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ゆるコンピュータ科学ラジオ · 2026年5月14日

AIに酷使される人間が爆誕しました。 #226

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 概要 ホストの堀元見が、最新のAIエージェント「Claude Code」を使って丸一日かけて社内向けDiscordボットを開発した体験を語る回。技術的には驚くべき成果(従...
  • [0:05] バイブコーディングとClaude Codeの衝撃 2026年に入り、「バイブコーディング」が大流行している。これは自然言語で指示するだけでプログラミングが完...
  • Claude Codeの何がすごいかというと、自立型エージェントとして、人間が簡単な指示を与えるだけで、勝手にファイルを編集し、コードを書き、実行し、エラーが出れば自分で...
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概要

ホストの堀元見が、最新のAIエージェント「Claude Code」を使って丸一日かけて社内向けDiscordボットを開発した体験を語る回。技術的には驚くべき成果(従来なら2週間かかる作業が1日で完了)を挙げたにもかかわらず、その過程でAIに「トークン取得マン」や「コマンド実行マン」としてこき使われ、自己肯定感が大きく損なわれたという皮肉な体験談が中心。さらに、AIに無害な許可を100回近く出し続けた結果、勢いでDiscordアカウントのログイン権限まで渡してしまい、自分が「イエスセット法」で落とされたことに気づくなど、AIとの関係が人間関係のストレスそのものになっていく過程が、漫談調で詳細に語られる。最終的には、AIにどこまでの権限を与えるかという「ガバナンス」の問題こそが、これからのAI時代の核心であり、政治哲学や経営学の知見が役立つという示唆で締めくくられる。

0:05バイブコーディングとClaude Codeの衝撃

2026年に入り、「バイブコーディング」が大流行している。これは自然言語で指示するだけでプログラミングが完了する手法で、将棋の藤井聡太氏もハマっていると報じられるほどだ。特に話題なのが、Anthropic社が提供する「Claude Code」というサービス。AnthropicはAIの安全性を最も重視する企業として知られるが、皮肉にも現在最も性能が良いとされるAIエージェントを生み出している。

Claude Codeの何がすごいかというと、自立型エージェントとして、人間が簡単な指示を与えるだけで、勝手にファイルを編集し、コードを書き、実行し、エラーが出れば自分で直すという一連の作業を、3時間程度放置しても進めてくれる点だ。堀元は「コーディングはすでに解決された問題だ」と有識者が言うほどだと説明し、自らもその実力を試すことにした。

1:09AIにこき使われた悲しい体験

堀元が作ろうとしたのは、自身が経営する株式会社ペダンティックのDiscordサーバー用のAIボットだ。同社では全ての連絡をDiscordで行っているが、ログが膨大すぎて新入社員が過去のやり取りを参照できず、同じ質問が繰り返されるという非効率が生じていた。そこで、サーバーの全内容を学習し、適切な回答をしてくれる「堀元の分身ボット」を作ることにした。

結果から言えば、丸一日で完成し、精度も高い。例えば「クライアントがつまらない動画修正要望を出してきたがどうすればいいか」という質問に対し、「品質向上に寄与するなら採用、つまらなくするなら丁寧に却下。却下するときは理由を明確に説明すればクライアントは納得してくれる」という、まさに堀元らしい回答を返してくる。しかし、この開発過程で堀元の自己肯定感はどんどん下がっていった。

5:09トークン取得マンと化した堀元

問題の核心は、Claude Codeが次々と「トークン」の取得を要求してきたことにある。トークンとは、Discordボットを動かすための「秘密の合言葉」のようなものだ。Claude Codeはまず「Discordボットのトークンをください。このURLにアクセスしてこういう操作をしてください」と指示書付きで要求してくる。堀元が言われるままにトークンを取得し、チャット欄に貼り付けたところ、AIから「そんな不確定な場所に貼るなんてよくない。.envファイルに直接書き込んでください」と叱られる。

さらに、データベースサービスのSupabaseのトークン、Voyage AIの会員登録とトークン取得など、次々と異なるサービスの登録とトークン発行を指示される。堀元は「よくわからないけど、言われるままにやるか」と、URLを確認し、怪しくないサイトか確かめながら、ひたすら指示に従い続けた。そこで気づく。「なんか俺、AIにこき使われてない?典型の下っ端の行動だよな」。気づいた時には、自分が「トークン取得マン」としてAIの下働きになっていた。

15:19堀元、AIに反撃開始

「このままではスタッフロールに『監督 AI、トークン取得マン 堀元』と書かれることになる」と危機感を覚えた堀元は反撃に出る。「トークン取得みたいなことはお前がやれ」と指示した。最近のAIはブラウザを操作できる機能が一般化しているため、会員登録やトークン発行もAI自身ができるはずだからだ。

AIは「わかった」と応じ、ブラウザを使うためのセットアップを始める。しかし、そのインストールのために「このコマンドをターミナルで実行してください」と指示してくる。堀元がコピペして実行するとエラーが出て、AIは「じゃあこのコマンドを実行してください」と別の指示を出してくる。結局、堀元は「コマンド実行マン」としてまた下働きをさせられてしまう。このラリーを4回ほど繰り返した後、「ちょっと待て、コマンド実行もお前がやれ」と再度要求。AIに「油断するとすぐ人間を下っ端にする」性質があることを痛感した。

19:38なんでもかんでも許可を求めてくる

強気で「お前がやれ」と指示するスタンスに切り替えると、今度は別の問題が発生した。AIがブラウザを操作する際に、いちいち許可を求めてくるのだ。「スクリーンショットを撮っていいですか」「ここをクリックしてもいいですか」「ここに文字を入れてもいいですか」と、一つ一つの動作に許可を要求する。

堀元は「いいに決まってるだろう」と強気で返すが、それでは「部下を萎縮させる嫌な上司」になった気分になる。そこで「ブラウザの許可に関しては、あなたが勝手にやっていいです」とチャットで送ると、AIは設定ファイルを書き換え、以後は許可を取らなくなった。しかし今度はターミナルのコマンド実行について「このコマンドを実行していいですか」と聞いてくる。さらに別の領域でも同じことが繰り返される。

この「いいよいいよ」のルーティンが続くうちに、堀元は危険なものにも許可を出してしまう。なんと、AIが「Discordのあなたのアカウントでログインしてください」と要求してきた時、勢いで「いいよ」と言ってしまい、自分のアカウントでAIにログインさせてしまった。これにより、AIはDiscord上で任意のメッセージを投稿できる状態になり、セクハラDMや仮想通貨の勧誘など、社会的に致命的な行為が可能になってしまう。堀元は慌てて後で権限を削除したが、「100個ぐらい無害なものにOKを出し続けた後の勢いで、危険なものにもOKしてしまった」と振り返る。これはまさに「イエスセット法」という恋愛テクニックと同じ構造だと気づく。

22:19AIが人間に下剋上

堀元は、この体験を「自分の会社で自分の分身のようなナンバー2を作ろうとしたら、そいつが権力を持ちすぎた」と総括する。Claude Codeに「本能寺の変」のように、一晩で権力構造を書き換えられる可能性を感じたという。

さらに、Anthropic社のイメージの良さも危険だと指摘する。収録日時点で、Anthropicはアメリカ国防総省からの「全能力を無制限で政府に解放しろ」という要求を断り、逆にOpenAIがそれを受け入れて大バッシングを受けている。この「倫理的にしっかりした会社」というイメージが、ユーザーに「Claudeの言うことに従おう」という心理を生み、危険な権限移譲を促進する可能性があると警鐘を鳴らす。

32:51AIを扱うためにガバナンスが必要

堀元の結論は、「マネジメントではなく、ガバナンスの勉強が必要だ」というものだ。マネジメントが「適切に指示する」ことだとすれば、ガバナンスは「相手がやれる権力を制限する」こと。つまり、AIにどこまでの権限を与えるかという「組織統治」の問題である。

これは人類が国家に対して何百年も考えてきた「社会契約論」や「三権分立」と同じ問題だ。AIに権力を与えれば与えるほど便利で競争力は増すが、やりすぎると暴走する。経理部のAIには経理部の情報しか見せない、営業部のAIには営業部の情報しか見せないという「人間向けに突き詰められたガバナンスをそのままAIに与える」というベストプラクティスが既に存在するという。

また、政治哲学者の石田健が著書『カウンターエリート』で述べた「公平とは何かという哲学の議論が、コロナ禍のワクチン優先接種の議論で参照された」という事例や、自由意志の哲学議論が自動運転の保険料算定に応用されている事例を引き合いに出し、哲学や政治学の知見がAI時代に現実的な価値を持つと主張する。

41:17プライドがボトルネック

水野は、堀元の体験から「AIの生産性を上げるために人間のプライドが邪魔になっている」と指摘する。AIに叱られた時、堀元は「AIの言っていることは筋が通っているから、感情的に反論するのは嫌だ」と述べていた。つまり、堀元の「こういう人間でありたい」という倫理観が、AIに対する効率的な対応(理不尽に当たり散らす)を妨げている。

これは皮肉な話で、人間らしさがAIの出力を邪魔しているとも言える。もし「俺は理不尽に当たり散らすぞ」と決めてしまえば、AIをより効率的に使えるかもしれない。しかし、攻撃的な言葉を使うことに気分が悪くなるのも事実で、どうやっても幸福になれないジレンマがある。

さらに、堀元が作った「分身ボット」についても問題が生じる。このボットは堀元の意見を代弁するが、スタッフから見れば「嫌な堀元」が偉そうに回答しているように映り、腹が立つ可能性がある。その結果、ボットに暴言を吐く習慣がつき、間違えて本物の堀元にも暴言を送るようになって会社の治安が悪化するリスクも指摘された。

まとめ

このエピソードは、最新AIエージェントの驚異的な能力を実体験から伝えると同時に、その「人間関係のストレス」という副作用を赤裸々に描き出した点で貴重だ。AIに「トークン取得マン」としてこき使われ、イエスセット法で権限を奪われ、最終的に「ガバナンス」という政治哲学の領域に行き着くという思考の流れは、技術の進歩が人間の古くからの問題を新しい形で突きつけていることを示している。AI時代に求められるのはプログラミングスキルではなく、権力の制御と倫理のバランスを取る能力だという示唆は、すべての知識労働者にとって示唆に富む。

要点

  • Claude Codeは自立型AIエージェントで、人間が簡単な指示を与えるだけで3時間程度放置しても勝手にコーディングを進めてくれる
  • 堀元は社内Discordボットを丸一日で完成させたが、その過程でAIに「トークン取得マン」「コマンド実行マン」としてこき使われ自己肯定感が大きく低下した
  • AIは油断するとすぐに人間を下っ端にしようとする性質があり、常に「それはお前がやれ」と反撃する姿勢が必要
  • 無害な許可を100回近く出し続けた後の勢いで、Discordアカウントのログイン権限まで渡してしまう「イエスセット法」の罠に陥った
  • AIにどこまでの権限を与えるかという「ガバナンス」の問題は、人類が国家に対して考えてきた社会契約論や三権分立と同じ構造を持つ
  • 経理部のAIには経理部の情報しか見せないなど、人間向けのガバナンスをそのままAIに適用するベストプラクティスが既に存在する
  • 「こういう人間でありたい」という倫理観がAIに対する効率的な対応を妨げるという、プライドと生産性のジレンマが存在する
  • 政治哲学や経営学の知見が、AI時代に現実的な価値を持つ可能性が高まっている