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Acquired · 2026年5月15日

アリーナショウ パートI:アイデアディナー + YCコンティニュイティ

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この記事でわかること
  • 概要 このエピソードは、ポッドキャスト「Acquired」がシアトルのクライメート・プレッジ・アリーナで開催した初の大規模ライブイベント「Arena Show」の第一部で...
  • [8:40] アイデア・ディナーの開幕:伝統の復活 2021年2月、誰もが自宅に閉じこもっていたパンデミック初期、Clubhouseが流行しGameStopが急騰していた...
  • さらに今回は、特別審査員として、ソフトバンク・ラテンアメリカの元マネージング・ディレクターであり、長年の番組の友人でもあるシュー・ニャッタが参加。各ピックを「Acquir...
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Acquired / Ben Gilbert and David Rosenthal

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概要

このエピソードは、ポッドキャスト「Acquired」がシアトルのクライメート・プレッジ・アリーナで開催した初の大規模ライブイベント「Arena Show」の第一部である。ホストのベン・ギルバートとデビッド・ローゼンタールは、普段はZoom越しに録音している番組を、何千人もの生の観客の前で行うという特別な体験に終始興奮しつつ、二つの主要セグメントを展開する。前半は、人気ニュースレター「Not Boring」のパッキー・マコーミックと「The Generalist」のマリオ・ガブリエルを招いての恒例企画「Idea Dinner」(公開株式投資アイデアのピッチ対決)、後半はY Combinatorのグロースステージ投資ファンド「YC Continuity」を率いるマネージング・パートナー、アヌ・ハリハランへのインタビューである。このエピソードの核心は、YCが単なるアクセラレーターを超えて、創業者と企業の生涯にわたるパートナーとなるための組織進化を遂げているという物語であり、同時に、現在の市場環境における投資機会の捉え方について、異なる視点から示唆を与える内容となっている。

8:40アイデア・ディナーの開幕:伝統の復活

2021年2月、誰もが自宅に閉じこもっていたパンデミック初期、Clubhouseが流行しGameStopが急騰していた時代に、ベンとデビッドは「インターネット上の親友」であるパッキー・マコーミックとマリオ・ガブリエルを呼び、誰もがやっていたように株式をピックする企画を始めた。それが「Idea Dinner」の起源である。今回のライブでは、その魔法を再現するため、ニューヨークから駆けつけた二人をステージに迎え入れた。

さらに今回は、特別審査員として、ソフトバンク・ラテンアメリカの元マネージング・ディレクターであり、長年の番組の友人でもあるシュー・ニャッタが参加。各ピックを「Acquired」流に採点し、勝者と敗者を宣言する役割を担う。パッキーは「過去のパフォーマンスが最も良い順に発表順を決めた」と主張し、自分がトップバッターを避けられるように仕組んだことを認め、会場の笑いを誘った。

11:51マリオのピック:Snowflake

マリオ・ガブリエルは、自身の投資アイデアとしてSnowflakeを提案した。Snowflakeはマネージド・データウェアハウスであり、その初期の天才的な発想は「ストレージとコンピュートの分離」にあった。企業が管理するあらゆるデータを取り込み、それに対するクエリを超高速で実行できるようにした製品である。パンデミック期の寵児となり、IPO初日の株価は401ドルまで急騰したが、現在は約183〜185ドルまで下落している。しかしマリオは、表面的な株価の下落ではなく、企業のファンダメンタルズに注目すべきだと主張する。

収益は前年比105%増、ネット・リテンション率は178%(前年は168%)と、公開企業としては記録的な水準だ。フリーキャッシュフローは8,000万ドル以上を生み出しており、昨年第4四半期には、前年全体の収益に相当する14億ドルの契約価値を獲得した。CEOのフランク・スルートマンは、自身を「パットン将軍」に例えるほどの持続的成長経営の達人であり、困難な状況での経営手腕に定評がある。マリオは「3年以上の時間軸で見れば、データ産業の成長を捉える安全な賭け」と結論づけた。

デビッドは「セクターの追い風は間違いないが、競争環境の中で価値をどれだけ自社に取り込めるかが課題」と指摘。マリオは「ネット・リテンション率が示すように、顧客ベースとともに成長する能力に優れている」と反論した。

16:18パッキーのピック:Opendoorへのダブルダウン

パッキー・マコーミックは、自身が「ひどい株式ピッカー」であることを認めつつ、過去のIdea Dinnerで最大の敗者となったOpendoorに再び賭けると宣言した。OpendoorはiBuying(住宅の即時買取・転売)市場のリーダーであり、昨年は80億ドルの収益を上げている。時価総額はわずか50億ドルで、住宅市場は数兆ドル規模の巨大市場である。

パッキーは、住宅購入プロセスが「最大の市場における最悪のUI/UX体験」であり、Opendoorがその問題に対する最良のソリューションを持っていると主張する。最大の競合であったZillowがiBuying事業から撤退したことで、市場はOpendoorのものになった。同社は昨年、調整後EBITDAベースで黒字化を達成し、数千戸の住宅を運用するオペレーション力を持つ。CEOのエリック・ウーは「絶対的なモンスター」であり、同社の企業文化「bips for breakfast」(住宅運用から1ベーシスポイントずつ利益を絞り出す)は、Amazonに匹敵するコスト規律を示している。

パッキーはまた、TwitterのElon Muskによる買収についても言及。80万人の米国ユーザーが月3ドルを支払えば、年間30億ドルの定期収益が生まれると試算し、「TwitterはソーシャルメディアのAppleになるべき」と持論を展開した。ただし、これはあくまで「ピックではない」と断っている。

23:37ベンのピック:Coinbase

ベン・ギルバートは、Google、Amazon、Twitterの裁定取引など複数の候補を検討した末、Coinbaseを選択した。彼はこれを「暗号資産のバリュー投資」と位置づける。過去12ヶ月で100億ドルのフリーキャッシュフローを生み出した一方、時価総額は340億ドルに過ぎない。つまり、100ドルのキャッシュを生む事業を340ドルで買える計算であり、ネットワーク効果と業界トップブランドを持つ企業としては極めて割安だと主張する。

ベンは、暗号資産全体がまだ「第一イニング」にある中で、Coinbaseは最も確立された企業であり、価格変動の方向性に関わらず取引量が増えれば収益が増えるビジネスモデルを持つと指摘する。さらに、NFT事業など将来の成長オプションも内包している。彼は「暗号資産とWeb3をプレイする最良の方法は、Web3の熱と光を利用してWeb2的なビジネスモデルを運営する中央集権型企業に注目すること」と述べ、CoinbaseとFTXがその典型例だと説明した。

パッキーは、IPO後の人材流出やFTXとの競争(特にデリバティブ市場)を懸念材料として挙げたが、ベンは「この時価総額では絶対的なお買い得」と譲らなかった。シューはCoinbaseの消費者向け手数料が業界平均を大幅に上回っており、それが80%縮小した場合のリスクを指摘した。

30:56デビッドのピック:Amazon

デビッド・ローゼンタールは、このアリーナの命名権を持つ企業であるAmazonを選んだ。時価総額は約1.25兆ドルで、過去12ヶ月の収益は4,700億ドルと、Walmartに次ぐ史上2位の規模である。株価は直近の決算発表後に下落したが、デビッドはこれが絶好の買い機会だと主張する。

AWSは750億ドルの収益ベースで年率37%成長しており、クラウド市場で33%以上のシェアを持つ。Microsoft AzureとGoogle Cloudは45%成長と率では上回るが、両社を合わせたシェアでもAmazonに及ばない。一方、小売事業は米国Eコマースの56%のシェアを占める。Goldman Sachsが「思考実験」として小売事業の価値をゼロと仮定してもAWSだけで株価を正当化できると試算したことを引き合いに、デビッドは「小売がゼロ価値というナラティブは完全に誤り」と断じる。

小売事業が直近四半期に15億ドルの損失を出したのは、Amazonが競合よりはるかに先を見越して投資を行っているからであり、投資を止めれば即座に強力なキャッシュフローを生み出す体制にある。デビッド自身、過去5年間でAmazonへの支出を年率34%増やし、子育て世帯として年間230品目を注文している。Amazonクレジットカード、Buy with Prime、広告事業(300億ドルの高マージン事業)など、小売内の高マージン事業の成長も見逃せない。

ベンは「Andy JassyがAmazonのTim Cookになる」というフレームワークを提示し、デビッドのピックを支持した。

37:11審査と結果

シュー・ニャッタは、全ピックに対する総評として三つのポイントを挙げた。第一に、4人のピッカーは「ストーリーとナラティブを理解し創造する能力」において優れており、それが現代の投資の本質であると評価した。第二に、全員がベンチャー投資家のように考えており、 downside(下落リスク)についての議論が不足していたと指摘。第三に、全員が「安い」企業に焦点を当てていたが、高くても優れた投資対象は存在すると述べた。

審査基準は、 upside(上昇余地)、downside(下落リスク)、timing(なぜ今か)、novelty(新規性)、flair(華)の5項目。会場の拍手投票による決戦の結果、SnowflakeとCoinbaseの決選投票を経て、Coinbaseが勝利した。ただしシュー自身の個人的なピックはSnowflakeだったことを後で明かしている。今後5年間のホールド期間で、リスナーが管理するスプレッドシートで実際のパフォーマンスが追跡されることになっている。

45:42YC Continuity:知られざるY Combinatorのもう一つの顔

Act 2では、Y Combinatorの物語の第二部が語られる。多くの人が知るYCのアクセラレーター事業(Airbnb、Dropbox、Stripe、Brexなどを輩出)は、現在のYCの半分に過ぎない。YCは現在、シリコンバレー最大級のレイトステージ・グロース投資家でもあり、Series B、C、Dラウンドで数十億ドルを展開している。その中心を担うのが、マネージング・パートナーのアヌ・ハリハランが率いるYC Continuityである。

アヌは、QualcommのジュニアエンジニアからAndreessen Horowitzのパートナーを経て、現在YC Continuityを率いている。彼女はBrex、Convoy、Fair、Monzo、Gusto、RevenueCat、Rappi、Vouchなどの取締役を務めている。

49:23Continuityの誕生と使命

YC Continuityは2015年7月に設立された。その発端は、YCの卒業生創業者たちから「12週間のプログラムで会社を始めるきっかけをもらったのだから、YCが投資やプログラムを通じてその後も支援を続けてくれるのは素晴らしい」という声が上がったことにある。当時、グロースステージの資本自体が懐疑的に見られていた時代であり、1億ドル以上の小切手を書けるファンドは片手で数えるほどしかなかった。一方で、IPOまでの中央値は11年に達しており、企業は公開市場にアクセスできないまま巨額の成長資金を必要としていた。

Continuityは単なるファンドではなく、三つのプログラムを運営している。Series Aプログラムでは、ピッチデッキの作成、タームシートの交渉、投資家の選定を支援する。Growthプログラムは、CEOとしてのスケーリング方法(役員採用、パフォーマンス管理、文化構築など)を8週間かけて学ぶ。Post Aプログラムでは、Series A調達後に新たなピアグループとともに6週間の再教育を受ける。YCはWhatsApp上で運営されており、アヌの電話は毎朝、4,000社以上の企業と8,500人以上の卒業生からのメッセージで絶え間なく鳴っている。

57:04YCの真の力:創業者評価の深さ

アヌは、YCの最大の競争優位性は「創業者の評価能力」にあると語る。伝説的な10分間のYC面接について「実際には最初の2分でわかる」と述べ、グロースステージにおいても、創業者の質に関する定性評価を何よりも重視する。彼女が注目する三つの指標は、(1) 創業者がどれだけ速く動き、出荷し、反復するか(学習速度)、(2) 採用の質(エンジニアや役員をどれだけうまく採用できるか)、(3) 思考の明瞭さ(5億ドルまたは100億ドルの企業になる理由を2ページで明確に説明できるか)である。

Continuityの投資哲学は「アウトプットではなくインプットに基づいて投資する」ことにある。多くのグロース投資家が成長率やマージンなどの遅行指標を見るのに対し、YCは創業者がどのように企業を構築しているかという先行指標に注目する。なぜなら、YCは創業者をデモデイの時点から知っており、何年にもわたって彼らを観察してきたからだ。Tony Xu(DoorDash)の暗黒期や、Airbnbの死にそうになった瞬間など、外部の投資家には見えない内部の「ソーセージ製造」の実態を知っている。

アヌは「YC創業者はYCを投資家とは見なさない。親として見る」と述べる。卒業から5年経っても、問題が起これば最初にYCのパートナーに連絡する。Continuityはこの関係を変えないよう細心の注意を払っており、「勝つ権利を獲得しなければならない」という社内の格言がある。時にはYCが今ラウンドで投資しない方が会社にとって良い判断であることもあり、その場合は素直に次のラウンドを待つ。

1:00:46Continuityの運用とYCの未来

Continuityは7年間でわずか35件の投資しか行っていない。YCを通過した3,500社のうち、1%未満にしか投資していない。これは、常にYCの成功に対して過小資本であったことが理由の一つだが、同時に厳選された投資戦略の表れでもある。投資判断はアヌとAli Rowghani(元Twitter CEO、元Pixar CFO)の2名で行い、意見が一致しない場合のみ早期ステージのパートナー1名が加わる3名体制である。

YC全体の卒業企業の合計時価総額は6,000億ドルを超える。バッチサイズは現在約400社で、合格率は3%未満と低下し続けているが、アヌは将来的にバッチサイズが1,000社、2,000社になる可能性も視野に入れている。「応募数が増え、それだけ優れた応募があるなら、スケールする方法を学ぶ必要がある」と語る。

YCの最大のリスク(F評価)は、コミュニティを損なうことだとアヌは指摘する。YCは強いネットワーク効果を持つプラットフォームだが、ネットワーク効果は急速に減速する可能性もある。A評価のビジョンは、IPO後も含めた企業の生涯にわたるパートナーとなることだ。すでにPre-IPOプログラムの需要が生まれており、Brian CheskyやBrian Armstrong、Tony Xuでさえ、問題がなくなるわけではない。彼らにも新たな課題に対応するためのピアグループが必要なのである。

まとめ

このエピソードは、Acquiredがこれまで培ってきたコミュニティの力を具現化した特別な回である。Idea Dinnerでは、市場の混乱期における投資機会の捉え方について、異なる視点(バリュー、グロース、モメンタム、ナラティブ)が交錯する知的興奮があった。特に、全員が「安い」ことに注目した点は、2022年5月時点の市場心理を如実に反映している。一方、アヌ・ハリハランへのインタビューは、YCが単なるアクセラレーターから、創業者の生涯にわたるパートナーへと進化する過程を鮮明に描き出した。YC Continuityの「インプットに基づく投資」という哲学は、従来のグロース投資の常識を覆すものであり、組織としてのYCの真の強みが「創業者を見極め、育て、支え続ける能力」にあることを示している。このエピソードが特に印象的なのは、Acquired自身もまた、リスナーコミュニティというネットワーク効果によって成長してきたメディアであり、そのコミュニティの力を初めて物理的に実感した瞬間が記録されている点だ。

要点

  • パッキー・マコーミックはOpendoorへの「ダブルダウン」を宣言。ZillowのiBuying撤退後、同社が住宅即時買取市場の独占的リーダーとして成長すると予想
  • ベン・ギルバートはCoinbaseを「暗号資産のバリュー投資」と位置づけ、100億ドルのFCFに対して340億ドルの時価総額は極めて割安と主張
  • デビッド・ローゼンタールはAmazonをピック。AWSの37%成長と小売事業の56%シェアを根拠に、小売事業をゼロ評価するナラティブを否定
  • マリオ・ガブリエルのSnowflakeは、ネット・リテンション率178%という記録的な顧客定着率が強み
  • YC Continuityは7年間で35件のみの投資と極めて選択的だが、YC卒業企業の合計時価総額6,000億ドルに対して常に過小資本
  • アヌ・ハリハランは、グロース投資においても創業者の「インプット」(速度、採用力、思考の明瞭さ)を「アウトプット」(成長率、マージン)より重視する哲学を説明
  • YCの最大のリスクはコミュニティの毀損であり、A評価のビジョンはIPO後も含めた企業の生涯パートナーとなること
  • 会場の拍手投票ではCoinbaseがSnowflakeを破って勝利したが、審査員シュー・ニャッタの個人的ピックはSnowflakeだった
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