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ゆる言語学ラジオ · 2026年5月13日

「フィリピンの賭博」と「ジャンクション」に共通点を見つけました。#434

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 概要 今回のエピソードは、ホストの水野太貴が「どうしても語らせろ」と主張する特別回。一見まったく無関係に見える二冊の本——フィリピンの数字くじ(ラスト2)を調査した文化人...
  • [0:44] なぜフィリピン人は数字くじに熱狂するのか 水野が最初に紹介したのは、2022年に京都大学で博士号を取得した文化人類学者・室田文子の著書『日々賭けをする人々—...
  • 対象となっているのは「ラスト2」と呼ばれる数字くじで、2桁の数字(83や65など)を賭け、当局が発表する当選番号と一致すれば配当が得られる。当選確率は100分の1だが、払...
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英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

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ゆる言語学ラジオ / Yuru Gengogaku Radio

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概要

今回のエピソードは、ホストの水野太貴が「どうしても語らせろ」と主張する特別回。一見まったく無関係に見える二冊の本——フィリピンの数字くじ(ラスト2)を調査した文化人類学の博士論文『日々賭けをする人々』と、高速道路ジャンクションの写真集『ジャンクション』——が、水野の中で「プロジェクション」という認知科学の概念によって見事に接続された。堀元見は終始「何を言っているんだ」と困惑しながらも、水野の熱量に引きずられていく。このエピソードは、人間の認知能力「プロジェクション」の面白さを予告編的に紹介し、次回の専門家ゲスト回への布石となっている。

0:44なぜフィリピン人は数字くじに熱狂するのか

水野が最初に紹介したのは、2022年に京都大学で博士号を取得した文化人類学者・室田文子の著書『日々賭けをする人々——フィリピン闘鶏と数字くじの意味世界』である。この本の核心的な問いは「なぜフィリピンの人々は、くっそつまらない数字くじに熱狂しているのか」というものだ。

対象となっているのは「ラスト2」と呼ばれる数字くじで、2桁の数字(83や65など)を賭け、当局が発表する当選番号と一致すれば配当が得られる。当選確率は100分の1だが、払い戻しは70〜80倍と、数学的には必ず損をする仕組みになっている。著者自身も「暇つぶしとしての魅力がない」とバッサリ書いている。自分の能力が発揮される実感もなく、上手くなることもなく、そもそも当たらない——まさに「つまらないことづくめ」のギャンブルだ。

にもかかわらず、フィリピンではこの数字くじに人々が熱狂している。著者は冒頭で、子どもが病院にかかる金がなく薬も買えない状況で、親が取り乱しながらも数字くじに熱中している場面を描写している。水野は「貯めときなさいよそのお金」とツッコミを入れつつ、この矛盾こそが文化人類学的な問いの出発点だと説明する。

3:32数字くじの歴史とフィリピン人の賭け方

堀元は「フィリピンには娯楽が少ないんじゃないか」と安易な仮説を口にするが、水野は「そんなこと一切思ってないですよ」と即座に否定する。実際、数字くじは国家を動かすほどの人気を持ち、その収益が政治家の資金源になるなど、フィリピンの歴史を彩ってきた。

著者の調査によれば、フィリピン人は毎回数字くじを買うわけではない。「熱狂するタイミング」があるのだ。それは「数字を持っている時」に賭けるという独特のスタイルである。自分にとってのラッキーナンバー、自分の年齢や誕生日、夢で見た数字——こうした「自分の数字」を持っていると感じた時にだけ賭ける。逆に、賭ける数字が思い浮かばない時は遠慮する。

さらに、過去の当選番号から法則性を探る「数字予想」も盛んで、数字予想新聞なるものまで存在する。著者が特に驚いたのは、誰かが亡くなったタイミングで、その人の年齢を賭けるという習慣だ。お通夜に向かう人々は、看護師の周りから数字を探し始める——アルコール消毒液のボトルのバーコード、亡くなった人の生まれ年や命日など、あらゆるものから数字を引き出して賭ける。水野は「いつでもどこでも数字を探している」と表現し、堀元は「山崎正義的な発想で生きているんだ」と応じる。

8:36ペプシ事件とアジアの数字くじ文化

堀元が思い出したのは、フィリピンで起きた有名な「ペプシ事件」だ。ペプシコーラが瓶の蓋に番号を印刷し、当たり番号と一致した人に4万ドルをプレゼントするキャンペーンを実施したところ、ミスプリントにより当たりが大量に発生。支払い不能に陥ったペプシが「払いません」と宣言したことで暴動が起きた。マニラの証券取引所に上場する全企業の時価総額を上回る額を支払わなければならない事態だったという。死者2名、トラック38台が破壊され、ペプシはイグノーベル平和賞(皮肉を込めた賞)を受賞した。

水野はさらに、台湾でレシートくじが導入された事例を挙げる。レシートを店の前に捨てる問題を解決するため、レシートに宝くじを印刷したところ、人々がレシートを取っておくようになったという。日本でも年賀状に数字くじが付いている。水野は「アジア圏の人は数字を当てるのが好きなのかもしれない」と指摘し、西洋圏には数字くじのイメージが薄いことにも触れる。

11:17数字くじが提供する「幸運の認識機会」

著者の重要な洞察として、水野は「自分が今ついているかどうかを確認する方法はあまりない」という点を挙げる。フィリピンの数字くじは、人々に「幸運について認識する機会」を提供しているのだ。例えば、64番を賭けて65番が出るという「惜しい」状況が続けば、「今来ている」と感じる。これはオカルトに過ぎないが、人間の素朴な感覚として理解できる。

水野はここで、日本の星座占いとの類似性を指摘する。もしフィリピンの文化人類学者が日本に来て調査をすれば、「毎朝のニュースで星座占いが流れている。この人たちは、上手くなることも面白みもない占いを通じて、自分の運勢を間接的に把握しているのだ」という論文を書くのではないか。堀元は「そっくりです」と認めつつも、自身は星座占いを「非科学的だ」と切り捨てようとする。しかし水野に「カメラ回ってますよ」と脅かされると、慌てて「生活に針が出て大事ですよ」と手のひらを返す。このやり取りは、文化人類学的な視点の難しさ——自分たちの文化を相対化することの難しさ——をコミカルに描き出している。

14:19ジャンクション写真集の世界

ここから、もう一冊の本『ジャンクション』(大山健著、2007年出版)の紹介に入る。これは高速道路の連結部分であるジャンクションを類型化し、その面白がり方を解説する写真集だ。冒頭のページには「タービン型」「クローバー型」「トランペット型」「T型」など、様々な形状が分類されている。特にクローバー型は日本に一例しかなく(佐賀県の鳥栖ジャンクション)、「とても貴重なトポロジー」と解説されている。堀元は「位相幾何学なんだこれ」と驚く。

大山のキャプションは独特で、例えば両国ジャンクションについては「ジャンクションを見るために用意されたかのような浸水公園があるので、落ち着いて鑑賞できる」と書かれている。小菅ジャンクションでは、T型のジャンクションの形がそのまま下の一般道に下ろされてT字路になっていること、さらに綾瀬川と荒川の合流、常磐線と東武伊勢崎線の交差——「いろいろなものがこの街でジャンクションしている」という視点を提示する。江戸橋ジャンクションについては、兜神社を「どう見てもジャンクションの守り神である」と断言する。

堀元は「兜神社は証券界の守り神だ」と反論するが、大山はあくまで「ジャンクションの守り神」と決めつける。水野はこの「決めつけ」こそが重要だと指摘する。

19:14プロジェクションという認知能力

水野はここで、二つの本の共通点を明かす。フィリピンの数字くじの参加者も、ジャンクション写真集の著者・大山も、やっていることは同じだ——ある目的のために存在しているものに対して、全く別の意味付けを行っている。これこそが、近年認知科学で注目されている「プロジェクション」という概念である。

プロジェクションとは、ある対象物Aに対して、全く異なるBを心理的に当てはめることだ。カレンダーは本来、曜日確認やスケジュール管理のために存在するが、フィリピンの人々は「当たりのヒントを提供するために存在している」かのように扱う。兜神社は証券界の守り神だが、大山は「ジャンクションの守り神だ」と決めつける。小菅ジャンクションは交通の必要から建設されたが、大山は「交差する街の象徴」と見なす。

水野は「『日々賭けをする人々』も『ジャンクション』も、プロジェクションという認知能力の話をしていると読める」と結論づける。堀元は「全然違う話なのに、裏のテーマが一緒だと」と納得する。

23:40次回予告:プロジェクションの専門家を迎えて

水野は最近プロジェクションという概念にハマっており、世界をこの概念で見つめると面白くなると語る。しかし、自分だけで語るのではなく、次回はプロジェクションの専門家をゲストに迎えるという。その人物は、以前「ゆる言語学ラジオ」で取り上げた「小林マスカー理論と不助詞の二次創作」の論文を書いた久保先生だ。久保先生は「プロジェクションの布教をしに来る」と張り切っているらしい。

予習として、久保先生の一般書『「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か』と『イマジナリー・ネガティブ 認知科学で読み解く「こころ」の闇』が紹介された。これらの本を読んでおくと、次回の内容がより理解しやすくなるという。

まとめ

このエピソードは、一見無関係な二つの本を「プロジェクション」という認知科学の概念で接続する知的興奮を味わえる回だった。フィリピンの数字くじに熱狂する人々の行動も、高速道路ジャンクションに美を見出す写真家の視点も、どちらも「本来の目的とは異なる意味を対象に投影する」という人間の認知能力の現れである。文化人類学のフィールドワークと写真集のキャプションという異なるジャンルが、同じ理論で説明できるという発見は、学問の面白さを体現している。次回の専門家ゲスト回への期待を高める、絶妙な予告編として機能していた。

要点

  • フィリピンの数字くじ「ラスト2」は、当選確率100分の1に対して払い戻し70〜80倍と数学的には損する仕組みだが、人々は熱狂している
  • フィリピン人は「数字を持っている時」だけ賭けるという独特のスタイルを持ち、夢で見た数字や亡くなった人の年齢などから賭ける数字を探す
  • 数字くじは「自分が今ついているか」を確認する手段として機能しており、日本の星座占いと同様の役割を果たしている
  • 高速道路ジャンクションの写真集『ジャンクション』では、著者の大山健が「兜神社はジャンクションの守り神」などと決めつけるキャプションを付けている
  • フィリピンの数字くじ参加者も大山も、本来の目的とは異なる意味を対象に投影する「プロジェクション」という認知能力を発揮している
  • プロジェクションとは、ある対象物に対して全く別の概念を心理的に当てはめる認知能力のこと
  • 次回はプロジェクションの専門家・久保先生をゲストに迎え、より深く掘り下げる予定