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Acquired · 2026年5月15日

アリーナショウ パートII:ブルックス・ランニング(CEO ジム・ウェバーと共に)

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この記事でわかること
  • アリーナショー パートII:ブルックス・ランニング(CEOジム・ウェーバーとの対談) 本エピソードは、Acquiredのライブイベント「アリーナショー」の最終幕として、ブ...
  • [0:00] 番組冒頭:ブルックスとの出会いと本エピソードの位置づけ ホストのベン・ギルバート(PSLベンチャーズ)とデイビッド・ローゼンタール(エンジェル投資家)は、ま...
  • ベンは「もしブルックスを『100年続く靴会社』としか見ていないなら、その認識は覆されるだろう」と警告する。ジム・ウェーバーは「Acquiredにこれまで登場した中でも最も...
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出典Podcast

Acquired / Ben Gilbert and David Rosenthal

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アリーナショー パートII:ブルックス・ランニング(CEOジム・ウェーバーとの対談)

本エピソードは、Acquiredのライブイベント「アリーナショー」の最終幕として、ブルックス・ランニングのCEOジム・ウェーバーを迎え、同社がどのようにして「3流のキャッシュフローが深刻にマイナスの敗残者」から、世界有数のフィットネスブランド、そしてバークシャー・ハサウェイ帝国の至宝へと変貌を遂げたかを描く。2001年にCEOに就任したウェーバーは、当時年間500万ドルの損失を計上し、給与支払いすら危ぶまれた同社を、20年余りで売上高11億3000万ドル、自己資本利益率50%超という驚異的なビジネスに育て上げた。このエピソードは、単なる靴会社の再建物語ではなく、フォーカス、パーパス、そして「長期的なゲーム」を徹底することで、巨大プラットフォーム企業が支配する業界でいかにしてニッチ・チャレンジャーブランドが勝利できるかを示す、戦略の宝庫である。

0:00番組冒頭:ブルックスとの出会いと本エピソードの位置づけ

ホストのベン・ギルバート(PSLベンチャーズ)とデイビッド・ローゼンタール(エンジェル投資家)は、まずブルックスの「Ghost 14」カスタムシューズへの熱狂を語る。デイビッドは「これまで所有したスニーカーの中で間違いなく最高」と絶賛し、ベンは「Adrenalineも素晴らしいが、Ghostは一日中履いている」と応じる。デイビッドが「Ghostはアクティブランナー向けの靴だ」とベンをからかうと、ベンは「サンフランシスコの丘で赤ちゃんを抱えて歩いているだけで、以前ランニングしていた時よりカロリーを消費している」と切り返す。この軽妙なやり取りは、ブルックスが「真剣だが堅苦しくない」ブランドであることの予告編とも言える。

ベンは「もしブルックスを『100年続く靴会社』としか見ていないなら、その認識は覆されるだろう」と警告する。ジム・ウェーバーは「Acquiredにこれまで登場した中でも最もダイナミックなゲストの一人」であり、アリーナを去る観客からは「素晴らしい教訓と引用を書き留めた」という声が多数寄せられたという。

4:30ブルックスの危機:CEO就任時の惨状

ジム・ウェーバーが2001年4月にCEOに就任した時、ブルックスは瀕死の状態にあった。年間売上高は6000万ドル、しかし500万ドルの損失を計上し、3000万ドルの負債を抱えていた。取締役会は毎週金曜日に電話会議を開き、給与支払いの方法を協議していた。当時、ブルックスはあらゆるスポーツ用品を手がける「なんでも屋」だった。フットボールのスパイク、レスリングシューズ、ボウリングシューズ、そして「バーベキューシューズ」や「芝刈りシューズ」と呼ばれるファミリーフットウェアまで、あらゆる価格帯の製品を製造していた。

ウェーバーはこの状況を、業界の歴史に根ざした問題だと説明する。「かつて靴工場を所有していた時代、工場を一年中稼働させ、従業員を維持するために、あらゆる種類の靴を作らなければならなかった」。しかし、ブルックスはどのカテゴリーでも8位か9位であり、ブランド力は弱く、小売業者からも無関心だった。ほとんどの製品は低マージンで、在庫とキャッシュを縛っていた。

ウェーバーはこの時点ですでに、自身のキャリアで3度のターンアラウンドを経験していた。コールマン・カンパニーの子会社、O'Brien Water Sports、そしてスノーボード会社のSim Sportsで、いずれも事業を立て直して売却した。しかしブルックスでは、彼は「長期的なゲーム」をプレイすることを決意していた。「私はブランドを構築したかった。そしてランニングはスポーツ用品全体で最大のカテゴリーであり、アスレチックフットウェアでも最大だ。世界で約300億ドルのカテゴリーだ。生き残ることはできると確信していた」。

10:30賭け:すべてをランニングに集中する決断

ウェーバーが下した決断は、業界の常識を覆すものだった。彼は「すべての船を燃やし」、パフォーマンス・ランニング以外の全事業を廃止することを宣言した。これは「業界で誰も見たことのない」決断であり、ほとんどの関係者は「正気の沙汰ではない」と考えた。

この決断の核心は、ブルックスのビジネスモデルを根本から変えることにあった。ウェーバーは、高マージンでキャッシュフローを生むビジネスを構想していた。彼はPillsbury時代に学んだ「PIMSの原則」を引用する。「最も高いROIを生むビジネスは、低価格帯の消耗品だ」。ボーイングのジェット機や600ドルのウェイクボードは一度買えば長持ちするが、ランニングシューズは違う。頻繁に走るランナーは週に20〜30マイルを走り、年間2.6足のシューズを消費する。現在のブルックスの平均販売価格は約130ドルで、年間2.6足を購入する顧客は、ブランドに忠誠心を持ち続ける。

ウェーバーは「ランニングはスポーツであると同時に、自己投資の追求でもある」と指摘する。バスケットボールでは誰もがステフィン・カリーのシューズを知っているが、マラソンの優勝者やそのシューズを覚えている人はほとんどいない。ブルックスは「表彰台やゴールテープ」ではなく、「あなたとあなたのラン」に焦点を当てる。ニューヨークシティマラソンを走る4万人のうち、優勝するのはたった一人。ブルックスは残りの3万9999人の「最高の一日」を支援する。

このブランドポジショニングは「アプローチャブル(親しみやすい)」であり、「私はランナーではない」というプレッシャーや気後れを取り除くことを目的としている。ウェーバーは「タイトルIX(1970年代の男女平等教育法)以降、女性がスポーツ用品市場を牽引してきた。アプローチャブルであることは極めて重要だった」と語る。

19:40困難な決断:取引先との決別とアーリーウィン

売上の6分の1を占める最大顧客Big5との取引を打ち切る決断は、象徴的な瞬間だった。Big5は30ドルの靴を扱っており、ブルックスはその取引で損失を出していた。ウェーバーは「あの会議から逃げるように去った」と振り返る。在庫を整理することで500万ドルのキャッシュを生み出した。

同様にFoot Lockerとの取引も打ち切った。彼らは6万足を発注し、製品を2度変更し、最終的にキャンセルするというパターンを繰り返していた。これらの決断により、売上高は意図的に減少した。

しかし、ウェーバーは同時に「ホライゾン1、ホライゾン2、ホライゾン3」を同時に進める必要があった。最も重要なのは、主力製品「Adrenaline 4」を完成させることだった。このシューズはマルチデンシティ・スタビリティ技術を搭載したバランスの取れた製品で、競合のASICSが供給不足に陥ったタイミングと重なった。ブルックスは1色を航空便で空輸し、18ヶ月の製品サイクルを守り抜いた。「あのシューズが会社を救った」とウェーバーは言う。

この時期、ウェーバーは取締役会から「10の優先事項を4つに絞れ」と言われたが、彼は拒否した。「すべてを同時に進めなければならなかった。CEOとして、ビジネスモデル全体を前進させる必要がある」。靴業界はソフトウェアビジネスとは異なり、金型に50万〜100万ドルかかり、12サイズのメンズ、12サイズのウィメンズ、さらに幅とカラーのバリエーションがある。1つのスタイルを市場に投入するには莫大な投資が必要だ。

25:43製品への執着とランナー理解の深さ

ブルックスの競争優位性の核心は、「製品への汗」にある。ウェーバーは「我々はR&Dに、フォーカスされたランニング指標において、他のどのブランドよりも投資している」と断言する。資金力では巨大競合に劣るが、ランニングの動作に特化した臨床研究と素材工学に集中することで、それを補っている。

特筆すべきは、ブルックスが「トレーナー(日常的なトレーニングシューズ)」こそがビジネスの本流だと見抜いた点だ。レーシングシューズやスパイクではなく、ランナーが日々履くトレーニングシューズに需要がある。大学の陸上競技プログラムをスポンサーすることはほとんどないが、多くの大学選手は日常のトレーニングでブルックスを履いている。

もう一つの重要な洞察は、最も優れたフットウェアを必要としているのは、エリートアスリートではなく、むしろ初心者だということだ。初心者はケガのリスクが最も高く、適切なシューズが最も重要になる。「我々のスポーツの面白いところは、ピンネイルのアスリートだけでなく、始めたばかりの人こそ最高のフットウェアを必要としている点だ」。

ブルックスは「ランナビリティ(走りやすさ)、フィット感、履き心地」を自社の堀(モート)と位置づける。優れたシューズを作ることは簡単ではない。マラソンの26マイルを快適に走り切れる製品を一貫して提供し続けることこそが、最も強力な防御策だとウェーバーは考える。

34:11バークシャー・ハサウェイ傘下へ:独立の交渉とウォーレン・バフェットとの邂逅

ブルックスは2006年にRussell Athleticに売却された。ウェーバーはこの時、独立を条件に交渉した。「我々はシアトルのクレイジーな叔父さんだ。我々は本当に変わっている。放っておいてくれ」。Russellはこれを受け入れ、ブルックスは自律性を維持した。

その後、RussellがFruit of the Loomに買収され、Fruit of the Loomはすでにバークシャー・ハサウェイの傘下にあった。ブルックスは「子会社の子会社」という立場になった。Fruit of the Loomはブルックスをケンタッキー州ボーリンググリーンに移転しようとしたが、ウェーバーは「それはブルックスを殺すことになる」と抵抗した。彼は「非常に賢い人々」に相談し、ウォーレン・バフェットに直接訴えた。バフェットは「関与しない。Fruit of the Loom次第だ」と答えたが、ウェーバーは粘り強く交渉を続け、最終的にブルックスの独立を勝ち取った。

転機は2011年12月に訪れた。ウォール・ストリート・ジャーナルに、マーク・ザッカーバーグがFacebookのIPO準備中に「アディダスのサンダルからブルックスのAdrenalineに乗り換えた」という記事が掲載された。バフェットはこれを見つけ、記事を丸で囲み、「ジム、これは素晴らしい。あと200万人の顧客が必要だ」とメモを送った。

数週間後、ウェーバーは家族と休暇中に、バフェットからのボイスメールを聞き逃した。「ジム、これはウォーレンだ。アイデアがある。電話をくれ」。5日後に気づいたウェーバーが電話をかけると、バフェットは自ら電話に出た。「君たちはうまくやっている。シューズに集中している。Fruit of the Loomはアパレルに集中すべきだ。君たちを独立した子会社としてスピンアウトさせようと思う」。ウェーバーは「それは良いアイデアだ」と答え、その年の好業績を報告した。バフェットは「それは素晴らしい。これからは君たちの成功のすべての功績を、私が引き受けることにする」と応じた。

44:05ゲリラマーケティングとパンデミック対応

2012年の米国陸上競技オリンピックトライアルでのエピソードは、ブルックスの「スクラップ精神」を象徴する。ナイキがUSATFと27年契約を結び、オレゴン大学のヘイワードフィールドを「スウッシュ」で包囲する中、ブルックスは「Run Happy」のバナーを掲げた飛行機をスタジアム上空で飛ばした。FAA(連邦航空局)の許可は得ていたが、大会関係者は「ゲリラマーケティングは禁止だ」と抗議。ブルックスは2日間飛行機を飛ばし続け、最終的にウェーバー自身を含む3人が会場から追放された。「チケットの裏を読め。これはいつでも取り消せるライセンスだ」と言われたという。この話は業界で語り継がれ、ブルックスのブランド認知を高める結果となった。

2020年のパンデミック対応は、ブルックスの「ランナーへの執着」が最大の武器となった事例である。ウェーバーは、ランナーの参加率と販売数量の関連性を「強迫観念的に」追跡していた。小売店が全面閉鎖される中、ブルックスは3つのデータソースを活用した。第一にStravaのアクティビティデータ、第二に全米45人のフィールドマーケティングスタッフを公園に派遣してランナーを実地カウント、第三に小売店の85%の販売データをデジタルで可視化していた。

このデータから、ランニングが「ソーシャルディスタンスに適した屋外活動」として需要を伸ばすと確信したブルックスは、他のブランドより6〜12週間早くサプライチェーンを再稼働させた。ウェーバーは「もし幅広いライフスタイル製品を扱っていたら、顧客がいつ戻ってくるか全く見通せなかっただろう。しかし我々はパフォーマンス・ランニング用品だけを作っていたからこそ、自信を持って再開できた」と説明する。結果、2020年は27%増収、2021年は31%増収(サプライチェーン問題がなければ40%増の見込み)を達成し、売上高は11億3000万ドルに達した。

53:24ブルックスの堀と将来展望

ウェーバーはブルックスの堀を3層構造で説明する。第一に「ビジネスモデル」そのものだ。高マージン、アセットライト(在庫と売掛金が主な資産)、営業利益率10%台、増分資本が不要という特性により、20〜30%の成長を続けながらキャッシュを生み出せる。2001年以来、外部資本を一切必要としていない。自己資本利益率(有形純資産ベース)は過去15年間平均50%超という驚異的な水準だ。

第二に「製品の卓越性」である。ランナビリティ、フィット感、履き心地において、一貫して優れた製品を提供し続けることは、簡単なようでいて実際には非常に難しい。ウェーバーは「アンソニー・ファウチ(元NIAID所長)が『ワクチンは難しい。靴を作るのとは違う』と冗談を言ったが、実は優れた靴を作るのも非常に難しい」と語る。

第三に「リテールパートナーシップとデジタルマーケティング」の両面での実行力だ。Dick's Sporting Goodsでは10年間、20店舗から80店舗への拡大に耐え抜き、現在はナンバーワンブランドとなった。デジタル面では、ランニングシューズのアクティブな検討段階にある消費者に対して、業界で最も集中的に広告投資を行っている。

将来のAケースとして、ウェーバーは10年ビジョンを掲げる。現在約1500万人のユニーク顧客を6000万人に拡大し、売上高40億ドルを目指す。成長の大部分は国際市場、特にアジアと欧州からもたらされる。しかし最大のリスクは「単一障害点」にある。2019年の配送センターの立ち上げ失敗や、2021年のベトナム工場の操業停止(45%の工場が3ヶ月間生産不能)が示すように、サプライチェーンのレジリエンスと多様化が喫緊の課題だ。

1:04:03癌との闘いとリーダーシップ

エピソードの終盤、ウェーバーは自身の癌との闘いについて語る。食道癌と診断され、5年生存率は20%だった。化学療法、放射線療法、手術、合併症による再手術を経て、現在は癌フリーの状態にある。

彼が癌から学んだのは、「恐れの中で生きない」という決断だった。「失うものがたくさんあった。しかし、なぜ自分なのかと苦々しく思うのはやめようと決めた。与えられた一日一日をすべて吸収したい。CEOであり、父であり、夫であり、祖父でありたい」。この経験は、彼のリーダーシップにも影響を与えている。「会社も人も同じだ。困難に直面した時、本当の姿が現れる」。

まとめ

このエピソードが聴き手に残すものは、フォーカスの力と「長期的なゲーム」をプレイすることの価値である。ウェーバーは、瀕死の状態だった会社を、一切の妥協なく「アクティブランナー」だけに集中することで、バークシャー・ハサウェイの至宝に育て上げた。彼のリーダーシップは、単なる戦略家としてだけでなく、癌との闘いを経て「今この瞬間を生きる」という哲学に裏打ちされている。ブルックスの物語は、巨大プラットフォームが支配する世界でも、ニッチに特化し、製品に執着し、長期的な価値創造を信じることで、勝利が可能であることを示している。

要点

  • ブルックスは2001年、年間500万ドルの損失、3000万ドルの負債、給与支払いも危ぶまれる状態だったが、CEOジム・ウェーバーの下で「パフォーマンス・ランニング」への全面特化を決断し、全製品ラインを廃止した。
  • この決断により売上高は意図的に減少したが、高マージン・高回転のビジネスモデルへの転換に成功。2001年以来、外部資本を一切必要とせず、自己資本利益率(有形純資産ベース)は過去15年平均50%超を達成した。
  • ブルックスのブランドポジショニングは「あなたとあなたのラン」であり、表彰台や勝利ではなく、自己投資としてのランニングを支援する。この「アプローチャブル」な姿勢が、特に女性ランナーの取り込みに成功した。
  • バークシャー・ハサウェイ傘下入りは、ウェーバーが粘り強く独立を交渉した結果。ウォーレン・バフェットはブルックスをFruit of the Loomから切り離し、直接報告する子会社とした。
  • パンデミック時には、ランナー参加率のデータ(Strava、実地カウント、小売販売データ)を活用し、他社より6〜12週間早くサプライチェーンを再稼働。2020年27%増収、2021年31%増収を達成した。
  • ブルックスの堀は、①高マージン・アセットライトのビジネスモデル、②ランナビリティに特化した製品の卓越性、③リテールパートナーシップとデジタルマーケティングの両面での実行力、の3層構造からなる。
  • 最大のリスクはサプライチェーンの単一障害点。ベトナム工場の操業停止(2021年)や配送センターの立ち上げ失敗(2019年)が教訓となり、現在はサプライチェーンの多様化とレジリエンス強化に取り組んでいる。
  • ウェーバーは食道癌(5年生存率20%)を克服し、「恐れの中で生きない」という決断が、リーダーシップと人生観の基盤となっている。