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ゆる言語学ラジオ · 2026年5月13日

「よろしくお願いします」が消える日 #449

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 概要 このエピソードでは、堀元見と水野太貴が、AI時代における言語変化の可能性から、焼肉の網の上での肉の焼き方に表れる人間性の違いまで、幅広い話題を縦横無尽に語り合ってい...
  • [0:02] AI時代に「よろしくお願いします」は消えるか 水野が提起したのは、「丁寧な言い方や敬語が近い将来消えるかもしれない」という大胆な仮説だ。その理由として彼が挙...
  • 現在、多くの人がビジネスメールの作成に生成AIを活用している。送り手がカジュアルに喋った内容をAIがフォーマルな文体に整形し、受け手もAIを使ってそのフォーマルな文体から...
こんな人向け

英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

ゆる言語学ラジオ / Yuru Gengogaku Radio

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概要

このエピソードでは、堀元見と水野太貴が、AI時代における言語変化の可能性から、焼肉の網の上での肉の焼き方に表れる人間性の違いまで、幅広い話題を縦横無尽に語り合っている。中心的なテーマは「言語はどのような要因で変化するのか」という問いであり、特に「消費電力」というこれまで言語変化の要因として考えられてこなかった新しい軸が、敬語や丁寧表現を消滅させる可能性について議論が展開される。後半では水野の著書『会話の0.2秒を言語学する』のヒット報告や新Podcastの紹介も行われ、終始リラックスした雑談形式ながら、言語学・社会学・テクノロジー論が交錯する濃密な内容となっている。

0:02AI時代に「よろしくお願いします」は消えるか

水野が提起したのは、「丁寧な言い方や敬語が近い将来消えるかもしれない」という大胆な仮説だ。その理由として彼が挙げたのは「消費電力」である。OpenAIのサム・アルトマンCEOが、ChatGPTに対して「ありがとう」「お願いします」といった礼儀正しい言葉をかけることが数十億円分の電力消費につながっていると発言したことに着想を得て、水野は次のような未来シナリオを描く。

現在、多くの人がビジネスメールの作成に生成AIを活用している。送り手がカジュアルに喋った内容をAIがフォーマルな文体に整形し、受け手もAIを使ってそのフォーマルな文体から本質的な内容だけを抽出する——つまり、実質的にAI同士が対話しているような状態が生まれつつある。この「わざわざ側を作って送り、相手がその側を剥がす」という二度手間は、本質的には無駄である。

水野の主張はさらに先を行く。もし「丁寧な言葉遣いは電力の無駄」という認識が広がれば、むしろフランクな言葉遣いの方が「SDGs的で配慮が行き届いている」という価値観に逆転する可能性がある。そうなれば、「引き続きよろしくお願いします」といった形式的な表現は、エコではないというレッテルを貼られて消えていくかもしれない。

堀元はこの仮説に「面白い」と賛意を示しつつも、社会全体としてそう簡単には変わらないのではないかと疑問を呈する。彼は「非効率を良しとする人たちがたくさんいる」と指摘し、具体例としてスケジュール調整ツール「スピア」に怒る実業家・藤原さんのエピソードを紹介した。藤原氏は「リンクを送って空き時間を予約させる」という効率的な方法を「礼を欠いている」と激怒しており、この反応に堀元は驚いたという。

堀元は「相手のために無駄な時間を使うこと自体に価値を見出す人が相当数いる」と分析し、それが「引き続きよろしくお願いします」のような形式的表現を生き残らせる力になると論じる。しかし水野は「今は口実がないから均衡を保っているだけ」と反論し、何かきっかけがあればコロッと変わる可能性を主張する。食器洗浄機が「楽だから」ではなく「節水になるから」という言い訳で普及した例や、Amazonが日本に上陸した際に「海外の事業者だから」という口実でネット書店が実現した例を挙げ、言語変化にも同様の「言い訳」が必要だと述べた。

20:22焼肉の0.2秒を言語学する——水野の「余白を埋める」行動原理

話題は突然、水野の焼肉の焼き方に移る。水野は「肉を焼くのが早い」と自認しており、堀元も「すごい速さで焼く」と証言する。しかし水野は、この行動の背後にある自分の心理を自己分析し始める。

水野は、自分が行っている「気遣い」の本質は実は「全体最適」や「生産最適化」ではないかと気づいたという。網に何も乗っていない時間が「リソースの無駄」に感じられ、それを埋めたくなる。サラダの取り分けも「誰も取らないせいで食べ始める時間が無駄になる」という発想から率先して行い、飲み物が空いていれば「埋めたほうが良かろう」と次の注文を促す。堀元はこれを「余白を埋め続けるロボット」と評し、水野の行動は「一行のソースコード『余白を埋める』で表せる」と喝破した。

水野自身もこの自己分析に同意し、自分の行動は「相手の心を参照せずに、Pの時はQせよという定型に落とし込んでいるだけ」だと認める。しかし堀元は「何もしないよりは上等」と評価しつつ、「今この人はこうしてほしい」という高度な気遣いとの間には大きな隔たりがあると指摘する。

35:04肉を速く焼いても面白ければいい——陰キャと陽キャの焼肉観

堀元は、水野の焼肉スタイルを「問題ない」と総括する。なぜなら、水野と焼肉に行くと「大体の人が楽しい」からだ。堀元は「一番ガサツなやつが肉を焼くのが場として最適」という逆説的な理論を展開する。繊細な人がマルチタスクで配慮しながら焼くと場を楽しめなくなるが、無神経な人が焼いている方が場の幸福総量が最大化されるというのだ。

この議論は、堀元自身の「陰キャ」としての経験からも補強される。堀元によれば、陰キャにとって焼肉のトングを手に取ることは「もう引き返せない。死ぬしかない」というレベルの重大な決断だという。トングを持ったら最後、肉の焼き加減から分配まで全ての責任を負わされる恐怖があり、一度持って置くなど「最も滑稽な行動」で、そんなことをすれば「恥で生きていけなくなる」と語る。

水野はこの陰キャの心理を「バスケットボールのパスが回ってくる恐怖」に例え、ボールを持たされたくないがゆえに、水野のような「産業用ロボット」が肉を焼き続けてくれることを陰キャはむしろありがたく思っていると分析する。堀元も「いい従属先がいるのが一番嬉しい」と同意し、水野はそのままでいるべきだという結論に至る。

41:14網の肉は置いたヤツが管理すべきか——所有権と責任のモデル

ここで二人の間で、焼肉における「肉の管理責任」に関する根本的な認識の違いが明らかになる。水野のモデルでは、網は参加者によって分割されるリソースであり、自分が肉を置くことには関与するが、その後各参加者の領域で肉が焦げることは自分の関与外だという。つまり「網に肉を置くこと」と「その肉を管理すること」は別の行為だと捉えている。

一方、堀元は「トングを持っている人が肉の面倒を見る」という世界モデルで生きており、水野が肉を置いたら最後、その人が焼き加減から分配まで全ての責任を負うものだと思っていたという。この認識のズレに堀元は驚き、水野のモデルは「網というリソースが空いているから全体最適化する」という産業用ロボット的な発想だと再確認する。

さらに水野は、自分が焼いた肉を「神座や偉い人から順に回し、最後に自分が食べる」スタイルであることを明かす。これに対して堀元は「陰キャにとっては責任を負わなくていいからありがたい」と評価しつつ、水野が「焼けてるっぽいよ」と言って強制的に肉を参加者の皿に移動させる行為については「パターナリズム」「インフォームドコンセントの無視」「人権侵害者」と冗談めかして批判する。

48:35『会話の0.2秒を言語学する』6万部突破と今後の展望

水野の著書『会話の0.2秒を言語学する』が、出版から6ヶ月で6万部を突破したことが報告される。当初の目標は3万部だったため、目標の2倍を達成したことになる。水野はリスナーへの感謝を述べるとともに、次の目標を10万部に設定したことを明かす。

10万部を達成した場合の「ご褒美」として、新潮社が特装版の本を作ってくれる制度があることを紹介。また、印税の寄付についても言及し、すでに言語学を志す学生への寄付が決定していることを報告する。さらに、10万部達成時には寄付の枠を増やし、企業スポンサーも募りたいという構想を語る。

堀元はこの寄付スキームについて、税務上の課題を指摘する。個人から個人への寄付では法人税の損金算入ができず、企業が協力しづらいため、認定NPO法人を通じた仕組み作りが必要だとアドバイスする。水野は「落ちてる認定NPO法人を買ってこれないか」と冗談交じりに言い、堀元も「落ちてる宗教法人」と乗るなど、終始軽妙なトーンで話が進む。

55:04新Podcast「神保町で会いましょう」の挑戦

水野が新たにMCを務めるPodcast「神保町で会いましょう」が紹介される。この番組は「街ブラPodcast」というコンセプトで、ゲストを招いて神保町を散歩しながら、それぞれの視点から街のイメージを「投影(プロジェクション)」してもらうという内容だ。

初回ゲストは、ジャンクションの写真集で知られる大山健さん。大山さんは神保町に対して「千葉をプロジェクションする」というユニークな視点を提供し、東京の高層建築に使われるコンクリートの砂が千葉の山を切り崩して作られているという話を展開したという。

堀元はこの番組を聞いた感想として、水野が「しっとりしている」と評する。ゆる言語学ラジオでの水野とは異なり、親しくない相手にはあまりちょけず、文化人らしい落ち着いた会話をしていることに驚いたという。水野は「ゆる言語学ラジオでは堀元さんに釣られている」と弁明するが、堀元は「外で猫をかぶっている」と反論する。

制作面でも違いがあり、ゆる言語学ラジオが90分収録で80分以上をそのまま使うのに対し、「神保町で会いましょう」は4〜5時間のロケから2時間の番組に編集するという、全く異なるアプローチを取っている。水野はこの経験を通じて、堀元に頼っていた部分が大きかったことを実感し、新たに学んだことがゆる言語学ラジオにも還元される可能性を示唆した。

まとめ

このエピソードは、一見無関係に見える「AIと敬語の未来」と「焼肉の焼き方」という二つの話題が、実は「人間のコミュニケーションにおける効率性と儀礼性のバランス」という共通のテーマで結ばれていることを見事に示している。水野の「消費電力による言語変化」という仮説は、テクノロジーの制約が言語を変える可能性を提示する一方、堀元の「非効率を良しとする人間の心理」の指摘は、そう簡単には変わらない人間性の側面を浮き彫りにした。焼肉の議論では、同じ行動(肉を焼く)でも、それを「全体最適化」と捉えるか「責任の遂行」と捉えるかで、人間の認知モデルの違いが如実に表れることが示された。言語学Podcastでありながら、人間理解の深さにおいて出色の回である。

要点

  • 水野は、生成AIの消費電力問題をきっかけに、敬語や丁寧表現が「エコじゃない」という理由で消える可能性を提起した
  • サム・アルトマンCEOの発言を引用し、AIへの礼儀正しい言葉が数十億円分の電力消費につながっていると指摘
  • 堀元は「非効率を良しとする人間の心理」を挙げ、言語変化はそう簡単には進まないと反論した
  • 水野の焼肉の焼き方は「余白を埋める産業用ロボット」的な行動原理に基づいており、真心ではなく全体最適化が動機であることが自己分析で明らかになった
  • 堀元は「一番ガサツなやつが肉を焼くのが場として最適」という逆説的理論を展開し、繊細な人が焼くと場が楽しくなくなると指摘
  • 水野の著書『会話の0.2秒を言語学する』が出版6ヶ月で6万部を突破し、次の目標は10万部
  • 新Podcast「神保町で会いましょう」は、ゆる言語学ラジオとは全く異なる制作手法とトーンで、水野の新たな一面を引き出している