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This Week in Startups · 2026年8月20日

ニューロシンボリックAIがチャットボットと商品検索を上回る | E2327

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • LLM(大規模言語モデル)は博士課程レベルの試験に合格できる一方で、自分の好みや美的感覚に合った商品を見つけるという日常的な課題には驚くほど不器用だ。このエピソードで...
  • 番組前半では、Ontonのデモンストレーションを通じて、ニューロシンボリックモデルの実力が示された。ホストのJason Calacanis氏が実際に泊まったホテルの画...
  • [0:00] ニューロシンボリック検索:LLMの限界を超えるOntonの挑戦 Zach Hudson氏がCEOを務めるOntonは、Eコマース向けの検索・発見エンジン...
こんな人向け

英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

This Week in Startups / Jason Calacanis

要点
  1. Ontonのニューロシンボリックモデル「Ontology 1」は、従来のLLMと異なり「黒箱」ではなく、検索結果の理由を明確に説明できる。これにより、Eコマースのような信頼性が求められる領域で競争優位性を発揮する。
  2. Ontonのモデルはリアルタイムで学習し、再トレーニングが不要。トレーニングコストはフロンティアモデルの1,000分の1以下で、検索性能は大手検索エンジンの2.5倍を達成している。
  3. Ontonは「感性検索」や「雰囲気検索」を可能にし、ユーザーの好みや美的感覚を学習してパーソナライズされた提案を行う。これは「平均値に回帰」するLLMでは不可能なことだ。
  4. Spaciumは軌道上での燃料補給ステーションを開発中。Yコンビネーター在籍中に「ゼロ沸騰技術」を開発し、極低温燃料の長期保存を可能にした。
  5. Spaciumは2024年12月のミッションで「史上最も正確なロボットアクチュエータ」の実証に成功。0.5ミリメートルの精度で宇宙船へのドッキングを可能にする。
  6. Spaciumは約1,300万ドルを調達し、1億ドル近い商業契約と20億ドル以上のLOIを獲得。既存のロケットで対応可能な2〜5トンの燃料輸送からビジネスを開始する。
  7. 燃料補給が可能になれば、宇宙船の設計思想が変わり、3〜5年以内に燃料補給を前提とした設計が当たり前になるとDissanayake氏は予測する。
  8. SpaceXのIPO成功は宇宙産業全体への関心を高め、投資家や一般の人々の注目を集める起爆剤となった。
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他のエピソード

LLM(大規模言語モデル)は博士課程レベルの試験に合格できる一方で、自分の好みや美的感覚に合った商品を見つけるという日常的な課題には驚くほど不器用だ。このエピソードでは、検索・発見エンジン「Onton」を手がけるZach Hudson氏が登場し、従来のLLMが「黒箱(ブラックボックス)」であることが根本的な問題だと指摘する。彼の解決策は「ニューロシンボリックAIモデル」という、直感的な学習と論理的な推論を組み合わせた独自アプローチだ。このモデルはユーザーの好みや美的感覚をリアルタイムで学習し、単なるキーワード検索を超えた「感性検索」や「雰囲気検索」を可能にする。さらに後半では、宇宙スタートアップSpaciumのCEO、Ashi Dissanayake氏が登場し、宇宙開発の真のボトルネックはロケット打ち上げではなく「軌道上での燃料補給」にあると熱く語る。SpaceXのIPO成功を背景に、宇宙産業への関心が高まる中、彼女たちが開発する「ゼロ沸騰技術」と精密ドッキング技術が、宇宙探査の新時代を切り開こうとしている。

番組前半では、Ontonのデモンストレーションを通じて、ニューロシンボリックモデルの実力が示された。ホストのJason Calacanis氏が実際に泊まったホテルの画像や、映画『ブレードランナー』や『ツイン・ピークス』の世界観をムードボードにまとめると、モデルはそこから「有機的なバール材」「真鍮」「フローラル」といった美的要素を抽出し、それに合致する家具やインテリアを瞬時に提案する。このモデルは学習のたびに精度が向上し、従来の大手検索エンジンと比較して2.5倍の性能を誇るという。一方、後半のSpaciumの話題では、宇宙船が現在「搭載燃料の量」によってミッションの範囲や積載量が制限されているという根本的な問題が浮き彫りにされた。Dissanayake氏は、軌道上に「ガソリンスタンド」を建設することで、宇宙船の設計思想そのものが変わり、月や火星への探査が飛躍的に進むと主張する。彼女たちの会社は既に約1,300万ドルを調達し、1億ドル近い商業契約と20億ドル以上の意向書(LOI)を獲得しているというから驚きだ。

0:00ニューロシンボリック検索:LLMの限界を超えるOntonの挑戦

Zach Hudson氏がCEOを務めるOntonは、Eコマース向けの検索・発見エンジンだ。同社が開発した「Ontology 1」というニューロシンボリックAIモデルは、従来のLLMとは一線を画す。Hudson氏は、LLMが「平均値に回帰する」傾向があり、最も確率の高い答えを返すだけで、個人の好みや美的感覚には対応できないと指摘する。LLMはコーディングや数学といった「検証可能な領域」では優れているが、幻覚(ハルシネーション)を排除し、信頼性が求められる領域では、モデル内部を覗き見ることができるニューロシンボリックモデルが真価を発揮するという。

デモンストレーションでは、Jason Calacanis氏が実際に泊まったホテル(シンガポールのアーティザンなど)や、映画『ブレードランナー』に登場するエニス邸の画像をムードボードに貼り付け、検索を実行した。するとモデルは、それらの画像から「有機的なバール材」「真鍮」「フローラル」といった美的要素を瞬時に抽出し、それに合致する家具やインテリアを提案した。さらに、AIが生成した「チャマットのオーバーサイズの白い分厚いニット」という画像を検索バーにドラッグ&ドロップすると、その「雰囲気」に合うソファを提案するという離れ業も披露した。Hudson氏は「これは単なるキーワード検索ではなく、感性検索、雰囲気検索だ」と強調する。

このモデルの最大の特徴は、リアルタイムで学習する点にある。従来のLLMのように再トレーニングを行う必要がなく、検索のたびにモデル自体が賢くなっていく。Hudson氏によれば、このモデルのトレーニングコストは、米国における平均的なフロンティアモデルのトレーニングランと比較して1,000分の1以下だという。さらに、モデルは「黒箱」ではなく、なぜその結果が返ってきたのかを明確に説明できるため、ユーザーの信頼を得やすい。この透明性こそが、Eコマースのような正確性が求められる領域での競争優位性となっている。

6:31OntonのビジネスモデルとAI企業の構造変化

Ontonの現在の顧客層は、デザイナーやインテリアにこだわる消費者が中心だ。しかし、Hudson氏は将来的にはアパレルやエレクトロニクスなど、他のカテゴリーへの拡大を計画している。興味深いのは、モデルが一つのカテゴリー(例えばホームデコレーション)で学んだ知識が、別のカテゴリー(アパレル)の理解を促進するという点だ。ポリエステルという素材の特性を家具で学べば、それがそのまま衣料品の検索にも応用できる。これにより、従来のEコマースのようにカテゴリーごとに商品を再ラベル付けする必要がなくなる。

ビジネスモデルとしては、現在はアフィリエイト手数料で収益を得ているが、最大の成長機会はAPIの提供にあるとHudson氏は語る。Sam Altman氏がPaul Graham氏の言葉として引用した「どんな場合でもAPIを作るべきだ。良いことが起こるから」という格言を引き合いに出し、GPT-3のAPIが引き起こした「カンブリア爆発」のようなエコシステムの創出を目指している。ホストのAlex Wilhelm氏は、このAPI戦略について「消費ベースの課金モデルで、誰でもこのAPIを自社製品に組み込める」と理解を示した。

さらにHudson氏は、AI時代における企業構造の変化についても言及した。従来は「製品ありき」で、それを支える技術があったが、現在は「モデルありき」で、そのモデルが得意とするタスクを反映した製品が生まれるという。OpenAIを例に挙げると、会話に優れたモデルからChatGPTが生まれ、コーディング能力の向上とともにCodexが登場した。同様に、OntonはEコマースに特化したニューロシンボリックモデルを持ち、そのモデルの能力を最大限に活かす製品を展開している。この構造変化は、今後のAI企業の在り方を考える上で重要な視点だ。

13:19エニス邸と「感性」の価値:AIが解き明かす建築とデザインの世界

このエピソードでは、フランク・ロイド・ライト設計のエニス邸が話題に上り、ホストたちの熱いトークが繰り広げられた。Jason Calacanis氏は、かつてこの邸宅を約400万ドルで購入しようとした経験を明かし、その魅力と維持の難しさを語った。エニス邸は『ブレードランナー』や1959年のホラー映画『血の館』に登場したことで有名だが、その映画の影響で1960年代には荒廃し、誰も住もうとしなかったという逸話も紹介された。最終的に、ビリオネアのRon Burkle氏が約1,500万ドルをかけて改修したという。

この話題は、単なる建築談義に留まらない。Ontonの検索エンジンが、こうした「感性」や「美学」を理解できることの重要性を示している。Calacanis氏は、Apple TV+のドラマ『ザ・スタジオ』で、Seth Rogen氏の会社の本社がエニス邸のマヤ様式のデザインを模していることに気づき、その深い影響力に感嘆した。このように、特定の建築様式やデザインの「雰囲気」を理解し、それに合致する商品を提案できることは、従来のキーワード検索では不可能だったことだ。

Hudson氏は、こうした「感性」の重要性について、Eコマースの購買行動を「欲求(wants)」と「必要性(needs)」に分類して説明した。歯磨き粉や制汗剤といった必要性の高い商品は価格競争に晒されるが、50ドル以上の商品は「趣味」「自己表現」「感情」といった要素に強く影響される。LLMはこうした領域で「平均値に回帰」してしまい、個人の好みに合わない提案をしてしまう。Ontonのニューロシンボリックモデルは、ユーザーごとに個別の理解を構築し、検索のたびにその人の好みを学習していくため、真にパーソナライズされた提案が可能になる。

22:32UGCデータの堀と「デッドインターネット理論」の脅威

Ontonの戦略の核心は、ユーザー生成コンテンツ(UGC)をデータの堀(moat)として活用することにある。Hudson氏は、LLMを活用するAI企業が、自らのトレーニングデータを「共食い」していると警鐘を鳴らす。ブロガーやレビューサイトが、AIにコンテンツを吸い取られるだけで報酬が得られないため、次々と消滅している現状を指摘し、「製品にUGCを組み込まなければ、トレーニングやレコメンデーションのためのデータがなくなってしまう」と語る。Ontonは、ユーザーが作成したムードボード(キャンバス)を公開可能にすることで、共有と発見のバイラルループを生み出そうとしている。

この議論は、いわゆる「デッドインターネット理論」へと発展した。この理論は、いつかボットが支配し、人間が作成したコンテンツが消滅するという考え方だ。Alex Wilhelm氏は、コメント欄や返信スレッドで、かつては人間同士の活発な議論があったが、今ではボット同士が会話していることがほとんどだと指摘する。Jason Calacanis氏は、自身のツイートへの返信を月額1ドルに制限していることを明かし、150万人のフォロワーのうち約2,200人(約0.15%)だけが課金していると語った。この対策により、ボットの侵入を防ぎつつ、収益を慈善団体に寄付しているという。

Hudson氏は、この問題がEコマース検索に与える影響についても言及した。Eコマースのデータは長年にわたってゲーム化されており、LLMをその上に載せると頻繁に幻覚を起こし、無関係な商品を提案してしまう。Ontonがニューロシンボリックモデルを開発したのは、まさにこの問題を解決するためだ。彼は、Redditのようなソーシャル企業がボット攻撃に常時直面している状況を「気の毒に思う」と述べ、AIエージェントによる攻撃がOnton自身にも及んでいることを明かした。人間が作成したコンテンツとAIが生成したコンテンツの区別がつかなくなる未来は、検索エンジンの信頼性に深刻な影響を与えるだろう。

28:13Spaciumの挑戦:軌道上燃料補給が宇宙開発の常識を変える

後半のセグメントでは、宇宙スタートアップSpaciumのCEO兼共同創業者であるAshi Dissanayake氏が登場した。彼女は、宇宙産業の成長が著しい一方で、すべての宇宙船が「搭載できる燃料の量」によって制限されているという根本的な問題を指摘する。現在、宇宙船はミッションに必要な分だけの燃料を積んで打ち上げられるため、ペイロード(積載物)の重量や航行範囲が犠牲になっている。もし軌道上で燃料補給ができれば、宇宙船はより遠くへ、より多くの荷物を運ぶことができ、ミッションの柔軟性も飛躍的に向上する。

Spaciumは、この問題を解決するために「軌道上ガソリンスタンド」の建設を目指している。同社は、常温で保存可能な「ストラブル燃料」(キセノン、クリプトン、ヒドラジン)と、極低温で保存が必要な「極低温燃料」(液体酸素など)の両方に対応する。特に、極低温燃料は保存が難しく、温度が上がると沸騰して蒸発してしまうため、これまで軌道上での長期保存は不可能とされてきた。Dissanayake氏は、Yコンビネーター(YC)の2024年夏プログラム在籍中に、この「ゼロ沸騰技術」を開発したと明かす。この技術により、燃料を宇宙空間で長期間、無駄なく保存することが可能になる。

同社は既に、2024年12月に打ち上げたミッションで「史上最も正確なロボットアクチュエータ」の実証に成功している。このアクチュエータは、将来のドッキング機構に使用され、0.5ミリメートルという極めて高い精度で宇宙船に接続できる。Dissanayake氏は、宇宙船は「赤ちゃんのように」繊細に扱わなければならず、一度の失敗が連鎖的な事故を引き起こす可能性があるため、この精度が不可欠だと説明する。同社は現在7人体制で、次のミッションでは軌道上でのキセノン燃料移送を実証する予定だ。既に約1,300万ドルを調達し、1億ドル近い商業契約と20億ドル以上のLOI(意向書)を獲得しているというから、その需要の高さが伺える。

34:11宇宙ビジネスの未来:燃料補給がもたらす設計革命と投資環境

Dissanayake氏は、燃料補給技術が宇宙船の設計思想そのものを変えると予測する。現在は、打ち上げ時に全燃料を搭載するため、宇宙船の設計は重量制約に大きく影響される。しかし、軌道上で燃料補給が可能になれば、この制約から解放され、より大型で高性能な宇宙船や、より長期間のミッションが実現できる。彼女は「3年から5年以内に、燃料補給を前提とした宇宙船の設計が当たり前になる」と予測し、すでに一部の企業は将来の燃料補給を見据えてミッションを設計し始めていると語る。

ホストのAlex Wilhelm氏は、打ち上げコストの低下がSpaciumのビジネスに与える影響について質問した。Dissanayake氏は、現時点では顧客の需要が2トンから5トン程度であり、既存のロケットで対応可能なため、StarshipやNew Glennのような大型ロケットの登場を待たずともビジネスは成立すると説明する。ただし、将来的に10トンから30トンの燃料を輸送する必要が出てきた場合には、より大型の打ち上げ機に依存することになるだろう。つまり、打ち上げコストの低下は「追い風」ではあるが、ビジネス成立の「必須条件」ではないという立場だ。

さらに、SpaceXのIPO成功が宇宙産業全体に与える影響についても議論が及んだ。Dissanayake氏は、IPOを機に多くの投資家や一般の人々が宇宙産業に注目し始めたと実感していると語る。彼女自身も、IPO後に複数の投資家から連絡を受けたという。宇宙産業は「地球上の生活に利益をもたらす」という点を強調し、この認識が広まれば、さらなる投資とイノベーションが促進されると期待を示した。また、同社がサンフランシスコを拠点に選んだ理由について、Dissanayake氏は「SFの狂ったエネルギー」を挙げ、朝5時から夜8時まで働くことを厭わない「オタク」な人材が集まる環境が、宇宙開発のような困難な挑戦には最適だと語った。

結びに

このエピソードは、AIと宇宙という一見無関係に見える二つの分野が、実は「人間の欲求を満たす」という共通の課題に挑んでいることを浮き彫りにした。Ontonのニューロシンボリックモデルは、LLMが苦手とする「感性」や「美的感覚」という領域で、透明性と効率性を兼ね備えた新たなアプローチを示している。一方、Spaciumの軌道上燃料補給は、宇宙開発の物理的な制約を打ち破り、人類の活動領域を広げる可能性を秘めている。どちらの企業も、既存の巨人(検索エンジンやロケット企業)が見過ごしてきた「ニッチ」な問題に着目し、独自の技術で突破口を開こうとしている点で共通している。

特に印象的だったのは、両者の「スピード感」へのこだわりだ。Ontonはリアルタイム学習により再トレーニングの必要性を排除し、Spaciumは社内テストを98%実施することで驚異的な速さで開発を進めている。AIと宇宙という最先端分野においても、結局は「いかに速く、いかに効率的に」が競争の鍵を握るという現実が示された。また、両社とも「データ」と「標準化」の重要性を強調していた。OntonはUGCをデータの堀とし、Spaciumは燃料補給インターフェースの標準化を模索している。技術革新と同時に、エコシステム全体をデザインする視点が、次世代の勝者を決めるのかもしれない。

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