
Scott Nolan - SpaceX、Founders Fund、そしてアメリカのウラン濃縮再建 - [Invest Like the Best, EP.467]
- スコット・ノーランは、ファウンダーズ・ファンドで12年間にわたり、誰も資金を提供していない最も重要な問題を探し続けてきた。そして彼は、あまりに重要でありながらあまりに無視...
- 本エピソードは、投資家としての視点と起業家としての視点の両方から、重要な問題の見極め方、競争回避の哲学、そして国家レベルの産業キャパシティを再構築する現実について深く掘り...
- [03:36] スペースX、ファウンダーズ・ファンド、そしてジェネラル・マター:キャリアの選択 ノーランは、自身のキャリア選択の根底にある一貫したフレームワークを「役に立...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
Invest Like the Best with Patrick O'Shaughnessy / Colossus | Investing & Business Podcasts
スコット・ノーランは、ファウンダーズ・ファンドで12年間にわたり、誰も資金を提供していない最も重要な問題を探し続けてきた。そして彼は、あまりに重要でありながらあまりに無視されているため、投資先の企業すら見つからない問題に直面した。そこで彼は自ら会社を立ち上げた。ジェネラル・マターは、アメリカのウラン濃縮能力を再構築する企業である。アメリカは1980年代まで世界をリードするウラン濃縮国だったが、その後完全にその産業を放棄した。現在、アメリカで使用される濃縮ウランの約4分の1はロシアからの輸入に依存しており、2028年にはその輸入禁止が完全に発効する。さらに、データセンターの電力需要の波を支えると期待される次世代原子炉には、信頼できる国内燃料源が存在しない。ノーランは、ウラン濃縮こそが原子力の未来における唯一のボトルネックであり、その解決のための時間的猶予は狭まっていると確信する。
本エピソードは、投資家としての視点と起業家としての視点の両方から、重要な問題の見極め方、競争回避の哲学、そして国家レベルの産業キャパシティを再構築する現実について深く掘り下げている。ノーランは、ピーター・ティールから学んだ「トレンドを避けよ」という教訓、投資家として「アイデアに恋をする」ことの危険性、そして創業者としてそれが必要不可欠であることの逆説を語る。会話は、スペースXでの初期の経験から、ファウンダーズ・ファンドでの投資哲学、そしてジェネラル・マターを立ち上げるに至った経緯へと流れるように移り変わる。原子力エネルギーの安全性、コスト、そして社会における役割についての議論は、単なる技術論を超え、文明の繁栄とエネルギーの関係という壮大なテーマにまで及ぶ。
スペースX、ファウンダーズ・ファンド、そしてジェネラル・マター:キャリアの選択
ノーランは、自身のキャリア選択の根底にある一貫したフレームワークを「役に立つことをする」「自分の才能を使ってポジティブなインパクトを生み出す」ことだと説明する。彼はこれを「自分が貢献できる、さもなければ解決されないであろう重要な問題は何か」という問いとして捉えている。スペースXに入社したのは、大学卒業後、ボーイングでのインターンシップを通じて既存の航空宇宙産業の停滞を目の当たりにしたからだ。彼は、政府のコストプラス契約に依存し、数十層にも及ぶ下請け構造に固執する業界に革新は起こせないと確信し、当時まだ30人ほどの小さな企業だったスペースXこそが宇宙打ち上げ産業を独占すると信じて飛び込んだ。
その後、スタンフォードのビジネススクールに在学中にピーター・ティールと出会い、ファウンダーズ・ファンドに加わることになる。ティールの「VCにもイノベーションが必要だ」という基本理念、すなわち創業者に会社のコントロールを取り戻させるという「創業者フレンドリー」なアプローチに共感した。2011年にファウンダーズ・ファンドに参加した時点では、そのテーゼは「誰も資金を提供していない重要な企業は何か」という、より逆張り的なものに進化していた。ノーランは、スペースXがまだ広く認知されていなかった時期に内部からその成功を確信していた経験から、バイオテクノロジー、コンピューターチップ、衛星、宇宙打ち上げ、交通インフラといった「物理世界の企業」にこそ、見過ごされた大きなチャンスがあるという独自のテーゼを掲げた。
そして、この探求の過程でウラン濃縮という問題に行き着く。原子炉関連企業への投資を通じて、彼らが口を揃えて「燃料が手に入らない」と訴えるのを聞いた。燃料はロシアからしか調達できず、それが最大の障壁だと。1年間にわたり濃縮分野の企業を探し続けたが、既存企業も政府もこの問題に取り組んでいないことが判明した。そこで彼は、これこそが「誰も建設していない重要な会社」であり、「誰も解決していない重要な問題」であると確信し、自らジェネラル・マターを創業する決断を下した。
ピーター・ティールから学んだこと:トレンド回避と逆張りの思考
ノーランがピーター・ティールから最も影響を受けた点は、第一に「トレンドを避け、群衆から離れ、自分自身で考えること」だった。第二に、投資案件を評価する際に、ほとんどの人が取るのとは直交する視点から見ることの重要性だ。単にスプレッドシートで分析するのではなく、「なぜ我々はこの投資案件を目にしているのか」「全く異なる視点からこれをどう考えるべきか」という抽象度の高い問いを重ねる。これにより、他の投資家とは根本的に異なる见解にたどり着くことができるという。
「トレンドを避ける」という概念には二つの競争回避の層がある。一つ目は企業レベルの競争だ。トレンドが存在すれば、必然的に多くの企業が同じテーマに殺到し、新規参入が相次ぐ。結果として経済学の完全競争の均衡へと向かい、利益は消失する。二つ目は投資家レベルの競争である。トレンドに多くの投資家が群がれば、バリュエーションは吊り上がり、投資家としてのアドバンテージは失われる。ノーランは、この二重の競争を避けることが重要だと強調する。
ティールの有名な言葉に「アップラウンドが急であればあるほど、過小評価は大きい」というものがある。これは、投資家が過去のラウンドの価格にアンカーリングされがちであることを指摘する。重要なのは過去の価格ではなく、将来の出口価格である。企業が急成長しているにもかかわらず、次のラウンドの価格が前回比で2倍程度であれば、本来は4倍になるべき可能性がある。この考え方は、ファウンダーズ・ファンドが企業が人気になった後でも積極的に追加投資を行う戦略の根拠となっている。
重要な問題を見つける:誰も取り組んでいない領域の属性
誰も取り組んでいないが重要な問題には、いくつかの共通する属性がある。ノーランは、その多くが「コストプラス産業」であると指摘する。そこでは進歩へのインセンティブが極めて低く、コスト削減の動機が働かない。その結果、市場規模は固定化され、企業は寡占状態に甘んじ、価格を需要が許す限界まで引き上げる。宇宙打ち上げ、防衛産業、インフラなどがその典型例であり、アンドゥリルやボーリング・カンパニーなどがこの構造を打破しようとしている。
コストプラス産業以外にも、創業者の個人的な深い関心から生まれるイノベーションがある。エアビーアンドビーはその好例だ。ファウンダーズ・ファンドが投資した当時、それは「他人の家のエアマットレスで寝る」というニッチなアイデアに過ぎなかった。しかし、創業者チームはそれを「旅行先で本物の体験を提供する」という大きなビジョンに変えようとしていた。同様に、ショーン・パーカーが主導したスポティファイへの投資も、ナップスターの経験から音楽業界を深く理解した上で、適切な地理的条件とライセンス戦略を見極めた結果である。
投資家として優れた創業者を見極める方法について、ノーランは「直感」を重視する。初期の頃は知識が不足しているため直感に頼るしかないが、それは多くの場合正しい。経験を積むと分析能力が向上するが、それがかえって直感を曇らせることもある。重要なのは、少数の企業に集中投資し、インデックス化によるリターンの希薄化を避けることだ。彼は、直感が最初から「イエス」と告げていなかったが、分析を重ねて投資に至った例としてエアビーアンドビーを挙げる。当初はニッチに見えたが、市場データを詳細に分析することで、各市場でシェアを拡大し、支配的になりつつあることを確認できたという。
スペースXからの教訓:垂直統合と「学習による製造」
スペースXでの経験から、ノーランは「学習による製造」の重要性を学んだ。イーロン・マスクのアルゴリズムは当時は明文化されていなかったが、「目標を定義し、良い解決策を考え、実行に移す。分析麻痺に陥らず、まずは90~95%の完成度で動かし、後で改善する」という姿勢が徹底されていた。重要なのは、反復のプロセスそのものが学習を生み出し、それが予測可能なコスト低減曲線を描くことだ。
垂直統合の重要性は、特にサプライチェーンの複雑さを軽減する点にある。スペースX以前の航空宇宙産業では、30層もの下請け構造が存在した。原子力産業でも、ある企業は900もの下請け業者を抱え、その管理のために地域ごとのコーディネーターを必要としていた。下請け構造では、各社間のインターフェースが固定化され、システム全体の最適化が不可能になる。垂直統合により、エンジニアリングチームは部門間でインターフェース要件を柔軟にトレードオフできるようになる。さらに、製造とエンジニアリングを同一拠点に置くことで、「設計した部品が製造しにくい」という問題を即座に解決できる。これにより、コストを10分の1に、スループットを10倍にすることも可能になる。
ノーランは、この垂直統合の原則をジェネラル・マターにも適用している。彼らは自社でエンジニアリング、調達、建設(EPC)を行うチームを社内に構築している。これはテスラのプレイブックから学んだもので、外部のゼネコンに全てを委託するとスケジュールとコストのコントロールを失うという教訓に基づいている。
エネルギーと文明:GDP、データセンター、そして原子力の必然性
ノーランは、エネルギー消費量とGDPの間に極めて強い相関関係があることを示す二つのチャートを提示する。一人当たりのGDPと一人当たりのエネルギー消費量をプロットすると、決定係数0.8を超える明確な線が描ける。エネルギー使用と生産は、人間の繁栄と経済活動の究極の代理指標である。しかし、アメリカの電力網は1990年代以降、実質的に成長していない。一方、中国は2010年にアメリカと肩を並べ、現在では総エネルギー生産量で3倍に達している。
データセンターの急増は、この状況を一変させた。現在の成長率が続けば、データセンターだけで2030年までにアメリカの全電力網を消費しうる。しかし、物理的なインフラの建設には時間がかかる。天然ガスタービンの導入は滞り、原子炉の設置には数年を要する。ノーランは、アメリカがエネルギー安定性と経済的堅牢性を維持するためには、必要な時に能力を立ち上げられる体制を整えておくべきだと主張する。
なぜ原子力なのか。ノーランは三つの理由を挙げる。第一に、原子力は最も信頼性の高いベースロード電源である。ベースロードとは、常時稼働し、非常に信頼性の高い電力供給を意味する。第二に、環境面では、炭素排出も粒子状物質も最も少ない。第三に、安全性である。チェルノブイリ、スリーマイル島、福島といった高プロファイルな事故はあったが、実際のリスクは他のどのベースロード電源よりもはるかに低い。そしてコストについて、原子力は現在、石炭や天然ガスよりも高コストだが、第一原理から考えれば、はるかにエネルギー密度の高い核燃料を使用するため、本質的には最も低コストになるべきものだ。このコスト競争力を実現することが、次世代原子炉とジェネラル・マターの使命である。
ジェネラル・マター:製品、ビジネス、そして企業
ジェネラル・マターが取り組むのは、核燃料サイクル5つのステップのうち「濃縮」の工程である。アメリカは鉱山、転換、脱転換、燃料ペレット成型の各工程では能力を有するが、濃縮だけは商業規模の能力を完全に欠いている。ノーランは、ここに「核燃料の崖」が三つ存在すると説明する。第一の崖は、次世代原子炉(SMR)が使用するHALEU(20%濃縮ウラン)の供給不足。第二の崖は、2028年に発効するロシア産ウラン輸入禁止により、現在の米国輸入量の約25%が失われること。第三の崖は、海軍用の核燃料備蓄の枯渇である。ジェネラル・マターは、まず最も緊急度の高いHALEU市場に焦点を当て、その後、現在の94基の原子炉が使用するLEU(3~5%濃縮ウラン)市場に参入する計画だ。
ビジネスのノーススター・メトリックは「1キログラムあたりの分離作業単位(SWU)あたりのコスト」である。これはスペースXの「軌道への1キログラムあたりのコスト」に相当する。顧客にとっての価値は、原子炉の種類によって異なる。大型の従来型原子炉では燃料コストは全体のコストに占める割合が低いため、供給の信頼性と多様性が重要となる。しかし、次世代原子炉にとっては、HALEU燃料のコストは発電コストの半分以上を占める可能性があり、コスト削減が死活問題となる。ノーランは、この構造をファウンダーズ・ファンドの投資フレームワークに当てはめ、「ワークフローの中で最もコストが高い部分であり、新興の小規模顧客のコストの大部分を占める」という理想的な参入点だと分析する。
企業文化の構築において、ノーランは「チームこそが会社である」というナバル・ラビカントの言葉を引用する。彼は、会社の所在地を南カリフォルニアに定めた。これは、核工学の専門家は全国に散らばっているが、ハードウェアや航空宇宙のエンジニアは南カリフォルニアに集中しているからだ。ジェネラル・マターは「科学プロジェクト」ではなく「エンジニアリング問題」として捉えられており、新しい物理法則の発見ではなく、コストのエンジニアリング、性能のエンジニアリング、スケジュールのエンジニアリングに焦点を当てている。ノーラン自身は現在、採用の最終段階として、候補者のスキルだけでなく、このミッションへのコミットメントと、困難な仕事に取り組む姿勢を評価することに多くの時間を費やしている。
原子力への非合理的な恐怖を克服する
ノーランは、人々が原子力に対して抱く恐怖は、急性の事象(チェルノブイリ、スリーマイル島、福島)と慢性の事象(自動車事故、大気汚染による健康被害)の認識の非対称性に起因すると指摘する。人々は劇的で注目を集める事故を過大評価し、日常的に発生する慢性的なリスクを過小評価する傾向がある。データは原子力が最も安全な電源であることを示しているが、データだけでは人々の心は動かない。
より効果的なアプローチは、原子力のコスト競争力を実現することだとノーランは主張する。もし原子力が他の電源よりも安くなり、家庭の電気代が半分になるとしたら、人々はその安全性についての議論をより真剣に受け止めるだろう。彼は、原子力の未来を切り開く鍵は、安全性や廃棄物の問題をデータで説得することではなく、経済的な魅力を証明することにあると考える。エネルギーに制約されない世界、すなわち安価でクリーンで信頼性の高いベースロード電源が利用できる世界を想像させることこそが、最も強力な説得材料となる。
結びに
このエピソードが最も印象的に残すのは、投資家としての冷静な分析眼と、起業家としての熱狂的なコミットメントが、一つの問題を解決するためにどのように結集するかという物語である。ノーランは、ファウンダーズ・ファンドでの経験を通じて培った「重要な問題を見極めるフレームワーク」を、自らの起業に完璧に適用した。彼は「アイデアに恋をする」ことの危険性を熟知しながらも、ウラン濃縮という問題の重要性に取り憑かれ、自ら行動を起こした。このエピソードは、単なる原子力やエネルギーの議論を超えて、資本主義のフロンティアで何が「重要」で「未解決」なのかを見極めるための、実践的な思考の道具箱を提供している。特に、コストプラス産業の停滞構造、垂直統合によるイノベーションの加速、そしてエネルギーと文明の繁栄の因果関係についての洞察は、投資家や経営者にとって極めて示唆に富む。
要点
- スコット・ノーランは、誰も取り組んでいないが極めて重要な問題としてウラン濃縮に着目し、投資家から起業家に転身してジェネラル・マターを創業した。アメリカは1980年代以降、商業規模のウラン濃縮能力を完全に喪失している。
- ピーター・ティールから学んだ「トレンドを避けよ」という教訓は、企業レベルの競争と投資家レベルの競争の二重の回避を意味する。トレンドに群がれば、利益は経済学の完全競争の均衡へと向かって消失する。
- 「アップラウンドが急であればあるほど、過小評価は大きい」というティールの格言は、投資家が過去の価格にアンカーリングする傾向を指摘する。重要なのは過去の価格ではなく、将来の出口価格である。
- 停滞した産業の多くは「コストプラス産業」であり、進歩へのインセンティブが欠如している。スペースX、アンドゥリル、ボーリング・カンパニーなどは、この構造を打破することで巨大な価値を創造した。
- 垂直統合は、システム全体の最適化を可能にし、イノベーションの速度を劇的に向上させる。スペースXの成功は、30層もの下請け構造を排除し、エンジニアリングと製造を一体化したことに起因する。
- エネルギー消費量とGDPの間には極めて強い相関関係がある。アメリカの電力網は1990年代から成長しておらず、データセンターの急増はこの構造的な供給不足を露呈させている。
- 原子力は、安全性、環境負荷、信頼性の点で最も優れたベースロード電源である。しかし、その普及を阻む最大の障壁はコストであり、次世代原子炉と燃料サプライチェーンの革新によってこれを克服する必要がある。
- ジェネラル・マターのノーススター・メトリックは「1SWUあたりのコスト」である。同社はまず、次世代原子炉向けのHALEU市場に焦点を当て、その後、既存原子炉向けのLEU市場に拡大する計画である。