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normalize.fm · 2026年5月8日

089. はじまりは いまも Hello world

AI generated article / ja / deep
この記事でわかること
  • 概要 第89回のnormalize.fmは、ホストの杉本(ドクサス)がゲストに梶田翔也(Cell Interactive所属)を迎え、約2時間にわたって繰り広げられた、技...
  • [0:17] 「WebGLスクールの課題がぶっちぎってた」——教える側の視点と、作る側の視点 収録は杉本の「久しぶりの収録です」という軽い自己開示から始まる。ゲストの梶田...
  • 梶田はその理由を、自身の「先輩からのフィードバック」に求める。デモ的に作った作品を共有したところ、「これ、何に使えばいいかわからん」と言われたのだ。その経験から、梶田は「...
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概要

第89回のnormalize.fmは、ホストの杉本(ドクサス)がゲストに梶田翔也(Cell Interactive所属)を迎え、約2時間にわたって繰り広げられた、技術談義であり人生相談であり、互いの創作観をさらけ出す濃密な対話である。WebGLスクールの受講生だった梶田が、いかにしてCGの基礎を武器にブレンダーやUnity、さらにはMediaPipeへと領域を広げ、ポートフォリオサイトでプチバズを起こすに至ったか。その過程で浮かび上がるのは、「教える側になりたい」という原動力が「教えるものそのものへの興味」に転じていくプロセス、そして「ウェブだけに依存しないスキルを持ちたい」という切実なキャリア観だ。杉本自身もまた、昨年末から続く「やる気の喪失」と「モンハンだけの日々」を赤裸々に語り、二人の間で「才能」「センス」「自信のなさ」といったテーマが往復する。収録の空気は終始リラックスしており、時に笑い、時に深くうなずき合うような、師弟を超えた同志の会話が印象的だ。

0:17「WebGLスクールの課題がぶっちぎってた」——教える側の視点と、作る側の視点

収録は杉本の「久しぶりの収録です」という軽い自己開示から始まる。ゲストの梶田は、杉本が運営するWebGLスクールの元受講生であり、今回が初対面の収録だという。杉本は梶田のスクール時代の作品について、「手が込んでいる」「他の人のラインをぶっちぎっていた」と振り返る。通常、2週間という限られた期間で提出される課題は、ある程度の「質感のライン」に収まるものだが、梶田の作品は「このまま仕事に使える」レベルだったという。

梶田はその理由を、自身の「先輩からのフィードバック」に求める。デモ的に作った作品を共有したところ、「これ、何に使えばいいかわからん」と言われたのだ。その経験から、梶田は「最低限、形になるように」「イメージしてもらえるように」と、実用性を意識した制作を心がけるようになった。杉本はこのエピソードを聞き、「スクールの課題の枠を超えて、使用用途まで含めて取り組んでいたからこそ、ああいう作品になったんだな」と納得する。

ここで注目すべきは、梶田が「教える側になりたい」という原初の欲求を持ちながら、現在は「教える前の段階——つまり、作る側として深く極めることに興味がある」と語った点だ。彼はかつて専門職の先生を志し、システムエンジニアを経てウェブ制作にたどり着いた。その根底には「教わる経験を通じて、自分も教える側に立ちたい」という思いがある。しかし、時間とともに「教えるものそのもの」への興味が先行し、今は「自分が人に教えられるレベルに達したと感じたときに、また教えたい欲が出てくるのではないか」と語る。この自己認識の正確さが、後の「自信のなさ」や「コンプレックス」の話へとつながっていく。

7:36「WebGLのおかげでCGの概念が仕入れられた」——基礎が他ツールに転移する体験

梶田がWebGLスクールで学んだ知識は、その後、まったく別のツールであるUnityやBlenderを触る際に「めちゃめちゃ生きている」という。彼は「CGの根幹部分、知識や仕組みはだいたい共通。エンジンが違っても考え方は同じ」と語り、そのおかげで初めてのUnity案件をなんとか乗り切れたと振り返る。杉本も「ラスタライズという原理自体は同じだからね」と同意する。

この「基礎の転移」は、梶田がBlenderを始めたきっかけにも直結している。WebGLでコードを書いて頂点を定義したりアニメーションをつけたりするのが「大変だな」と感じた彼は、GUIで直感的に操作できるBlenderに魅力を感じた。数学が得意でなかった梶田にとって、GUIで形状を定義できることの便利さは圧倒的だった。そしてBlenderを学んだことで、今度は「フォトリアルな表現をどうにかWebGLでできないか」という新たな興味が生まれ、世界が広がっていく。

杉本はこの流れを「学習コストを払ってでもGUIの便利さが勝っている」と評し、梶田の「機械オンチ」な一面——20歳を過ぎてからパソコンを触り始めたというエピソード——にも触れながら、その成長を称賛する。梶田自身は「スクールで基礎を学んだからこそ、BlenderのUIに表示される情報も入ってきやすかった」と、スクールへの感謝を繰り返した。

18:37「WebGLスクール、今年も悩んでるんですよ」——時代の変化と、なくしたくない灯

杉本が「今年もスクールを続けるかどうか、毎年悩んでいる」と打ち明けると、会話のトーンが少し沈む。参加者の応募数は年々減少しており、梶田が受講した頃は50人ほどいたが、昨年は20人にも満たなかったという。杉本は「AIが出てきて、勉強しなくてもやってくれる時代になった」と時代の変化を認めつつも、「中身で何をやってるかわかってないとできないことって、やっぱりある」と、基礎知識の重要性を強調する。

特に、流体表現やフォトリアルな質感を出すための物理ベースレンダリングなど、学習コストが高い領域はAIがパッと作ってくれるが、それをそのまま納品して終わる仕事はない。クライアントの要望に応じてトーンを合わせたり、モーションをつけたり、色味を変えたりするたびにプロンプトだけで正解にたどり着くのは不可能だと杉本は指摘する。梶田も「日本では杉本さんのところしかないと思うので、なくなってしまうのは悲しい」と付け加え、スクールの存続が業界全体にとって持つ意味をほのめかした。

このやり取りは、単なる「昔はよかった」論ではなく、技術のブラックボックス化が進む時代にあって、基礎を教える場の価値を再確認するものだった。杉本は「本当に必要としている人に届かなくなってしまうのが怖い」と本音を漏らし、梶田は「自分も教えられるようになりたい」と応える。師弟の関係を超えた、同じ志を持つ者同士の共鳴が感じられる場面だ。

29:45「社長と距離が近い会社」——ウェブだけに依存しないキャリアの作り方

梶田が所属するCell Interactiveは、10人前後のグループ会社で、オフィスはフリーアドレス。社長との距離が非常に近く、作ったものを共有すれば「お仕事につなげてくれる」という。エンジニアでありながらドローンを飛ばす人、デザイナーでありながらカメラマンやコピーライターを兼ねる人など、「何でもやる」社風が特徴だ。

梶田は「ウェブエンジニアを辞めたいわけじゃない。でも、辞めなきゃいけなくなった時に大丈夫なように、二足のわらじを履いておきたい」と語る。この言葉に杉本は強く共感する。杉本自身も「WebGLと言えば杉本さん」というレッテルがメリットでありデメリットでもあると認め、「WebGLだけに依存している状態でいいのか」という不安を抱えているからだ。

杉本は昨年末から「やる気がなくなった」状態に陥り、2〜3ヶ月間、モンスターハンターワールドだけをプレイして過ごしたという。仕事はちゃんとこなしていたが、余剰時間をすべてゲームに注ぎ込んだ。その結果、「未来が見えない」という感覚に苛まれる。しかし同時に、「自分はすごく頑張っていたんだな」とも気づく。この自己矛盾を、杉本は「人生って難しい」と苦笑しながら語る。

梶田は「せっかく面白い業界にいるので、60代くらいまでしがみついていたい」と、長期的なキャリアを見据えた発言をする。そのために、ウェブだけに限定されないスキルセットを持ちたいという彼の姿勢は、杉本の「依存しすぎない方がいい」という考え方と完全に一致していた。

42:10「Hello world」への思い——ポートフォリオに詰め込んだエゴと原点

梶田が2025年1月に公開した新しいポートフォリオサイトは、大きな反響を呼んだ。MediaPipeというGoogleのAIフレームワークを使い、カメラ越しの指の動きでスクロールやクリックができるという、SF映画のようなインタラクションを実装している。杉本は「めっちゃ話題になってた」と驚きを隠さない。

しかし、このサイトの真の価値は技術的な斬新さだけではない。梶田は「Hello world」というタイトルに、自身の原点を込めたと明かす。彼がウェブ業界に入りたいと思ったきっかけは、S5 Studioの田渕翔さんがかつて公開していたポートフォリオサイトだった。そのサイトには「Hello world」という文字が使われており、当時「こんなサイトがあるんだ」と衝撃を受けたという。その感情を「大事にしていた」ため、尊敬とインスピレーションの意味を込めて、自分のサイトにも「Hello world」を採用した。

さらに、サイトで使われている音楽も「Hello world」というタイトルの音源で、運命的な偶然を感じて採用したという。SFテイストのグリッチエフェクトや、GPU負荷を考慮したテクスチャ一枚での表現など、細部へのこだわりが随所に光る。杉本は「ポートフォリオって、表面だけ見てもわからない思いが詰まっている。本人から話を聞けて本当に面白い」と感嘆する。

特筆すべきは、このサイトのアクセス解析で「9割が日本人だった」という事実だ。梶田は普段、SNSでデモ作品を公開すると「半分以上が海外からの反応」だったため、日本からの反響が大きかったことに「すごく嬉しかった」と語る。杉本は「海外でバズるより、自分のコミュニティに刺さる方が嬉しいよね」と理解を示し、梶田の作品がようやく国内で評価されたことに「胸アツだった」と述べた。

58:41「才能は開花させるもの、センスは磨くもの」——自信のなさと向き合う方法

会話の後半、梶田は自身の「劣等感」や「虚無感」について率直に語り始める。「自分には才能とセンスがないと思う。客観的に見て、自分よりすごい人はたくさんいる。でも、それに抗いたくてしょうがない」。この感覚に杉本は深く共感する。「自分が作ったものがいいのか悪いのか、自分ではわからない。人に『すごい』と言われて初めて、『ああ、できてたのかも』と思える」と、同じような経験を打ち明ける。

梶田は、この「自信のなさ」に対抗するための心の支えとして、アニメ『ハイキュー!!』に登場するセッター・及川徹の言葉を引用する。「才能は開花させるもの、センスは磨くもの」。この「諦めなければ後天的に開花させられる」というマインドを、彼は「大事にしている」という。インプットの方法も、ゲームやアニメのオープニング・エンディングを「金かかってんな」と思いながら見たり、メディアアートの展示に行ったりと、感覚的に磨いている。

杉本は「前向きでいられること自体が才能の一つだと思う」と応じ、梶田の姿勢を称賛する。しかし、梶田は「美大に行っていないというコンプレックス」も抱えていると明かす。現在の会社は美大卒の人が多く、同じ興味や志を持つ同世代の環境に身を置けなかった後悔があるという。杉本も「写真を始めて全く同じことを思った」と語り、大学すら出ていない自分が写真学校に行こうとすると、卒業証明書の取り寄せから始まる遠回りが必要だと苦笑する。

1:35:34「カメラ、ちょっと気になってる」——CGにも活かせる新しい視点

収録の終盤、梶田は「最近カメラや写真が気になっている」と打ち明ける。目的は「素材を撮るため」であり、CGで構図を考える際に、実際にカメラを触ってみないとわからないことがあると感じているからだ。杉本は「CGやってる時にカメラワークを考えるけど、画角やカメラの位置を学ぶにはカメラはすごくいい」と強く勧める。

杉本自身、過去にさまざまなカメラを買い漁り、フィルム写真にも手を出した経験がある。彼は「ラスタライズ方式のCGは自然にはボケないが、物理カメラはどんなに絞っても近くのものを撮れば後ろがボケる。その違いを体感できる」と説明する。また、マウント(岡部)さんの作品を例に挙げ、「カメラをやっていた人の構図の取り方は、CGだけの人とは明らかに違う」と指摘する。

梶田は「iPhoneで撮っているけど、なんか違うなと思っていた」と話し、杉本から「収録終わったら、ちょうどいいカメラを紹介するよ」という約束を取り付ける。この何気ないやり取りが、二人の関係性——師弟でありながら、互いの興味を刺激し合う関係——を象徴している。

まとめ

このエピソードは、技術の話でありながら、それ以上に「クリエイターとしてどう生きるか」という普遍的な問いを扱っている。梶田の「ウェブだけに依存しないスキルを持ちたい」という戦略的なキャリア観、杉本の「やる気がなくなってモンハンだけやってた」という正直な告白、そして二人が共有する「自信のなさ」と「それでも作り続ける理由」。これらの要素が、単なる技術トークを超えた深みを生み出している。

特に印象的なのは、梶田が「Hello world」という言葉に込めた原点回帰の物語だ。彼がウェブ業界に入るきっかけとなったポートフォリオサイトへのオマージュは、単なるリスペクトではなく、「自分も誰かのきっかけになりたい」という願いの表れでもある。そして、その願いは、杉本が運営するWebGLスクールの存在意義——基礎を教え、次の世代を育てる——と完全に重なる。

最後に杉本が「人生って難しいけど、前向きでいられること自体が才能だと思う」と語った言葉が、この回全体を貫くテーマを象徴している。技術の習得も、キャリアの構築も、自信のなさとの闘いも、すべては「作り続けること」への執着に収束する。その執着を、二人は互いに認め合い、励まし合いながら、次の一歩を踏み出そうとしている。このエピソードは、そんな「作り手の生態」をありのままに切り取った、貴重な記録である。