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ゆる言語学ラジオ · 2026年5月13日

五十音表にひとつ足すなら、何がベスト? #458

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 概要 今回のエピソードは、リスナーからのお便りを中心に展開する、ゆる言語学ラジオらしい雑談回である。堀元見と水野太貴の二人は、五十音表に新しい音を一つ追加するとしたら何が...
  • [0:02] 五十音に一音足すなら——思考実験と言語学的ジレンマ 冒頭、リスナー「パラレルコンブ」さんからの質問が投げかけられる。「アイウエオの五十音に、一行または一列を...
  • 水野はまず、母音を一つ追加した場合のインパクトを指摘する。例えば「ア」と「イ」の中間にある母音を足せば、「アカサタナ」の系列が一気に増える。しかし堀元は「俺、聞き取れない...
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英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

ゆる言語学ラジオ / Yuru Gengogaku Radio

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概要

今回のエピソードは、リスナーからのお便りを中心に展開する、ゆる言語学ラジオらしい雑談回である。堀元見と水野太貴の二人は、五十音表に新しい音を一つ追加するとしたら何が最適かという思考実験から、椎名林檎やマキシマム ザ ホルモンの歌詞に隠された言語的トリック、関西の難読地名の謎、そして前回の放送で話題になった「ジョス・シーズ・ハイ先生」の後継者とも言える新たな投稿者によるSM体験記まで、多岐にわたる話題を縦横無尽に語り合う。言語学の知見を背景にしながらも、終始軽妙な掛け合いが絶えない、リスナー参加型の楽しさが詰まった一編である。

0:02五十音に一音足すなら——思考実験と言語学的ジレンマ

冒頭、リスナー「パラレルコンブ」さんからの質問が投げかけられる。「アイウエオの五十音に、一行または一列を加えるとしたら、どんな子音か母音を足したいですか」というものだ。水野はこの問いを聞くなり「これやばいな」と声を弾ませ、堀元も「楽しそうだな、お前好きなんだろこの話」と応じる。二人の興奮が伝わってくるオープニングである。

水野はまず、母音を一つ追加した場合のインパクトを指摘する。例えば「ア」と「イ」の中間にある母音を足せば、「アカサタナ」の系列が一気に増える。しかし堀元は「俺、聞き取れないな」と即座に反応する。実際、日本語話者にとって「ア」と「イ」の中間音は「ア」に聞こえてしまい、聞き分けが難しいという問題がある。水野が「エクス」と言ったつもりでも、堀元には「アカサタ」に聞こえたというエピソードがそれを如実に示している。

ここで二人は、より聞き分けやすい音として「舌打ち音(クリック)」や「両唇震え音(ブルルルという音)」を候補に挙げる。舌打ち音はアフリカの言語に多く見られる音で、日本語には存在しない。もし日本列島で突然この音が使われ始めたら、言語学者が驚くだろうと水野は笑う。また「バ行」の両唇震え音(バビブベボを唇を震わせながら発音する)も候補だが、堀元は「それ、練習しないとできないもんね」と難色を示す。結局、聞きやすさと発音のしやすさを両立させるなら、舌打ち音が最有力だと二人は結論づける。

しかし、この思考実験には言語学的な落とし穴がある。水野は、現代の日本語話者の中には「ラ行」を英語のLで発音する人が増えていると指摘する。例えば米津玄師(ヨネスケ)の「L」発音は有名で、彼の歌う「逃げ出したい夜のオーライ」の「ライ」は明らかにLである。もし日本語の音素体系にLを正式に加えた場合、米津玄師のような話者にとっては「オーライ」が「オーライ」と別の意味になってしまうという問題が生じる。つまり、新しい音を追加するという行為は、既存の音韻体系との整合性を考慮しなければならず、単純に「面白そうだから」では済まないのだ。

10:36アクセントが決める単語の切れ目——「聖正名言」と「シュアキマセリ」の謎

続いて、リスナー「花丸ちくさん」からのお便りが紹介される。中学時代の社会科のテストで「初めて征夷大将軍に任命されたのは?」という問題に、友人が「田村麻呂」と答えて誤答になったというエピソードだ。正解は「坂上田村麻呂」だが、その友人は「坂上」を地名、「田村」を苗字、「麻呂」を名前と認識していたという。つまり「隣町の佐藤さん」と同じ感覚で理解していたわけだ。

堀元はこれに共感し、自身の経験を語る。北海道出身の堀元は、東京から遊びに来る「亀井殿五郎さん」という人の「亀井殿」を名前だと思い込んでいた。実際には「亀井殿」は東京の地名で、「五郎さん」が名前だったのだ。水野もまた、母方の祖母を「伊南のばあちゃん」と呼んでいたが、子供の頃は「伊南」が苗字で「ばあちゃん」が名前だと思っていたと打ち明ける。こうした「地名+敬称」の感覚が、歴史的人物の名前の解釈にも影響を与えているという指摘は興味深い。

ここから話題はアクセントと単語の切れ目の関係に移る。水野は、日本語のアクセントには「一つの語の中で一度下がると、それ以上また上がることはない」というルールがあると説明する。例えば「聖正名言」という語は「セイショウナゴン」と発音され、アクセントが一度下がったままなので、一つの単語のように聞こえる。しかし「正義小名言」だと「セイギショウナゴン」となり、アクセントが「セイ」で上がり「ギ」で下がり、さらに「ショウ」で上がるという、一語ではありえないパターンになる。つまりアクセントのパターンを見れば、単語の切れ目が分かるというわけだ。

堀元はこの説明に「子供の頃に聞いた『シュアキマセリ』という歌が、ずっとロシア語か何かの一単語だと思っていた」と驚きの告白をする。実際には「主は来ませり」という文だが、歌のメロディーによってアクセントが歪められ、一語のように聞こえてしまったのだ。水野は、作詞家の中には日本語のアクセントとメロディーを意識的に合わせる人と、全く気にしない人がいると補足する。ヨルシカのコンポーザー・ナブナは前者のタイプで、アクセントとメロディーの一致を重視しているという。

20:54椎名林檎とマキシマム ザ ホルモン——歌詞に隠された言語的トリック

堀元は、椎名林檎(東京事変)の「閃光少女」という曲の歌詞について、長年誤解していたエピソードを披露する。「写真機はいらないわ、股間を持っておいで」という歌詞を、ずっと「浴場しなさい」という意味だと思っていたという。実際には「股間」という単語が使われているのだが、堀元は「写真を撮るんじゃなくて、浴場しなさい」と解釈していたのだ。水野は「歌詞カードだけを見て判断するのは早計」と指摘し、椎名林檎が意図的に「五感」と「五感」の聞き分けがつかないように歌っている可能性を示唆する。

さらに水野は、椎名林檎の「丸の内サディスティック」の歌詞「アオカンで言ってちょうだい」についても言及する。音声で聞くと明確に下ネタに聞こえるが、歌詞カードには「青を噛んで言って」と書かれている。つまり、歌詞カードの表記と実際の発音が一致していないのだ。水野は「フィールド言語学者なら、椎名林檎の口の中をリバースエンジニアリングできる」と冗談めかして言う。実際、未知の言語を調査するフィールド言語学者は、発音のわずかな違いを聞き分け、口の中の動きを推測する能力を持っているという。

そして、マキシマム ザ ホルモンの「絶望ビリー」の歌詞分析に移る。この曲のサビ前の部分は、歌詞カードでは「免罪のワールド、制裁のワード」と書かれているが、裏歌詞(空耳)では「ネオ・スライト・ワールド」(新しい薄っぺらい世界)と「スーサイド・ワード」(自殺者たちの言葉)になるという。水野はここに驚くべき仕掛けがあると指摘する。「ワールド」と「ワード」という二つの単語は、どちらも「L」の音が含まれているが、実は「デスノート」の主要キャラクター「L」を連想させる。つまり「Lのいない世界」を表現しているのではないかというのだ。堀元は「すげーオシャレすぎないそれ」と感嘆し、「金取れるよこれ」と絶賛する。

23:41難読地名クイズ——関西の謎と方言の標準語化

リスナー「どんぐりさん」からのお便りで、関西の難読地名クイズが始まる。最初の問題は「京に終わり」と書いて何と読むか。水野は「終わり」を「果て」と読むと推測し「強果て」と答えるが、正解は「強馬手(こうまで)」で連濁が起きていた。堀元は「惜しい!思ったより悔しがるじゃん」と水野の反応を面白がる。

二問目は「水に走る」と書いて何と読むか。水野は「水かけ」などと推測するが、正解は「水走(みずはい)」だった。水野は「走る」を「はい」と読むことに納得がいかない様子だが、堀元は「咲く」の連用形「咲きて」が「咲いて」になる音便現象を例に挙げ、「走る」も同じ変化をしている可能性を指摘する。つまり「走りて」が「走いて」になり、さらに「はい」に変化したというわけだ。水野も「イ音便でSが消えることはあり得る」と認める。

三問目は「喜ぶ、売る、破る」の四文字。水野は「きれうりわり」と即答するが、実は「切れ売り割り」の六文字だった。堀元は「じゅうじゅうばこばこ読み」と形容し、水野も「確かにそうだね」と笑う。ここから、難読地名が関西に多い理由について議論が展開する。リスナーは「関西人の先民思想やへそ曲げ根性ではないか」と推測するが、水野は「それは関係ない」と否定する。

水野は、沖縄や北海道にも難読地名が多いことを指摘する。沖縄では「谷」を「タン」と読むが、これは標準語の読み方と衝突しているだけだという。北海道ではアイヌ語に由来する地名に漢字を当てた結果、「千冠」と書いて「シムカップ」と読むような地名が生まれた。つまり難読地名は、標準語の読み方と地域の伝統的な読み方のコンフリクトによって生まれるのであって、特定の地域の気質の問題ではないのだ。

さらに水野は「谷」を「ヤ」と読むこと自体が、実は関東地方から東北地方にかけての古い方言であると説明する。東京の「渋谷」や「四谷」はこの方言に由来する読み方で、標準語化した結果、全国的に「ヤ」と読むのが普通だと思われているが、実際には「谷」の音読みは「コク」や「ロク」であり、訓読みの第一は「たに」である。つまり、関東の方言が標準語として採用されたことで、他の地域の地名が「読みづらい」と感じられるようになったという逆転現象が起きているのだ。

34:07ジョス・シーズ・ハイ先生の後継者——新たなSM文学の誕生

最後に紹介されるのは、リスナー「アイグレック」さんからのお便りだ。このリスナーは、前回の放送で話題になった「ジョス・シーズ・ハイ先生」の後継者を自認し、SM体験を文学的に綴った長文を送ってきた。ジョス・シーズ・ハイ先生とは、毎回SMプレイの体験記を技巧的な文章で送り続けていたリスナーで、その作品は切り抜きチャンネルでもまとめられている。

アイグレックさんの文章は、冒頭から「静寂に包まれた密室で、背後から私の胸部へ2周目の縄をかけながら女王様が『あなた、確か相当テンション高いのが好きだったよね』と言う」という衝撃的なシーンで始まる。ここで「テンション」という言葉が、日本語の「気分」ではなく、英語の「tension(緊張)」の意味で使われている点が言語学的に興味深い。水野は「金箔業界ではテンションが高いとは縄の締め具合がきついことを意味する」と解説し、堀元は「雑学きたね」と笑う。

さらにアイグレックさんは、自分が女性であることを途中で明かす。堀元は「最初、男性だと思って読んでしまった自分の内なる偏見」と反省し、水野も「ジェンダーバイアスがあったね」と同意する。この種明かしの構成自体が「度肝を抜いてくる」と堀元は絶賛する。

水野は、この投稿を「スマホ時代の哲学」という本で谷川義彦先生が説く「良質な孤独」の実践例だと評価する。つまり、SM体験をただ楽しむだけでなく、それを文章として消化し、他者に届けるという創作行為そのものが、孤独を豊かなものに変えているというのだ。堀元は「谷川先生に怒られんかそれ」とツッコミを入れつつも、「確かにいい趣味かもしれない」と認める。

まとめ

今回のエピソードは、一見すると雑多なお便り紹介回でありながら、言語学の核心的なテーマ——音韻体系、アクセントと単語認識、方言と標準語の関係、そして言語と創作の相互作用——が自然な形で織り込まれている。特に印象的なのは、五十音に新しい音を加えるという思考実験が、単なる空想に終わらず、実際の日本語話者の発音の多様性(米津玄師のL発音)や音韻体系の整合性といった現実的な問題にまで発展した点だ。また、難読地名の議論では、標準語が関東方言を基盤としているという事実が、他の地域の地名を「読みづらい」と感じさせる原因になっているという逆説が明らかにされた。そして、ジョス・シーズ・ハイ先生の後継者によるSM文学は、言語が単なるコミュニケーションの道具ではなく、個人の体験を昇華し、他者と共有するための芸術表現の媒体でもあることを示している。リスナーの投稿をきっかけに、言語学の知見が生き生きと語られる——この番組の魅力が凝縮された回だった。

要点

  • 五十音に新しい音を追加する思考実験では、舌打ち音(クリック)が聞きやすさと発音のしやすさのバランスで最有力候補だが、既存の音韻体系との整合性や話者間の個人差(米津玄師のL発音など)が障害となる。
  • 日本語のアクセントには「一語の中で一度下がると再び上がらない」というルールがあり、このルールを手がかりに単語の切れ目を判断できる。歌のメロディーはこのアクセントを歪めるため、歌詞の聞き間違いが生じる。
  • 椎名林檎やマキシマム ザ ホルモンの歌詞には、音声と歌詞カードの表記が一致しない「裏歌詞」や、作品のテーマを反映した言語的トリック(「絶望ビリー」のLの不在)が仕込まれている。
  • 関西の難読地名は「先民思想」のせいではなく、標準語の読み方と地域の伝統的な読み方のコンフリクトによって生まれる。沖縄や北海道にも同様の事例が多数存在する。
  • 「谷」を「ヤ」と読む読み方自体が関東地方の古い方言であり、それが標準語化した結果、他の地域の地名が「読みづらい」と認識される逆転現象が起きている。
  • ジョス・シーズ・ハイ先生の後継者によるSM文学は、個人の体験を創作として昇華する「良質な孤独」の実践例であり、言語が芸術表現の媒体として機能する好例である。
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