
E159: ハイパーリキッドCEO ジェフ・ヤン — AIが支配する前に、暗号が金融を修正すべき理由
- 概要 HyperliquidのCEOであるJeff Yanが、11人のチームで10億ドルのエアドロップを実施し、それが100億ドル規模に成長した驚異的なストーリーを語る。...
- --- [2:01] シンガポールとビルダー文化 Jeff Yanはシンガポールについて「非常に退屈だが、それが良い」と語る。安全性、近代性、そして「すべてが機能する」環...
- この「ノイズを排除して構築に集中する」姿勢は、Hyperliquidの企業文化そのものを反映している。Yanは「私たちはメタや他人の理論的な意見を気にしない。コミュニティ...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
When Shift Happens ポッドキャスト / Kevin Follonier
概要
HyperliquidのCEOであるJeff Yanが、11人のチームで10億ドルのエアドロップを実施し、それが100億ドル規模に成長した驚異的なストーリーを語る。彼は「暗号資産はAIに取って代わられる前に金融を根本的に変革すべきだ」という強力なテーゼを掲げ、Hyperliquidを単なる暗号プロジェクトではなく、金融システムそのものをアップグレードするための「インターネット上のマネーレイヤー」として位置づける。ホストとの対話は、技術的な深掘りと創業者の生の哲学が交錯し、暗号業界の現状と未来に対する率直な議論が展開される。
---
シンガポールとビルダー文化
Jeff Yanはシンガポールについて「非常に退屈だが、それが良い」と語る。安全性、近代性、そして「すべてが機能する」環境は、気を散らされることなく構築に集中できる理想的な場所だという。彼は「退屈」という批判をむしろ肯定的に捉え、暗号業界のノイズから距離を置くことの重要性を強調する。
この「ノイズを排除して構築に集中する」姿勢は、Hyperliquidの企業文化そのものを反映している。Yanは「私たちはメタや他人の理論的な意見を気にしない。コミュニティとして信じるものをただ構築する」と述べ、業界のトレンドに流されない姿勢を明確にする。
---
10億ドルから100億ドルへのエアドロップ:成功の裏側
前回のポッドキャスト収録から約13〜14ヶ月後、Hyperliquidはコミュニティに約10億ドル相当のトークンをエアドロップし、それが数ヶ月で100億ドル規模に成長した。Yanはこの瞬間について「非常に稀有なこと」と評価する。なぜなら、ChatGPTの初期ユーザーがOpenAIから富を得ることはないように、通常のテクノロジーでは初期参加者がネットワークの価値上昇を直接享受することは難しいからだ。
しかしYanは「私たちは決して『やった』とは思わない。常に『まだ何を達成していないか』を考えている」と語る。彼のビジョンはあまりに大きく、近づくことすら容易ではないという認識が、チームを謙虚かつ集中させ続けている。驚いたのは「圧倒的にポジティブな反応」であり、人々が「これこそ暗号が本来あるべき姿だ」と言ってくれたことに深い充実感を覚えたという。
---
暗号業界の人材流出と「カルト」の本質
Yanは暗号業界の深刻な問題として「優秀な人材がAI分野に流れている」ことを指摘する。多くの才能ある人々が、暗号の悪い評判や「真剣に構築しようとしない人々」のイメージのために、この分野を真剣に検討すらしていないという。彼は「これは完全に誤った認識だ」と断言し、Hyperliquidコミュニティは「メタを気にせず、信じるものを構築する」ことで模範を示すべきだと語る。
「カルト」という表現については、Yanは慎重に否定する。「人々が共通の価値観と目標に向かって情熱的に集まるのは、暗号業界では稀有だからそう見えるだけだ。本来は普通のことだ」と述べ、外部の人々を惹きつけるには「レガシー金融システムでは提供できない価値を証明する」こと以外に方法はないと主張する。
---
11人のチームで100億ドルを動かす:運営の秘密
トークン生成イベント(TGE)後も、Hyperliquid Labsのチーム規模はほとんど変わっていない。Yanは「TGEはネットワークの分散化における重要なマイルストーンであって、人員を10倍に増やすためのものではなかった」と説明する。彼は「少数の非常に優秀でコミットした人々と働くことを好む」と明言し、大規模な組織よりも小規模なチームの方が効果的だと考える。
重要なのは「何を内部で構築し、何を外部に委ねるか」の判断だ。Yanの原則は「外部で構築できるものは外部に任せる」というものだが、HIP3(パーミッションレス・パープ)のような前例のない試みは、この原則の厳格な適用が難しい例だと認める。「完全に中央集権的にやれば速いかもしれないが、真にグローバルにスケール可能で回復力のあるシステムを構築するには、難しい方法を選ぶべきだ」と語る。
---
高潔さのテストとチームの結束
一夜にして大金を得たチームメンバーをどうやってモチベートし続けるのか?Yanは「私たちは高潔さを非交渉条件としている。もし彼らが単に金を稼ぎたいだけなら、もっと簡単な方法を選ぶだろう」と語る。採用プロセスでは、少なくとも丸一日一緒に仕事をし、技術面だけでなく人格面も評価する。チーム内で「これはノー」という感覚があれば、たとえ一人でも拒否権を発動する。
驚くべきことに、これまでチームを去ったメンバーは一人もいない。Yanは「人々がシステムから『抽出できる価値』ではなく『生み出せる価値』に動機づけられている」と分析し、このエネルギーこそがHyperliquidの強みだと語る。チームは祝賀会すら開かず、マイルストーンを通過しても「次にやるべきこと」に集中し続けている。
---
買い戻し批判とFUDへの対処
Hyperliquidが毎日トークンを買い戻して焼却する仕組みについて、一部の賢い批評家は「価格が高い時に買い戻しを減らし、低い時に増やすべきだ」と批判する。Yanはこの批判を「根本的な誤解」と断じる。Hyperliquidの買い戻しは裁量的なプログラムではなく、イーサリアムがプライオリティフィーを焼却するのと同じように、プロトコルレベルで自動化されたルールベースの仕組みだ。「イーサリアム開発者に『Vitalikがプライオリティフィーをより有効に使えるのでは』と問う人はいない」と皮肉を込めて反論する。
FUD(恐怖・不確実性・疑念)への対応について、Yanは「以前は無視するのが最善だと思っていたが、それは間違いだった」と認める。特に2024年10月10日の事件では、Hyperliquidが唯一の透明な取引所だったために攻撃の標的となり、競合他社が虚偽の情報を流布したという。彼は「中央集権取引所は自社のドキュメントに『1秒間に最初の1件の清算のみを報告する』と書いてあるのに、その数字をHyperliquidの全清算と比較するのは単なる誤情報だ」と怒りをあらわにする。
---
HyperEVMとHIP3:技術的ブレークスルー
HyperEVMは、イーサリアム上で動作するスマートコントラクトをHyperliquid L1上でそのまま動かせるようにする仕組みだ。Yanは「表面的にはイーサリアムと似ているが、本質的に異なる」と強調する。HyperEVMは単なる互換レイヤーではなく、Hyperliquidのネイティブプリミティブ(オンチェーンオーダーブックなど)にアクセスできる「ポータル」として機能する。これにより、CircleのUSDCのような既存のインフラとの統合が可能になるが、その深い理解が必要なため、一般の認知度はまだ低いという。
HIP3(パーミッションレス・パープ)は、誰でもHyperliquid上でパーペチュアル(無期限先物)を展開できるようにする仕組みだ。Yanは「パープは暗号が生み出した最も重要な金融イノベーションの一つ」と評価し、伝統的な金融の多くの資産クラスでもパープが採用されるべきだと主張する。実際、HIP3市場ではシルバーのパープが世界の価格発見の約2%を占めるまでに成長した。Yanは「これはコアチームの手柄ではなく、このプリミティブを活用したビルダーたちの成果だ」と謙虚に語る。
---
「すべての金融をオンチェーンに」:ビジョンと現実
Yanの「すべての金融をハウジングする」というビジョンは、金融システムの断片化を解消することにある。「ユーザーは銀行口座、証券口座、様々な支払い手段を切り替える必要があるべきではない」と彼は言う。しかし、暗号ならではの付加価値は「そのプラットフォームが中央企業に支配されないこと」だ。多くのチームが構築したものが自動的に相互運用可能になるネットワーク効果こそが、真の金融システムを生み出すと主張する。
YanはHyperliquidを「暗号企業」ではなく「暗号レールを使った金融企業」と定義する。「私たちはDeFiの価値を心から信じている。金融は金融であり、暗号は人々が金融生活を営むレールをアップグレードする可能性を持っている」と語る。この視点は、単なる「最高の暗号取引所」を目指すのではなく、金融システムそのものを再構築するという壮大な野心を示している。
---
エコシステムの重要な構成要素:USDH、Kinetic、Hyperlend
Hyperliquidエコシステムの重要な要素として、Yanは3つのプロジェクトを挙げる。USDHは「アラインド・ステーブルコイン」と呼ばれる仕組みで、プロトコルが国債などの利回りをステーブルコイン発行者と共有する。これにより、HYPE保有者、ステーブルコイン発行者、トレーダーの三者が利益を享受できるという。
Kineticは最大のリキッドステーキングトークンであり、完全にオンチェーンで動作する初めての仕組みだ。通常のステーキングにはオフチェーンコンポーネントが存在するが、Hyperliquidではすべての読み取り・書き込み操作をスマートコントラクト内で完結できる。
HyperlendはEVM上の貸借プロトコルで、Yanは「ポートフォリオマージンが実現すれば極めて重要になる」と予測する。中央集権取引所では、ユーザーに無担保の与信枠を提供できるが、DeFiではそれは許されない。Hyperliquidのアプローチは、貸出市場がポートフォリオマージンの裏付けとなることで、ブラックスワンイベント時の不良債権リスクを排除するというものだ。
---
公平性の代償とAI時代への警鐘
「公平性はツイートするのは簡単だが、実装するのは高くつく」という問いに対し、Yanは「具体的なコストを計算したことはない」と答える。彼にとって公平性は「コストベネフィット分析の対象ではなく、不可侵の原則」だ。FTXの事例を引き合いに出し「もし彼らが捕まらなければ、そのまま成功していたかもしれない。しかし私たちにとって、原則を妥協することは無限のコストを意味する」と語る。
エピソードの締めくくりとして、Yanは最も力強いメッセージを残す。「AIが人間の知能を凌駕する前に、機械がプラグインできる金融システムを構築しなければならない。レガシー金融システムはコードと価値が同じ土俵にないため、AIは決して接続しない。もし私たちが失敗すれば、人間は金融システムから排除される。Hyperliquidは、そのための最良の選択肢だ」と断言する。
---
まとめ
このエピソードの核心は、Jeff Yanが提示する「暗号はAI時代の前に金融インフラを完成させるべきだ」という壮大なテーゼにある。彼はHyperliquidを単なる暗号プロジェクトではなく、人類がAI時代に備えるための「インターネット上のマネーレイヤー」として位置づける。11人のチームで100億ドル規模のエコシステムを構築した実績と、公平性・透明性を何よりも重視する姿勢は、暗号業界に希望と方向性を与える。技術的な深さと哲学的なビジョンが融合した、稀有なインタビューとなっている。
---
要点
- Hyperliquidは11人のチームで10億ドルのエアドロップを実施し、数ヶ月で100億ドル規模に成長したが、創業者のJeff Yanは「まだ何も達成していない」という姿勢を崩さない
- トークンの買い戻しは裁量的ではなく、イーサリアムの手数料焼却と同様にプロトコルレベルで自動化されたルールベースの仕組みである
- HyperEVMは単なるイーサリアム互換レイヤーではなく、Hyperliquidのネイティブプリミティブにアクセスできる独自のポータルとして機能する
- HIP3(パーミッションレス・パープ)により、誰でもHyperliquid上で無期限先物を展開でき、シルバー市場では世界の価格発見の2%を達成した
- 「すべての金融をオンチェーンに」というビジョンは、中央企業に支配されない相互運用可能な金融システムの構築を目指す
- チームメンバーは全員がTGE後も残留し、金銭的動機ではなく「価値を生み出すこと」にモチベーションを感じている
- AIが人間の知能を凌駕する前に、機械が接続できるプログラマブルな金融システムを構築することが人類の急務である
- 公平性と透明性はコストベネフィットの対象ではなく、妥協できない不可侵の原則として扱われている