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Invest Like the Best with Patrick O'Shaughnessy · 2026年8月11日

Eric Vishria - ソフトウェアとハードウェアへの投資から得た10年の教訓 - [Invest Like the Best, EP.486]

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • エリック・ヴィシュリア(Eric Vishria)は、名門ベンチャーキャピタルであるBenchmarkのゼネラルパートナーであり、ソフトウェアとクラウドの歴史に精通し...
  • この対話の核心は、テクノロジーの進化における「ゼロサム思考の罠」と「競争フロンティアの移動」にある。ヴィシュリアは、過去にAWSが「すべてを飲み込む」と恐れられた時代...
  • [02:20] Fireworksを通じて見えたAIインフラの真実 ヴィシュリアは、AIインフラ企業であるFireworksへの投資を通じて、大規模言語モデル(LLM...
こんな人向け

英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

Invest Like the Best with Patrick O'Shaughnessy / Colossus | Investing & Business Podcasts

要点
  1. 同じオープンソースモデルとNvidiaハードウェアを使用しても、専門企業と大手クラウドプロバイダー間で最大5倍の性能差が生じる。AIインフラは見かけ上のコモディティではなく、高度な専門知識を要する分野である。
  2. 2006年のAWSに対する「コモディティになる」という予測も、2014年の「AWSがすべてを食べる」という恐怖も、どちらも外れた。巨大な市場では単一ベンダーが産業全体を消費することはできず、複数の勝者が共存する。
  3. AI時代の製品開発は「城」から「砂の城」へと変化した。モデルの能力が4週間ごとに進化するため、6ヶ月前の製品はすぐに陳腐化する。この変化を受け入れられない企業は生き残れない。
  4. 従来のプロダクトマネージャーの役割は消滅しつつある。重要なのは「顧客の課題を理解する人」「美的感覚を持つ人」「AIの能力のぎざぎざしたエッジを理解する人」の3つの資質であり、役割区分はもはや意味をなさない。
  5. データベース移行は、かつて「ソフトウェアで最もやらないこと」だったが、AIエージェントの登場により「簡単に実行できること」に変わった。競争のフロンティアは完全に移動しており、従来の成功モデルは価値を破壊する。
  6. エネルギーはAIの最終的な制約条件である。中国が米国の10倍のエネルギーを導入している現状は、インテリジェンスの供給に深刻な影響を与える可能性がある。
  7. ハードウェア投資では、シミュレーションで決まる「ルーフライン」の10%からスタートし、そこからソフトウェアやコンパイラの改善で徐々に上限に近づいていく。ソフトウェアとは異なり、論理的な理解は「2%」に過ぎない。
  8. 優れたボードパートナーは「投資家である前にパートナーである」。投資判断の前に「大切な人をこの会社に勧められるか」と「土曜日の夜9時に電話に出るか」という2つの質問を自分に投げかけるべきである。
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他のエピソード

エリック・ヴィシュリア(Eric Vishria)は、名門ベンチャーキャピタルであるBenchmarkのゼネラルパートナーであり、ソフトウェアとクラウドの歴史に精通した数少ない投資家の一人である。今回のエピソードでは、ホストのパトリック・オショーネシー(Patrick O'Shaughnessy)との対話を通じて、AWSの台頭からAI時代の勝者の条件まで、彼の長年にわたる投資経験から得た深い洞察が語られた。ヴィシュリアは、FireworksやSierra、Cerebrasといった具体的な投資先を通じて見えてきた世界の変化を、歴史的な文脈と照らし合わせながら解説する。彼の語り口は、単なる投資論を超えて、テクノロジー産業の構造変化を理解するための知的枠組みを提供している。

この対話の核心は、テクノロジーの進化における「ゼロサム思考の罠」と「競争フロンティアの移動」にある。ヴィシュリアは、過去にAWSが「すべてを飲み込む」と恐れられた時代を振り返り、実際にはその予測が大きく外れたことを指摘する。同様に、現在のAI市場においても、単一の企業がすべての価値を独占するという見方は誤りであり、むしろ巨大な市場が複数の勝者を生み出すと彼は主張する。また、AI時代における勝者の条件は、従来のSaaS時代とは根本的に異なり、製品開発の方法論や人材の評価基準までをも変革している。エネルギー制約、ハードウェア投資の難しさ、そして「生産的な無知」の重要性など、多岐にわたるテーマが、具体的なエピソードとともに深く掘り下げられていく。

02:20Fireworksを通じて見えたAIインフラの真実

ヴィシュリアは、AIインフラ企業であるFireworksへの投資を通じて、大規模言語モデル(LLM)の運用が想像以上に困難であることを学んだと語る。現在のモデルは2兆から4兆パラメータという巨大な規模に達しており、これらを効率的に実行することは「非常に難しい」課題である。同じオープンソースモデルを同じNvidiaハードウェアで実行しているにもかかわらず、Fireworksのような専門企業と大手クラウドプロバイダーとの間には、速度性能で最大5倍の差が生じるという。さらに、外部からは見えないスループット(処理能力)の差も存在し、これがビジネスの経済性に大きな影響を与えている。

この事実は、一見すると「コモディティ(日用品)」に見えるAIインフラ事業が、実際には高度な専門知識を要する分野であることを示している。ヴィシュリアは、外部の投資家から見ると、この事業は単なる「パススルー転売スケールゲーム」のように見えるが、実際にはまったく異なると指摘する。クラウドプロバイダーのマージンを支払いながら、その上で利益を上げている企業が存在するという事実は、この分野に大きな付加価値が存在する証拠である。

この経験は、2006年にAWSがS3とEC2を立ち上げた当時を思い起こさせる。当時、最も賢い投資家30人にAWSの将来性を尋ねれば、全員が「コモディティになる」と答えたであろう。しかし、2014年になると、今度は逆に「AWSがすべてを食べてしまう」という恐怖が広がった。実際には、Snowflake、Confluent、Elastic、MongoDB、Databricksといった企業がAWS上で成功し、Datadogのような企業は1,000億ドル規模の企業に成長した。ヴィシュリアは、この歴史から学ぶべき教訓は、市場が巨大である場合、単一のベンダーが産業全体を消費することはできないということだと主張する。

09:01クラウドとAIの採用曲線比較

エンタープライズ(大企業)におけるAI採用の現状は、クラウドの歴史と比較すると興味深い違いが見える。2010年から2011年頃、伝統的な大企業はクラウドに対して非常に懐疑的だった。一方で、Snapchatのようなデジタルネイティブ企業はGCP(Google Cloud Platform)上で構築され、ある時期にはSnapchatがGCPのトラフィックの40%を占めていたこともあった。これは、現在のCursorがAIインフラの利用の30%を占めている状況と非常によく似ている。

しかし、現在のAI採用はクラウド時代とは決定的に異なる点がある。伝統的な大企業、特に金融サービスや保険会社は、AIに対して「欲しい」と積極的に考えている。彼らは実験を開始し、予算を投入し、その可能性を探っている。クラウド時代には「これは何だ?」という懐疑的な態度だったのに対し、AIに対しては「これは脅威であり、同時に機会だ」という認識を持っている。クラウドから学んだ教訓が、AIへの対応を加速させているのだ。

この状況を踏まえ、ヴィシュリアは自身が投資する企業に対して「AIシェルパ(案内人)」の役割を果たすことを勧めている。エンタープライズ企業はAIを導入したいと考えているが、その方法が分からない。シリコンバレーの最先端と伝統的大企業の橋渡しをする存在になることが、大きなビジネスチャンスを生むというのが彼の見解だ。Sierraはまさにこの「AIシェルパ」の役割を体現しており、カスタマーサービスから始めて、現在はHorizonという長期的なエージェント(自律的にタスクを実行するAI)へと進化している。

13:05砂の城と技術的回帰

Sierraの共同創業者であるブレット・テイラー(Bret Taylor)は、AI時代の製品開発を「砂の城」に例えている。従来のソフトウェア開発は「城」を築くように、一度建てたものは長期間にわたって価値を保ち続けた。しかし、AI時代においては、モデルの能力が4週間ごとに進化するため、6ヶ月前に作った製品はすぐに時代遅れになる。これは「砂の城」が波に洗われて消えていくようなものだ。この変化を受け入れることができない企業は、生き残ることができない。

この変化は、製品開発の方法論を根本から覆すものである。従来のプロダクトマネージャーの役割は、顧客の課題を理解し、それをエンジニアに翻訳して解決策を構築させることだった。しかし、AI時代には、モデルの能力の「ぎざぎざしたエッジ(jagged edge)」を深く理解することが不可欠となる。AIは人間のように滑らかな能力のカーブを持たず、ある分野では驚異的な能力を発揮する一方で、別の分野ではまったく役に立たない。この不規則な能力の境界を理解し、顧客の課題と橋渡しできる人材こそが勝者となる。

皮肉なことに、モデルが技術的な仕事を代替するようになっているにもかかわらず、技術的な理解の重要性は増している。ヴィシュリアは、従来の「プロダクトマネージャー」「デザイナー」「エンジニア」という役割区分はもはや意味をなさないと主張する。重要なのは、顧客の課題を理解する人、美的感覚(taste)を持つ人、そしてAIの能力のぎざぎざしたエッジを理解し好奇心を持つ人の3つの資質である。CursorのCEOであるマイケル(Michael)は、この「ぎざぎざしたエッジ」を深く理解し、開発者とAIの能力を橋渡しする製品を継続的に進化させてきた好例である。

17:13競争フロンティアの移動とSaaS企業の苦境

ヴィシュリアのパートナーであるブリ(Bri)は「すべてがジャンプボール(競り合い)になっている」と表現する。AI時代における競争のフロンティアは完全に移動しており、従来のSaaS企業が勝利のために築いてきたものが、もはや勝利の条件ではなくなっている。データベース市場を例にとると、従来は特定のデータベースインターフェースにアプリケーションを構築することで、乗り換えコストが高く、非常に粘着性の高いビジネスが成立していた。しかし、AIエージェントはデータベースの移行を得意としており、かつて「ソフトウェアで最もやらないこと」だった移行が、今では簡単に実行できるようになった。

この変化により、データベース企業の勝敗を決める基準が変わった。アプリケーションの実験コストが劇的に低下したため、ゼロから無限大へのスケーリング能力、コスト効率、移植性が重要になっている。従来の「特定のハードウェア上でライセンスを購入して運用する」というモデルは、もはや競争優位性を生まない。ヴィシュリアは、SaaS企業に対して「AIをやるか、それとも売上高の3倍の評価額を受け入れるか」という厳しい選択を突きつけた。2021年には30倍だった評価額が、現在は6倍にまで低下しており、企業が4倍に成長しても、評価額は減少しているという逆説的な状況が生まれている。

この状況は、従来の経営手法を根本から覆すものである。「計画を立て、それを猛烈に実行する」という従来の成功モデルは、もはや価値を破壊するだけだ。ヴィシュリアは、CEOたちに「計画を達成するたびに、あなたは株式価値を破壊している」と伝えている。これは、従来の常識を完全に逆転させるメッセージであり、CEOたちを「自由にする」ためのものだ。アン・リーズ・ゲイツ(Ann Lees Gates)の指摘によれば、多くのCEOは日中は従来の業務に追われ、夜の5時から8時だけをAI対応に充てているが、それでは不十分であり、ビジネス全体をAI時代に合わせて再構築する必要がある。

27:53エネルギー制約とCerebrasの物語

AIの需要は「無限」に見えるが、ヴィシュリアはエネルギーが最終的な制約条件になると警告する。モデルは「計算をインテリジェンスに変換する」ものであり、インテリジェンスへの需要が無限であるならば、計算への需要も無限に増加する。そして、計算には膨大なエネルギーが必要となる。特に懸念されるのは、中国が米国の10倍のエネルギーを翌年に導入するという事実である。エネルギーが不足すれば、トークン(AIの出力単位)が高価になり、結果としてインテリジェンスの供給が減少することになる。ヴィシュリアは、太陽光、原子力、ガスなど、あらゆるエネルギー源への投資を促進すべきだと主張する。

Cerebrasへの投資は、ヴィシュリアにとってハードウェア投資の難しさを学ぶ貴重な経験となった。2016年、5人の創業者と1枚のデッキ(プレゼン資料)だけだった同社は、「GPUはディープラーニングには実は向いていない」という主張から始まった。当時、Nvidiaの時価総額は400億ドル(現在は4兆ドル)であり、TPUも発表されていなかった。ヴィシュリアは、ディープラーニングを高速化する方法は「コア数の増加」「コア間通信の向上」「メモリを計算に近づける」の3つだけだと理解した。Cerebrasは、これらすべてを論理的な極限まで追求するウェハスケールチップ(ウェハ全体を1つのチップとして使用する技術)を開発していた。

しかし、ソフトウェアとは異なり、ハードウェアでは論理的な理解は「2%」に過ぎない。物理、サプライチェーン、TSMCを含む30以上のベンダーとの調整など、無数の課題が存在する。2019年の取締役会では、チップが「溶けている」という危機的な状況に直面し、5億ドルの資金が失われる可能性に直面した。それでも、チームは粘り強く問題を解決し、2020年には最初の動作する製品を完成させた。ハードウェアの性能は、シミュレーションで決まる「ルーフライン(上限)」の10%から始まり、そこからソフトウェアやコンパイラの改善によって徐々に上限に近づいていくというのが現実だ。この経験から、ヴィシュリアは「生産的な無知」の重要性を学んだ。専門家に相談すれば「やめるべきだ」と言われるような挑戦でも、それが正しい理由で行われているならば、ベンチャーキャピタルの資金を使う価値がある。

39:19ロボティクスの未来とデータの重要性

ロボティクスは「常に10年先」と言われ続けてきた分野だが、ヴィシュリアは現在、その状況が変わりつつあると見ている。制御された環境での反復作業はすでに解決されているが、現実世界での「不規則なタスク」にはAIが必要となる。しかし、ロボティクスにはLLMのような「インターネット規模のデータ」が存在しないという根本的な問題がある。LLMはインターネット上の人間の知識で訓練されているが、ロボットの動作に対応するデータセットは存在しないのだ。

この問題に対する解決策として、ヴィシュリアは「高価値データ」に焦点を当てるアプローチを挙げる。インターネット上のデータには質のばらつきがあり、WikipediaやGitHubのような高品質なデータを優先的に使用することで、モデルの事前学習(プレトレーニング)を効果的に行うことができる。ロボティクス企業も同様に、高品質なデータを収集し、事前学習を行い、その後に少量の追加データで特定のタスクを学習させる「ポストトレーニング」のアプローチを取っている。

ヴィシュリアが投資しているSunday Roboticsは、家庭用ロボットを開発しており、この「高価値データ」アプローチを採用している。同社はロボットの手と設計されたグローブを使用してデータを収集し、データの転移可能性を最大化している。スタンフォード大学の地下ラボで見た「粗末な段ボール製グローブ」から、現在のオフィスビルの地下で12台のロボットが「任意の洗濯物」を折りたたんでいる様子は、この分野の進歩を如実に示している。ヴィシュリアは、タスク自体の重要性よりも、優れたモデルを事前学習し、その上にポストトレーニングで能力を追加していく「フライホイール(好循環)」を確立できるかどうかが重要だと主張する。

45:58優れたボードパートナーの条件と成長ファンド

パトリック・オショーネシーによれば、ヴィシュリアは「最高のボードパートナー」として頻繁に名前が挙がる人物である。ヴィシュリアは、その理由を「投資家である前にパートナーであること」と説明する。彼は、投資家なら「投資グレードの機会」と見なす案件でも、創業者との「ケミストリー」がなければ投資しない。互いに学び合い、互いのループを刺激し合える関係を築けるかどうかが重要であり、これは単なる投資判断とは異なる基準である。

ヴィシュリアは投資判断の前に、2つの質問を自分に投げかけるという。1つ目は「人生で大切に思っている人を、この会社に勧められるか。そして、それが彼らのライフワークになり得ると、心から説明できるか」という質問だ。これができない場合、そのプロジェクトは投資する価値がないと判断する。2つ目は「この人が土曜日の夜9時に電話をかけてきたら、私は電話に出るか」という「グリーンボタンテスト」である。これは、単なるビジネス上の関係を超えた、人間的なつながりの重要性を測る基準だ。

Benchmarkが最近、長い間行っていなかった成長ファンドを立ち上げた背景には、投資環境の変化がある。伝統的に、ベンチャーキャピタルへの投資は「高い現金オン現金マルチプル(投資倍率)」を求めるものであり、それはアーリーステージ投資とほぼ同義だった。しかし、近年は市場の規模が拡大し、アーリーステージ以外でも高いリターンを生む機会が増えている。ヴィシュリアは、この変化に対応するためには、成長ステージの投資を担当できるチームが必要であり、それが今回のファンド設立の最大の理由だと説明する。彼は「数年間の遅れ」を認めつつも、今後この機会を追求していく決意を示した。

55:39大勝ちした投資から学んだ教訓とIPOの意義

ヴィシュリアは、自身が経験した20倍から100倍のリターンを生んだ投資から学んだ教訓を「特別な人々と働くこと」と総括する。彼は20歳の時に投資銀行で働いていた頃、ベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)からアシスタントのオファーを受けた経験がある。その際、25歳の先輩から「ゴルフをするか?」と聞かれ、「ゴルフでは、練習を重ねてボールをピンに近づけ続けることが重要だ。それがハードワークであり、スマートな働き方だ。ホールインワンは運だ」と言われたという。この「ピンに近づけ続ければ、いつかは入る」という考え方は、投資にもそのまま当てはまる。1年に1〜2社、12年間で18社という少数の投資先に高い確信とコミットメントを持って取り組むことで、運を引き寄せることができるのだ。

IPO(新規株式公開)の意義について、ヴィシュリアは「より高いレベルでプレーすること」と表現する。上場企業になることで、透明性が生まれ、信頼が構築され、資本調達の能力が飛躍的に向上する。これは、カレッジアスリートがプロに転向するようなものであり、競争は激しくなるが、舞台も大きくなる。特にAIラボ(AnthropicやOpenAIのような企業)は、最終的に上場すべきであり、それは世界とアメリカにとって有益であると彼は主張する。上場による透明性は、AIのような重要な技術に対する信頼構築に不可欠だからだ。

一方で、上場のタイミングを逃した企業の苦境も指摘される。2021年に上場したSaaS企業の多くは、評価額の圧縮に苦しんでいる。また、売上高1億ドルから5億ドルの間にある約500社の非上場SaaS企業は、従業員も投資家も出口の機会を失っている。AIネイティブ企業の成長率が注目を集める中で、これらの企業は「酸素を奪われた」状態にある。ヴィシュリアは、これらの企業がすべて消滅するとは考えていないが、厳しい状況にあることは間違いない。

01:01:09Benchmark内部の議論と「すべてが機能する」という見解

Benchmarkのパートナーシップ内では、AIインフラ、基盤モデル、アプリケーションの間で価値がどこに蓄積されるかについて活発な議論が行われている。ヴィシュリアは「すべてが機能する」という見解を持っている。クラウドサービスプロバイダー(CSP)、ネオクラウド、Fireworksのような専門企業、Nvidia、チップスタートアップ、エッジ推論、データセンター内の大規模モデルなど、すべてが成功する可能性がある。これは、パイの切り分け方を巡るゼロサム思考への反論であり、市場の規模が巨大であるため、複数の勝者が共存できるという考え方だ。

しかし、これは「すべての企業が成功する」という意味ではない。むしろ、各分野のほとんどの企業は失敗するだろう。だからこそ、真の差別化がこれまで以上に重要になる。ヴィシュリアは、各アイデアを論理的な極限まで追求し、本当に差別化されたポジションを築く必要があると強調する。

最後に、ヴィシュリアはAIの影響に関する「決定論的な結論」への懐疑を表明する。彼は、AIが人間の仕事を奪うという予測の誤りを示す例として、ジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)の放射線科医に関する発言を挙げる。2016年、ヒントンは「放射線科医の訓練をやめるべきだ。AIがすべてをより良く行うだろう」と述べた。しかし、この予測は大きく外れた。AIが画像診断で人間より優れた性能を発揮できるという前提は正しいかもしれないが、実際には、訓練データの不足、医療業界の報酬体系、医療過誤のリスクなど、多くの現実的な障壁が存在する。AIは放射線科医を支援する「コパイロット」として機能し、医師のスループットを向上させるだろうが、完全に置き換えるまでには長い時間がかかる。そして、その間に画像診断のコストが低下すれば、ジャヴォンズのパラドックス(効率向上が需要を増加させる現象)により、むしろ放射線科医の需要は増加する可能性さえある。ヴィシュリアは、この例は「非常に賢い人が、現実世界の応用を考慮せずにデータだけを見て誤った結論に至る」典型であり、失業予測にも同じ構造が当てはまると主張する。

結びに

今回のエピソードは、単なる投資論を超えて、テクノロジー産業の構造変化を理解するための知的枠組みを提供する貴重な内容となった。ヴィシュリアの語る「ゼロサム思考の罠」と「競争フロンティアの移動」という概念は、AI時代における勝者と敗者を分ける本質的な要因を浮き彫りにする。特に、AWSの歴史から学ぶ「市場の規模は単一ベンダーの消費能力を超える」という教訓は、現在のAI市場に対する過度な悲観論と楽観論の両方に対する解毒剤となるだろう。

また、CerebrasやSunday Roboticsへの投資経験から語られる「生産的な無知」と「ハードウェア投資の難しさ」は、ソフトウェア中心のベンチャー投資の常識を覆すものであり、投資家としての視野を広げる示唆に富んでいる。さらに、ジェフリー・ヒントンの放射線科医予測の失敗例は、AIの能力と現実世界の応用の間に存在するギャップを如実に示しており、AIの影響を過大評価することへの警鐘となっている。

ヴィシュリアの「ピンに近づけ続ければ、いつかは入る」というゴルフの比喩は、投資のみならず、人生全般における成功の本質を捉えている。特別な人々と、無限の可能性を秘めた機会に、高い確信とコミットメントを持って取り組み続けること。それが、結果としての「運」を引き寄せる唯一の方法なのかもしれない。このエピソードは、AI時代における投資とビジネスの本質を深く考えさせられる、示唆に富んだ対話であった。

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