
味覚は新しいプログラミング言語(w/ Astrocade CEO Amir Sadeghian)| AI Basics
- 概要 AI Basicsシリーズの今回のエピソードでは、Astrocadeの創業者兼CEOであるAmir Sadeghian(アミール・サデギアン)が登場し、自然言語...
- Sadeghianは、AIが単独で素晴らしいゲームを作れるわけではないと明確に述べ、人間の創造性と審美眼が依然として不可欠であると強調した。彼の「taste is t...
- [0:44] Astrocadeの概要とゲーム開発の民主化 Amir Sadeghianは、Astrocadeを「誰でもインタラクティブ体験を創造できるプラットフォー...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
This Week in Startups / Jason Calacanis
- Astrocadeは自然言語でゲームを生成し、TikTok形式のフィードに公開できるプラットフォームで、100カ国以上から10万人以上のクリエイターが参加している。
- 創業者のAmir Sadeghianはスペイン、ジンバブエ、イラン、米国の4大陸で育った異色の経歴を持ち、スタンフォード大学でAIの博士号を取得した。
- 「スイカジュース理論」— 小さなボトルから大きなボトルに変えただけで需要が消え、コップを置いただけで回復した実験から、摩擦の除去が需要創出につながると結論づけた。
- AIは既存ゲームのコピーはできるが、新しい体験の創造には苦戦し、「平均への回帰」を起こすため、人間の反復的なチューニングが不可欠である。
- 「taste is the new programming language(センスこそが新しいプログラミング言語)」というフレーズが、AI時代における人間の役割を象徴している。
- Astrocadeにはクリエイターファンドがあり、フルタイムでゲーム制作に従事し月数千ドルを稼ぐ人々が登場しており、YouTubeがMrBeastを生んだのと同じ市場ダイナミクスが起きている。
- 同社はレコメンデーションシステムとAIエージェントのポストトレーニング分野で積極的に人材を募集している。
- CalacanisはGoogleのGeminiを「24時間働くコンシェルジュ」と絶賛し、フランス旅行でのパン・オ・ショコラ検索体験や画像生成モデル「Nano Banana」の有用性を語った。
概要
AI Basicsシリーズの今回のエピソードでは、Astrocadeの創業者兼CEOであるAmir Sadeghian(アミール・サデギアン)が登場し、自然言語によるゲーム生成プラットフォームの全貌を解説した。Astrocadeは、ユーザーが文章でゲームを記述するだけで、AIがそれを完全なインタラクティブ体験として組み立て、TikTok形式のフィードに公開できるという画期的なサービスである。Jason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)とAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)がホストを務めるこの番組では、ゲーム開発の民主化、AIの限界と可能性、そして「taste(センス)」が新しいプログラミング言語になるという大胆なテーゼが提示された。
Sadeghianは、AIが単独で素晴らしいゲームを作れるわけではないと明確に述べ、人間の創造性と審美眼が依然として不可欠であると強調した。彼の「taste is the new programming language(センスこそが新しいプログラミング言語である)」というフレーズは、エピソード全体の中心テーマとなっている。また、彼の異色の経歴(スペイン、ジンバブエ、イラン、米国の4大陸で育ったこと)や、オフィスでのスイカジュース実験から導き出した「摩擦の理論」など、具体的なエピソードを交えながら、なぜこのプラットフォームが成功しているのかを語った。さらに、クリエイターエコノミーの新たな形として、Astrocadeのクリエイターファンドでフルタイムで生計を立てる人々が登場し始めていることも明らかにされた。
Astrocadeの概要とゲーム開発の民主化
Amir Sadeghianは、Astrocadeを「誰でもインタラクティブ体験を創造できるプラットフォーム」と定義する。ゲームはその大きなカテゴリーの一つだが、教育コンテンツやコンパニオンなど、より広範なインタラクティブコンテンツを対象としている。ユーザーは自然言語でコンテンツを記述するだけで、AIシステムがそれを生成する。そして、作成したコンテンツは公開ボタンを押すだけで、TikTokやYouTubeに似たフィードに公開される仕組みだ。現在、100カ国以上から10万人以上のクリエイターが参加しているという。
Jason Calacanisは、このサービスの革新性を強調する。従来、ビデオゲームを作るには大学教育やインターンシップを経て、5年から7年の訓練が必要だった。それが今では、プロンプトを入力するだけでゲームが作れ、友人と遊ぶために公開できる。Calacanisは、サイト上にモーターサイクルゲーム、対戦格闘ゲーム、アーチェリーゲームなど、あらゆるジャンルのゲームがTikTok形式で並び、スクロールするだけで次々と遊べる体験を「信じられない」と表現した。
Sadeghianは、ゲーム開発の難しさを詳細に説明する。コーディング能力、アセット制作、ゲームフィールの調整、プレイヤーの心理理解など、複数のスキルセットが必要であり、それにはスタジオを構築するか、長年の教育が必要だった。Astrocadeは生成AIを活用してこれらの障壁をすべて取り除いた。同社は2022年に創業されたが、Sadeghian自身は2013年からAIに携わっており、スタンフォード大学で博士号を取得した当時は「AIはクールではなかった」と振り返る。技術がインタラクティブな世界を生成できる段階に達したのを2022年に見極めて会社を設立した。
創業者の異色の経歴と「スイカジュース理論」
Sadeghianの経歴は異例である。彼とCTOである兄弟は、スペインで5年、ジンバブエで5年、イランで10年、そして米国で13年と、4つの大陸で育った。この経験から、文化、人々、食、建築、伝統がすべて異なることを目の当たりにし、それぞれの場所が異なる人々によって異なるマインドセットで築かれてきたことの美しさを学んだという。彼は自身を「ハードコアゲーマー」から「カジュアルゲーマー」、さらには「プレイヤー」へと変化したと語り、ゲームとインタラクティブコンテンツの世界でも同じことが起こるべきだと考えた。
ここで語られた「スイカジュース理論」は、Astrocadeのビジネスモデルを象徴する逸話である。創業初期、オフィスはSadeghianの自宅にあり、冷蔵庫が中央に置かれていた。ある創業エンジニアが「スイカジュースを注文しよう」と提案し、小さなボトルを冷蔵庫の棚いっぱいに詰めたところ、2日で全部消費された。もっと欲しいという声に応えて、経済的に効率の良い500mlの大きなボトルを購入して冷蔵庫に入れたが、2週間経っても誰も手をつけなかった。サイズを大きくしただけで需要が完全に消えたのだ。そこで彼の兄弟が実験を始め、大きなボトルの隣に小さなコップを置いたところ、再び消費が始まった。
この実験からSadeghianが導き出した結論は、「摩擦を取り除けば需要が生まれる」というものだ。小さなボトルは手に取りやすく、飲み切れる量だった。大きなボトルは「後で飲もう」と思わせる摩擦があった。Astrocadeはゲーム制作からこの摩擦を取り除いたことで、誰もがゲームを作り始めたのだ。Calacanisはこの理論に強く共感し、自身も10分以内にゲームを作った経験を語った。ドーナツを食べる宇宙船ゲームを制作中だという。
「tasteが新しいプログラミング言語」— AIの限界と人間の役割
エピソードの核心は、AIがゲーム制作を完全に自動化できるわけではないという認識にある。Sadeghianは、AIは訓練されたゲームをコピーすることはできるが、新しい体験や既存体験の修正になると苦戦すると明確に述べた。例えば「Flappy Birdが欲しい」と言えば、AIは大量のFlappy Birdコードで訓練されているため生成できる。しかし、まったく新しい体験を作り出そうとすると、AIは「平均への回帰(reversion to the mean)」を起こし、平凡な結果しか出せない。
Astrocadeの優れたゲームは、多くの場合、複数回の反復を経て作られている。同社ではプロンプトを「wish(願い)」と呼び、クリエイターは複数回のwishを重ねることでゲームを洗練させていく。Calacanisは、LLMがウェブデザインで「最も一般的なデザイン」に回帰してしまう問題を指摘し、ユニークなものを作るにはより具体的な指示が必要だと述べた。Sadeghianもこれに同意し、AIは提案はできるが、最終的な選択は人間のセンスに委ねられると強調した。
デモでは、クリエイターが作った「Arrow Storm」というゲームが紹介された。プレイヤーは敵を倒しながらアップグレードを重ねていくゲームで、Calacanisは「Nintendo SwitchやiPhoneで遊ぶモダンなカジュアルゲームと変わらない品質」と絶賛した。この品質を実現するには、数値のチューニングが重要だとSadeghianは説明する。例えば、あるパラメータを25%から50%に変更するだけで、ゲームが退屈になってしまう。AIがゲームと同時にエディタも生成するため、ユーザーは自然言語と数値入力の両方で微調整が可能だ。LLMは非決定的(non-deterministic)であり、推測に基づいて動作するため、ゲームの正確な調整には決定的な数値入力が適している場合がある。
パーソナライゼーションと新たなクリエイターエコノミー
Astrocadeの魅力の一つは、パーソナライゼーションの自由度にある。Calacanisは、家族旅行をテーマにしたゲームを作り、娘と遊びたいと語り、自分のブルドッグ3匹をキャラクターにしたゲームが作れるか質問した。Sadeghianは、画像のアップロードやアセット生成が可能で、あらゆるシナリオにパーソナライズできると答えた。実際、ユーザーは友人の画像を入れたインタラクティブな誕生日カードを作成して送るという、開発者が予想していなかった使い方も生まれているという。
Calacanisは、1980年代にプリンターを初めて手にしたときの記憶を呼び起こし、グリーティングカードメーカーが当時最も売れたソフトウェアだったことを懐かしく語った。紙を二つに折って手作りの誕生日カードを作るという体験は革命的で、写真入りのパーソナライズカードを誰もが作っていた。Astrocadeはこの創造性をゲームの世界に持ち込んでいるのだと彼は指摘する。
さらに、Sadeghianは収益化の可能性についても語った。Astrocadeにはクリエイターファンドがあり、再生回数に応じて報酬が支払われる。すでにフルタイムでAstrocadeでゲームを制作し、月に数千ドルを稼ぐ人々が登場しているという。彼はこれを「新しいクリエイターエコノミー」と表現し、YouTubeがMrBeastを生み出したのと同じ市場ダイナミクスが起きていると述べた。Calacanisは、アプリストアへの公開や、99セントでの販売など、プロシューマー(prosumer)向けの展開可能性にも言及した。
採用情報と「遊び」の普遍性
Astrocadeは現在、積極的に人材を募集している。特に重要なのはレコメンデーションシステムの開発だ。数十万ものコンテンツが存在する中で、どのように適切なゲームをユーザーに提示するかは難しい問題である。また、AIエージェントのポストトレーニング(post training)にも注力しており、インタラクティブ体験の生成に特化した世界最高のモデルを目指している。Sadeghianは、多くのAIスタートアップがポストトレーニング人材を求めていると述べ、Astrocadeもその分野で採用を強化している。
SadeghianがAstrocadeを創業した理由は二つある。一つ目は「インパクト」へのこだわりだ。今日のスタートアップ界隈はB2Bが主流であり、消費者向け(consumer)企業を建設する人は少ない。彼は10億人に届くプロダクトを作りたいと考え、人間にとって最も本質的なニーズを探求した。その答えが「遊び(play)」だった。彼には2歳と1ヶ月の子供がおり、遊びが人間の最も普遍的な言語であることを実感しているという。遊びを通じて学び、コミュニケーションし、社交する。Astrocadeは遊びを創造し、実際に遊ぶことを可能にするプロダクトなのだ。
二つ目の理由は、ミッションの楽しさだ。Astrocadeは「世界と楽しさを共有する」ことを使命としており、これは認知機能にも良い影響を与える。Calacanisは、毎年新しいスポーツやゲームを始めることで神経可塑性(neuroplasticity)を高めていると語り、ポーカーのバリエーションであるPLO(Pot-Limit Omaha)を学んだ経験を例に挙げた。ノーリミットホールデムと似ているが、4枚のカードが配られることでゲームの戦略が根本的に変わり、既存のヒューリスティックを再構築する必要がある。チェスの駒の動きを変えた新しいバージョンを作るのも面白いかもしれないと彼は提案した。
Google CloudとGeminiへの賛辞
エピソードの締めくくりとして、CalacanisはGoogleのAI製品への賞賛を惜しみなく語った。彼はフランス旅行中にGeminiを多用した経験を紹介し、「24時間働くコンシェルジュ」のようだと表現した。現在地から徒歩圏内の最高のパン・オ・ショコラを探し、営業時間や地図上の位置まで即座に教えてくれる。Google Local、Google Maps、Geminiが統合されたことで、旅行体験が劇的に向上したという。
また、Googleの画像生成モデル「Nano Banana」についても言及し、月額10ドル程度の追加料金を払ってでも使う価値があると絶賛した。チームでミームを作る際のデフォルトツールになっているという。Google CloudはこのAI Basicsシリーズのパートナーであり、DeepMindモデルとオーケストレーションツールを使った文脈認識型AIワークフローの構築を支援するスタートアップ向け技術ガイドも提供している。
結びに
このエピソードが聴き手に残すものは、「AIがすべてを解決する」という単純な楽観論でも、「AIは人間に取って代わる」という恐怖でもなく、その中間にある複雑な現実だ。Astrocadeの事例は、AIが創造的プロセスの摩擦を劇的に減らす一方で、最終的な品質を決定するのは依然として人間のセンスであることを示している。「taste is the new programming language」というフレーズは、AI時代における人間の役割を鮮やかに言い表したものとして、長く記憶に残るだろう。
また、Sadeghianの「スイカジュース理論」は、プロダクトデザインにおける摩擦の重要性をユーモラスかつ示唆的に伝えている。小さなボトルから大きなボトルへの変更で需要が消え、コップを置くだけで回復したという逸話は、ユーザー体験における些細な障壁の影響力を物語っている。さらに、クリエイターエコノミーの新たな形として、Astrocadeでフルタイムで生計を立てる人々が登場し始めている事実は、AIが仕事を奪うのではなく、新しい仕事を生み出している具体例として重要だ。
このエピソードが重要なのは、AIの実用的な応用事例を提供するだけでなく、テクノロジーと人間の創造性の関係について深い洞察を与えている点にある。AIは道具であり、最終的な価値はそれを使う人間のビジョンとセンスによって決まる。Astrocadeはその原則を体現するプラットフォームとして、今後の展開が注目される。
あわせて読む
同じ番組の別エピソードや、近いテーマの記事から続けて読めます。





