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Invest Like the Best with Patrick O'Shaughnessy · 2026年5月22日

Alex Karnal - 兆ドル規模のヘルス革命 - [Invest Like the Best, EP.468]

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • アレックス・カーナル(Alex Karnal)は、ライフサイエンス投資会社Braidwellの共同創業者兼マネージング・パートナーであり、Deerfield Manage...
  • カーナルは、GLP-1受容体作動薬(いわゆるGLP-1薬)の爆発的な商業的成功を、人々が自らの健康に対して積極的(プロアクティブ)になる準備が整ったことの「最初の商業的証...
  • [00:03:15] GLP-1薬が示す「プロアクティブ」への転換点 カーナルは、2025年を自身のキャリアの中で「最もエキサイティングな年」と総括する。その最大の要因が...
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Invest Like the Best with Patrick O'Shaughnessy / Colossus | Investing & Business Podcasts

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アレックス・カーナル(Alex Karnal)は、ライフサイエンス投資会社Braidwellの共同創業者兼マネージング・パートナーであり、Deerfield Managementで15年のキャリアを積んだ後、自らのファームを立ち上げた。本エピソードでは、パトリック・オショーネシーとの対話を通じて、カーナルが提唱する「ヘルス・スタック(Health Stack)」というフレームワークを軸に、現代医学が直面する最大の機会と課題が深掘りされている。彼の核心的な主張は、私たちの命を奪う主要な疾患のほとんどは、すでに存在する医薬品で対処可能であるにもかかわらず、その「発明」と「影響」の間に大きなギャップが存在するというものだ。このギャップを埋めることが、彼が「生涯に一度の、数兆ドル規模の公衆衛生革命」と呼ぶものの本質である。

カーナルは、GLP-1受容体作動薬(いわゆるGLP-1薬)の爆発的な商業的成功を、人々が自らの健康に対して積極的(プロアクティブ)になる準備が整ったことの「最初の商業的証明」と位置づける。この薬剤クラスは、単なる肥満治療薬ではなく、心血管疾患、糖尿病、さらには依存症に至るまで、複数の健康軸にわたって防御効果を発揮する可能性を示している。しかし、彼の視点はGLP-1薬だけにとどまらない。PCSK9阻害薬のような、より「フリーランチ」に近い薬剤や、アルツハイマー病、がんに対する新たなアプローチ、そしてAIによる創薬プロセスの根本的な変革に至るまで、議論は多岐にわたる。カーナルは、科学者としての洞察と投資家としての現実的な視点を融合させ、なぜ今が医学史において最もエキサイティングな瞬間なのかを、具体的なデータと自身のキャリアストーリーを交えて語る。

00:03:15GLP-1薬が示す「プロアクティブ」への転換点

カーナルは、2025年を自身のキャリアの中で「最もエキサイティングな年」と総括する。その最大の要因がGLP-1薬の驚異的な普及だ。彼は、この薬剤クラスが単なる体重減少薬ではなく、糖尿病への進行予防(Eli Lillyのデータでは94%のリスク低減)、心臓発作や脳卒中のリスク低減、腎臓保護、そしてアルコールや薬物への依存症予防にまで効果を発揮する可能性があると指摘する。この多面的な効果こそが、GLP-1薬を「最も重要な分子」たらしめている理由である。

しかし、カーナルが特に注目するのは、その商業化プロセスから得られた教訓だ。2025年、Eli Lillyが打ち出した「Lilly Direct」のような直接販売チャネルは、従来の製薬会社の営業部隊による販売モデルを超え、消費者の「自分で健康を管理したい」という欲求を如実に示した。さらに、価格が高いブランド薬(月額500ドル以上)に対し、価格が半額程度のコンパウンド(調合)GLP-1薬が市場の15~20%を占めた事実は、この市場に大きな価格弾力性が存在することを証明した。人々は、臨床試験を経ていないリスクを承知の上ででも、手の届く価格で健康上の利益を得ようとしているのだ。

そして2026年、状況はさらに加速する。経口版Wegovyの登場である。カーナルによれば、この経口薬は従来の注射薬と比較して約4倍のペースで処方数を伸ばしており、その価格は月額150ドル(年間1,800ドル)と、さらに低い。この価格帯に達したことで、週間新規処方数は20万件から30万件へと急増した。彼はこの現象を、人々が「発明」と「影響」のギャップを埋める準備ができたことの決定的な証拠と見なしている。GLP-1薬の成功は、単なる一つの医薬品の成功ではなく、人々が疾患を発症してから治療する「リアクティブ」な姿勢から、予防のために行動する「プロアクティブ」な姿勢へと、パラダイムシフトが起きていることを示すシグナルなのである。

00:12:49ヘルス・スタック:5つの防御層と「フリーランチ」としてのPCSK9

カーナルが提唱する「ヘルス・スタック」は、個人が自らの寿命と健康寿命を最大化するための防御的戦略を、5つの層に分解したフレームワークである。それは、①脂質最適化、②心肺代謝健康、③神経認知健康、④炎症性健康、⑤血圧、の5つから構成される。彼の主張の核心は、これらの層のそれぞれに対して、すでに有効な医薬品が存在しているという点にある。例えば、中年男性・女性の30~50%が40歳から80歳の間に心臓発作や脳卒中を経験するリスクを、既存の薬剤(スタチンやPCSK9阻害薬)を用いて10%未満にまで低減できるにもかかわらず、それが実行されていない現状を彼は「悲劇的」と表現する。

この5つの層の中で、カーナルが特に「フリーランチ」に近いと評するのが、PCSK9阻害薬である。この薬剤は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を50%以上低下させ、心臓発作や脳卒中のリスクを20~25%低減することが示されている。その発見の経緯は、人間遺伝学の勝利とも言える。世界にはPCSK9遺伝子に変異を持ち、このタンパク質を生産しない人々が存在する。彼らを15年間追跡した研究では、心血管疾患の発症リスクが88%も低いことが判明した。製薬業界はこの「自然のアドバンテージ」を再現すべく、まず注射用抗体医薬を開発し、さらにRNA干渉(RNAi)技術を用いて、年2回の投与で済む超長期作用型の薬剤を生み出した。

GLP-1薬が吐き気や嘔吐といった明確な副作用を伴うのに対し、PCSK9阻害薬には実質的なトレードオフが存在しないとカーナルは主張する。LDLコレステロールを極限まで下げることへの懸念は、PCSK9を全く生産しない人々が健康で長寿であるという事実によって否定されている。彼は、将来的にはPCSK9阻害薬の方がGLP-1薬よりもはるかに多くの人々に使用されるべき薬剤であり、その市場規模も上回る可能性があると予測する。しかし、その普及を阻む最大の障壁は、GLP-1薬のように「効いている」という実感が得られにくいことだ。高LDLコレステロールは「サイレントキラー」であり、自覚症状がないまま血管にダメージを蓄積させる。そのため、予防的な服薬の継続が難しく、これこそが「発明」と「影響」のギャップの典型例であると彼は指摘する。

00:44:17神経変性疾患とがん:早期発見と新たな治療モダリティ

アルツハイマー病領域は長年にわたり「不毛の地」とされてきたが、カーナルは状況が変わりつつあると語る。BiogenやEli Lillyが開発した抗アミロイド抗体医薬は、脳内に蓄積したアミロイド斑を除去し、認知機能の低下速度を約30%遅らせることができる。しかし、問題は介入のタイミングにある。疾患が進行した段階では、脳へのダメージが既に大きすぎる。カーナルは、GLP-1薬やPCSK9阻害薬と同様に、アルツハイマー病においても「早期発見・早期介入」が鍵になると主張する。もし発症リスクを早期に特定し、アミロイド斑の蓄積を「蛇口を閉める」ように防ぐことができれば、認知機能低下を40~50%以上抑制できる可能性がある。彼は、Eli Lillyが今年後半に発表するであろうデータが、この仮説を強く支持するものになると予想している。

がん領域においては、カーナルは「予防」よりも「早期発見」と「治療モダリティの多様化」に焦点を当てる。彼は、大腸がん検診におけるExact SciencesやGuardant Healthの進歩を例に挙げる。特にGuardant Healthは、従来の便ベースの検査から、より簡便な血液検査(リキッドバイオプシー)への移行を牽引し、検査のコンプリート率を劇的に向上させた。しかし、彼は新しい診断技術に対して慎重な姿勢も示す。全身MRIのような画像診断は強力なツールだが、偽陽性率が高い場合、不必要な不安や侵襲的な処置を招くリスクがある。彼は、感度(sensitivity)と特異度(specificity)という二つの指標を重視し、データを正しい文脈で解釈することの重要性を強調する。

治療面では、CAR-T細胞療法のような革新的なモダリティが登場している。これは患者自身の免疫細胞を採取し、がん細胞を攻撃するよう遺伝子改変して体内に戻す治療法であり、一部のがんで腫瘍を100%縮小し、70%以上の患者で長期間にわたって効果を維持するデータが出ている。さらに、Capstanのような企業は、体内で直接免疫細胞を改変する次世代技術(in vivo CAR-T)を開発しており、これはより簡便で広範ながん治療への応用が期待される。カーナルは、早期発見技術と多様な治療モダリティの進歩が組み合わさることで、がんの予後は劇的に改善されると確信している。

00:56:31創薬プロセスとAIによる「科学的超知能」への道

カーナルは、創薬のプロセスを「科学的本能」と「膨大な資本」の融合として描写する。科学者は仮説を立て、実験をデザインし、結果を検証するという科学的方法のサイクルを何年も繰り返す。このプロセスは、試験管内(in vitro)から小動物、大動物へと進み、最終的に規制当局の承認を得て初めてヒトでの臨床試験が可能になる。しかし、このプロセスは極めて非効率的であり、文献に発表された研究結果の多くが再現不可能であるという深刻な問題も抱えている。カーナルは、AIがこの状況を根本から変えると確信する。

彼は、AIの真の価値は、人間の科学者が持つ「頭脳の制約」と「手の制約」を同時に取り払う点にあると論じる。AIは全ての科学文献を記憶し、考えうる全ての仮説を生成できる。さらに、ロボティクスと組み合わせることで、24時間365日、休むことなく実験を実行できる。これにより、従来3~5年かかっていたブレークスルーが、2年未満に短縮される可能性がある。彼は、Lila SciencesやAnablaのような企業が、標的が分かっている分子に対して、かつては数年かかっていたスクリーニングを、今や1ヶ月で完了できるようになったと具体例を挙げる。

カーナルは、AIが創薬に不可避的な影響を与える「決定的な曲線」上に我々はいると断言する。その転換点は「ごく最近」訪れた。鍵を握るのは、AIモデルを訓練するための「科学トークン」、すなわち質の高い独自データの生成能力である。公開文献の多くは信頼性に欠けるため、AI企業は自ら実験を行い、新規のデータを生成する能力が競争優位の源泉となる。彼は、このデータ生成能力とAI人材、潤沢な資本を兼ね備えた企業が、やがて「科学的超知能(Scientific Superintelligence)」に到達すると予測する。未来の研究室は完全に自動化され、人間の科学者はベンチサイドでのピペッティングから解放され、AIとロボットを駆使して、より創造的で戦略的な問題解決に集中できるようになるだろう。

01:13:05市民薬理学と規制の進化:民主化される健康管理

カーナルは、GLP-1薬の商業的成功と並行して、Redditなどのオンラインコミュニティで組織される「市民薬理学(Citizen Pharmacology)」の動きにも注目する。人々は、BPC-157のようなペプチドをはじめとする未承認の物質を自ら実験し、その結果を共有している。これは、従来の規制当局や医療機関による承認プロセスを待たずに、自らの健康を自らの手で管理しようとする新たな世代の姿勢の現れである。彼はこの動きを、人々が「自分には時間がない」と感じ、科学の進歩のスピードに焦りを感じていることの表れと解釈する。

このような草の根の動きと並行して、規制当局であるFDAも変化を遂げつつある。カーナルは、FDAのマーティ・マカリー長官(当時)のリーダーシップの下、AIを導入して膨大な申請書類を迅速に審査する取り組みや、動物実験の要件を緩和し、細胞ベースの実験で代用できるケースを増やすなど、規制プロセスの効率化が進んでいることを指摘する。彼は、これらの動きを「システムのあらゆる摩擦を取り除こうとするムーブメント」と総括する。

カーナルは、これらの現象を総合的に捉え、2025年がエキサイティングだった理由は、優れた医薬品の登場だけでなく、医薬品の「消費者化(consumerization)」、人々が自らの健康を積極的に管理しようとする姿勢、そして規制の進化という三つの流れが同時に加速した点にあると結論づける。これは、彼が提唱する「ヘルス・スタック」の普及を後押しする、極めて力強い社会的な追い風である。

01:16:45投資家としての原点:Braidwellのミッション

カーナルのキャリアは、MITを卒業後、メリルリンチのデリバティブ部門でバイオテクノロジーを担当したことに始まる。そこで彼は、生命と死がかかったリスクとリターンの世界に魅了された。しかし、彼が独自の投資アプローチを構想したのは、既存のライフサイエンス投資家たちの戦略が驚くほど類似していることに気づいたからだ。彼は、デリバティブの知識を応用し、より低リスクで高いリターンを目指すポートフォリオ理論を構築した。このアイデアは当初誰にも相手にされなかったが、Deerfield Managementのジェフ・カプランとジム・フリンだけがその価値を理解し、彼を迎え入れた。

Deerfieldでの15年間は、彼にとって「類を見ない徒弟期間」だった。彼は投資、企業構築、臨床試験デザインに至るまで、あらゆる側面を学んだ。しかし、キャリアの10年目を迎えた頃、彼はある暗い真実に直面する。それは、多くの患者が処方された薬を1年ほどで服用をやめてしまうという現実だった。「薬は飲まれて初めて効く」という当然の事実が、彼のそれまでの仕事の意味を揺るがした。彼は、「単に金儲けのために時間を使っているのか」という深い問いを自問自答し、その結果、発明(Invention)だけでなく、その影響(Impact)に焦点を当てる決意を固める。

この決意が、Deerfieldを離れ、Brian Kreider(元Bridgewater COO)と共にBraidwellを設立する原動力となった。Braidwellの投資アプローチは、毎朝9時15分から行われる朝礼に象徴される。科学者、生物統計学者、商業専門家、AI専門家、投資家、オペレーション担当者など、多様な専門性を持つチームが集い、「このイノベーションは成功するか?」「市場としての関連性はあるか?」「魅力的なリターンを生み出せるか?」という三つの問いを、分野横断的に議論する。カーナルにとって、この部屋こそが、発明と影響のギャップを埋めるための「オペレーティングシステム」そのものなのである。

結びに

本エピソードが聴き手に残すものは、単なる医薬品の知識や投資機会のリストではない。それは、私たち一人ひとりが自らの健康に対して「プロアクティブ」になることの圧倒的な重要性と、そのためのツールがすでに手の届くところに存在しているという希望に満ちた確信である。アレックス・カーナルは、複雑な生命科学の世界を、投資家としての鋭い分析眼と、人間としての深い共感をもって解説する。彼の語る「ヘルス・スタック」は、単なる理論ではなく、私たちがより長く、より豊かな人生を送るための具体的な行動計画である。そして、AIと人間の科学者が協働する未来の創薬プロセスは、かつてSFの領域だった「科学的超知能」を現実のものとし、人類の健康寿命を次のレベルへと押し上げるだろう。このエピソードは、投資家だけでなく、自らの人生と健康に真剣に向き合うすべての人にとって、示唆に富む羅針盤となる。

要点

  • アレックス・カーナルは、主要な死因となる疾患のほとんどは既存の医薬品で予防可能であり、その「発明」と「影響」のギャップを埋めることが「数兆ドル規模の公衆衛生革命」の本質であると主張する。
  • GLP-1薬の爆発的な普及は、人々が健康に対して「プロアクティブ」になる準備が整ったことの最初の商業的証明であり、経口版の登場と価格低下により、その流れはさらに加速している。
  • PCSK9阻害薬は、LDLコレステロールを劇的に低下させ、心血管疾患リスクを大幅に減らす「フリーランチ」に最も近い薬剤だが、自覚症状がないため普及が遅れており、将来的にはGLP-1薬を超える市場規模になる可能性がある。
  • アルツハイマー病治療は、抗アミロイド抗体医薬の登場により転換点を迎えているが、真の効果を発揮するには、疾患の進行が始まる前の「早期発見・早期介入」が不可欠である。
  • がん治療においては、リキッドバイオプシーによる早期発見技術の進歩と、CAR-T細胞療法のような新たな治療モダリティの登場が、予後を劇的に改善しつつある。
  • AIは創薬プロセスを根本から変革し、科学者の「頭脳」と「手」の制約を取り払うことで、ブレークスルーまでの時間を数年から数ヶ月に短縮する「決定的な曲線」上にある。
  • 未来の創薬は、AIエージェントがロボットを駆使して24時間実験を行う完全自動化ラボが主流となり、人間の科学者はより創造的な問題解決に集中できるようになる。
  • 市民薬理学(未承認物質の自己実験)やFDAの規制改革は、医療の「消費者化」とスピード重視へのシフトを象徴しており、これらはヘルス・スタックの普及を後押しする社会的な追い風である。
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