
自分のやりたいことの見つけ方
- 「情熱に従え(Follow your passion)」というアドバイスは、現代において最も広く流布しているキャリア論の一つだが、Shaan PuriとSam Parrは...
- 本エピソードは、単なるキャリア論に留まらない。Shaanは「ループ(loop)」という概念を導入し、仕事を抽象化して捉える方法を提示する。どんな職業も、診断→処方→改善と...
- [0:00] 「情熱」という言葉の呪縛とその歴史的起源 Shaanはまず、「情熱(passion)」という言葉の語源がラテン語の「suffering(苦しみ)」にあること...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
My First Million / Hubspot Media
「情熱に従え(Follow your passion)」というアドバイスは、現代において最も広く流布しているキャリア論の一つだが、Shaan PuriとSam Parrは、この言葉こそが多くの人を迷わせる原因だと断じる。彼らは、24歳のリスナーDouglasからの「自分は賢く勤勉だが、どのレーンで泳げばいいか分からない」という相談を皮切りに、このテーマを深掘りする。Shaanが提示する核心は、「情熱」ではなく「熱狂(enthusiasm)」と「水ぶくれ(blisters)」に従うべきだという逆説的なフレームワークである。これは神話学者ジョセフ・キャンベルが後年「Follow your bliss」から言い直した「Follow your blisters」という概念に基づく。つまり、単に楽しいことではなく、苦痛や困難を伴うにもかかわらず、なぜか引き寄せられてしまう活動こそが、本当の指針となるという主張だ。
本エピソードは、単なるキャリア論に留まらない。Shaanは「ループ(loop)」という概念を導入し、仕事を抽象化して捉える方法を提示する。どんな職業も、診断→処方→改善という「ヒーラーループ」や、現状を観察→改善策を考案→製品化→販売→チーム構築という「ファウンダーループ」のような反復パターンに分解できるという。重要なのは、産業や製品ではなく、自分が愛せる「セールスモーション(成長チャネル)」を見極めることだ。さらに、終末期患者の後悔を集めた書籍『The Top Five Regrets of the Dying』を引用し、「自分自身に忠実な人生を生きなかったこと」が最大の後悔であると指摘。しかし同時に、情熱を仕事にすることが必ずしも正解ではなく、趣味として楽しむ道もあるとバランスを取る。最終的に彼らが辿り着くのは、「他人の期待ではなく、自分の内側のスコアカードで生きる」という、シンプルでありながら極めて実践が難しい原則である。
「情熱」という言葉の呪縛とその歴史的起源
Shaanはまず、「情熱(passion)」という言葉の語源がラテン語の「suffering(苦しみ)」にあることを指摘する。「The Passion of the Christ(キリストの受難)」という表現が示す通り、本来この言葉は苦難と結びついていた。しかし現代では、「情熱=楽しいこと」という誤った解釈が蔓延している。この誤解の背景には、歴史的な労働観の変遷がある。Shaanによれば、余暇(leisure)の概念がアメリカで広まったのは19世紀末の「金ぴか時代(Gilded Age)」であり、それまでは「leisure class(余暇階級)」こそが富の象徴だった。週末(weekend)という概念すら、ヘンリー・フォードが工場労働者の生産性向上のために1930年代に導入したものに過ぎない。第二次世界大戦後、GI法(退役軍人向け大学教育支援法)によって経済が沸騰し、「家と車と家電を所有する」というアメリカン・ドリームが黄金期を迎えた。しかしShaanは、現代人は歴史上のどの時代よりも長時間働いており、「情熱を仕事にしなければならない」というプレッシャーがかえって不幸を生み出していると主張する。
Samはこれに同意し、マーク・マンソンのポッドキャストを引用しながら、自分自身36歳になっても「自分の情熱が何か」分からないと認める。Shaanも「私は常に自分を再発明している。不確実性の霧の中にいるのは最悪だが、それが自分だ」と応じる。二人の共通認識は、「情熱を知っている人は90%以上いない」という現実だ。多くの人は「情熱」と「慣れ親しんだもの(familiar)」を混同し、親や友人のレールをそのまま進んでしまう。Shaanはこの状態を「Follow your familiar(慣れ親しんだものに従う)」と皮肉る。
熱狂(Enthusiasm)と水ぶくれ(Blisters)という新しい指針
Shaanが提示する代替案は、ジョセフ・キャンベルの「Follow your bliss」と、その後の修正版「Follow your blisters」である。キャンベルは、自身が神話研究に没頭した経験を振り返り、「 bliss(至福)」とは純粋な喜びではなく、無意識に引き寄せられ、時間を忘れて没頭してしまう状態を指すと説明した。具体的な兆候として、①自然に惹かれる、②興味が湧く、③やっていると生きている実感がある、④しばしば非合理的である、⑤時間を忘れる、⑥オフの時間にもやってしまう——これらが「熱狂」のサインだ。
しかしキャンベルは、人々が「 bliss」を「楽で快楽的なもの」と誤解したことに気づき、後に「 blisters(水ぶくれ)」という言葉を提案した。Shaanは自身の手のひらを見せながら、「これはMurphというトレーニングで懸垂をやり続けた証拠だ。水ぶくれは、支払った代償のレシート(receipt)であり、意志の力だけでは続けられないが、なぜか引き寄せられて払ってしまう代償だ」と説明する。つまり、苦痛を伴うにもかかわらず、それを厭わずに繰り返してしまう活動こそが、本当の情熱の所在を示す。
この考え方は、ポール・グレアムのエッセイ『How to Do Great Work』の一節「熱狂をエンジンだけでなく、舵(rudder)にもせよ」と完全に一致する。ShaanはSamのフィットネスへの没頭を例に挙げる。「なぜ既婚で健康なのに腹筋を追い求めるのか?非合理的だ。しかしその熱狂が君を最前線(frontier)に連れて行き、そこで初めて『男性のテストステロン低下というギャップ』に気づいた。その気づきがHone Healthへの投資につながり、今や9桁(1億ドル超)のラン・レートを誇るビジネスになった」と語る。最前線に立たなければ、市場の隙間は見えないというわけだ。
愛せるループ(Loop)を見つけよ
Shaanはさらに実践的なフレームワークとして「ループ(loop)」の概念を導入する。あらゆる仕事は、反復可能なパターンに分解できるという。例えば医者やセラピストのループは「患者が苦痛を抱えて来院→診断→処方→改善して送り出す」という「ヒーラーループ」だ。Shaan自身、大学時代にスポーツ医学の整形外科医を志し、NFLチームのチームドクターをシャドーイングした経験がある。しかし実際のループを目の当たりにし、「患者に『もう元には戻りません』と言い続ける40年間」に耐えられないと悟り、医者の道を断念した。
ファウンダーのループは「現状を観察→改善策を想像→製品を構築→販売→チームを構築」という流れだ。しかしShaanはここで重要な転換を提示する。製品や産業そのものではなく、「セールスモーション(成長チャネル)」に注目すべきだという。なぜなら、ビジネスが軌道に乗った後、実際に費やす時間の大部分(85%以上)は製品開発ではなく、成長とチームマネジメントに充てられるからだ。例えば、エンタープライズセールスが主力なら、時間の大半は「茶色い靴を履いたリージョナルVPとの夕食」になる。SEOが主力なら、ひたすらSEO対策に没頭することになる。
Shaan自身は「コンテンツ」と「広告」が好きで、「バイラル成長」と「営業(特にインフルエンサーへの売り込み)」が最も嫌いだと告白する。Samもこれに同調し、自身がThe Hustle時代に経験した「茶色い靴を履いてニューヨークに出張し、ミーティング後に靴をゴミ箱に捨てた」エピソードや、Twitch向けストリーミングアプリの会社で「19歳のストリーマーとその彼女マネージャーに頭を下げる」屈辱的な日々を赤裸々に語る。結論としてShaanは、「産業を選ぶな。自分が愛せるループ、つまり成長チャネルを選べ」と力説する。
死の床の後悔トップ5と「自分らしい人生」
Samは、ブロニー・ウェア著『The Top Five Regrets of the Dying』(死ぬ瞬間の5つの後悔)を紹介する。これはホスピス看護師だったウェアが、数千人の終末期患者から聞いた後悔をまとめたものだ。科学的な厳密さはないが、観察結果として極めて示唆に富む。第1位は「自分自身に忠実な人生を生きる勇気がなかったこと」であり、他の後悔を大きく引き離して最多だった。つまり、他人の期待に応える人生を送り、本当に自分が望む人生を生きなかったことへの後悔である。
第2位は「働きすぎたこと」。これは主に男性に多く、家族との時間を逃したことを悔いる。第3位は「自分の感情を表現する勇気がなかったこと」。第4位は「旧友との関係を維持しなかったこと」。第5位は「自分自身をもっと幸せにすればよかったこと」——幸福は選択であると気づかず、変化を恐れて慣れ親しんだパターンに留まったことを後悔する。
Samはこの本を「96歳の隣人の老人と話すのと同じ喜びがある」と評する。他人の失敗から学べるという、ある種の逆説的な知恵だ。しかし同時にSamは、「情熱を仕事にしなければならない」というプレッシャーに対して警告を発する。「情熱は仕事である必要はない。趣味で十分だ。多くの人は『情熱=キャリア』と誤解し、経済的に苦しむ。6〜12ヶ月分の生活費を貯めてから挑戦すべきだ」と現実的なアドバイスを加える。
Shaanはこれに一部異議を唱える。「ほとんどの人は仕事に熱意を持っていない。ビル・ガーリーのデータによれば、70%の人が自分の過ごし方に満足していない。人生の半分の意識的な時間を費やす仕事だからこそ、戦う価値がある」と主張する。しかし両者は、答えが必ずしも起業ではない点で一致する。「愛せるループ」は、セールスマン、マーケター、コネクターなど、あらゆる形を取り得る。
内なる報酬と「手すり」のメタファー
Shaanは、このアドバイスがいかに「言うは易く行うは難し」かを認める。自身の体験として、LAの自宅マンションで1800万ドルのペントハウスを見学した後の心境の変化を語る。「見学から戻ると、自分の部屋が『クソみたいな場所』に思えた。比較は喜びを奪う(Comparison is the thief of joy)」。外部の報酬(お金、ステータス)ではなく、内部のスコアカードで自分を評価することの難しさを痛感する。
ここでShaanは強力なメタファーを導入する。空港の連絡電車(トラム)に乗る幼い子供たちの話だ。電車が動き出す前に「手すりにつかまれ」と言うが、子供たちは「大丈夫」と聞かない。そして電車が急発進し、30ポンド(約13kg)の娘がよそのスーツケースに飛び込んでしまう。「このアドバイスは、人生という電車の中で手すりにつかまることに等しい。世界は必ず君を揺さぶる。手すりがなければ、君は吹き飛ばされる」。つまり、内なる指針(情熱、熱狂、ループ)は、外部の衝撃から身を守るための「手すり」なのだ。
Samはこれを「ブレースマネー(矯正歯科資金)」の話で補足する。友人はかつて3万ドルを貯めてはセーリングに出かける「3万ドルの億万長者」だったが、子供ができて矯正歯科治療にお金が必要になり、情熱を仕事に切り替えた。「情熱は一つである必要はない。人生のフェーズによって変わる」という現実的な視点だ。
水ぶくれに名前をつけよ:実践的な発見法
Shaanは最後に、具体的な実践方法を二つ提示する。第一に「水ぶくれに名前をつけよ(Name the blisters)」。目標(例:腹筋を割る)だけに注目するのではなく、そこに至るまでの具体的な苦痛(早起き、ジムに行きたくない日に行く、スマホを見ずに限界まで追い込む、食事制限)をあらかじめリストアップし、それを受け入れられるかどうかを判断する。結果ではなくプロセスを選ぶという発想だ。
第二に「気づきの技術(The art of noticing)」。自分の中の非合理的な熱狂や、他人より深く没頭できる領域に気づくことだ。Shaanは二つの例を挙げる。一つはNaval Ravikant(エンジェル投資家)のエピソード。Navalは子供の頃、科学者になりたいと思っていたが、母親に「あなたは実業家になるわ」と言われる。彼が否定すると、母親は「ピザ屋に入るたびに、ああするべき、こうするべきと批評している。それがあなたの考え方よ」と指摘する。母親は彼自身が気づいていない才能を見抜いていた。
もう一つは、WeWorkのAdam Neumannの逸話。Neumannが子供服ブランドで失敗していた時、当時の恋人(後の妻Rebecca)に「不動産をやるべき」と勧められる。理由を問うと彼女は「ニューヨークの街を歩く時、他の男は女性や犬や食べ物を見る。あなたはいつも建物を見上げている。あのビルは何に使えるか、どう機能しているかを考えている」と答えた。Shaanは「誰にでもRebeccaが必要だ」と締めくくる。
さらにShaanは、Cody Sanchezのオフィス訪問から得た教訓を共有する。65人のスタッフがひしめく活気あるオフィスを見て、「これは印象的だが、自分は絶対にこの規模のヘッドカウントは欲しくない」と直感した。逆に、Chris Williamson(Modern Wisdomポッドキャスト)のライブツアー成功を見て、「自分は子育て中で旅行は避けたいが、彼は何を知っているのか?自分の前提をわざと覆す(falsify)ために、彼に話を聞きたい」と考える。つまり、自分が「嫌い」「無理」と思い込んでいることに、尊敬する人物が挑戦している場合、その前提を疑うきっかけにするのだ。
結びに
このエピソードがリスナーに残すものは、「情熱」という曖昧でプレッシャーのかかる概念を、具体的で実践可能なフレームワークに分解した点にある。「Follow your passion」という空虚なスローガンではなく、「熱狂を舵にせよ」「水ぶくれを探せ」「愛せるループを見つけよ」「内なるスコアカードを持て」という一連の道具立ては、キャリアに迷う全ての年代に応用可能だ。特に印象的なのは、ShaanとSamが自らの失敗や嫌悪感(茶色い靴、インフルエンサーへの売り込み、ペントハウス見学後の嫉妬)を赤裸々に語ることで、理想論に陥らず、生々しい実践知を伝えている点である。このエピソードは、単なるビジネスアイデアの種まきではなく、人生の設計図そのものを問い直す、My First Millionの中でも異色の深みを持つ回と言える。
要点
- 「情熱(passion)」の語源は「苦しみ(suffering)」であり、現代の「楽しいこと」という解釈は歴史的に誤っている。週末や余暇の概念すら20世紀に入ってから普及した。
- 「Follow your passion」に代わる指針は「Follow your blisters(水ぶくれに従え)」である。苦痛を伴うにもかかわらず、なぜか引き寄せられて繰り返してしまう活動こそが本当の情熱の証拠となる。
- ポール・グレアムの「熱狂をエンジンだけでなく舵にもせよ」という言葉通り、熱狂は最前線(frontier)に導き、そこで初めて市場のギャップ(例:Hone Health、テストステロン補充ビジネス)が可視化される。
- 産業や製品ではなく、「ループ(loop)」と「セールスモーション(成長チャネル)」を選べ。Shaanはコンテンツと広告を好み、Samはエンタープライズ営業とインフルエンサーへの売り込みを嫌う。
- 死の床の後悔トップ5の第1位は「自分自身に忠実な人生を生きなかったこと」。しかし情熱を仕事にする必要はなく、趣味として楽しむ道も有効である。
- 外部の報酬(お金、ステータス)ではなく、内部のスコアカードで自分を評価する「手すり(pole)」を持たなければ、人生の揺さぶりに耐えられない。
- 「水ぶくれに名前をつける」ことで、結果ではなくプロセスを選ぶ判断が可能になる。また、NavalやAdam Neumannの例が示すように、他人が自分自身より先に自分の才能に気づくことがある。
- 自分の前提を積極的に覆す(falsify)ために、尊敬する人物が自分が避けている領域で成功している理由を探る「Costcoサンプリング」の習慣が有効である。