
Uber CEO ダラ・コスロウシャヒ
- Uber CEO Dara Khosrowshahi — 包括的ダイジェスト UberのCEOダラ・コスロシャヒがAcquiredのスタジオにUber Eatsの配達を装...
- [3:41] バリー・ディラーとの出会いとエクスペディア買収の決断 ダラ・コスロシャヒのキャリアは、大学卒業後に入社したアレン・アンド・カンパニーから始まった。同社はメデ...
- この経験についてダラは、「ハーバート・アレンが『モデルを印刷しろ、バリーが話したいと言っている』と言ってきて、LBOモデル全体を印刷しなければならなかった。頭の中は『いつ...
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Acquired / Ben Gilbert and David Rosenthal
Uber CEO Dara Khosrowshahi — 包括的ダイジェスト
UberのCEOダラ・コスロシャヒがAcquiredのスタジオにUber Eatsの配達を装って現れ、そのまま長時間の対談が実現した。2017年にCEOに就任して以来、Uberは年間30億ドルの損失から30億ドル以上の収益(GMVは1200億ドル)を生み出すキャッシュフロー黒字企業へと変貌を遂げた。本エピソードでは、ダラの20年にわたるバリー・ディラーとの関係、アレン・アンド・カンパニーでのキャリア開始、そしてUber CEO選定プロセスの舞台裏から、同社の驚異的な変革の内幕までが、ホストのベン・ギルバートとデイビッド・ローゼンタールによる鋭い質問とともに語られる。
バリー・ディラーとの出会いとエクスペディア買収の決断
ダラ・コスロシャヒのキャリアは、大学卒業後に入社したアレン・アンド・カンパニーから始まった。同社はメディア・エンターテインメント分野に特化した投資銀行であり、そこで彼は後に自身のキャリアを決定づける人物、バリー・ディラーと出会う。当時QVCのCEOだったディラーは、サムナー・レッドストーンが経営するバイアコムによるパラマウント・ピクチャーズ買収に対抗し、敵対的公開買付けを仕掛けていた。この巨大な取引のアナリストとして、ダラは入社2〜3年目にして直接ディラーと仕事をする機会を得る。
この経験についてダラは、「ハーバート・アレンが『モデルを印刷しろ、バリーが話したいと言っている』と言ってきて、LBOモデル全体を印刷しなければならなかった。頭の中は『いつクビになるんだろう』という思いでいっぱいだった」と振り返る。しかし、これはディラーの特徴的なマネジメントスタイル——編集されていない生の真実を求める姿勢——の表れだった。ダラはこの経験から「人に賭けよ、会社にではなく」というアレンの教えを学び、後に自身のリーダーシップの基盤とする。
最も象徴的なエピソードは、2001年9月11日の同時多発テロ直後、IACがエクスペディアの株式を買収する取引をどう扱うかという決断だった。契約書には「重大な悪影響が生じた場合(MAC条項)」の解除権が含まれており、旅行業界にとって9.11以上に重大な出来事は考えられなかった。しかし、当時エクスペディアのCEOだったリッチ・バートンはディラーに電話し、「取引から撤退したければそれで構わないが、早く決断してほしい」と伝えた。
ダラは当時の会議をこう回想する。「バリーが言ったんだ。『もし旅行がなくなれば、人生そのものがなくなる』と。全員が顔を見合わせ、『よし、やろう』と決めた」。彼らは契約条件を一切変更せずに買収を実行した。ダラはこの決断を「天才的な判断だった」と評し、パンデミック時にも同様の原則が適用されたと語る。「嵐の只中にいると『人生は終わった』ように見えるが、すべては正常に回帰する」。
パンデミックとUberの変革:供給主導型ビジネスへの転換
ダラがCEOに就任した2017年、Uberは年間約30億ドルを焼いていた。そこにパンデミックが襲い、モビリティ事業の収益が85%も急落する。しかし、この危機がUberの変革を加速させた。ダラは「パンデミックは非常に苦しい時期だったが、EATS配達事業にとっては大きな加速装置となった」と語る。
特に重要な戦略的転換は、ライドシェアとフードデリバリーの技術チームを統合したことだ。それまではEATSが小規模だったため独立したチームが必要だったが、統合後は単一の技術チームが需要側に集中できるようになった。その結果、ライドアプリからEATSへの顧客誘導が、GoogleやMeta、Instagramなど他のすべてのチャネルを合わせたよりも多くの新規顧客を獲得する、最大の顧客獲得チャネルとなった。しかも、そのコストは4分の1だという。
この戦略の核心は、供給(ドライバーと配達員)の獲得にある。ダラはエクスペディア時代にBooking.comから学んだ教訓を強調する。「Bookingはホテル、ホテル、ホテルに集中していた。彼らは供給主導でビジネスを構築した」。Uberも同様に、EATSを「採用ツール」として活用する。配達員は車両点検が不要なため、より迅速にプラットフォームに参加でき、その後ライドシェアや買い物代行などの機会にアップセルできる。これが競合に対する構造的な優位性を生み出している。
現在、Uberのプラットフォームには560万人のドライバーと配達員、そして約100万のレストランが参加している。ダラは「私たちは供給主導のビジネスだ」と明確に述べ、供給が需要を約5%下回っているものの、市場は均衡に向かいつつあると説明する。
市場の「見えざる手」と価格決定のメカニズム
Uberの価格設定について、ダラは興味深い主張をする。「Uberのトップエコノミストに聞けば、私たちは消費者向けの価格を実際にはコントロールしていないと言うだろう。市場が需給に基づいてスポット価格を設定している」。つまり、Uberは価格を「設定」しているのではなく、市場が自らの価格を決定するプラットフォームを提供しているというのだ。
このメカニズムには逆循環性(カウンターシクリカリティ)がある。好況時にはドライバーの確保が難しくなり供給コストが上昇するが、景気後退時にはより多くのドライバーがプラットフォームに流入し、価格が低下して需要が加速する。実際、直近の四半期ではトリップ数が前年比24%増加し、前四半期の19%から加速した。これはUberのような規模の企業では珍しい現象だ。
Uberの真の競争優位性は、マーケットプレイスチームにある。機械学習エンジニアからなるこのチームは、四半期に20億件の取引を処理するシステムを構築しており、そのデータセットは競合を凌駕する。ダラは「毎年、マッチングと価格設定の効率が約5%ずつ改善している。年間1200〜1300億ドルの取扱高にそれが乗れば、 compounding 効果は莫大だ」と説明する。
ライド料金が以前より高くなった理由について、ダラは「労働コストが上昇した」と率直に認める。「ブルーカラーの賃金上昇は健全なキャッチアップだ。テックワーカーや資本の報酬に比べて遅れを取っていた」。ただし、現在は供給が需要を上回るペースで増加しているため、料金は前年比で低下傾向にあるという。
Uber CEO就任の舞台裏:ダニエル・エクの一言とバリー・ディラーの忠誠心
ダラがUberのCEO候補として初めて連絡を受けたのは、ヘッドハンター経由だった。彼は当初「ノーだ。ありがとう。さようなら」と断ったという。シアトルでの生活に満足し、バリー・ディラーの下で働くことに幸せを感じていたからだ。
転機はサンバレーカンファレンスで起きた。SpotifyのCEOダニエル・エクと酒を飲みながら会話していると、エクが「あのヘッドハンターからUberの件で連絡があっただろう?君は完璧だと思う」と言い出した。ダラが「なぜそんな混乱に飛び込む必要がある?」と答えると、エクは「あの鋭いスカンジナビア人の目で見つめながら言ったんだ。『ダラ、人生はいつから楽しむことが目的になったんだ?重要なのはインパクトだ。これは重要な仕事だ。君ならできる』」と語る。
この言葉に触発されたダラは、翌日ヘッドハンターに連絡を取り、面接プロセスを開始した。約2ヶ月のプロセスを極秘に進めるため、彼は最初に「私の名前がニュースに載った瞬間、このプロセスから撤退する」と宣言した。そして何より、20年にわたる関係を考慮し、バリー・ディラーに直接電話で伝えた。ディラーの最初の反応は「お前は正気か?」と電話を切るというものだったが、翌日には「エクスペディアの会長としては本当に間違った判断だと思う。しかし友人としては、なぜ興味を持つのか理解できる。どうすれば助けられるか教えてくれ」と言ったという。
ダラはこのエピソードを「バリーという人物の本質を示している」と評する。ディラーは後に、Uberの取締役会向けプレゼンテーションの資料を一緒にレビューし、「このページを追加すべきだ」とアドバイスまでしたという。
株主基盤の全面入れ替えとソフトバンクの囚人のジレンマ
ダラがCEOに就任後、Uberは株主基盤をほぼ完全に入れ替えるという前代未聞のプロセスを経験した。IPO後のロックアップ期間終了後、創業者トラビス・カラニックが保有株の約15%を市場に売却した。ダラは「当時は腹が立った。人々はパニックになった。『トラビスが売っている。何を意味するのか?』と。しかし今振り返れば、彼が一線を引いて前に進みたいと思ったのは良い判断だった」と語る。
さらに複雑だったのが、ソフトバンクの関与だ。マサ・ソンは「投資を認めなければ、あのピンクの会社(Lyft)に投資する」と迫った。問題は、Uberの筆頭株主であるBenchmarkとトラビスがともに高議決権株式を保有し、支配権を巡って対立していたことだ。ソフトバンクが投資するには、全株主が高議決権株式を放棄する必要があった。
ダラはこの状況を「800億ドルの囚人のジレンマ」と表現する。「誰か一人でも『自分の利益を優先する』と言えば、全員が損をする」。結局、ダラとチームは全株主を個別に説得し、全員が高議決権株式を低議決権株式に転換することに合意した。これにより支配権争いは終結し、「どうやって偉大な会社を築くか」という本来の目的に集中できるようになった。
このプロセスについてダラは「投資銀行のバックグラウンドが役立った」と認める。「『全員が株式を放棄すれば問題は解決する』というアイデアを提案した時、皆が『それでうまくいくのか?』と驚いた」。しかし、彼は「謙虚でいるのは結構だが、それが成功した時は誇りに思ったか?」という質問に対し、「いや、次の日には別の危機が待っていた。2分間息をついて、ワインを飲んで、次の戦いに臨むだけだ」と答えた。
戦略の三本柱と新たな成長領域
Uberの現在の戦略は、ライドシェア、Uber Eats、フレイト(貨物)の三本柱に集中している。ダラは就任時に取締役会に提示したのは戦略ではなく「事業を黒字化するためのオペレーション」だったと明かす。
ライドシェアでは、成長の50%を既存のUberX事業が牽引し、15%を国際展開が占める。特に重要なのは、以前は「ビジネスモデルが合法でない国には進出しない」という姿勢から、「その国で合法なビジネスモデルは何か」を考え、現地に適応する戦略への転換だ。ドイツ、スペイン、日本、韓国、トルコなどで事業を拡大している。残り35%はタクシー、低価格ハイヤー、二輪・三輪車、Uber for Business、医療交通などの新規事業から生まれる。
Uber Eatsでは、マーケットプレイス(需要創出)とフルフィルメント(配送)の技術スタックを分離する取り組みを進めている。これにより、Walmartのように自社ブランドを持つ小売企業にも、フルフィルメントサービスだけを提供できるようになった。ダラのビジョンは「すべての地元の小売業者がAmazonに対抗できるようにすること。すべての地元企業が当日配送を実現できるようにする」というものだ。
タクシー事業との統合も象徴的な事例だ。従来のUberは1対1のマッチング方式だが、タクシー市場ではメーターとの統合が不十分な場合、タクシーがすでに満車であるにもかかわらず受諾率が低くなる問題があった。そこでチームは「ブラスト・ディスパッチ」方式を開発。10台のタクシーに一斉に配信し、最初に受諾したタクシーが迎車するという、かつてのタクシー無線システムと同様の仕組みを採用した。
ニューヨーク・タイムズの取締役として学んだ教訓
ダラはニューヨーク・タイムズの取締役を務めた経験について、「これまでで最も好きな取締役会だった」と語る。同社が伝統的な出版社からトップレベルのテクノロジー企業へと変貌を遂げる過程を間近で見ることができたからだ。
特に印象的だったのは、コンテンツとビジネスの「完全な分離(separation of church and state)」という原則だ。「『特定のコンテンツのコストはいくらで、どれだけのトラフィックを生んでいるか』と質問したら、『その質問はできない。コンテンツはビジネスとは別物だ』と言われた」。この原則は弱点にもなり得るが、同社のアイデンティティの核となっている。
最も感銘を受けたのは、サブスクリプションへの大規模な賭けだ。当時はBuzzFeedに代表される広告モデルが全盛で、質より量の時代だった。しかしニューヨーク・タイムズは「品質コンテンツへの信念」に基づき、データや財務状況に裏付けられていない決断を下した。ダラは「これは家族経営でなければ実現できなかったかもしれない」と指摘する。株主の短期的圧力から解放されていたからこそ、長期的なアイデンティティに基づく賭けが可能だったという。
自動運転の未来:最後の2%問題と社会的受容性
自動運転車の実用化について、ダラは「答えの出ない質問だ」と率直に認める。最大の課題は「最後の2%のユースケース」と「社会的受容性」の二つだ。
米国では年間約4万人が自動車事故で死亡している。仮に自動運転車が人間の10倍安全だとしても、年間4,000人の死亡が発生する。ダラは「4社か5社が市場を分担している場合、『今日は死亡者が1人だけだった。良い日だ』という感覚になる。私には想像できない」と述べる。100倍安全でも年間400人の死亡が発生し、毎日誰かが亡くなることになる。
Uberはパンデミックを機に自社での自動運転開発から撤退し、WaymoやAuroraなどのパートナーと協業する戦略に転換した。ダラは「私たちのコアスキルは需要と供給を動的に結びつけるネットワークの構築だ」と説明する。
現在サンフランシスコでは自動運転タクシーが日常的に走行しているが、ダラは「人間のドライバーが路上駐車して乗客を待つことは許容されるが、ロボットには許されない」といった細かな課題を指摘する。また、Uberのサービスでは配車要求に対する充足率(fulfill rate)が98%を下回ると「大惨事」と見なされる。このレベルのカバレッジを単一の自動運転事業者が提供するのは極めて困難であり、「人間とロボットが状況に応じて切り替わるハイブリッドな過渡期」が続くと予測する。
テイクレートの哲学:豚は太り、豚は屠られる
ダラは「高いテイクレートは危険だ」と明確に断言する。Uberの仕事は「可能な限り迅速にボリュームを拡大し、テイクレートを最小化すること」だと語る。前四半期、グロスブッキングは22%以上成長したが、ドライバーと配達員の収入(チップ含む)は30%増加した。同時にUberのマージンも拡大し、フリーキャッシュフローはプラスを維持している。
この哲学はエクスペディア時代の経験に基づく。就任当初、エクスペディアのテイクレートは25%だったが、Booking.comは15%だった。「13年にわたる苦しい努力の末、エクスペディアのテイクレートを25%から10%台に引き下げた。それは純粋なマージンであり、そこから生まれる善は何もない」。ダラは「豚は太り、豚は屠られる(Pigs get fat, hogs get slaughtered)」という格言を引用し、短期的な利益のためにテイクレートを上げる誘惑に抗う文化の重要性を強調する。
最も誇りに思うこと:5.6百万人の働き手のためのプラットフォーム
対談の締めくくりとして、ダラはUberが「働き手(earners)のための最高のプラットフォーム」を構築することの重要性を語る。同社は世界最大の就労機会提供者であり、四半期時点で560万人がプラットフォームで収入を得ている。これは世界最大の雇用主である企業(最大200万人)を大きく上回る。
しかし、ダラは「Uberはかつて働き手を当然視していた」と反省する。「供給過剰の時代、ドライバー体験に十分な投資をしてこなかった」。特に問題だったのは、消費者向けと同じA/Bテストの手法をドライバー体験に適用していたことだ。「従業員の401kマッチングをA/Bテストしないのと同じで、人々が生計を立てる手段に対しては異なる注意義務がある」。
ドライバーは1日4〜6時間アプリを使用するため、平均的な消費者とは異なる体験の質が求められる。ダラは「テクノロジー業界は現実世界と乖離していると言われるが、Uberは現実のために構築されたテクノロジー企業だ。サンフランシスコだけでなく世界中の働き手とつながっている——それが誇りに思える会社だ」と締めくくった。
まとめ
本エピソードは、単なる企業変革の物語を超えて、リーダーシップ、意思決定、そして倫理観の深い探求となっている。ダラ・コスロシャヒのキャリアを通じて一貫しているのは、「人に賭ける」という哲学と、短期的な誘惑に抗して長期的な価値を追求する姿勢だ。バリー・ディラーから学んだ「生の真実を求める姿勢」、ダニエル・エクから受けた「楽しさよりインパクト」という挑戦、そして自らが率いる変革の中で培った「働き手への責任」——これらの要素が、Uberを「最も多くの資本を焼いた企業」から「世界最大の就労プラットフォーム」へと変貌させた。特に印象的なのは、ダラが「楽しくはないが、愛している」と語るその姿勢だ。困難な状況でも「インパクト」を追求し続けることが、真のリーダーシップの本質であることを示している。
要点
- ダラ・コスロシャヒは、バリー・ディラーから「編集されていない真実を求める姿勢」と「人に賭ける」哲学を学び、それが後のリーダーシップの基盤となった
- 2001年9.11同時多発テロ直後、IACはエクスペディア買収を「旅行がなければ人生もない」という信念で撤回せず、これが後にパンデミック時のUberの意思決定にも影響を与えた
- UberはライドシェアとEATSの技術チーム統合により、ライドアプリからEATSへの顧客誘導がGoogleやMetaを合わせたよりも大きな新規顧客獲得チャネルとなり、コストは4分の1
- ダラはダニエル・エクの「人生は楽しむことではなくインパクトが重要」という言葉に触発され、UberのCEO就任を決意した
- ソフトバンクの投資を実現するため、全株主が高議決権株式を放棄する「800億ドルの囚人のジレンマ」を解決し、支配権争いに終止符を打った
- Uberの価格は市場の需給によって決定され、好況時には供給コストが上昇し、不況時には価格が低下して需要が加速する逆循環性を持つ
- ダラは「高いテイクレートは危険」と主張し、短期的な利益のためにテイクレートを上げる誘惑に抗する文化を重視している
- Uberは世界最大の就労機会提供者(560万人)であり、ダラは「働き手のための最高のプラットフォーム」を構築することを自身の最大の遺産と位置づけている