motpod
Acquired · 2026年5月15日

The Browser(Brendan Eich、Netscape + Mozilla チーフアーキテクト、Brave CEO)

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • ブラウザの過去・現在・未来:Brendan Eichが語るNetscapeからBraveまでの30年 本エピソードでは、NetscapeのチーフアーキテクトでありJava...
  • [0:00] Brave Browserとは何か Brave Browserは、すべてのトラッカーをブロックすることで高速化されたブラウザである。Google Chrom...
  • Braveの核心的な革新は、Basic Attention Token(BAT)と呼ばれるトークンシステムにある。ユーザーはプライバシーを保護した広告(匿名で、ユーザーの...
こんな人向け

英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。

出典Podcast

Acquired / Ben Gilbert and David Rosenthal

Read
Open episodeFind more episodes

ブラウザの過去・現在・未来:Brendan Eichが語るNetscapeからBraveまでの30年

本エピソードでは、NetscapeのチーフアーキテクトでありJavaScriptの生みの親、Mozillaの元CEO、そして現在Brave BrowserのCEOを務めるBrendan Eichが、ウェブの30年にわたる進化と、プライバシー、ユーザー主権、そしてWeb3の未来について語る。AcquiredのホストBen GilbertとDavid Rosenthalとの対話は、Netscapeの黎明期からMicrosoftとのブラウザ戦争、Firefoxの台頭、Google Chromeの支配、そしてBraveが目指す新しいウェブ経済圏まで、技術史の生きた証言として展開される。Eichのキャリアそのものがウェブの歴史と重なる、極めて密度の高い回である。

0:00Brave Browserとは何か

Brave Browserは、すべてのトラッカーをブロックすることで高速化されたブラウザである。Google ChromeのオープンソースコードであるChromiumをベースにしており、Chromeからの乗り換えが容易になるよう設計されている。Eichは「Chromeを使っているなら、Braveに乗り換えるべきだ」と明確に主張する。現在の月間アクティブユーザー数は5000万人を超え、これはブロックチェーンベースのアプリケーションとしては最大級の規模である。

Braveの核心的な革新は、Basic Attention Token(BAT)と呼ばれるトークンシステムにある。ユーザーはプライバシーを保護した広告(匿名で、ユーザーのデータを収集しない)を視聴することを選択でき、その広告収入の70%をBATとして受け取ることができる。さらに、そのトークンを直接クリエイターに送ることも可能だ。Eichはこれを「3つの頂点を持つ三角形」と表現する。ユーザー、広告主、クリエイターの三者が、プライバシーを侵害することなく経済的に関係を結べるシステムである。

「ユーザーが広告を嫌えばオフにできる。広告を見て収入を得たいユーザーは、その収入をすべてクリエイターに還元することも、自分のものとして保持することもできる。それがユーザーの権利です」とEichは説明する。このシステムの背景には、従来の広告技術がもたらすプライバシー侵害、ページ読み込みの遅延、バッテリー消費、データ通信量の増大といった問題への対処がある。Braveはこれらすべてのトラッキングスクリプトとプログラムmatic広告のウォーターフォールをブロックする。

12:17SGIからNetscapeへ:技術者としての原点

Eichのキャリアは、シリコングラフィックス(SGI)から始まる。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の大学院生だった彼は、SGIの創業者Jim Clarkの講演を聞き、即座に「この人のために働こう」と決意した。SGIは当時、VLSI技術を用いた3Dグラフィックスワークステーションで圧倒的な存在であり、Jurassic ParkのグラフィックスもSGIで制作された。しかし、1992年頃には組織が大きくなり、政治的な動きが増えて退屈を感じたEichはSGIを去る。

その後、SGI時代の友人Jeff Weinsteinとともに、MicroUnityという企業に移る。MicroUnityは、ソフトウェアでプログラマブルなセットトップボックスを目指す野心的な企業だったが、あまりに野心的すぎて商業的には成功しなかった。しかし、この経験を「実践的な大学院」とEichは振り返る。新しいチップ、新しい半導体プロセス、アナログとデジタルの同一チップ上での統合など、後に実現する多くの技術に挑戦していたのだ。

1995年4月3日、EichとWeinsteinはNetscapeに加わる。その年の8月にはNetscapeがIPOを迎え、文字通りのロケット成長を経験する。Eichは「SGIの時代には3四半期連続の黒字が必要だったのに、Netscapeは将来の期待値だけでIPOできた。それが90年代という時代だった」と当時を振り返る。このNetscapeで、EichはJavaScriptを発明することになる。

18:11MozillaとFirefox:オープンソースの挑戦

MicrosoftがInternet ExplorerをWindowsにバンドルしたことで、Netscapeは事実上「殺された」。しかし、Marc AndreessenやEric Hahnといった経営陣は、オープンソースを通じて何かを救おうと考えた。こうして生まれたのがMozillaプロジェクトである。Eichは技術面を、Jamie Zawinskiはコミュニティ面を主導した。

Mozillaは当初、Netscapeのコードをオープンソース化した「アンNetscape版」としてスタートした。AOLがNetscapeを買収した後も、Mozillaは独立したプロジェクトとして存続した。しかし、AOL内部ではMozillaは「敵」と見なされることもあった。Eichは「AOLはNetscapeを買ったものの、最初の2年間は何を買ったのか理解していなかった」と述べる。

転機は2003年に訪れる。Mitch Kapor(Lotus 1-2-3の創業者)とAOLのTed LeonsisがD Conferenceで偶然出会い、Mozillaの処遇について話し合った。KaporはすでにOpen Source Application Foundationを立ち上げており、MozillaのガバナンスリーダーだったMitchell Bakerを雇っていた。Leonsisの決断により、AOLはMozillaプロジェクトに2年間で200万ドルを提供し、スピンアウトを認めた。Eichは「これは巨大な幸運だった」と語る。

Firefoxは2001年から「Phoenix」というコードネームで開発が始まっていた。Dave Hyattらが開発したXUL(XMLベースのユーザーインターフェース言語)を基盤に、完全に再構築されたブラウザである。EichとHyattが2003年に書いた「Azulaからのロードマップ更新」では、「1つのアプリは1つのことをうまくやる」という原則を掲げ、ブラウザに特化したシンプルな設計を目指した。これがFirefoxの成功の基盤となる。

Firefoxは、拡張機能エコシステムを備えた最初のブラウザであり、Chromeよりもはるかに先行していた。Eichは「コアチームは海賊船のようなものだった。Netscape経営陣の愚かなスイート製品を嘲笑いながら、優れたツールを作り続けた」と当時の熱気を語る。

33:54Chromeの台頭とプライバシーの問題

Firefoxが市場シェア25%以上を獲得するまでに成長した後、2008年9月1日にGoogle Chromeが登場する。Chromeの初期の売りは、高速なJavaScriptエンジンではなく、タブごとにプロセスを分離してFlashプレイヤーのクラッシュがブラウザ全体に影響しないようにする点だった。Eichは「あのコミック形式のマーケティングは、プロセス分離を理解する技術者にとって天才的な戦略だった」と評価する。

しかし、Eichが問題視するのは、Googleが2016年にプライバシーポリシーを変更した点である。ProPublicaとThe Guardianが報じたように、Googleはすべてのデータを1つの巨大な広告交換・データ収集システムに統合した。ChromeにGoogleアカウントでサインインすると、広告ターゲティングのために追跡される仕組みになった。さらに2018年9月には、GmailやYouTubeにサインインするだけで自動的にブラウザ全体にサインインされるようになった。Eichは「オプトアウトは可能だが、誰もやらない」と指摘する。

Eichは「なぜ追跡されることが悪いのか」という問いに、いくつかの理由を挙げる。第一に、データがどこに流れるかわからない。埋め込まれたピクセルやスクリプトを通じて、ユーザーのデータは無数の第三者に渡り、ダークウェブや公開情報として利用可能になる。第二に、データ漏洩のリスク。サーバー上のデータはコピーや漏洩の可能性が高く、100台、1000台のサーバーに拡散する。第三に、ジオフェンシングなど物理世界での悪用も可能である。

Eichは「プライバシーとは、自分のデータが特定の目的のために、自分が利益を得る形で提供されることを知っている場合にのみ与えられるものだ」と、Steve JobsがMossbergに語った言葉を引用する。GDPRが目指す「目的の限定性」も同じ考え方だが、実際のクッキー同意ダイアログは「完全な詐欺」だとEichは批判する。

46:18Braveの経済学:ユーザー主権のビジョン

Braveの核心的なビジョンは、ユーザーに経済的力を取り戻すことにある。Eichは「ユーザーがプライバシーを守ることができれば、より高い価格を要求でき、より良い条件を引き出せる」と主張する。暗号技術を使えば、プライバシーを犠牲にすることなく、広告の視聴や購入の認証を行うことができる。

Braveの広告システムは、従来の広告技術とは根本的に異なる。広告のカタログ(クリエイティブへのリンクとキーワード)は、地域ごとにすべてのユーザーに同じ内容が配信される。ユーザーを識別することなくカタログをダウンロードできる仕組みだ。広告のマッチングはブラウザ内で行われ、サポートベクターマシンやベイズ統計といった比較的シンプルな機械学習を用いる。Eichは「TensorFlowやクラウドのスーパーコンピュータは必要ない」と述べる。

広告主にとっては、従来のFacebookのような「1人をターゲットできる」精度は失われる。しかし、Eichは「広告技術の多くは思われているほど正確ではない」と指摘する。JavaScriptの可変性(mutable environment)は、広告タグ同士の競合や上書き、クッキースタッキング、さらにはボットによるクリック詐欺を可能にしている。Googleが詐欺師からも手数料を取る構造は、利害の不一致を生んでいる。

Braveの成長は、5年連続で倍増以上を続けている。Eichは「ユーザーが毎日感じるのは、ページ読み込みの遅さ、バッテリーの消耗、データ通信量の増加だ。そこから入って、徐々に経済的力の重要性を理解してもらう」と語る。世界のオンライン広告市場は3000億ドル以上。その1%を獲得し、70%をユーザーと共有すれば、21億ドルがユーザーに還元される計算になる。

1:07:00暗号資産とウォレット:自己管理とユーザー体験のジレンマ

Braveは、ブラウザにネイティブな暗号資産ウォレットを組み込んでいる。これは、MetaMaskのようなブラウザ拡張機能よりもセキュリティが高い。Eichは「拡張機能は設計上、ネイティブアプリよりもセキュリティモデルが弱い」と指摘する。また、MetaMaskを狙ったフィッシング詐欺が後を絶たない現状にも言及する。

しかし、自己管理(self-custody)には大きな課題がある。Eichは「ユーザーが秘密鍵やシードフレーズを安全に管理できるようになるには、20年かかる訓練が必要だ」と述べる。銀行やCoinbaseのような管理型(custodial)サービスは、パスワードを忘れても本人確認で復旧できるが、自己管理では秘密鍵を失えば資産も失う。

Braveはこのジレンマに対して、実用的なアプローチを取る。現在はKYC(本人確認)を経た管理型ウォレットでBATを受け取る仕組みだが、将来的にはSolanaなどの高速で低手数料のチェーン上で、ゼロ知識証明を用いた直接送金を目指している。Eichは「規制を無視して自己管理ウォレットに送金すれば、連邦刑務所行きになる可能性もある」と現実的な制約を説明する。

Moxie Marlinspike(Signalの創業者)の「Web3は中央集権的なプラットフォームに再び収束する」という指摘に対して、Eichは「サーバーを完全に排除するのは難しい。EtherscanやInfuraのような中央集権的なサービスには利点がある」と同意する。しかし、Braveのような「強力なクライアント」を通じてユーザーが団結すれば、サーバーとの関係をより公平にできると主張する。「暗号技術を広く解釈すれば、サーバー上でもプライバシーとセキュリティを向上させることができる」と述べる。

1:26:18成功の定義と競争環境

Eichは3年後の成功を「月間アクティブユーザー4億人」と定義する。現在の5000万人が倍増を続ければ、3年で8倍の4億人に達する計算だ。この規模になれば、標準化団体での影響力が格段に大きくなり、Samsungのようなメーカーとのプリインストール契約も現実的になる。

しかし、リスクも認識している。暗号資産全体の規制リスク、特に米国での禁止の可能性。ただし、Eichは「ファミリーオフィスや富裕層が暗号資産に関与している以上、全面禁止は考えにくい」と見る。また、GoogleやFacebookなどのビッグテックが自社ブラウザにウォレットを組み込む可能性にも言及するが、「Googleがイノベーションを起こすのは難しい。大企業にはイノベーターズ・ジレンマが存在する」と述べる。

競合としては、DuckDuckGoがプライバシー重視のブラウザに進出していることを挙げる。Eichは「プライバシーの覇権を巡ってBraveとDuckDuckGoが早期に潰し合うのは避けたい」と述べつつ、マーケティング上の競争は避けられないと認める。現在の主なターゲットはChromeユーザーであり、プライバシー重視のブラウザ同士が競合するよりも、Chromeからの乗り換えを促進する方が重要だという立場だ。

まとめ

このエピソードは、ウェブの30年を生きた技術者による、極めて個人的かつ歴史的な証言である。Eichのキャリアは、Netscapeの誕生、Microsoftとのブラウザ戦争、Firefoxの台頭、Chromeの支配、そしてプライバシーとユーザー主権を掲げるBraveの挑戦という、ウェブの進化そのものと重なる。特に印象的なのは、Eichが一貫して「ユーザーに力を取り戻す」というビジョンを追求している点だ。JavaScriptの創造者としてウェブアプリケーションの基盤を築き、Mozillaでオープンソースのブラウザを育て、そしてBraveでプライバシーと経済的価値をユーザーに還元するシステムを構築している。この一貫性が、単なる技術者ではなく「ウェブの良心」としてのEichの立場を際立たせている。

要点

  • Brave Browserは月間5000万ユーザーを超え、すべてのトラッカーをブロックすることで高速化を実現。ChromiumベースでChromeからの移行が容易。
  • Basic Attention Token(BAT)システムにより、ユーザーはプライバシー保護型広告の収入の70%を受け取れる。広告のマッチングはブラウザ内で行われ、ユーザーデータは外部に送信されない。
  • EichはNetscapeでJavaScriptを発明し、Mozilla/Firefoxの技術リーダーとしてオープンソースブラウザの普及に貢献。Firefoxはかつて25%以上の市場シェアを獲得した。
  • Google Chromeは2008年に登場し、タブのプロセス分離を売りにした。しかし2016年以降、GoogleはChromeへのサインインと広告追跡を統合し、プライバシー問題が顕在化。
  • プライバシー侵害の実害として、データ漏洩、第三者による追跡、ジオフェンシングなどの悪用、広告詐欺の温床化をEichは指摘。
  • Braveはブラウザにネイティブな暗号資産ウォレットを搭載。自己管理と管理型のバランスを取りながら、Solana上でのゼロ知識証明を用いた次世代広告システム「Themis」を開発中。
  • 3年後の目標は月間4億ユーザー。この規模になれば標準化団体での影響力が増し、クリエイターエコノミーと直接的なファン支援の仕組みを本格化できる。