
Bittensor 創設者 Const が Affine、dTAO、「マイニング推論」などについて語る | E2326
- Bittensor(ビッテンソー)は、暗号資産の仕組みを利用して、世界最大の分散型AIネットワークを構築しようとするプロジェクトである。今回のエピソードでは、共同創業...
- Constは、Bittensorが単なる暗号資産ではなく、AIという「21世紀で最も重要な計算問題」に、ビットコインが確立した「許可不要(パーミッションレス)でピアツ...
- [0:00] Bittensorの起源とビットコインとの関係 Constは、Bittensorの起源をビットコインの二つの革新的な側面から説明する。一つ目は、イーサリ...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
This Week in Startups / Jason Calacanis
- Bittensorは、ビットコインの「許可不要な市場メカニズム」をAIに応用し、分散型のAIネットワークを構築するプロジェクトである。
- サブネットは、特定のAIタスク(推論、トレーニング、ストレージなど)に特化した独立したネットワークで、それぞれが独自のトークンを持つ。
- dTAOは、サブネットの創設自体を競争市場にすることで、資本主義の価格メカニズムを利用して最も価値のあるプロジェクトを選別する仕組みである。
- サブネットの登録コストはダッチオークションで決定され、現在は688 TAO(約12万1,000ドル)で、この資金は流動性プールの形成に使われる。
- Templarの「ラグプル」事件は、暗号資産市場のリスクを浮き彫りにし、開発チームのコミットメントを示す「コンビクション」という仕組みの導入につながった。
- Constが運営するAffine(サブネット120)は、AIモデルの「推論」を商品化することを目指しており、他のモデルの思考能力を向上させるアダプターをトレーニングする。
- Bittensorは現在2つの財団(OpenTensor FoundationとRAO Foundation)によって運営されており、Constは後者でプログラマーとして活動し、自身の「自己不要化」を目指している。
- Jason Calacanisは、Bittensorへの投資を「ビットコイン以来の確信」と語り、少額でも参加することの重要性を「Buy One TAO」という言葉で表現した。
Bittensor(ビッテンソー)は、暗号資産の仕組みを利用して、世界最大の分散型AIネットワークを構築しようとするプロジェクトである。今回のエピソードでは、共同創業者であるJacob Steeves(ジェイコブ・スティーブス、通称Const)を迎え、その根本原理から最新の取り組みまでを詳細に解説した。Jason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)は、このプロジェクトに強い確信を持っており、「ビットコイン以来、これは絶対に詐欺ではないと確信した2つ目のプロジェクトだ」と語り、自身の投資哲学と重ね合わせながら、Bittensorの可能性を熱く語った。
Constは、Bittensorが単なる暗号資産ではなく、AIという「21世紀で最も重要な計算問題」に、ビットコインが確立した「許可不要(パーミッションレス)でピアツーピアの市場メカニズム」を適用する試みであると説明する。ビットコインがハッシュ計算という単純な問題を解くことでデジタル商品を生み出したのに対し、BittensorはAIモデルの推論やトレーニングといった、より高次元で複雑な価値を生み出すための市場を構築している。このネットワーク上では、誰もが「サブネット」と呼ばれる個別のAIプロジェクトを立ち上げ、その価値に応じて報酬を得ることができる。Constは、この仕組みを「資本主義の内部機構」を利用して、AIプロジェクトのランキングを決定するものだと表現し、その野心的なビジョンを明かした。
Bittensorの起源とビットコインとの関係
Constは、Bittensorの起源をビットコインの二つの革新的な側面から説明する。一つ目は、イーサリアムが発展させた「スマートコントラクト」の概念であり、二つ目は、世界中の計算リソースを集約して一つの問題を解く「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)マイニング」の仕組みである。ビットコインは、このPoWによってSHA256アルゴリズムの計算という「デジタル商品」を生み出し、その市場は史上最も効率的なものとなった。Constは、この市場の特徴を「許可不要」と「ピアツーピア」という言葉で説明する。許可不要とは、国籍、年齢、身元に関係なく、誰でも匿名で参加できることを意味し、ニューヨークの街灯から電源を盗んでマイニングする人々の例を挙げて、その本質を強調した。
このビットコインの仕組みを、ConstはAIに応用しようと考えた。ビットコインがハッシュ計算という単純な問題を解くのに対し、AIの価値は、1024次元のベクトルが機械学習モデルにとってどれほど有用かといった、はるかに複雑で高次元な問題を解くことで生み出される。Bittensorは、この複雑な価値を測定するための「抽象的なコンセンサスメカニズム」を発明する必要があった。Jasonは、ビットコインが単なるエネルギー消費の塊であるという批判があった一方で、現在は計算リソースが不足している時代であり、Bittensorがその重要性を増していると指摘する。Constは、Bittensorの目的は、この強力な計算ネットワークを、AIという最も重要な問題に適用することにあると語った。
サブネットの仕組みとインセンティブ設計
Bittensorの核心は「サブネット」という概念にある。これは、特定のAIタスクに特化した独立したネットワークであり、それぞれが独自のトークン(アルファトークン)を持ち、TAO(Bittensorの基軸トークン)とペアになっている。Constは、サブネットの仕組みをスポーツのプレミアリーグに例えて説明する。参加者(マイナー)は、ネットワークに参加するために少額のトークンを支払い、そのネットワークが求める仕事(例:AIモデルの推論)を実行する。そして、その仕事の質と速度に基づいて報酬が支払われる。各サブネットには256の参加枠があり、成績上位のマイナーはより多くの報酬を得て、下位のマイナーはネットワークから追い出されるという「降格システム」が組み込まれている。
この仕組みの重要な点は、悪意のある参加者を排除するのではなく、アーキテクチャによって「正直な行動」を強制することにある。各サブネットには「バリデータ」と呼ばれる検証者が存在し、マイナーが提供するサービスが仕様通りであるかをチェックする。例えば、推論サブネットでは、マイナーが提供するAIモデルが本当に指定されたモデルであるかを、ZKプルーフ(ゼロ知識証明)などの技術を用いて検証する。Constは、この検証プロセスを「プログラムによるSLA(サービス品質保証)」と表現し、従来の契約ベースのSLAとは異なり、コードによって機械的に保証される点を強調した。しかし、このシステムは常に攻撃者によるストレステストにさらされており、サブネットの運営者は、国家レベルの攻撃者と戦うほどの強度が求められると語る。
dTAOとサブネットの競争
Bittensorの革新的な点は、サブネット自体の創設もまた、許可不要の競争市場にしていることだ。これは「ダイナミックTAO(dTAO)」と呼ばれる仕組みで、Constは「私たちは自分たち自身に自分たちの手法を適用した」と表現する。この仕組みでは、誰でもTAOを燃やしてサブネットを登録でき、そのコストはダッチオークション方式で決定される。現在の登録コストは688 TAO(約12万1,000ドル)だが、これは需要に応じて変動する。この登録料は、サブネットのトークンとTAOの流動性プールを形成するために使われ、サブネットのトークン価格を支える役割を果たす。
dTAOの核心は、サブネットの価値を市場の価格メカニズムに委ねることにある。Constは、これを「資本主義の内部機構」を利用したものだと説明する。数千の個人投資家やトレーダーが、各サブネットの将来性を評価し、その価格を形成することで、Bittensor全体として最も価値のあるプロジェクトを選別することができる。これは、NASDAQが企業をランク付けするのと同様の機能を、分散型の市場メカニズムで実現する試みである。Jasonは、この仕組みを「AIサービスのYコンビネーター」と表現し、サブネットがアクセラレーターのような役割を果たすと指摘した。Constは、この競争環境が、サブネットを運営する起業家たちの質を劇的に向上させたと語る。
Templarの「ラグプル」とその教訓
エピソードでは、Bittensorエコシステムにおける最大の論争の一つである「Templar」サブネットの「ラグプル」(開発者が資金を持ち逃げする行為)についても議論された。Templarは、分散型トレーニングという、AI分野における「聖杯」を目指すプロジェクトだった。これは、世界中に分散したコンピュータが協力して、一つの巨大なAIモデルをトレーニングするというものだ。しかし、このプロジェクトは、開発チームが保有するトークンを売却し、プロジェクトを放棄したことで崩壊した。Constは、この出来事を、初期段階のスタートアップで創業者が会社を放棄するのと本質的に同じだと説明する。しかし、暗号資産の場合は、株式とは異なり、トークンを市場で即座に売却できるため、その影響はより直接的で破壊的になる。
この事件を受けて、Bittensorは「コンビクション(確信)」と呼ばれる仕組みを導入した。これは、サブネットの開発チームが、自らのトークンを一定期間ロックすることを可能にするもので、チームがプロジェクトへのコミットメントを示すための自主的な仕組みである。Constは、これはスタートアップにおける「ベスティング(段階的権利確定)」に似ていると説明する。Jasonは、この問題はスタートアップ業界にも存在し、Yコンビネーターで資金を調達した起業家が、開発をせずに資金を私的流用するケースがあると指摘した。Constは、このような不正はどの業界にも存在するが、暗号資産の場合は市場で即座に売却できるため、その影響が特に顕著になると語った。
Affineと「推論のマイニング」
Constは現在、自身が運営するサブネット「Affine」(サブネット120)について詳しく説明した。Affineの目標は、AIモデルの「推論(リーズニング)」を商品化することにある。これは、モデルが質問に答える前に、内部で思考するプロセスを指す。Affineのマイナーは、他のAIモデルの推論能力を向上させるための「アダプター」となるモデルをトレーニングする。Constは、これを「あなたが私と話すとき、自分自身が賢くなったと感じるなら、私は賢い」という比喩で説明した。つまり、Affineのモデルは、直接的に優れた回答を生成するのではなく、他のモデルがより良い回答を生成できるように支援するのだ。
この「推論のマイニング」は、最終的には、より優れたAIモデルをトレーニングするための前提条件になるとConstは考えている。彼は、昨年、AlibabaのQwen(クエン)の最高モデルを凌駕する35Bパラメータのモデルを開発したが、その直後にQwenがさらに優れたモデルをリリースしたというエピソードを語った。この競争の激しさは、もはや国家間の戦争に等しいとConstは表現する。Affineの仕組みは、参加者に高度な機械学習の知識を必ずしも要求しないため、AIエージェント(例:Claude Code)を使って誰でも参加できる可能性があるとJasonは指摘した。Constは、このような「イノベーションゲーム」を通じて、世界中の才能が物理的な距離を超えて協力できることが、Bittensorの魅力だと語った。
財団の役割とConstの「自己不要化」
エピソードの後半では、Bittensorのガバナンス構造と、Const自身の将来について議論された。Constは、現在、Bittensorには2つの財団が存在すると説明する。一つは「OpenTensor Foundation」で、マーケティングやアウトリーチを担当し、もう一つは「RAO Foundation」で、チェーンのアップグレードなどの開発を担当している。Const自身は、現在はRAO Foundationでプログラマーとして活動しており、OpenTensor Foundationからは離れているという。彼は、チェーンのアップグレードは、オンチェーン上のガバナンスシステム「トライアンビレート(三頭政治)」を通じて行われると説明し、今年中にこのシステムをさらに拡張する計画があることを明かした。
Jasonは、ConstがBittensorの存続に不可欠な存在であるかどうかを質問した。これに対しConstは、自分が去ってもネットワークは確実に存続すると自信を示した。彼は、128の異なるサブネットチームがそれぞれ技術を深く理解し、システムの存続を望んでいること、そして活発なオープンソースコミュニティが存在することをその理由として挙げた。Constは、自身の役割は、システムが自立して動くようになるまで、その移行期間を支えることにあると語り、自身を「ますます不要にする」ことが目標だと述べた。この発言は、Bittensorが単なる個人のプロジェクトではなく、真に分散化されたエコシステムへと進化しようとしていることを示している。
結びに
今回のエピソードは、Bittensorというプロジェクトの全体像を、その共同創業者の言葉を通じて深く理解できる貴重な機会となった。Constの説明は、単なる暗号資産の投機対象としてではなく、AI開発における根本的なパラダイムシフトを目指す技術的・哲学的な試みとしてのBittensorの姿を浮き彫りにした。特に、「許可不要の市場メカニズム」をAIに適用するという発想は、中央集権的なAIラボが支配する現状に対する、もう一つの可能性を示している。Jasonが「ビットコインの初期の真の信者たちを見たときの感覚を思い出す」と語ったように、このエピソードは、次世代のテクノロジーを巡る興奮と、それに伴うリスクを生々しく伝えている。
このエピソードが重要なのは、Bittensorの複雑な仕組みを、投資家視点と創業者視点の両方から解説した点にある。Jasonの「Buy One TAO」という哲学は、単なる投資アドバイスではなく、この実験的なネットワークへの参加を促す呼びかけだ。一方で、Constの「自己不要化」へのコミットメントは、このプロジェクトが個人の野望を超えた、より大きなムーブメントであることを示している。Bittensorが本当に「分散型AIの基盤」となるのか、それとも壮大な夢で終わるのかはまだ分からないが、その試みは、AIの未来を考える上で無視できないものとなっている。
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