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This Week in Startups · 2026年8月4日

ベスプークがAIを偽装し、実際に機能するまで(w/ 常川明美)| E2320

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 日本を訪れる外国人観光客は年間6,000万人に達し、街の至る所で観光客を見かけるのが当たり前の時代となった。しかし、この観光ブームの背後には、言語の壁や文化の違いによ...
  • Tsunagawaの起業家としての歩みは、決して順風満帆だったわけではない。2015年にチャットボット事業を始めた当初、投資家たちは「人々がAIとコミュニケーションを...
  • [3:08] 投資家の懐疑を乗り越えた「偽装」戦略と成田空港の獲得 Tsunagawaが2015年に多言語チャットボット「Bebot」を立ち上げた当時、投資家たちはそ...
こんな人向け

英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

This Week in Startups / Jason Calacanis

要点
  1. Akemi Tsunagawaは、多言語チャットボット「Bebot」で2015年に起業したが、投資家は「人々がAIとコミュニケーションを取る未来」を信じず、資金調達に苦労した。彼女は自らがボットのふりをして顧客と対話する「偽装」戦略で市場を検証し、2017年に成田空港を顧客として獲得した。
  2. 日本の外国人観光客は年間6,000万人に達し、円安が最大の集客要因となっている。一方で、オーバーツーリズムによる文化摩擦や、一部の飲食店・旅館が外国人客の受け入れを拒否するなどの問題も生じている。
  3. 日本の人口は毎年70万〜80万人(山梨県の人口に相当)減少しており、近い将来年間100万人に達する見込み。Tsunagawaは、子育てが「贅沢品」化していることが少子化の根本原因だと指摘し、自身もシングルマザーとして保育システムの不足を痛感している。
  4. 2019年の規制変更により、指定産業での外国人労働者の就労が認められたが、当初は5年間の滞在に限定。Tsunagawaの2つ目の事業「BeTrained」は、スマートグラスで熟練作業を録画し、多言語の訓練ビデオとクイズを自動生成するシステムで、外国人労働者の職業訓練を支援している。
  5. 3つ目の事業は造船所向けの点検ロボット。足場の点検は法律で義務付けられているが、ほぼ100%の企業が省略しており、事故の原因となっている。ロボットは足場を登り、ジョイントの安全性を記録する。塗装厚検査(1隻あたり1,000時間以上)など、他の点検作業の自動化も計画中。
  6. Tsunagawaは、政府契約を担保に銀行融資を受けるという日本の制度を活用し、株式を希釈化させずに事業を成長させてきた。短期融資は契約の支払いまで、長期融資は最長10年、金利は約1%という好条件だ。
  7. 今後の戦略として、小さな造船所を買収し、自社のロボットを導入して効率性を実証する「モデル工場」構想を描く。日本には利益を上げているが後継者不在で廃業する企業が多く、売上高の1倍以下で買収できる可能性がある。
  8. 同社は65人の従業員の半数以上が外国人で、エンジニアリング部門では全員がClaudeなどのAIを日常的に使用。退職した社員のSlackやメール履歴から「ゴースト」を作り出し、過去の意思決定を尋ねるというアイデアも検討されている。
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他のエピソード

日本を訪れる外国人観光客は年間6,000万人に達し、街の至る所で観光客を見かけるのが当たり前の時代となった。しかし、この観光ブームの背後には、言語の壁や文化の違いによる摩擦、そして深刻な労働力不足という、日本社会が抱える構造的な課題が横たわっている。今回のエピソードでは、ホストのJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)とAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)が、Bespokeの創業者兼CEOであるAkemi Tsunagawa(アケミ・ツナガワ)を迎え、彼女がどのようにしてこれらの課題をビジネスチャンスに変えてきたのかを深く掘り下げた。Tsunagawaは、多言語チャットボット「Bebot」で成功を収めた後、外国人労働者の訓練を行う「BeTrained」、そして造船所向けの点検ロボットという、一見異なる3つの事業を展開している。彼女の一貫したテーマは「労働力不足の解決」であり、その根底には「まず労働力のギャップを解決し、その後でテクノロジーを構築する」という明確な哲学がある。

Tsunagawaの起業家としての歩みは、決して順風満帆だったわけではない。2015年にチャットボット事業を始めた当初、投資家たちは「人々がAIとコミュニケーションを取る未来」を信じず、彼女のアイデアを嘲笑した。しかし、彼女は「フェイク・イット・ティル・ユー・メイク・イット(偽物を本物に見せかける)」戦略を採用し、自らが人間としてチャットボットのふりをして顧客と対話することで、市場のニーズを検証した。この「スケールしないことをやる」というY CombinatorのPaul Graham(ポール・グレアム)の教えを地で行くアプローチが、後に成田空港という大型顧客を獲得するきっかけとなった。さらに、彼女は日本の人口減少という社会問題に着目し、外国人労働者の受け入れと訓練、そしてロボットによる自動化という、時代のニーズを先取りしたビジネスを次々と立ち上げている。このエピソードは、単なるスタートアップの成功物語ではなく、日本社会が直面する課題と、それをビジネスで解決しようとする起業家の情熱と戦略を描いた、示唆に富む内容となっている。

3:08投資家の懐疑を乗り越えた「偽装」戦略と成田空港の獲得

Tsunagawaが2015年に多言語チャットボット「Bebot」を立ち上げた当時、投資家たちはその可能性を全く評価しなかった。彼らの懐疑の理由は、当時はChatGPTのような生成AIはもちろん、人々が積極的に利用するチャットボットサービスが存在せず、技術的にも文化的にも「人々がAIとコミュニケーションを取る」という未来が想像できなかったからだ。しかし、Tsunagawaはこの懐疑に対して、理論ではなく実践で答えた。彼女自身を含むチームメンバーが「ボットのふりをして」実際の顧客とチャットで対話するという、いわゆる「人間参加型の偽装」を何度も繰り返したのである。このアプローチは、単に市場の反応を確かめるだけでなく、顧客がどのような質問をし、どのような回答を求めているのかという貴重なデータを収集する手段でもあった。Jasonはこの戦略を、Y CombinatorのPaul Grahamが提唱する「Do Things That Don't Scale(スケールしないことをやる)」の好例だと称賛した。

この「偽装」戦略が実を結んだのは、2017年に成田空港が顧客になった時だ。当時、成田空港の案内カウンターには長蛇の列ができ、ロシア語、韓国語、中国語など様々な言語で怒鳴られるストレスから、スタッフが次々と辞めていくという深刻な問題を抱えていた。空港側は、ホテルと宿泊客の間のコミュニケーションを自動化できるのであれば、空港でも同じことができるはずだとTsunagawaに持ちかけた。旅行者は到着後、荷物の紛失や乗り継ぎ便の案内などでイライラしていることが多く、それがスタッフへの暴言につながっていた。Bebotは、こうした旅行者がスマートフォンから自分の言語でチャットできる仕組みを提供し、空港のスタッフ不足と多言語対応という二つの問題を同時に解決した。Tsunagawaは、この技術を全て自社で開発したと語り、当時はサービスとして存在しなかったため、自ら構築するしかなかったと振り返る。

この成功は、単に一つの大型契約を獲得したという以上の意味を持つ。投資家が見向きもしなかったアイデアが、実際の顧客の切実なニーズに応えることで、市場での価値を証明したのである。Tsunagawaの経験は、投資家の評価よりも、実際の顧客との対話を通じて製品を磨き上げることの重要性を示している。また、この「人間がボットのふりをする」という手法は、後に彼女がチャットボットの応答品質を向上させる際にも応用されることになる。顧客との実際の対話データを分析し、それをチャットボットの会話パターンに反映させることで、ユーザーエンゲージメントを大幅に向上させることができたのだ。

6:29日本の観光ブームの要因と「オーバーツーリズム」の光と影

日本を訪れる観光客が年間6,000万人に達するまでに成長した背景には、複数の要因が重なっている。Tsunagawaは最大の要因として「円安」を挙げる。かつて日本は高級な旅行先と見なされていたが、現在では世界でも有数の「お手頃な」高品質旅行先となった。ニューヨークやサンフランシスコで平均的な品質のものを買う金額で、日本では贅沢な体験ができるという。この価格競争力は、特に平均的な観光客にとって大きな魅力となっている。さらに、食、ショッピング、文化、美容、そしてスキーなど、多様な魅力が観光客を引きつけている。特にニセコなどのスキーリゾートは世界的に有名になり、季節を問わず多くの観光客が訪れるようになった。

しかし、この観光ブームは「オーバーツーリズム」という新たな問題も引き起こしている。京都の寺院やニセコのリフト待ち列などで、文化の違いによる摩擦が生じているのだ。Tsunagawaは、一部の飲食店や旅館が外国人観光客の受け入れを拒否するケースがあることを明かした。これは、言語の壁や文化の違いによるトラブルを避けるための苦肉の策だが、観光立国を目指す日本の姿としては疑問が残る。一方で、多くの店舗やホテルは外国人観光客を積極的に歓迎しており、彼らは今やビジネスの主要な収益源となっている。この「受け入れたい」という経済的動機と、「文化を守りたい」という保守的な感情の間で、日本社会は複雑なバランスを取っている。

Jasonは、アメリカ人観光客が日本を訪れる際に知っておくべき文化的マナーについて、Tsunagawaから具体的なアドバイスを引き出した。まず、家や旅館に入る際は靴を脱ぐこと。次に、公共の場では声をひそめること。Jason自身もブルックリン出身で声が大きいため、この点は特に気をつけているという。そして三つ目は、日本の習慣はアメリカと異なることを受け入れることだ。Jasonは、レストランでテーブルを確保するためにメートルドテルにチップを渡そうとしたが、日本ではそれが返され、代わりに予約リンクを渡されたというエピソードを披露した。このように、文化の違いを理解し尊重することが、観光客と地元住民の摩擦を減らす第一歩となる。Tsunagawaは、ゴミの分別ルールが外国人にとって複雑で、それが地域住民とのトラブルの原因になっていることも指摘した。

14:17日本の人口減少の現実と外国人労働者受け入れの課題

日本の人口は毎年、山梨県の人口に相当する70万から80万人規模で減少しており、この数字はやがて年間100万人に達するとTsunagawaは指摘する。この人口減少は、単に労働力不足という経済的な問題だけでなく、地方の過疎化や空き家の増加など、社会の構造そのものを変えつつある。Tsunagawaは、人口減少の根本的な原因について、子育てや家族を持つことが「贅沢品」になってしまったからだと分析する。東京では賃金の上昇がインフレに追いついておらず、政府は企業に賃上げを圧力しているが、特に中小企業ではサービス価格を引き上げることができず、賃金を上げたくても上げられない状況にある。政府は税制優遇などの対策を講じているが、Tsunagawa個人の経験から言えば、それだけでは不十分だと彼女は語る。

Tsunagawa自身も、5歳の子どもを連れてほぼ全ての出張に同行しているという。彼女は未婚のシングルマザーであり、頼れる家族がいないため、子どもを預ける保育システムの不足を痛感している。先月はスペイン政府に招待され1ヶ月間スペインに滞在したが、その間も3つの都市で3人のナニーを雇い、仕事をしながら子育てを両立させた。この経験から、Tsunagawaは「スタートアップとストックオプションがより大きな富を生み出せば、家族を持つことがもっと身近な選択肢になるかもしれない」と語る。しかし、若者が少ないということは、ナニーやサービス業で働く人材も不足しているということであり、その解決策として外国人労働者の受け入れが進んでいる。

日本は長年、移民に対して否定的な姿勢を取ってきた。かつて外国人労働者は「研修生」としてしか入国できなかったが、2019年に政府は規制を変更し、指定された産業で働く外国人労働者に就労ビザを認めるようになった。ただし、当初は5年間の滞在に限られ、特定の試験に合格すればほぼ永住に近い形で滞在できるようになる。Tsunagawaは、この制度変更の背景には、造船所や工場などで深刻な労働力不足があり、業界団体が政府に「単純に人が足りない」と訴えたことがあると説明する。実際、造船会社の中には、かつて年間9隻を生産していたのに、人手不足で現在は6隻しか生産できないところもあるという。このような状況下で、外国人労働者の受け入れは経済の維持に不可欠なものとなっている。

21:38スマートグラスで外国人労働者を訓練する「BeTrained」の革新

Tsunagawaの2つ目の事業「BeTrained」は、日本で働く外国人労働者の職業訓練を提供するサービスだ。日本語を話せない外国人労働者に対して、日本語しか話せない熟練の日本人職人が技術を教えるのは難しい。そこでBeTrainedは、スマートグラスを活用した独自の訓練システムを開発した。熟練の職人がスマートグラスを装着し、作業の様子を録画しながら「ここに小さな穴があるから、こうやって直すんだ」といった具合に実況解説を加える。この動画をYouTubeのようなプラットフォームにアップロードすると、自動的に多言語の訓練ビデオに変換される。さらに、各ビデオには理解度を確認するためのクイズが自動生成され、人事管理者は労働者が本当にビデオを視聴し、内容を理解したかを検証できる。

この訓練システムは、日本の「カイゼン」文化と外国人労働者のスキルギャップという問題に直面している。日本は高い品質基準と規律を要求するが、ベトナムやインドネシアなどの新興国から来た労働者が、最初からその水準を満たすことは難しい。Tsunagawaは、このギャップの埋め方は企業によって大きく異なると指摘する。ある企業は不良品のビデオをアップロードし、全マネージャーがそれを見て「何をすべきでないか」を学ぶという積極的な取り組みを行っている。一方で、外国人労働者を単純作業にしか使わず、高度なスキルを必要とする仕事は日本人が行うという「分業」を採用している企業もある。この違いは、企業が外国人労働者を「戦力」として見るか、「補助的な存在」として見るかという姿勢の違いを反映している。

外国人労働者の社会統合も、日本が直面する大きな課題だ。Jasonは、アメリカの「るつぼ」概念と比較しながら、日本では外国人労働者が日本語を学ばずに孤立したコミュニティを形成することへの懸念を表明した。政府はこの問題に対処するため、日本語能力試験の要件を引き上げる方針だ。現在、日本で働く外国人にはN4レベル(10歳程度の日本語力)が求められるようになるという。Tsunagawaは、この要件は「昼食を注文できる」レベルよりも少し高い、かなり高度なレベルだと説明する。この新しい要件は、より高い教育水準と意欲を持った労働者を引き寄せる効果がある一方で、外国人労働者が日本社会に溶け込み、二つの分断された社会が形成されるのを防ぐことを目的としている。しかし、地方自治体にとっては、ゴミの出し方のような基本的なルールを多言語で説明することさえ負担になっており、外国人労働者と地域住民の間の緊張は続いている。

33:06造船所の点検を自動化するロボット事業への進出

Tsunagawaの3つ目の事業は、造船所向けの点検ロボットだ。BeTrainedを通じて造船会社や建設会社と協力する中で、顧客から「外国人労働者だけでは限界がある。特定の作業は人間が行う必要があるが、全ての作業がそうではない」という声が上がるようになった。Tsunagawa自身も、造船所の化学タンクの中で時間を過ごし、作業員の仕事を間近で観察するうちに、ロボットで自動化できる作業があることに気づいた。彼女は「私たちはロボット会社ではない」と当初は考えていたが、現場のニーズを深く理解するにつれ、単純で反復的で退屈な作業、特に点検作業の自動化が有効だという結論に達した。

最初に着目したのは、建設現場や造船所に遍在する足場の点検だ。法律では、足場は使用前に毎日手作業で点検することが義務付けられているが、実際にはほぼ100%の企業がこの点検を省略しているという。その結果、怪我や重大な事故が発生し、最悪の場合、死亡事故につながることもある。Tsunagawaは、カメラを搭載したシンプルなロボットを使えば、この点検を1日に10回でも無料で行うことができ、事故を未然に防ぐことができると説明する。しかし、このロボットの開発は想像以上に困難だった。造船所や工場には光沢のある金属が多く、反射によってカメラの認識精度が低下するという技術的な課題に直面した。彼女たちはVDAM(ビジュアル・データ・アソシエーション・メソッド)と呼ばれる技術を活用してこの問題を解決し、ロボットが足場を自力で登り、ジョイントを掴んで揺すり、各ジョイントの安全性を記録し、点検担当者に報告するシステムを開発している。

さらに、顧客との対話を重ねるうちに、同じロボットで自動化できる他の点検作業があることも判明した。例えば、200メートルを超える船舶の塗装厚検査は、1隻あたり1,000時間以上の人間の労働時間を要する。時給20ドルで計算すると、1隻あたり2万ドルのコストがかかることになる。この作業は、ロボットがデバイスで船体をスキャンするだけで簡単に自動化できる。Tsunagawaは、足場の点検、塗装厚検査を含む、合計4種類の点検作業を1台のロボットで自動化することを目指している。このロボット事業は、単に労働力不足を補うだけでなく、人間が行うよりも正確で、疲労やミスによる事故のリスクも減らすことができる。Jasonは、このアプローチをElon Musk(イーロン・マスク)の「工場を作る仕事」に例え、異なる製品でもその背後にある「工場」という仕組みは共通していると指摘した。

37:44顧客開発の極意と資金調達の独自戦略

Tsunagawaの起業家としての成功の秘訣は、徹底した顧客開発にある。彼女はこの手法を、最初のチャットボット事業を始める前に学んだという。当時、彼女の会社の製品はTripAdvisorのローカル版のようなシンプルなウェブサイトだった。金融出身で製品開発の経験がなかった彼女は、どうすればいいか分からず、渋谷の交差点や六本木駅で、大きなスーツケースを持った外国人観光客を捕まえては、片っ端からインタビューをした。このユーザーインタビューが、次のビジネスであるチャットボット事業につながったのだ。彼女は何度も六本木駅から追い出され、明治神宮からも出入り禁止になったという。セキュリティガードに顔を覚えられ、「彼女を入れるな」と写真まで掲示されたこともあった。さらに、外国人観光客をリクルートするために、当時存在した非ネイティブ向けのデーティングアプリまで活用したというから、その行動力は並大抵ではない。

この顧客開発の精神は、チャットボット事業の運営中にも発揮された。クリスマス休暇中、エンジニアがソフトウェアをアップデートした際にシステムがダウンし、チャットボットが完全に機能しなくなった。高級ホテルや成田空港、日本政府機関などが顧客だったため、Tsunagawa自身が1週間、睡眠時間を削って「人間チャットボット」として顧客対応を行った。この経験から、人間らしいコミュニケーションがユーザーエンゲージメントを向上させるという重要な発見を得た。復旧後、彼女たちはこの人間同士の対話パターンをチャットボットに実装したところ、エンゲージメントが劇的に向上し、想定していたセグメントを超えてチャットボットが普及した。ただし、緊急時対応のチャットボットでは、避難所の住所をできるだけ早く伝える必要があるため、雑談は逆効果だという。つまり、ユースケースに応じてチャットボットの性格を変える必要があるのだ。

資金調達に関して、Tsunagawaは独自の戦略を取っている。最初のチャットボット事業では、約4億5,000万円(約300万ドル)を調達したが、最後のラウンドは2020年3月、COVID-19の真っ最中だった。それ以降、同社は自己資金で事業を運営している。さらに、日本では政府契約を担保に銀行融資を受けることができるという。Tsunagawaは、政府契約を担保にすることで、投資家と話すよりもはるかに迅速に融資を受けることができると語る。短期融資は契約の支払いまで、長期融資は最長10年、金利は約1%という好条件だ。Jasonは、アメリカでは銀行がスタートアップに融資しないこと、融資を受けられるのは資産を持つ富裕層だけであり、それが資産格差を拡大する一因となっていることを指摘し、日本のこの制度を高く評価した。Tsunagawaは、収益性を達成すれば融資が容易になるため、株式を売却せずに創業者のエクイティを維持できるという利点を強調した。

48:21工場買収による「ロールアップ」戦略とAI時代の組織運営

Tsunagawaは、今後の事業拡大について、日本国内での成長を優先すると語る。彼女は「少なくとも今後2年間は、日本が最もホットな市場だ」と断言する。具体的には、ロボットが実際に稼働する状態にまで開発を進め、その後、小さな造船所を買収し、自社のロボットを導入してその効率性を実証するという「モデル工場」戦略を描いている。この戦略の背景には、日本特有の「後継者問題」がある。日本では、利益を上げているにもかかわらず、後継者がいないために廃業する企業が数多く存在する。若い世代が工場経営を望まないためだ。Jasonはこの話に強く反応し、「私が投資したい。工場を買い占めよう」と興奮気味に語った。これらの工場は、売上高の1倍以下の価格で購入できる可能性があり、場合によってはオーナーが融資を提供してくれることもあるという。この「工場ロールアップ」戦略は、日本経済の構造的な問題を逆手に取った、極めて現実的なビジネスチャンスと言える。

AIの活用について、Tsunagawaは「2015年からAIをやってきた」と語り、社内のあらゆる業務にAIを積極的に導入している。同社には65人の従業員がいるが、その半数以上が外国人だ。エンジニアリング部門では、全員がClaudeなどのAIサービスを日常的に使用している。昨年、ドイツ人エンジニアが帰国した際、後任を雇う代わりに、既存のチームメンバー全員がAIエージェントを使ったコーディングを学ぶことを選択した。コードレビューはAIによって高速化され、採用、トレーニング、マネジメントにかかるコストを削減できたという。Jasonは、自身の会社でもAIを活用した採用判断の変化を共有した。従業員数が60人規模になると、従来は経理3人、人事3人、アシスタント3人というように人員を増やしていたが、今では「人事部門を構築できる人材1人」で済むという判断ができるようになった。また、AIが生成する求人票は、20年以上の経験を持つJasonが書くものよりもはるかに優れていると認めている。

さらに、Jasonは「AIによる社員の再現」という大胆なアイデアを披露した。退職した社員のSlackやメールの履歴をAIに学習させれば、その社員の「ゴースト」を作り出し、過去の意思決定プロセスを尋ねることができるという。これは、映画『スター・ウォーズ』でルーク・スカイウォーカーがオビ=ワン・ケノービのフォースの幽霊と対話するようなものだとJasonは例える。Tsunagawaは、このアイデアに「天才的だ」と感銘を受け、実際に社内で検討していることを明かした。ただし、退職した社員の名前や肖像を使用するには許可が必要かもしれないという法的な懸念も示した。Jasonは、自身の会社で「Slackの神」と呼ぶべきAIオラクルを構築し、全社員のDMを含む全てのコミュニケーションを分析して、会社の歴史を振り返り、将来の意思決定に活かすことを構想している。このようなAIの活用は、単なる業務効率化を超えて、組織の知識管理と意思決定のあり方を根本から変える可能性を秘めている。

結びに

今回のエピソードは、一見すると異なる3つのビジネスを展開する起業家の物語を通じて、日本社会が直面する構造的な課題と、それをビジネスチャンスに変える思考法を浮き彫りにした。Tsunagawaの成功は、単に時代のニーズを先取りしたからではなく、「まず労働力のギャップを解決し、その後でテクノロジーを構築する」という彼女の哲学に支えられている。投資家の懐疑を「フェイク・イット・ティル・ユー・メイク・イット」戦略で乗り越え、成田空港という大型顧客を獲得した経験は、理論よりも実践、そして顧客との対話の重要性を如実に示している。また、政府契約を担保に銀行融資を受けるという日本の制度を活用した資金調達戦略は、株式を希薄化させずに事業を成長させる独自の道を示した。

このエピソードが特に印象的なのは、Tsunagawaが単なる起業家ではなく、日本社会の課題を深く理解し、その解決に情熱を注ぐ「社会問題解決者」としての側面を持っていることだ。外国人労働者の訓練、造船所の点検ロボット、そして将来の工場買収による「モデル工場」構想は、いずれも労働力不足という日本の根本的な問題に対する現実的な解決策を提示している。さらに、AIを活用した組織運営や「社員のゴースト」というアイデアは、テクノロジーが企業経営のあり方を根本から変えつつあることを示唆している。このエピソードは、スタートアップの成功物語としてだけでなく、人口減少社会における日本の未来を考える上で、多くの示唆を与えてくれるだろう。

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