
見えているのに気づかれないチャンス
- 「今、チャンスはどこにあるのか?」——この問いを、My First MillionのShaan PuriとSam Parrはエピソード全体の軸として掲げた。表面的な答えは...
- Shaan Puriは冒頭で、自身が2013〜14年頃に取り組んでいた事業を振り返る。それはBebo(過去の全盛期を過ぎたSNS)やTwitchの競合プラグインなど、明ら...
- [5:38] GTA VIとその周辺経済:隠れた巨大市場 Shaanが「書いた答え」の一つは、意外にも「Grand Theft Auto VI」だった。彼の友人が1年前に...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
My First Million / Hubspot Media
「今、チャンスはどこにあるのか?」——この問いを、My First MillionのShaan PuriとSam Parrはエピソード全体の軸として掲げた。表面的な答えは「AI」「ペプチド」「生物学×AI」といった誰もが口にする領域だが、二人が本当に掘り下げたのは、その先にある「見えにくいが確実な機会」の構造である。Shaanは、自身が2010年代にソーシャルメディアやメッセージングアプリという「前の波」に乗り遅れた失敗を率直に認め、その教訓から「今、何をすべきか」を具体的な事例とともに語る。話題は、OpenAIによるTBPN(The Best Podcast Network)買収の戦略的意味、GTA VIを巡る周辺経済の可能性、ウィリアム・ランドルフ・ハーストのメディア帝国と人材収集術、そしてクリエイティブ人材のマネジメント論へと縦横無尽に展開される。エピソード全体に流れるのは、「既に証明されたもの」ではなく「これから生まれるもの」に賭けることの重要性と、そのために必要な「ロックイン(没頭)」の精神である。
Shaan Puriは冒頭で、自身が2013〜14年頃に取り組んでいた事業を振り返る。それはBebo(過去の全盛期を過ぎたSNS)やTwitchの競合プラグインなど、明らかに「前の波」の残滓を追うものだった。彼はこれを「ラストウェーブ・オポチュニティ」と呼び、自分の不安と自信のなさが原因で、既に成功が証明された領域に飛びついていたと自己分析する。しかし、ベンチャー型テクノロジー企業はネットワーク効果により勝者が総取りする構造であり、Airbnbが成功した5年後に同じことを始めても勝ち目はない。彼が当時見逃していた本当の機会は、暗号資産、機械学習・ビッグデータ、そして新しいモバイルアプリの波だった。この反省を踏まえ、Shaanは「今、チャンスはどこにあるのか」を真剣に問うことの重要性を強調する。それは14歳の少年が「どうやって女の子にキスされるか」を考え抜くのと同じくらい、原始的で本質的な問いだと彼は言う。
GTA VIとその周辺経済:隠れた巨大市場
Shaanが「書いた答え」の一つは、意外にも「Grand Theft Auto VI」だった。彼の友人が1年前に「Take-Two Interactiveの敵対的買収」を計画していたという逸話から、このゲームの資産価値が語られる。Take-TwoのCEOであるZelnickは60代後半でありながら驚異的な肉体を誇り、Shaanは「シャツを脱いだZelnick」をGoogle検索するよう勧める。その友人は、GTAを「ウォーレン・バフェットが説明するような、信じられないほどの堀(moat)を持つビジネス」と評した。前作GTA Vは発売3日で10億ドルを売り上げ、12年経った今でも年間5億ドルを売り続けている。シリーズ累計販売数は約5億本、生涯収益は200億ドルに達する。これはポケモンやハリー・ポッターと並ぶ、全エンターテインメントIPの中でも最高峰の存在だ。新作GTA VIの開発費は10億ドルとされ、発売初年度の売上予測は30億ドル、発売前の予約だけで10億ドルに達する可能性がある。Shaanは、このゲームを巡って「13〜25歳の若者」が参入できる周辺経済が形成されると指摘する。前作の時には「NoPixel」というMOD版が作られ、Twitchで本家よりも人気を博し、最終的に会社に買い戻された。コンテンツ制作、MOD開発、データスクレイピング、ゲーム内アイテム販売など、数百億ドル規模のゲーム本体を取り巻く数億ドル規模のエコシステムが、まだ誰も先行者利益を獲得していない状態で待っている。
ゲーマー経済の「ツルハシとシャベル」:G FuelとElgatoの戦略
Shaanは、ゲーム周辺ビジネスの成功例としてG FuelとElgatoを挙げる。G Fuelはエナジードリンクブランドだが、その成功要因は「Twitchストリーマーの過小評価された資産価値」に着目した点にある。従来のブランドはフォロワー数でインフルエンサーを評価していたが、G FuelはTwitchストリーマーが視聴者と築く「信頼の深さ」に注目した。視聴者はストリーマーを1日8時間ライブで視聴するため、その影響力はフォロワー数から予想される価格帯と乖離していた。G Fuelはナイキのプレイブックをストリーマー向けに応用し、人気ストリーマーごとにオリジナルフレーバーとシェイカーボトルを開発、アフィリエイト収入を分配するモデルを構築した。当時、伝統的ブランドはまだストリーマーにアプローチしていなかったため、彼らは容易にトップストリーマーと提携できた。その結果、G Fuelはゼロから1億ドルの売上に到達した。一方、Elgatoはストリーミング用のアクセサリー(キャプチャーボード、マイク、照明など)を販売する「ツルハシとシャベル」ビジネスであり、その後ポッドキャスト市場の成長にも乗ってさらに拡大した。Shaanは、Twitchの視聴習慣についても詳しく解説する。トップカテゴリーは「Just Chatting(ゲームをしない雑談)」であり、次いで「IRL(リアルライフ配信)」が45,000人のライブ視聴者を集めている。視聴者はスマートフォンでメインコンテンツとして見るか、テレビやセカンドモニターで「待合室の雑音」のように流すかの二通りであり、プログラマーが作業中にバックグラウンドで流すケースも多い。
OpenAIによるTBPN買収:戦略的意味と憶測
SamとShaanは、OpenAIによるTBPN(The Best Podcast Network)買収について徹底的に分析する。買収額は非公開だが、1億〜2億ドルと噂されている。TBPNはJohn CooganとJordyが運営するテック系ライブショーで、わずか12〜18ヶ月の歴史しかない。Shaanは「これはJohnとJordiにとっては信じられないほどのディールだ。10回中10回、絶対に受けるべき」と評価する一方、OpenAIにとっては「非常に賢明とは言えない」と断じる。その理由は、ChatGPTがすでに9億人の月間アクティブユーザーを抱える中で、視聴者数が数万人規模のメディアを買っても成長に直結しないからだ。HubSpotがThe Hustleを買収したケースとは異なり、OpenAIには「このメディアから顧客を獲得した」という直接的な帰属が存在しない。Shaanは「2年後、OpenAIの取締役会が『なぜメディア会社を所有しているんだ?』と言い出し、売却またはスピンオフするだろう」と予測する。しかしSamは別の見方を提示する。「OpenAIの時価総額が8,000億ドルだとすると、1億ドルは0.001%に過ぎない。JohnとJordiのような、現代のメディアとコミュニケーションに精通したユニークな才能を社内に迎え入れ、彼らがコム戦略を1つ改善するだけで、その価値は十分に回収できる」と論じる。さらに、アメリカ社会におけるAIへの根深い反感——Sam Altmanの自宅に火炎瓶が投げ込まれ、銃弾が撃ち込まれた事件——を考慮すれば、パブリックイメージの改善はOpenAIにとって喫緊の課題であり、TBPNの買収はそのための布石である可能性がある。
ジョン・クーガンの「ロックイン」:成功の裏にある2つの物語
Samは、TBPNの共同創業者John Cooganに関する2つの印象的なエピソードを語る。第一に、JohnはYouTubeで45万人の登録者を持ち、直近の動画(ビザに関するニッチなテーマ)が100万回再生されるという成功を収めていたにもかかわらず、それを捨ててTBPNに全力を注いだ。ライブ配信の視聴者が当初は3,000人しかいない中で、彼は毎日スーツを着てスタジオに通い、16件のインタビューをこなし、クリップを編集し、翌日の準備をするという日々を送った。Samは「山の頂上から一度下りて、新しい道を歩き始めることの難しさ」を強調する。第二に、Samが主催するバスケットボールキャンプ(Airbnb創業者、Reddit創業者、Mr. Beastなどが参加する超豪華イベント)にJohnを招待した時の話。当時TBPNはまだライブ配信すら始めておらず、Twitterで面白いツイートにスーツ姿で返信するだけのアカウントだった。Johnは「48時間のイベントなら大丈夫だろう」というSamの説得を断り、「勢いを失いたくない」と参加を辞退した。Samは「自分なら絶対に行っていた。あのイベントに行けば、すごい人脈ができる。たった2日間だし、後で戻ってこられると思う。でもJohnは違った。彼は『グレート・ロックイン』を実行したんだ」と語る。この「ロックイン」とは、12ヶ月間、毎日全力で一つのことに没頭し、他人がどう思おうと自分たちが重要だと信じることをやり続ける姿勢を指す。Shaanは、このエピソードを「どんなプロジェクトでも、初期に必要な手動でのクランキング作業の量は過小評価されている」という教訓として受け止める。
ウィリアム・ランドルフ・ハースト:200年企業とクリエイティブ人材の収集術
Shaanは、200年近く続く企業を作りたいという自身の関心から、ウィリアム・ランドルフ・ハーストの生涯を詳しく紹介する。ハーストは1860年生まれで、父親は鉱山業で成功した後、全財産を失い、60歳で再びアメリカ一の富豪になったという波乱万丈の人生を送った。ハースト自身はハーバード大学で社交界のリーダーとなり、父親からサンフランシスコ・イグザミナー紙を買い与えられる。彼は「イエロージャーナリズム」と呼ばれる手法——見出しを大きくし、写真を入れ、「血が出ればトップニュース(If it bleeds, it leads)」という原則——で新聞業界に革命を起こした。この手法は、米西戦争の引き金の一つにもなった。ハーストのメディア帝国は全米の20%が情報を得る規模に成長し、彼自身は世界のトップ10富豪の一人となった。彼の支出は月額2,000万ドル(現代換算)に達し、複数の年に20〜40億ドルを不動産に費やした。ハースト・キャッスル(4万エーカーの敷地にシマウマやラクダ、ホッキョクグマを飼育した私邸)はその象徴である。しかしShaanが特に注目するのは、ハーストの「人材収集術」だ。彼はマーク・トウェインやジャック・ロンドンなど、当時の最高の才能を自ら見つけ出し、直接訪問して口説き、競合より高い給料を払った。彼の哲学は「最高の人材を一人の屋根の下に集めること。たとえ利益がゼロでも、それは長期的に必ず報われる」というものだった。さらに、ハーストはクリエイターを守る姿勢も徹底していた。記者が大統領を批判するような記事を書いても、「私が君を守る」と言って庇い、忠誠心を得た。Shaanは、自身が運営するHamptonコミュニティでもクリエイティブチームをマネジメントしているが、ハーストの事例から「厳しい締切や報酬で管理するのではなく、自由と保護を与えることの重要性」を学んだと語る。
100倍の才能を集める非対称的アービトラージ
Shaanは、ハーストの事例から導き出した「人材に関する非対称的アービトラージ」について詳述する。A級の人材はB級の人材の10倍から100倍の価値を生み出すが、その報酬はせいぜい10%から150%高いだけだ。AI研究者が年収数億ドルを得るようになったのは例外であり、それ以外の業界ではこの格差は歴然としている。したがって、企業の成功は「最高の人材を見つけるゲーム」に帰着する。Shaanは、自身がThe Hustleで実践した方法を振り返る。初期のイベント事業では「チケットを売るために使えるバカスゲストを確保する」ことが主要課題であり、彼自身がその「フィギュアアウター(課題を解明する人)」となった。ニュースレターに移行した後は「バイラル記事を書くこと」が主要課題となり、やはり自分でスタイルガイドを作成し、何が良いストーリーで何が悪いかを定義した。Shaanの結論は「勝つ方法は二つしかない。自分自身が世界クラスのフィギュアアウターになるか、世界クラスのリクルーターになってフィギュアアウターを連れてくるかだ」というものだ。Samはこれに同意し、AppleやElon Muskの例を挙げる。Elonは確かに驚異的に賢いが、実際にブレークスルーを生み出しているのは彼がリクルートした世界クラスの人材の軍団だと指摘する。
結びに
このエピソードがリスナーに残す最大のメッセージは、「チャンスは既に証明された場所にはない」という逆説的な真実である。Shaan自身の失敗談——前の波を追いかけて10年を無駄にした経験——が、この教訓に説得力を与えている。GTA VIの周辺経済、TBPNの買収、ハーストの帝国構築という一見無関係な三つの事例は、すべて「誰もまだ気づいていない、あるいは軽視している領域に、最初に飛び込むことの価値」を物語っている。特に、John Cooganが45万人のYouTube登録者を捨てて視聴者3,000人のライブ配信に没頭した「グレート・ロックイン」のエピソードは、成功の本質が「何をするか」ではなく「どれだけ没頭するか」にあることを痛烈に示す。ShaanとSamの軽快な掛け合いの中に、ビジネスの本質を突く鋭い洞察が散りばめられた、密度の高い回である。
要点
- Shaan Puriは、自身が2010年代にソーシャルメディアやメッセージングアプリという「前の波」を追いかけて失敗した経験から、「既に証明されたもの」ではなく「これから生まれるもの」に賭けることの重要性を説く。
- GTA VIは発売初年度に30億ドルの売上、発売前予約だけで10億ドルが見込まれる巨大エンターテインメント資産であり、その周辺にはMOD開発、コンテンツ制作、ゲーム内アイテム販売など、数百億ドル規模のエコシステムが形成される可能性がある。
- G FuelはTwitchストリーマーの「過小評価された影響力」に着目し、オリジナルフレーバーとアフィリエイトモデルでゼロから1億ドルの売上を達成した。Elgatoはストリーミング用アクセサリーの「ツルハシとシャベル」ビジネスとして成功した。
- OpenAIによるTBPN買収(推定1〜2億ドル)は、John CooganとJordyにとっては理想的な出口だが、OpenAIにとっては戦略的に疑問が残る。Shaanは「2年以内に売却される」と予測する一方、Samは「0.001%の株式でユニークな人材を獲得する価値は十分にある」と反論する。
- John Cooganは45万人のYouTube登録者と100万回再生の実績を捨て、視聴者3,000人のライブ配信に全力を注いだ。Sam Parrのバスケットキャンプへの招待も断り、「グレート・ロックイン」——12ヶ月間の完全な没頭——を実行した。
- ウィリアム・ランドルフ・ハーストは、イエロージャーナリズムでメディア業界を変革し、全米の20%が情報を得る帝国を築いた。彼の真の才能は「人材収集」にあり、マーク・トウェインやジャック・ロンドンを自ら訪問して口説き、競合より高い給料と自由を与えた。
- 人材の非対称的アービトラージ:A級人材はB級人材の10〜100倍の価値を生むが、報酬はせいぜい150%高いだけである。企業成功の鍵は、自分自身が世界クラスの「フィギュアアウター」になるか、世界クラスのリクルーターになるかの二択に帰着する。