
資本効率の良い成長(Zoom CEO エリック・ユアン & Veeva CEO ピーター・ガスナー)
- 概要 本エピソードは、AcquiredのホストであるBen GilbertとDavid Rosenthalが、Emergence CapitalのCEOサミットで収録した...
- [0:00] 資本効率の神話と現実—二人のCEOの資金調達史 Eric YuanとPeter Gassnerの資金調達の歴史は、シリコンバレーの常識を覆すものだ。Veev...
- 一方、ZoomのEric Yuanの資金調達はさらに困難を極めた。2011年に会社を創業したEricは、まずWells Fargoの銀行口座を開設したが、「資金調達は簡単...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
Acquired / Ben Gilbert and David Rosenthal
概要
本エピソードは、AcquiredのホストであるBen GilbertとDavid Rosenthalが、Emergence CapitalのCEOサミットで収録した特別対談である。ZoomのCEO Eric YuanとVeeva SystemsのCEO Peter Gassnerという、極めて少ない資本で数十億ドルの収益と時価総額を築いた二人の創業者CEOが、資本効率の高い成長の本質について語り合う。両社はまったく異なるビジネスモデル(Zoomはセルフサービスの水平型SaaS、Veevaは大企業向け垂直型SaaS)を持ちながらも、「製品の卓越性」「規律ある人材採用」「無駄のない文化」という共通の原則で驚異的な資本効率を実現した。会話は創業初期の資金調達の苦労から、製品開発、営業戦略、マーケティング支出の考え方、そして長期的な競争優位性の構築まで多岐にわたり、実践的な知見に富んでいる。
資本効率の神話と現実—二人のCEOの資金調達史
Eric YuanとPeter Gassnerの資金調達の歴史は、シリコンバレーの常識を覆すものだ。Veevaは創業から約15ヶ月後にEmergence Capitalから400万ドルを調達したが、実際にはその資金をほとんど使わずにIPOに至った。Peterは「使うかもしれないと思って調達したが、結局使わなかった」と振り返る。Veevaは2007年2月に創業、2008年3月頃に資金調達を行ったが、これは金融危機の真っ只中で、銀行口座を開設するのも困難な時期だった。現在、Veevaは約20億ドルの収益を上げ、約30%の利益率を誇る。
一方、ZoomのEric Yuanの資金調達はさらに困難を極めた。2011年に会社を創業したEricは、まずWells Fargoの銀行口座を開設したが、「資金調達は簡単だと思っていた」という期待に反して、数ヶ月間ベンチャーキャピタルから投資を得られなかった。最終的に友人から300万ドルのシード資金を調達し、その後もVCからの投資を得られずにさらに600万ドルを友人から調達した。Ericは「ほとんどのVCは、ビデオ会議市場はすでに決着済みか、底辺への競争になると考えていた」と説明する。あるVCの友人からは「Eric、君はクレイジーだ。世界に新しいビデオ会議ソリューションは必要ない。別のことをやるなら小切手を書くよ」と言われたという。別の大手VC(Ericは名前を明かさなかった)は「Skype、Google、Webexが支配している。君のスレッドは機能しない」と断言した。Ericはその帰り道、Windowsのスクリーンセーバーに「You are wrong」と表示するように設定し、数年後までそれを続けたという。
最終的にZoomはEmergence Capitalから3000万ドル、その後Sequoiaから1億ドルを調達したが、Ericは「Emergenceからの資金調達後、会社は完全に別のゲームになった」と述べ、実際にはその1億3000万ドルの大部分に手をつけなかった。PeterがEricの取締役会メンバーだった際、Ericはさらに資金を調達する決断をした。その理由についてEricは「2017〜18年頃、経済が大きく落ち込むと考えたからだ。結局私は完全に間違っていたが」と説明する。Peterは「Veevaでは追加資金を調達しなかった。単に必要なかったからだ」とシンプルに答えた。
資本効率の本質—ビジネスモデルではなくマインドセット
Benは「資本効率はビジネスモデルの問題ではなく、マインドセットと文化の問題だ」と指摘する。Veevaは数百万ドルの契約を前払いで得るビジネスモデルを持ち、Zoomはクレジットカードでのセルフサービスが中心だが、両社が同じように資本効率が高いのは偶然ではない。
Peterは「まずマインドセットから始まる。利益を生むレモネードスタンドを経営するように考えることだ」と語る。「キャッシュを生むビジネスは常に誰かにとって価値がある。キャッシュを生まないビジネスは誰にとっても価値がない。長期的な安全性はキャッシュにある」。さらに「製品の卓越性」が不可欠だと強調する。「Ericと私に共通するのは、どちらもプロダクト人間だということだ。そして、とにかくハードワークする。最初の5年間は、製品と顧客に関係ないことはすべてBSだと思ってやらなかった。カンファレンスにも出席しなかった。ただひたすら集中していた」。最後に「市場のタイミング」という運の要素も認める。「VeevaもZoomも適切なタイミングだった。5年早く始めていたら、あるいは5年遅かったら、難しかっただろう」。
Peterは「アウトライアー(異常値)になるには、ほとんどの人が失敗すると思うことを選ばなければならない」と主張する。「ほとんどの人がうまくいくと思うことを選べば、当然多くの人がそれを選ぶから、アウトライアーにはなれない。Emergenceを除くすべてのVCが私たちを断った。『垂直特化型ソフトウェアは小さな市場でうまくいかない』と言われたが、私はその言葉にむしろ励まされた。非自明なことには、本当に素晴らしい結果を生むチャンスがあるからだ」。
顧客の「感情」を読む—製品市場適合の真実
PeterはVeevaの最初の製品について、3〜4人の潜在顧客に話を聞いたところ、全員が「必要ない」と答えたという。しかしPeterは「彼らが『必要ない』と言っているのではなく、現在使っているソリューションに感情的に愛着があるかどうかを聞いていた」と説明する。「彼らの反応から、現在のソリューションに愛着がなく、価値を感じていないことがわかった。だから、より良いものを作ればチャンスがあると確信した」。顧客の「言葉」ではなく「感情」を聞くことの重要性を強調する。
Ericの場合はさらに明確だった。「私はWebexの創設メンバーだった。だからWebexが本当にひどい製品だと知っていた。Skypeも信頼性が低く、Googleも毎日うまく動かなかった。顧客と多くの時間を話し、より良いソリューションを構築できれば、少なくとも生き残れると確信した」。Ericは「最初からZoomを大きな会社にしようと思っていたわけではない。ただ、顧客をがっかりさせたWebexの問題を修正したかった。Ciscoがそれを許さなかったから、自分で始めるしかなかった」と振り返る。
Ericは資金調達の難しさについても語る。「投資家からもらうお金は『信頼』だ。1ドル1ドルが重要だ。だから毎日、どうやって生き残るかだけを考えていた。今でも夜中に目が覚めて、どうやって生き残るか考えている」。
人材採用の哲学—無駄な人材を排除し、適切なミックスを追求する
Zoomは創業時、25人(すぐに40人に増加)のチームでスタートしたが、そのうち39人がエンジニアだった。Eric自身はコードを書かず、プロダクトマネージャー、UIデザイナー、さらには施設管理まで担当した。「最初の4年間はマーケティングチームも営業チームもなかった。自分でQuickBooksを学ばなければならなかった」と語る。このエンジニア中心の構成は、すべての資金を製品開発に集中させるための戦略だった。
Peterは「初期の頃は、無駄な人材は一人もいなかった。オプショナルな人材もいなかった。無駄な人材は資金を消費するだけでなく、意思決定を複雑にする。機械の中の砂のようなものだ」と説明する。Veevaは長期の販売サイクルを持つため、最初から営業が必要だった。Peter自身が最初の営業担当者となり、会社の設立書類に署名する前から顧客に売り込みを始めていた。「『まだ誰も雇っていません』『デモはできません』『パワーポイントもありません』という状態で、1ヶ月後にパワーポイントを持って戻ってきた」という。
最初の顧客は、共同創業者の関係で紹介されたCEOで、ITチームに腹を立てていたため「自分が本当に責任者だと示すために」購入を決めたという。Peterは「そのシステムにほとんどログインすらできなかったが、顧客はそれを知らなかった」と笑う。
Ericは人材戦略について、初期は「自己動機付けと自己学習の精神を持つ人材」を重視したと説明する。しかしCOVID後の急成長を経て、この哲学に欠陥があったことを認める。「ビジネスが15倍、20倍に成長したとき、チームが追いつかなかった。全員が同じペースで成長できるわけではない。振り返ると、成長 potential を持つ人材と、経験豊富なリーダーを混ぜるべきだった」。Peterも「チームの化学反応は、個人のスキルよりもはるかに重要だ」と同意する。
契約戦略と価格設定—長期価値の最大化
Veevaは、最初の大口顧客Pfizerとの契約で、複数年契約を結ばず、年間契約を選択した。Peterは「長期価値(年間顧客価値)を最適化したかった。複数年契約で割引を提供すると、市場を縮小させることになる。また、毎年ビジネスを勝ち取ることをチームに強制したかった」と説明する。さらに「限られた垂直市場で販売しているため、同じ業界の2社が異なる価格を支払っていると、後で問題になる」という理由も挙げた。
Pfizerとの契約獲得は劇的なエピソードだった。競合のSalesforce.comのパートナーが「Veevaはこの案件を絶対に勝てない」とメモを送ってきた。Peterは「我々は勝つ」と返信した。Pfizerとの重要なミーティングで、PfizerのIT責任者が「この会議室にいる我々の人数は、君たちの会社の従業員数より多い。なぜ君たちから買うべきなのか」と問い詰めた。Peterは「我々が君たちの唯一のチャンスだ。素晴らしいものを作る。我々には最高の人材がいる」と答えた。契約獲得後、Peterは「なんてこった、今度はどうやって彼らを成功させるんだ」と恐怖を感じたという。その顧客が「ライブでハッピー」になったとき、会社全体にボーナスが支給された。
EricはZoomの価格戦略について「レストランを開くようなものだ」と説明する。「より良いサービス、より良い価格、より良い料理を提供する。競合他社と比較して、常にすべての製品でより良い価格を提供している」。しかし、Zoomの最初の有料顧客は年間たった2000ドルだったため、Veevaのように顧客からの収益で製品開発を賄うことはできなかった。「だからこそ、ビジネスモデルは非常に重要だ。Peterのように大企業顧客から前払いで収益を得られるモデルが理想的だ」とEricは認める。
マーケティング支出の規律—測定可能なものだけに投資する
Zoomは最初の4年間、マーケティングチームを持たなかった。Ericは「ビデオ会議は誰もが理解している成熟した市場だ。製品が機能すれば、マーケティングチームは必要ない」と考えた。転機は、有料顧客から「Zoomのことは聞いたことがなかったが、製品を試したら機能した」という一貫したフィードバックを得たことだ。これを「シグナル」と捉え、2015年にマーケティングチームを創設した。
Ericはマーケティング支出の測定に異常なまでにこだわる。GoogleのSEM(検索エンジンマーケティング)に初めて小切手を切ったとき、「これは人生で最大の小切手だ」と感じたという。その額は月額20万ドル以上だった。マーケティングチームが「1ドルの投資で1.5ドルのリターンがある」と主張したのに対し、Ericは「3ドルのリターンを目指せ」と要求した。「SaaS企業の共通の間違いは、CAC対LTVの計算で満足してしまうことだ。1ドルの投資で1.5ドルのリターンで満足してはいけない。常に最適化を続け、2ドル、3ドルと引き上げていくべきだ」。
一方で、Ericは「測定できないものに投資してはいけない」とも強調する。しかし、看板広告については異なるアプローチを取った。最初の看板を出したところ、顧客から「Zoomを導入して正しかったと確信した」というポジティブなフィードバックが殺到し、従業員の士気も向上した。Ericは「効果を測定する方法を知っていれば、いつ倍賭けするべきか、いつ撤退するべきかがわかる」と語る。
競争優位性の構築と防御—製品の卓越性と多角化のバランス
EricはZoomの長期的な防御力について「スポーツのようなものだ。攻撃と防御の両方に集中する必要がある」と説明する。「製品が今日競合より優れていても、パラノイドでい続け、常に革新を続けなければならない。統合コミュニケーションからコラボレーションプラットフォームへ、さらに複数の新しい部門別アプリケーションへと進化させる必要がある。良い攻撃こそが最良の防御だ」。
Peterは「製品の卓越性でそこにたどり着けるが、そこに留まり続けるにはハードワークが必要だ。常に自分自身を再発明し続けなければならない」と同意する。さらに重要なポイントとして「高い市場シェアを獲得した領域で、新しい領域に拡大しないと、創造的な人材が既存領域でやりすぎてしまい、問題を引き起こす」と指摘する。
Veevaは約5年前に「ライフサイエンス業界で最も好かれるリーダーになる」という目標を掲げた。Peterは「支配的になると傲慢さが生まれる。傲慢さは顧客を遠ざけ、彼らは自然に逃げ道を探す。リーダーシップチームの誠実性とエネルギーを定期的に監査している。結果が出るのを待っていては手遅れになるからだ」と説明する。
EricはPeterから学んだ重要な教訓を共有する。「IPOの1年前、私はZoomの収益が1つのサービスだけに依存していることに気づいた。Peterに相談すると『その決断は2〜3年前にすべきだった』と言われた。新しいサービスを今日始めても、効果が出るのは数年後だ。常に先を見越して計画しなければならない」。これはEricが「最大の過ち」と認める点だ。
PeterはVeevaの2つ目の製品(コンテンツ管理)について、2010年初頭に計画を始め、同年秋に最初の採用を行ったと説明する。「単一製品の会社としてIPOすることもできたが、おそらくその後は誰かに買収される運命だった。マルチプロダクト企業になることを選んだ。最初の製品とはまったく異なる領域を選んだ。同じ企業に販売するが、異なるバイヤー、異なる製品、異なるコードベース。これはリスクが高く、取締役会でも議論になった。最初の製品のロケット船が上昇している最中に、そこから目を離さなければならなかったからだ。しかし、そのトレードオフは価値があった」。
未来への展望—成功シナリオと失敗シナリオ
PeterはVeevaの成功シナリオについて「この巨大な産業(2兆ドル規模のライフサイエンス業界)の自動化を本当に支援し、その産業にとって『不可欠で、高く評価される』信頼できるパートナーになることだ」と語る。「『不可欠』という言葉を意図的に使っている。業界全体を意味のある形で自動化するような存在はこれまでになかった」。さらに「利益を上げ、社会に貢献し、良い雇用主であることの模範を示す」という社会的使命も強調する。Veevaは公益法人(Public Benefit Corporation)に転換した最初の上場企業だが、Peterは「それは単なる形式的なものだ。私たちは常にそのように会社を運営してきた」と述べる。
EricはZoomの成功シナリオとして「非常に成功したプラットフォーム企業になること。複数の新しいサービスを導入し、人々がZoomを使ってより多くのことを達成できるようにする。同時に毎年収益を成長させる」と語る。失敗シナリオについては「Webexに戻って使うことだ」と冗談めかして答えた。
両者とも失敗シナリオについて考える時間をほとんど費やしていないと認める。Ericは「創業者やCEOは皆、大きなプレッシャーを感じている。失敗ケースについて考えすぎると、前に進む勇気がなくなる」と説明する。Peterは「私は失敗ケースについて考えるようにできていない」と率直に語る。ただしEricは「パラノイドでいることと、最善を尽くさないことへのパラノイアは別だ」と付け加え、自分自身に大きなプレッシャーをかけていることを認める。
まとめ
このエピソードが聴き手に残す最大のメッセージは、資本効率の高い成長は「ビジネスモデルの関数」ではなく「創業者のマインドセットと文化」であるということだ。ZoomとVeevaは全く異なるビジネスモデルを持ちながら、製品の卓越性への執着、無駄な人材を排除する規律、測定可能なものだけに投資する姿勢、そして「生き残り」への根源的な危機感を共有している。特に印象的なのは、両者とも「顧客の言葉ではなく感情を読む」というアプローチと、「成功してもパラノイアを手放さない」姿勢だ。また、EricがCOVID後の急成長で経験した「チームの成長がビジネスの成長に追いつかない」という失敗談は、急成長するスタートアップにとって貴重な教訓を提供している。このエピソードが特別なのは、通常は非公開のVCサミットで収録されたという希少性だけでなく、二人のCEOが自身の失敗や後悔を率直に語っている点にある。
要点
- ZoomとVeevaは、調達したベンチャーキャピタルの大部分(Zoomは1億3000万ドル中ほぼ全額、Veevaは400万ドル中ほぼ全額)を使わずに数十億ドル規模の企業に成長した。
- 資本効率の鍵はビジネスモデルではなく、創業者の「利益を生むレモネードスタンドを経営する」というマインドセットと、無駄を一切排除する文化にある。
- 製品の卓越性が最も重要であり、優れた製品は営業コストとマーケティングコストを劇的に削減する。Zoomは最初の4年間マーケティングチームを持たなかった。
- 顧客の「言葉」ではなく「感情」を読むことが重要。Peterは全員が「必要ない」と言った製品を、彼らが現在のソリューションに愛着がないことを感じ取って開発した。
- 人材採用では「自己動機付けと自己学習」を重視する一方、急成長時には成長 potential を持つ人材と経験豊富なリーダーの「健全なミックス」が必要。Ericはこの点を最大の過ちとして認めた。
- マーケティング支出は「測定可能なものだけに投資する」が基本だが、看板広告のように定量的に測定できないものでも、顧客の感情や従業員の士気に与える影響を考慮して投資する価値がある。
- 複数年契約ではなく年間契約を選ぶことで、市場を拡大し、チームに毎年価値を証明させるプレッシャーをかけ続けることができる。
- 成功してもパラノイアを手放さず、常に次の製品やサービスを3年先を見越して計画する必要がある。Ericはこの点でPeterから学んだ教訓を「最大の過ち」と振り返った。