると、QRコードが読み取られてしまう——という逆転の発想だ。
堀元は「油断すると『盗撮は犯罪です』というポスターを貼るだけになりがちだが、QRコードという解決策に煌めきがある」と評価する。水野も「社会問題があるよ、という提示と、その後のソリューションの2点が楽しめる」と賛同する。この事例は、広告が単なる商品宣伝ではなく、社会問題への問題提起と具体的な解決策を同時に提示できることを示している。
トゥルーネーム——トランスジェンダー向け偽名カードの意義
最終問題は、世界的クレジットカードのマスターカードが、ある特定の人々に対してのみ偽名のクレジットカードを持つことを勧めるプロモーションを行ったというものだ。堀元は「本名が割れると誰かに加害されるような人」と推測し、アインシュタインがナチスから逃れるために偽名を使った逸話を引き合いに出すが、それは不正解だった。水野が「トランスジェンダーの人々では?」と正解を導き出す。
下田氏の解説によれば、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々は、店頭でクレジットカードを提示する際、カード上の本名表記のために、見た目と名前の不一致からトランスジェンダーであることがバレてしまうという問題を抱えていた。そこでマスターカードは、トランスジェンダーなどに対してのみ偽名で発行ができるサービス「トゥルーネーム」を展開した。偽名のカードに「トゥルーネーム(本当の名前)」と名付けるネーミングセンスも高く評価される。
水野は「クレカや名前を書かなければいけない行事が全部ストレスだという話を聞いたことがあった」と述べ、この問題の根深さに理解を示す。堀元も「私カードを使っているときに、まさかマイノリティの人がその構造で傷ついていることを知らなかった」と、自身の無知に気づかされたことを認める。この事例は、広告が社会的マイノリティの視点に立ったサービス設計を促進する役割を果たし得ることを示している。
まとめ
本エピソードは、単なる広告の裏話を超えて、制度の抜け穴を突く創造性、社会問題への問題提起、マイノリティへの配慮など、広告が持つ多様な可能性を浮き彫りにした。特に印象的なのは、どの事例も「なぜこの施策が生まれたのか」という背景に社会課題や制度上の矛盾が存在している点だ。タンポンブックスは生理用品への不公平な税率を可視化し、QRコードユニフォームは女性アスリートへの盗撮問題に切り込み、トゥルーネームはトランスジェンダーが日常的に直面する困難を解決した。広告とは、商品を売るためだけの手段ではなく、社会をより良くするためのメッセージを伝える媒体でもある——そのことを強く認識させられる回だった。
要点
- ドイツの「タンポンブックス」は、生理用品に19%の消費税がかかる問題を可視化するため、本の形で販売し7%の軽減税率を適用したキャンペーンである
- 「ルパンの娘」の屋外広告は、駅名に含まれる「金」「銀」「貝」「真珠」などの単語をルパンが盗むというコンセプトで、SNSでの二次拡散を狙った
- Jackeryの「初日の出充電キャンペーン」は、ソーラーパネル機能の認知拡大と「グリーンエネルギーをあらゆる人に」という企業理念の浸透を同時に達成した
- ユニリーバはビーチバレー選手のお尻にQRコードを配置し、盗撮目的のカメラアングルを逆手に取ることで女性アスリートの盗撮問題に立ち向かった
- マスターカードの「トゥルーネーム」は、トランスジェンダーがクレジットカードの本名表記で差別や不快感を被る問題を解決するため、偽名での発行を可能にした
- これらの広告施策はすべて、単なる販促ではなく社会問題への問題提起や制度のハックという深い意図を持っている
- 広告プランナーは「デコンストラクション」という手法で既存の広告を分解・分析し、その構造を学んでいる