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This Week in Startups · 2026年9月3日

VC専門家が語る、フィジカルAIへの資金調達が熱を帯びる理由 | E2333

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 今週のスタートアップ界隈で最も注目を集めているテーマは、間違いなく「Physical AI(物理AI)」への資金流入である。2026年上半期だけで約500億ドル(約7...
  • 今回のエピソードは、VCラウンドテーブル形式で、776(セブンセブンシックス)の founding partner であるKatelin Holloway(ケイトリン...
  • [9:24] ペンタゴンのAI導入と防衛テックの新時代 ペンタゴンが、軍関係者向けに特別版のChatGPTとGrokを導入したニュースから議論が始まった。8ヶ月に及ぶ...
こんな人向け

英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

This Week in Startups / Jason Calacanis

要点
  1. Physical AI企業へのベンチャー投資は2026年上半期だけで約500億ドルに達し、2022年から2024年までの合計を上回る。450件のディールで450億ドルが投資され、航空宇宙・防衛分野が上位2カテゴリーを占める。
  2. ペンタゴンは軍関係者向けにChatGPT MilとGrok for Governmentを導入したが、AnthropicのClaudeは兵器開発への利用制限をめぐる確執から完全に除外された。
  3. Katelin Hollowayは「かつてのボトルネックは契約を勝ち取ることだったが、今は契約を生き延びることだ」と述べ、政府契約後の資本管理と契約更新の不確実性が新たな課題だと指摘した。
  4. Starcloudは25億ドルを調達し、評価額23億ドルに到達。Katelinは投資時の約15倍の評価額となり、ファンドリターナーになりつつあると語った。
  5. EUがChatGPTを「超大型オンライン検索エンジン」に指定。違反した場合、世界売上高の最大6%の罰金が科される可能性があるが、Katelinはシード段階の企業には影響がほとんどないと冷静に分析した。
  6. Katelinは「100ドル持っているなら、サンフランシスコの40番目のAIエージェントのラッパー企業よりも、チューリッヒの優秀なクオンツチームに投資したい」と述べ、欧州の過小評価を指摘した。
  7. Anthropicはエンタープライズ顧客からの反発を受け、データ保持ポリシーを変更。データ保持期間を30日間に短縮し、顧客のクラウド環境での保存を可能にした。Katelinは「これは調達の問題ではなく、ファウンダーとの約束を守れるかどうかの問題だ」と述べた。
  8. Jasonは10年前にZiplineへの投資を見送った後悔を語り、「ハードウェアは難しい」という常識が覆され、ハードウェアこそが最も強力なmoatになったと指摘した。
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他のエピソード

今週のスタートアップ界隈で最も注目を集めているテーマは、間違いなく「Physical AI(物理AI)」への資金流入である。2026年上半期だけで約500億ドル(約7.5兆円)ものベンチャー資金がこの分野に集まり、その額は2022年から2024年までの3年間の合計を上回る。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが「あらゆる産業企業はロボット企業になる」と予言した通り、ハードウェアとソフトウェアの融合領域に、かつてない規模の資本と才能が集中している。このムーブメントの中心には、宇宙データセンターを手がけるStarcloudの急成長や、軍事・防衛分野へのAI導入の加速がある。

今回のエピソードは、VCラウンドテーブル形式で、776(セブンセブンシックス)の founding partner であるKatelin Holloway(ケイトリン・ホロウェイ)と、Behind Genius Ventures の founding partner であるPaige Doherty(ペイジ・ドハーティ)をゲストに迎え、Physical AI への投資熱、ペンタゴン(米国防総省)によるAI導入、EUのAI規制、そしてフロンティアAI企業と顧客企業の間で勃発しつつある「データ主権」をめぐる攻防まで、多岐にわたるテーマが議論された。ホストのJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)とAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)は、投資家視点から鋭い質問を投げかけ、時に強い意見の対立も見せながら、スタートアップ業界の現在地と未来を浮き彫りにした。

9:24ペンタゴンのAI導入と防衛テックの新時代

ペンタゴンが、軍関係者向けに特別版のChatGPTとGrokを導入したニュースから議論が始まった。8ヶ月に及ぶロールアウトを経て、事務処理や兵站(ロジスティクス)、政策業務を担当する「ChatGPT Mil」と、サプライチェーン分析などを担う「Grok for Government」が、約300万人の軍関係者が利用するポータルに追加された。すでにGeminiが導入されていたこのポータルに、なぜ2つの新たなAIが加わったのか。特筆すべきは、AnthropicのClaudeがこのプラットフォームから完全に除外されている点だ。Jasonは、Anthropicと国防総省の間には、兵器開発へのAI利用を制限するAnthropic側のポリシーをめぐる確執があったことを指摘した。

このニュースを受けて、Paigeは自身が大学時代にノースロップ・グラマンで3年間働いていた経験を踏まえ、「民間の優れたテクノロジーを国防分野に展開する際には、特有の制約を考慮する必要がある」と述べた。一方、Katelinは、かつて政府向けセールスは「10フィートの棒でも触るな」と言われていた時代から状況が一変したと指摘する。「かつてのボトルネックは契約を勝ち取ることだったが、今は契約を生き延びることだ」。30人規模のスタートアップが、100人規模のベンダーに慣れている政府機関との契約を履行するのは容易ではない。契約は勝ち取ったものの、その後の資本の流れや契約更新の不確実性に、多くのファウンダーが戸惑っているというのが彼女の分析だ。

議論はやがて、AIを搭載した自律型兵器の倫理問題に及んだ。Katelinはパリで開催されたロボティクス会議で、ボストン・ダイナミクスの暫定CEOと交わした会話を紹介した。彼女は「中国製ロボットは決して米国に入れるべきではない」と主張したが、自社が兵器を開発しているかと問われると否定した。この矛盾をKatelinが指摘すると、相手は「中国はロボットに銃を搭載しているが、我々は違う」と答えたという。Jasonは、中国が四足歩行ロボットに銃を搭載している事実を挙げ、「米国も自律型兵士の研究をしていないはずがない」と述べ、Katelinも「次の戦争では、100体のロボットが浜辺に上陸してエリアを確保するような光景になるだろう」と予測した。ただし、彼女は「SF映画の99.9%は人類にとって良い結末を迎えていない」と付け加え、技術の進歩と倫理のバランスについて警鐘を鳴らした。

22:03EUのChatGPT「検索エンジン」指定と欧州市場の真実

EUがChatGPTをデジタルサービス法(DSA)に基づく「超大型オンライン検索エンジン(VLOSE)」に正式指定したニュースは、AI規制の新たな段階を示すものだ。この指定により、OpenAIは年間監査の合格、リスク評価の公表、規制当局へのデータアクセス提供が義務付けられ、違反した場合は世界売上高の最大6%の罰金が科される可能性がある。Jasonは「これは単なるスピード違反の罰金ではない。数十億ドル規模になる可能性がある」と指摘した。

しかし、Katelinはこの規制に対して冷静な見方を示した。「シード段階の企業にはほとんど影響がない。15人規模の会社が指定を受けることはないからだ」。彼女はむしろ、この規制が数年後にエンタープライズ向けセールスのコンプライアンス質問票という形で自社のポートフォリオ企業に影響を与えるだろうと予測する。そして、彼女はここで「EUに対する逆張りの見解」を披露した。米国のVCが欧州を嫌う風潮を「トスカーナや南フランスの別荘から言っている」と皮肉りつつ、スイスのチューリッヒが世界最高水準の物理学・量子コンピューティング研究を生み出しているにもかかわらず、規制への恐怖から過小評価されていると主張する。「100ドル持っているなら、サンフランシスコの40番目のAIエージェントのラッパー企業よりも、チューリッヒの優秀なクオンツチームに投資したい」。

Paigeは、欧州のスタートアップを実際に支援している事例として、Entrepreneur Firstがサンフランシスコに大規模なハブを開設し、欧州から優秀な人材を米国に呼び込んでいることを挙げた。また、同氏のポートフォリオ企業であるIntermezzoは、EUの厳しい規制環境を逆手に取り、「eat the frog(最も難しいことを最初にやる)」戦略でAIエンジンを構築し、規制の緩い市場に展開する際の競争優位性を築いているという。ただし、Jasonは規制対応に10人の弁護士と200万ドルを費やす必要があるなら、1,000万ドルしか調達していないスタートアップにとっては20%の資本が消えることになると指摘し、規制のコストが小規模企業に与える負担を懸念した。

31:07Starcloudの急成長と「宇宙データセンター」への賭け

Katelinが「私のベイビー」と語るStarcloudが、25億ドル(約3,750億円)を調達し、評価額23億ドル(約3,450億円)に達したニュースは、宇宙データセンターという前代未聞のビジョンが現実味を帯びてきたことを示している。同社はGPUを衛星に搭載し、太陽光発電で稼働させ、データを地上に送信するという構想だ。昨年には初のH100チップを軌道上に打ち上げ、NVIDIAはStarcloudの飛行データを基に、宇宙専用に設計された初のチップを開発中である。評価額はわずか5ヶ月で2倍以上に跳ね上がった。

Katelinは、この投資に至った経緯をユーモアを交えて語った。ファウンダーのPhilipと偶然ディナーの席で隣り合わせになり、二人とも「場違いなほどフォーマルな服装で、社会的に不器用」だったことから意気投合したという。デザートが運ばれてくる頃になってようやく「で、あなたは何をしている人なの?」と尋ねると、「軌道上のデータセンター」という答えが返ってきた。彼女が「私は宇宙テック投資家よ」と答えると、Philipは「もっとちゃんとしたピッチを用意すべきだった」と悔しがったという。この投資は彼女にとって「最初の強い非コンセンサスな賭け」であり、社内でも承認を得るために苦労した。彼女は宇宙空間での熱放散の問題を理解するために、急遽「熱エンジニア」になる必要があったと冗談めかして語った。

投資当時、業界には「軌道上データセンターは史上最も愚かなアイデア」と批判する声もあった。しかし、投資から6ヶ月以内に、Elon Musk、Jeff Bezos、Sam Altmanといった業界の巨人たちが同様の構想を支持し始めたという。「自分が完全に狂っていたわけではないと確認できるまで、通常はもっと時間がかかるものだ」。現在、同社の評価額は投資時の約15倍に達しており、ファンドのリターンを左右する「ファンドリターナー」になりつつある。Jasonが「いつポジションを売却するのか」と質問すると、Katelinは「我々はまだ6年目のファンドで、ケースバイケースで判断している」と答えた。IPOが12年、14年、20年先に延びる中で、セカンダリー市場での売却が重要な出口戦略になりつつあるという現実も浮き彫りになった。

57:49Physical AIへの資金集中と「ハードウェアは難しい」という呪縛の終焉

Physical AI企業へのベンチャー投資が2026年上半期だけで約500億ドルに達し、前年比80%増となった。この6ヶ月間の投資額は、2022年、2023年、2024年の合計を上回る。特に航空宇宙・防衛分野が上位2カテゴリーを占めており、450件のディールで450億ドルが投資された。2023年には50億ドルにも満たなかったことを考えると、その急成長ぶりは驚異的だ。

Jasonは、この分野への投資における最大の課題は「希薄化」だと指摘する。これらの企業は巨額の資金を調達するため、シード段階の投資家の所有権は大幅に希薄化される可能性がある。Paigeは、この問題に対する自身のアプローチとして「垂直特化型のPhysical AIアプリケーション」への投資を挙げた。「汎用ロボティクスよりも、特定の産業に特化した応用の方が、より早く収益化でき、希薄化も少ない」。彼女は2024年初頭に「マルチモーダルAI」に関する論文を執筆し、このテーゼに基づいて工場の品質管理・安全性を担うエッジAI企業Minivaに50万ドルを投資した。これは彼女にとって最大の投資額であり、同社は1年以内にUSVPからシリーズAを調達した。

Jasonは、10年前にZiplineへの投資を見送った後悔を語った。「血液をアフリカに届ける固定翼ドローンというアイデアに魅了されたが、『ハードウェアは難しい』という常識に従って投資しなかった」。しかし現在、その常識は完全に覆されている。「誰でも週末にアプリをvibe codeで作れる時代、ハードウェアこそが最も強力なmoat(参入障壁)だ」。Katelinは、この資金流入がバブルなのか、それとも起業家がより困難な問題に挑戦している証拠なのかという問いに対して、人材の流れという観点から分析した。「10年前、最も優秀なエンジニアは広告業界で働きたがっていた。今日、そのエンジニアはワシントン州モーゼスレイクでロケットエンジンを開発したいと考えている」。意味のある仕事と収入を両立できる時代が到来したというのが彼女の見解だ。

1:09:39Anthropicのデータ保持ポリシー撤回と「AI主権」の攻防

Anthropicが、エンタープライズ顧客からの強い反発を受けて、データ保持ポリシーを変更せざるを得なくなったニュースは、AI業界の力関係に変化が生じていることを示している。従来のポリシーでは、顧客のデータがAnthropicのサーバー上に保持されるため、顧客企業は自社のデータがモデルの学習に利用され、やがては自社と競合する製品をAnthropicが開発するのではないかという恐怖を抱いていた。Cursorに対するClaude Codeのリリースや、Figmaに対するClaude Designの可能性など、フロンティアAI企業が顧客のデータと知見を利用して競合製品を生み出すという懸念は、スタートアップ界隈で広く共有されている。

Jasonは、この状況をソーシャルメディア時代のAPI戦略と比較した。Fred Wilson(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)がかつて書いた「Be Your Own Bitch(自分自身の主人であれ)」というブログ記事を引用し、TwitterやFacebookがAPIを公開し、その利用状況を分析して自社製品に取り込んだ歴史を振り返った。「しかし今回は、ソーシャルグラフや機能競争ではなく、実際の知性と企業秘密がかかっている。賭け金がはるかに高い」。

Anthropicの新ポリシーでは、データ保持期間を30日間に短縮し、データを顧客のクラウド環境に保存することを可能にする。Katelinは、この変更の重要性を「データが自社のサーバーに30日間保持されるかどうかは、調達の問題ではない。ファウンダーとの約束と誠実さを守れるかどうかの問題だ」と表現した。彼女は自身のノートパソコンに、未発表企業のキャップテーブルや取締役会議事録など、機密情報が多数保存されていることを挙げ、「これらの情報を誰かにスナイパーショットで狙われるような場所にアップロードすることはできない」と述べた。Paigeは、エンタープライズ顧客がフロンティアAI企業のポリシーを変更させるほどのレバレッジを持つに至ったこと自体が、「18ヶ月前には考えられなかった」重要なシグナルだと指摘した。

この流れを受けて、業界では「オンプレミス回帰」の動きが加速している。法律業界向けの垂直LLMを提供するLagoraや、オンプレミスLLMを手がける企業が注目を集めており、Jasonは「11 LabsやLovableのような企業が、フロンティア企業に数千万ドルから数億ドルを支払い、そのトークンを自社サービスに利用することの危険性を認識し始めている」と述べた。「彼らが利益を上げるプレッシャーにさらされたとき、『競合製品を作らない』という約束は窓の外に消え去るだろう」。

結びに

今回のエピソードは、AI投資の最前線で起きている地殻変動を、投資家の生の声を通じて伝える貴重な機会となった。Physical AIへの資金集中は、単なるバブルではなく、ハードウェアとソフトウェアの融合がもたらす新たな産業革命の始まりを示している。宇宙データセンターという一見荒唐無稽なアイデアが、わずか数年で主要プレイヤーの支持を得るまでに成長した事実は、非コンセンサスな賭けの重要性を物語っている。一方で、フロンティアAI企業と顧客企業の間で勃発しつつあるデータ主権をめぐる攻防は、AI業界の力関係がエンタープライズ顧客側にシフトしつつあることを示唆している。Katelinが語った「10年前の優秀なエンジニアは広告を選び、今日のエンジニアはロケットエンジンを選ぶ」という言葉は、テクノロジー業界の価値観の変化を象徴している。そして、この変化こそが、Physical AIへの資金流入の背後にある本質的な原動力なのかもしれない。

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