
市場でお金を失わないための正直すぎるガイド
- バリー・リソルツ(Ritholtz Wealth Management CEO、行動ファイナンス研究の第一人者)が、My First MillionのShaan Pu...
- 本エピソードは、投資における「行動」のコストをこれ以上なく明確に描き出した。リソルツは、低コストのインデックスファンドをポートフォリオの核とし、残りは「カウボーイ口座...
- [2:19] クリスマスツリー・ポートフォリオとカウボーイ口座 リソルツが提唱するポートフォリオ構築の基本は、極めてシンプルだ。まず、ポートフォリオの50~70%を「...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
My First Million / Hubspot Media
- ポートフォリオの50~70%は低コストの広範なインデックスファンド(VOOなど)で構成し、残りは自己満足のための「カウボーイ口座」とする「クリスマスツリー・ポートフォリオ」が基本戦略である。
- アクティブファンドマネージャーが10年間で市場平均を上回る確率は10%未満であり、個別銘柄の選定で長期的に勝ち続ける確率は50対1から100対1である。
- パニック売りをした投資家の約3分の1は二度と株式市場に戻らず、複利成長の恩恵を永久に失う。
- ヘッジファンドマネージャーでさえ、「売り」の判断はランダムに選んだ銘柄を売るよりも150~200ベーシスポイント劣る。売りは常に感情的になるためである。
- ダイレクト・インデキシングは、タックス・ロス・ハーベスティングを通じて年間75~85ベーシスポイントの税制メリットを生み出し、特に大きなキャピタルゲインを抱える投資家に有効である。
- 偉大な投資家(リチャード・バートン、デビッド・ルーベンスタイン)は、市場が見逃したニッチを特定する能力と、人間的な魅力を兼ね備えている。
- 投資情報の90%は「クズ」であり、情報源は自らのニーズに基づいて厳選すべきである。リソルツはEd Yardeni、Morgan Housel、Michael Lewisなどを推奨する。
- バブルは経済にとって「機能」であり、過剰投資によって生まれたインフラが、後のイノベーションを低コストで実現する。現在のAIブームも同様のプロセスをたどる可能性が高い。
バリー・リソルツ(Ritholtz Wealth Management CEO、行動ファイナンス研究の第一人者)が、My First MillionのShaan Puri(シャーン・プリ)とSam Parr(サム・パー)を相手に、投資家が自らの行動でリターンを損なうメカニズムを容赦なく解説したエピソードである。リソルツは、弁護士からトレーディングデスクに転じた経歴を持ち、行動経済学のレンズを通して市場を分析してきた。彼の主張の核心は、「賢くなること」ではなく「愚かさを減らすこと」に投資の本質があるという点だ。ホストたちが自らを「起業家であり、投資は趣味のスポーツ」と位置づける軽妙なトーンの中、リソルツはウォール街の重鎮から個人投資家までが陥る認知バイアスを、具体的なデータと痛快なエピソードで次々と暴いていく。
本エピソードは、投資における「行動」のコストをこれ以上なく明確に描き出した。リソルツは、低コストのインデックスファンドをポートフォリオの核とし、残りは「カウボーイ口座」で自己満足に使うというシンプルなフレームワークを提示する。しかし、その背後には、パニック売りがもたらす壊滅的な結果、ヘッジファンドマネージャーでさえ「売り」の判断がランダムより劣るという衝撃的な研究、そしてメディアが煽るノイズの99%が無意味であるという痛烈なメディア批判がある。リソルツの語り口は、ユーモアと辛辣さが絶妙に混ざり合い、投資の世界に蔓延る「謙虚さの欠如」を鋭く突く。このエピソードは、単なる投資指南ではなく、人間の意思決定の脆さと、それに対抗するための哲学を提供する。
クリスマスツリー・ポートフォリオとカウボーイ口座
リソルツが提唱するポートフォリオ構築の基本は、極めてシンプルだ。まず、ポートフォリオの50~70%を「コア」として、低コストの広範な米国市場インデックスに投資する。VanguardのVOO(S&P500 ETF)は最近、初の1兆ドル超えのETFとなったが、これはこの戦略の象徴だ。このコア部分は「ベータ(市場全体のリターン)」を確実に捉えるためのものであり、アクティブ運用で市場平均を上回ろうとする「アルファ(超過収益)」の追求ではない。リソルツによれば、アクティブファンドマネージャーが市場平均を上回る確率は、5年で約21%、10年で10%未満、20年になるとピーター・リンチやウォーレン・バフェットのようなごく一握りの名前しか残らない。
残りの部分は「クリスマスツリーの飾り」、すなわち投資家自身の裁量で選ぶ「カウボーイ口座」である。ここでは、テクノロジー株への傾斜、モメンタム戦略、あるいは日本株(EWJ)やインド株へのエクスポージャーなど、個人の好みを反映させることができる。Shaanが「ダイエット中のチートミールのようなものか」と問うと、リソルツは「まさにその通りだ」と応じる。この飾り部分は、投資を「退屈」にしないための心理的な逃げ道であり、それによってコア部分を長期にわたって守るための戦略だという。重要なのは、この飾り部分で市場平均を上回ろうと試みても、統計的にはアンダーパフォームする確率がはるかに高いという認識を持つことだ。リソルツは、このカウボーイ口座で大きな利益を上げたクライアントの例として、ビットコインやテスラ、パンデミック時のTeladocやZoom、Pelotonへの投資を挙げる。しかし、彼は常に「どんな銘柄もゼロになる可能性がある」と警告する。アリゾナ州立大学のHendrik Bessenbinder教授の研究によれば、市場の価値創造のすべては、わずか1~2%の銘柄から生まれている。つまり、自分の選んだ銘柄が今後10~20年にわたって勝ち続ける確率は、50対1、あるいは100対1という低さなのだ。
売りの心理学:パニック売りとヘッジファンドの誤り
リソルツが最も強調する行動ファイナンスの教訓の一つが「売り」の難しさである。まず、パニック売りのデータは衝撃的だ。市場暴落時に売りに走った投資家の約3分の1は、その後二度と株式市場に戻ってこない。例えば、2008~2009年の57%の暴落時に100万ドルのポートフォリオを45万ドルで売却し、その後の15%の年率成長を逃した場合、今日の価値は4.5億ドルになっていたはずだという計算になる。売却後にマネーマーケットで3~4%の利子を得たとしても、インフレにも追いつかず、複利成長の恩恵を完全に失う。
さらに興味深いのは、シカゴ大学のAlex Amis教授による研究だ。彼はヘッジファンドマネージャーの「買い」と「売り」のパフォーマンスを比較した。結果、買いは合理的で優れている一方、売りはランダムに選んだ銘柄を売却するよりも150~200ベーシスポイントもパフォーマンスが悪かった。リソルツはこの理由を、「買いは合理的なスプレッドシートとデータベースに基づくが、売りは常に感情的である」と説明する。含み損を抱えた銘柄を早々に手放してしまったり、新たな魅力的な投資機会のために資金を捻出しようとしたりする。この研究は、投資家が「売り」の判断を下す際に、どれほど感情に左右されやすいかを如実に示している。リソルツの結論はシンプルだ。「より少ない決断を下せ」ということだ。
投資アドバイザーの存在意義とダイレクト・インデキシング
Sam Parrが「低コストインデックスを買うだけでいいなら、なぜあなたに手数料を払う必要があるのか」と率直に問いかける。リソルツはこの質問を歓迎し、自社のビジネスモデルを説明する。Ritholtz Wealth Managementは創業以来、「自分でやればいい。我々の助けは必要ない」と公言してきた。実際、彼らの読者の99.99%はそのアドバイスに従い、自分で運用している。しかし、残りの0.01%の顧客は、「時間がない」「規律がない」「税金や不動産の問題が複雑すぎる」などの理由で、プロの助けを求める。リソルツはこれを「組織的アルファ(organizational alpha)」と呼ぶ。市場を50ベーシスポイント上回るか下回るかは顧客にとってほとんど重要ではないが、税務チームがキャピタルゲイン税を最小化し、複雑な資産を効率的に管理することは、大きな付加価値を生む。
その具体的な手法の一つが「ダイレクト・インデキシング」である。これは、インデックスファンドを買う代わりに、その構成銘柄を同じ比率で個別に購入するプログラムだ。Shaanが「売却するつもりがないのになぜそれをするのか」と疑問を呈すると、リソルツは税務上のメリットを説明する。市場全体が上昇していても、その年のうちに値下がりしている銘柄は20~30%存在する。ダイレクト・インデキシングでは、値下がりした銘柄を売却して損失を確定させ(タックス・ロス・ハーベスティング)、同時に類似した別の銘柄を購入することでポートフォリオの構成を維持する。これにより、ポートフォリオの価値やリスク特性を変えずに、毎年75~85ベーシスポイントの税制上のメリットを享受できる。2020年第1四半期のような大暴落時には、400ベーシスポイント以上の損失を確定できたという研究結果もある。特に、創業者株やIPO株、事業売却で得た株式など、大きなキャピタルゲインを抱える投資家にとって、この戦略は非常に有効だとリソルツは強調する。
偉大な投資家たちの共通項:リチャード・バートン、デビッド・ルーベンスタイン、そしてイーロン・マスク
リソルツは、自身が長年のキャリアで出会った印象的な人物像を語る。まず、Expedia、Zillow、Glassdoorを創業したリチャード・バートン(Richard Barton)を挙げる。バートンのフレームワークは「乱雑なデータを整理し、透明でアクセスしやすいものにする」という一貫したものだ。不動産データ(MLS)をZillowで、旅行データをExpediaで、給与データをGlassdoorで解放した。Shaanはこれを「データを解放する」と評し、バートンの成功の本質を捉える。
次に、Carlyle Groupの創業者デビッド・ルーベンスタイン(David Rubenstein)だ。リソルツは彼を「人生で出会った中で最高の人間かもしれない」と絶賛する。ルーベンスタンは、キャリアの初期に、党派を超えて議員やスタッフを招き、専門家による非公開の討論会を開催していた。これは政治的な意図ではなく、単に国をより良くするためだった。後に巨万の富を築いた後も、老朽化したワシントン記念塔の修復を自ら買って出て、機能不全に陥った議会に代わって修繕を主導した。さらに、故郷ボルチモアのベースボールチーム、オリオールズを買収し、球団を移転しないことやビールとホットドッグの価格を10年間据え置くことを約束した。リソルツは、ルーベンスタインの偉大さは「市場が見逃しているニッチな領域を見つける能力」と、その「人間性」にあると語る。
一方で、イーロン・マスク(Elon Musk)の金融業界への「片足の踏み入れ」に関する逸話も紹介される。学生時代のマスクは、カナダの銀行でインターンとして、南米の不良債権(ブラディ債)に巨額の投資機会を見出した。彼はCEOに「ノーリスクの大勝負だ」と熱心に提案するが、銀行は「すでに南米債務を抱えすぎている」という理由で拒否する。この経験からマスクは「金融業界への健全な軽蔑」を抱き、「他人のために働くことは二度としない」と決意し、実際のエンジニアリングの世界へと舵を切った。リソルツはこのエピソードを、金融業界の硬直性と、真のイノベーターがそこから離脱するプロセスの典型例として語る。
情報の質と「90%はクズ」:情報ダイエットのすすめ
リソルツは、投資情報の99%はノイズであり、無視すべきだと断言する。彼はSF作家テッド・スタージョンの言葉を借りて「90%のものはクズだ(90% of everything is crap)」という「スタージョンの法則」を引用する。金融メディア、ソーシャルメディア、サブスタックのニュースレターのほとんどは、時間と労力を費やす価値がない。彼は「見知らぬ人からキャンディーをもらうな」と母親に教えられたように、見知らぬ発信者の情報を読む前には、その人物のトラックレコード、プロセス、複数のサイクルを経験してきたか、適切な気質を持っているかを精査するという。
では、彼が認める「10%」の情報源とは誰か。リソルツは具体的な名前を列挙する。マクロ経済分析ではEd Yardeni(エド・ヤルデニ)、市場構造ではSam Rowe(サム・ロウ)、行動ファイナンスではMorgan Housel(モーガン・ハウセル)、不動産ではJonathan Miller(ジョナサン・ミラー)、空売り全般ではJim Chanos(ジム・チャノス)、ウォール街の文化と心理ではMichael Lewis(マイケル・ルイス)、そして行動経済学の学術研究ではRichard Thaler(リチャード・セイラー)だ。ただし、リソルツは「自分自身で情報源を選ぶプロセス自体が重要だ」と強調する。自分が何を必要としているのかを考え、その分野の専門家を自分で見つけることが、投資家としての成長につながるという。
住宅危機の予測と謙虚さの重要性
リソルツは、2008年の金融危機を予測した経験を、自身の最大の失敗談とともに語る。彼は、母親が不動産業者だったことから、2003年頃から住宅市場の異常さに気づいていた。通常の景気循環では、景気回復→経済拡大→住宅需要増加という流れだが、当時は逆だった。住宅価格の上昇が消費を支え、人々はホームエクイティローンで生活費を補っていた。彼はReinhartとRogoffの研究論文(後に『今回は違う』として書籍化)を基に、クレジット主導のバブルでは平均して不動産価格が32%下落すると分析。ダウ平均株価の30銘柄にその影響を当てはめ、ダウが6,800まで下落するという予測を公表した。
しかし、この予測が的中するまでの1年以上、彼は「ウォール街で最も愚かな男」だった。2007年を通じて、彼の見解は嘲笑の的となった。CNBCに出演した際には、共演者から笑われたことさえあった。リソルツはこの経験から、投資における「謙虚さ」の重要性を痛感する。彼は、自身が2014年にRobinhoodを「史上最も愚かなアイデア」と切り捨て、80百万ドルの評価額での投資機会を逃したことを認める。友人のHoward Lindzonはその投資で1億ドルを稼いだ。リソルツは「私は皆と同じくらい愚かだが、少なくともその自覚がある」と語る。未来を予測することは不可能に近く、昨日の記憶もノスタルジーで歪められ、未来への期待は希望的観測に過ぎない。だからこそ、謙虚さを持ち、自分が何も知らないことを認めることが、投資家にとって最も重要な資質の一つだと結論づける。
バブルは経済にとって良いものか?
リソルツは、バブルを単なる破壊的な現象として捉えるのではなく、経済の進化における「機能」として捉える視点を提示する。彼は『Pop! Why Bubbles Are Great for the Economy』という書籍を引用し、歴史的な事例を挙げる。ドットコムバブルでは、Global CrossingやMetromedia Fiberなどが数千億ドルを投じて光ファイバーを敷設した。バブル崩壊後、これらの企業は倒産し、そのインフラは1マイルあたり1,000ドル以上から数セントで買収された。この安価なインフラがあったからこそ、YouTube、Facebook、Instagramといった帯域を大量に消費するサービスが成立したのだ。
同じパターンは、鉄道、テレビ、ラジオ、インターネット、半導体、自動車と、あらゆる新技術で繰り返されてきた。新しい技術は常に過大評価され、バブルを形成する。その過程で、レガシーな企業は淘汰され、新興企業が低コストでインフラを獲得し、次のイノベーションの基盤を築く。リソルツは、現在のAIブームも同じ運命をたどる可能性が高いと示唆する。誰が勝者になるかは分からないが、20年後には、現在評価額1兆ドルを誇る企業の多くが消え去り、そのインフラが次のイノベーションを支えているかもしれない。リソルツは、ウォーレン・バフェットがドットコムバブル時に「自動車会社は2,000社あったが、生き残ったのは3社だけだ」と語った逸話を紹介し、熱狂の中でも冷静さを保つことの重要性を強調する。
結びに
このエピソードがリスナーに残すものは、単なる投資のテクニックではない。それは、市場と人間の本質に対する深い洞察と、それに立ち向かうための「謙虚さ」という哲学である。リソルツは、ウォール街の重鎮から個人投資家まで、誰もが同じ認知バイアスに陥ることを、具体的なデータと痛快なエピソードで証明してみせた。彼のメッセージは、より多くの情報を集め、より複雑な戦略を練ることではなく、ノイズを捨て、決断の数を減らし、自分の愚かさを認めることから始まる。このエピソードは、投資を「勝負」ではなく「長期的な成長のプロセス」として捉え直すための、力強いマニフェストである。
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