
Kevin Rose:Web 2.0からWeb3へ
- ケビン・ローズ:Web 2.0からWeb3への旅 Acquiredのこの特別エピソードでは、Web 2.0のパイオニアでありDiggの創設者、そして現在はTrue Ven...
- [5:20] ラスベガスからシリコンバレーへ:コンピュータオタクの目覚め ケビン・ローズはカリフォルニア州レディングで生まれ、オレゴン州セイラムを経て、小学2年生のときに...
- 彼がシリコンバレーの存在を認識したのは、世界最大のコンピュータ見本市COMDEXがラスベガスで開催されていたからだ。高校生だった彼は、偽の会社名「Foliage Soft...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
Acquired / Ben Gilbert and David Rosenthal
ケビン・ローズ:Web 2.0からWeb3への旅
Acquiredのこの特別エピソードでは、Web 2.0のパイオニアでありDiggの創設者、そして現在はTrue VenturesのパートナーとしてWeb3とNFT/DeFi投資の最前線に立つケビン・ローズが、自身のキャリアの全貌を語った。TechTVの「The Screensavers」でのデビューからDiggの真の創業物語、Revision3、Hodinkee、そしてModern Financeポッドキャストに至るまで、テクノロジーの進化とともに歩んできた彼の軌跡は、インターネットの各時代を体現している。この対話は、ある時代の「内部者」がどのように次の波を認識し、飛び込んでいくのかという貴重な洞察に満ちている。
ラスベガスからシリコンバレーへ:コンピュータオタクの目覚め
ケビン・ローズはカリフォルニア州レディングで生まれ、オレゴン州セイラムを経て、小学2年生のときにラスベガスに移住した。父親の仕事を求めての移住だった。ラスベガスで育った彼は、「セブンイレブンにスロットマシンがあるのが普通」という環境に違和感を覚えつつも、コンピュータにのめり込んでいった。
彼がシリコンバレーの存在を認識したのは、世界最大のコンピュータ見本市COMDEXがラスベガスで開催されていたからだ。高校生だった彼は、偽の会社名「Foliage Software」をでっち上げて無料パスを入手し、両親に会場まで車で送ってもらった。最新のプロセッサやマザーボード、ビデオカードを実際に手に取れるこのイベントは、彼にとって「この上なくクールな体験」だった。しかし翌年、入場年齢が16歳に引き上げられ、さらにその翌年には18歳に。彼は「コンピュータ見本市に入るための偽ID」を作るという、なんとも象徴的な経験をすることになる。
当時は「コンピュータに詳しいことがカッコいい」時代ではなかった。彼は「かなり内気な子供で、高校では友達も少なく、よくいじめられていた」と振り返る。この経験が、後に彼がTechTVでカメラの前に立つことになった経緯と対照的だ。
TechTVと「The Screensavers」:偶然のオンエアタレント誕生
ケビンはTechTVに応募したとき、カメラの前に立つつもりはまったくなかった。技術デモのセットアップやLinuxのインストールなど、舞台裏の仕事を希望していた。転機は、彼がWindowsの脆弱性を発見したことから訪れた。Windowsの内部メッセージングツールを使って任意のIPアドレスにスパムメッセージを送信できるというものだ。当時のホストだったレオ・ラポートとパトリック・ノートンが彼を番組に招き、この脆弱性について話させた。
エグゼクティブプロデューサーのポール・ブロックは彼の説明に感心し、「もっと変わった、あまり知られていないネタを見つけてきてくれ」と依頼した。こうして「ダークティッパー」というニックネームで、週に一度、ハッキングツールを紹介するコーナーを持つことになった。彼は「今見返すと、声の震えや話し方に未熟さがにじみ出ていて、とても気恥ずかしい」と語る。実際、番組側はタレントコーチをつけ、手の動きや話し方まで指導したという。
TechTVはライブ放送で、スタジオ観客の前で行われていた。機材の故障やゲストのマイクトラブルなど、予期せぬ出来事が日常的に発生し、「何かが壊れても、その場で対応するしかない」という緊張感が番組の魅力だった。ケビンはこの経験が、後にポッドキャストで「完璧を求めすぎず、その場で出し切る」姿勢につながったと語る。
G4による買収とDiggの誕生:Slashdotに触発された革命
TechTVはポール・アレンが所有する独立系ネットワークで、数百人を雇用する高コスト体質だった。視聴率は良かったものの、収益化に苦戦し、最終的にゲーム専門チャンネルのG4(コムキャスト傘下)に買収された。G4は「サブスクリプション数」を目的に買収し、サンフランシスコの拠点を閉鎖してロサンゼルスに移転する計画だった。ケビンはLAでのホスト継続オファーを受けたが、長期的に「G4がThe Screensaversを別の番組に変えようとしている」ことを察知し、別の道を模索し始める。
ここでDiggの真の創業物語が明かされる。これまでメディアやWikipediaで語られてきた「ウォズニアックとのランチがきっかけ」という説は完全な誤りだとケビンは断言する。実際のきっかけは、Slashdotの創業者であるコマンダー・タコ(ロブ・マルダ)とのランチだった。Slashdotはユーザー投稿型のニュースサイトだが、投稿されたすべての記事を見ることができず、編集者が選んだものだけが表示される仕組みだった。ケビンは「すべての投稿を見られるようにして、ユーザーが投票でベストを選べるようにしたらどうか」と提案したが、コマンダー・タコは「それはやりたくない」と拒否。そこでケビンは「よし、自分で作ろう」と決意した。
彼はフリーランスの開発者オーウェンを雇い、最初のプロトタイプを構築した。Wikipediaではオーウェンやジェイ・アデルソン(後にCEOとして参加)が「共同創業者」とされているが、ケビンは「オーウェンはフリーランスの開発者であり、ジェイは4〜5ヶ月後にCEOとして雇っただけ」と明確に否定する。ジェイは当初、Diggを「Revision3の邪魔になる」として売却を勧めていたが、成長を見て考えを変え、ケビンが株式を提供して経営を任せたという経緯がある。
DiggとDig Nation:コミュニティが生んだ相乗効果
Diggの成長と並行して、ケビンはアレックス・アルブレヒトと共にポッドキャスト「Dig Nation」を開始した。これは単なるオタクニュースの雑談番組だったが、Diggのトップ投稿者を番組内で紹介することで、コミュニティとの強力なエンゲージメントを生み出した。「自分の名前が番組で取り上げられる」ことがユーザーのモチベーションとなり、それがさらにDiggの利用を促進する好循環を生んだ。
Diggはピーク時に月間3800万ユニークユーザーを達成し、トップ10のWebプロパティにランクインした。この時期、マーク・ザッカーバーグがサンフランシスコのDiggオフィスを訪れ、コンテンツへの投票メカニズムについて意見交換をしたことも明かされた。これはFacebookが「いいね!」ボタンを実装する前の話で、Diggはすでに「この記事が好きなら、こちらもおすすめ」という初期のレコメンデーションエンジンを搭載していた。ザッカーバーグはこの仕組みに強い関心を示し、後にFacebookプラットフォームの初期パートナーとしてDiggを招待したという。
また、ケビンはTwitterの「おすすめユーザーリスト」に載った経緯も語った。TEDカンファレンスのバーで、エヴァン・ウィリアムズ、クリス・サッカと飲んでいたとき、サッカが「俺とケビンをリストに入れてくれないか」と冗談めかして頼んだところ、エヴァンがその場でスマホを取り出して追加した。すると瞬時にフォロワーが急増。その数ヶ月後、彼はそのフォロワーの中にいた女性(現在の妻ダリア)と出会うことになる。「すべてはエヴァンのおかげ」とケビンは笑う。
Web2.0からWeb3へ:共通する熱狂とコミュニティの感覚
ケビンは、現在のWeb3/暗号資産空間に、Web2.0時代と同じ「コミュニティの一体感」と「真の信者たちの熱狂」を感じていると語る。モバイルウェーブは「誰の目にも明らかな拡大」であり、既存のWeb2.0市場の延長線上にあった。しかしWeb3は、Web2.0が最初に登場したときと同じように、「本当に大きくなるのか?」「NFTは本当にコレクションとして価値があるのか?」という懐疑の目にさらされている。
彼は2011年6月に初めてBitcoinについてツイートし、2012年8月にはCoinbaseアカウントを開設していた。Coinbaseの創業者ブライアン・アームストロングとはFoundationポッドキャストで対談し、YCのデモデイで出会った後に個人投資も行った。しかし、当時Google Venturesのパートナーだった彼がCoinbaseへの投資を提案したところ、あるパートナーから「チューリップだ」と言われ、Googleのコーポレートベンチャーとしての投資は見送られた。これは「コーポレートベンチャーが消費者向け投資で直面する典型的なジレンマ」だとケビンは指摘する。
彼は暗号資産プロジェクトを評価する際の基準として、(1) 解決すべきユースケースが存在するか、(2) 信頼できるチームか、(3) 価格上昇が主な話題になっていないか——を挙げる。「ムーン(価格高騰)」の話ばかりしているプロジェクトは、ポンプ・アンド・ダンプの可能性が高いという。NFTについては、購入金額が「失っても構わない」範囲であれば、アートそのものを愛することが第一条件だと語る。クールキャッツを購入したのも「キャラクターが可愛いと思ったから」であり、投資目的ではなかった。
True VenturesとHodinkee:長期的視点の投資哲学
ケビンは自身の会社MilkをGoogleに売却した後、True Venturesにベンチャーパートナーとして参加し、その後フルタイムのパートナーに移行した。True Venturesを選んだ理由は、創業者に対する「プレッシャーをすべて取り除く」姿勢に共感したからだ。Milkの売却時、投資リターンが大きくないとわかっていながらも、Trueのパートナーは「これは君の会社だ。好きなようにしなさい」と言ったという。
現在、彼の仕事の95%は暗号資産・ブロックチェーン関連企業の評価に費やされており、True Venturesは約7.5億ドルのファンドのうち、約10%にあたる7500万ドルをブロックチェーン関連スタートアップに投資している。DeFi、スケーリングソリューション、NFTプロジェクトなど、ポートフォリオは多岐にわたる。
Hodinkeeでの経験も重要な意味を持つ。彼はHodinkeeのコンテンツとコマースの融合モデルを高く評価し、編集と販売の間に「政教分離」の線を引くことの重要性を強調する。「売っている時計について批判的な記事も書ける」独立性こそが、コミュニティの信頼を獲得する鍵だった。このモデルを、彼は新しいNFT専門ポッドキャスト「Proof」に応用しようとしている。
Modern FinanceとProof:二つのポッドキャスト戦略
ケビンは現在、二つのポッドキャストを運営している。Modern Finance(MoFi)は暗号資産全般を扱い、DeFiやスケーリング、新しいコインなどに焦点を当てる。そして新しく立ち上げるProof(proof.xyz)は、NFTに特化したディープダイブを提供する。この分割の背景には、視聴者からの「もっとNFTの話を」という声と「暗号資産の話に戻ってきて」という声の両方に応える必要があったからだ。
Proofでは、Hodinkeeで培った「信頼の構築」を最優先する。最初の3年間は「徹底した編集コンテンツ」に投資し、伝統的な美術評論家とNFTの専門家の両方を雇用して、歴史的視点と新しい視点の両方を提供する計画だ。特に「プログラム可能なNFT」の分野では、アーティストのコードスニペットを記事に掲載するなど、技術的な深掘りを目指す。
MoFiのエピソードで特に印象的だったのは、Beeple(マイク・ウィンケルマン)との対談だ。ケビンは「彼以上に素敵でクレイジーな人物はいない」と絶賛し、このエピソードが多くの人にNFTの価値を理解させるきっかけになったと語る。デジタルアートが「無限に複製可能」だからこそ価値がないという従来の見方に対し、NFTは「デジタル作品に価値を付与する手段」を提供したというのが彼の主張だ。
まとめ
このエピソードが特に価値を持つのは、ケビン・ローズという人物が単なる「成功した起業家」ではなく、インターネットの各時代を「内部者」として生き、その知見を次の時代に適用し続けている点にある。Diggの創業物語の「真実」を初めて詳細に語ったこと、Web2.0とWeb3の類似性を自身の経験から具体的に描き出したこと、そしてNFTという新しいアート市場に対して「Hodinkeeで培った信頼構築のモデル」を適用しようとしていること——これらはすべて、彼が単なるトレンドフォロワーではなく、時代を読む力と実行力を持った稀有な存在であることを示している。
特に印象的なのは、彼が「投資」と「アートへの愛」と「コミュニティの信頼」を明確に区別している点だ。NFTを「失っても構わない金額で、純粋にアートとして愛するもの」と「長期的な投資価値を見極めるもの」に分け、さらにポッドキャストでは「視聴者に信頼される情報提供者」であり続けることを最優先する。このバランス感覚こそが、彼が20年以上にわたってテクノロジーの最前線に立ち続けている理由だろう。
要点
- Diggの創業はSlashdotのコマンダー・タコとのランチがきっかけであり、ウォズニアックとのランチ説やWikipediaの記述は誤り。フリーランス開発者が最初のプロトタイプを構築し、ジェイ・アデルソンは数ヶ月後にCEOとして参加した。
- TechTVの「The Screensavers」でのオンエアタレント経験は、Windowsの脆弱性を発見したことが偶然のきっかけ。当初は舞台裏の仕事を希望していた。
- Diggはピーク時に月間3800万ユニークユーザーを達成し、Facebookの「いいね!」ボタン実装前にマーク・ザッカーバーグが投票メカニズムについて意見交換に訪れた。
- ケビンは2011年6月に初めてBitcoinについてツイートし、2012年8月にCoinbaseアカウントを開設。Coinbaseへの投資はGoogle Venturesとしてではなく個人で行った。
- True Venturesでは現在、仕事の95%をブロックチェーン関連に費やし、約7.5億ドルのファンドの10%を暗号資産スタートアップに投資している。
- NFT投資の基準は「失っても構わない金額でアートを愛すること」と「長期的な投資価値を見極めること」の二段階。価格上昇だけを話題にするプロジェクトは警戒すべき。
- 新しいポッドキャスト「Proof」はNFT専門で、Hodinkeeで培った「信頼構築のための深掘り編集」モデルを適用。伝統的美術評論家とNFT専門家の両方を雇用する計画。